日本人のモラル低下を嘆く=かんぽ生命の不正販売で

 日本郵政グループ、かんぽ生命の不適切販売のニュースに接するにつけ、日本人のモラル(道徳心)はどこに消えてしまったのか、と疑いたくなり、腹が立ってきました。

 ノルマ達成のために、保険料を二重に徴収したり、病気が見つかると契約を解除して保険金を支払わなかったケースもあったらしく、企業ぐるみの組織的な詐欺犯罪としか言いようがありません。

 被害に遭った方々が当初9万件だったのが、18万件に増え、さらにもっと増えることが予想されています。最も許しがたいのは、80歳代や90歳代の高齢者で、しかも自己判断のできない認知症を患っている人に対して、強引ともいえる手法で何度も解約と新規契約を繰り返させて、2000万円もの高額の保険料をせしめていた事案があったことです。新規契約させればそれだけ手数料が入り、ノルマが達成できる仕組みだからです。

 今回の最高責任者である日本郵政の長門正貢社長なんぞは「きっちりお客様のサインをいただいている案件ばかりなので、何か法に反するようなルール違反をやったとは考えていない」と最初はすっとぼけていました。

 「お客様のサイン」というのは曲者で、契約の際に、タブレット上に電子ペンでサインさせると、そのサインはずっとたらい回しで、色んなところで使えてしまえるらしく、認知症になった人が自分が契約したつもりもないのに、勝手にこのサインを使って契約させられていたと思われます。

 こんなことは不適切行為どころか、犯罪ですよね。それなのに、張本人たちには重い罰は科せられないでしょう。何しろそんな悪いことをする奴はいなかったから法律が追い付いていないんでしょう。

 昔は親や教師から「お天道様が見ているよ」と諭され、誰も見ていなくても自己を律して、悪の誘惑には負けたり、怠けたりしないように訓練したものでした。

奥之院 上杉謙信廟

 先月末に放送されたNHKスペシャル「半グレ 反社会勢力の実像」では、外見からしてその筋の者と分かる犯罪者ではなく、優秀な京都の大学生が、クラブか同好会感覚で、女の子を弄んで、挙句の果てには借金返済名目で風俗業界に売り飛ばしてしまう行為を重ねていたことには驚かされました。

 その学生は逮捕されるわけではなく、悪いことをしたという気持ちはある、と言いながらも、「コミュニケーション力が身に付いた」と嘯き、一流企業に就職して生かしたいとまで言ってのけました。半グレ集団に参加して捕まった連中も、執行猶予で保釈され、被害に遭った女性は「罪が軽過ぎる。許せない」と嘆いていましたが、まさに泣き寝入りするしかない状態でした。

 今の日本は、政治家も教育者も警察官までもモラルが低下して、不祥事のニュースばかり聞かされます。いっそ、子どもたちには、日本は悪が蔓延り、弱肉強食の世界になっているから、他人を信用してはいけない。油断をすれば騙されるよ、と教えるべきなのかもしれません。