生身の人間に興味がない近未来人

最近はなるべくテレビを見るようにしています。ちょっと前までは、テレビはほとんど全く見ませんでした。お蔭で、さっぱりタレントさんの顔と名前が分からなくなりました。テレビはやはり、時代を写す鏡です。

これでも、20年前は(笑)、バリバリのテレビ担当記者でしたから、朝から晩までテレビを見て、何十人、何百人ものタレントさん、歌手、俳優、役者さんらにインタビューしたものでした。

まあ、芸能界は大変な世界ですから、10年持てば良い方でしょう。あのビートルズでさえ、現役で活動したのはわずか7年間でしたからね。

で、今日は何を言いたいのかといいますと、先日見たバラエティー番組で衝撃を受けたからです。いわゆる男子系アイドル(グループ)を量産する誰もが知っている有名大手芸能事務所に所属するタレントさん(24)で、自室に籠もってゲームをしたり、漫画を読んだりすることが大好きなようで、他のメンバーと一緒にどこかに行ったり、飲みに行ったりもしないというのです。ということは、議論もしないのでしょう。

それはともかく、一番驚いたのは、その年頃なら異性(成人つかまえて、異性というのも変ですが)に興味があるはずなのに、デートをしたり、彼女をつくったりするのが面倒くさいらしく、お笑いの大御所タレントさんが「何で?」と質問すると、「何のメリットがありますか!?」と逆切れするのです。

メリット??? メリットとは損得勘定じゃないですか!若い時にそんなこと斟酌したら、とても男女交際なんかできませんよ(笑)。

彼は「そもそも、僕はあまり人間に興味がないんです。特に3次元は駄目。漫画なんかの2次元だったら大丈夫ですけど…」とまで言い放つのです。

唖然、呆然としてしまいました。

大昔、「新人類」という言葉が流行りました。「何を考えているのさっぱりか分からない」「新しいタイプの人間」という蔑称を込めて、確か、高校野球PL学園の桑田と清原らに対してのレッテル貼りが始まりだったと思いますが、彼らは今や既にもう50歳を過ぎています。

そんな新人類の息子ほどの年齢が今の若者です。またまた、昔は「おたく」とか「草食系男子」とかいう言い得て妙な言葉が流行りましたが、今の若者(の一部)は、さらに、さらに、進化したのか退化したのか、その上のまた上を行く感じなのです。

同じ番組に出ていた中年タレントさんは「もう草食系じゃなくて、単なる草」と彼のことを比喩してましたが、うまいこと言うものです。

異性の関心を引くために、オスのカエルはお腹を大きく膨らませたり、オス鳥は綺麗な声で鳴いたり、華麗なダンスを踊ったりします。人間だって、虚勢を張って頑張りますよ。女の子にもてたいがために、ギターなんか始める男の子もいます(笑)。

番組に出ていたティーンエージャーの女性タレントさんは「男の子にデートに誘われたことなんかない。今、7割ぐらいの女の子は誘われたことがないと言っている」などと暴露していました。

男の子が生身の女の子と付き合うことを拒絶して、ゲームやアニメなどの虚構の世界にしか興味がないなんて、まるで、SFの近未来の世界かと思っていたら、時代はもう既にそこまで来ていたんですね。

戦前は、政府もマスコミも、男は戦う兵士になれるよう養成する機関や風潮を全体主義国家として構築していました。

今の日本、平和の時代が70年以上も続き、徴兵される心配もないということで、男は、生物学的に中性化してきたということなんでしょうか。

とにかく、若い男性タレントさんの「女の子と付き合っても何のメリットもない」という発言にはカルチャーショックを受けました。まあ、アニメやゲームなら何とか自分の思い通りにできますし、恋愛しなけりゃ、ふられたりしなくて済みます。心に傷を負うこともないので健康的。確かに、打算的といえば打算的にしろ、あり得る話です。

しかし、「時代はここまで来てしまっていたのか」というのが正直な感想でした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

旧《溪流斎日乗》 depuis 2005 をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む