今、Newton 別冊「相対性理論」(ニュートンプレス、2023年2月5日発行)を読んでいます。私は、典型的な文系人間のズブの素人なのに、実に大胆不敵です。
しかし、実は、あることがあってから、私はすっかり「理系」志望になりました。文系の学問なんて実に幼稚に見えます。歴史や政治思想なんて、勝者の論理じゃないですか。何はともあれ、お家大事、周囲を洞ヶ峠から眺めて、忍びを使って、勝ち馬に乗ることしか考えない人間。インパール作戦では、10万人の兵卒を白骨街道に置き去りにして指揮官の将軍は飛行機で逃げ帰った人間。心理学なんて学問なんですか? 人間は、気まぐれでコロコロと自分の意見を変えます。朝は、「左」だと言っていた人間が、夕方には「右」だと言い張ります。自己保身のためなら、気に喰わない人間を踏み台にして、内通、変節、寝返り、裏切りなんて平気の平チャラです。所詮、人間は、生物学的にそのように出来ているわけですね。
人間には物語が必要だ?ー要らないでしょう。新聞のお悩み相談コーナーを読んでごらんなさい。強欲あり、嫉妬あり、羨望あり、怠惰あり、卑怯あり、無関心あり、差別あり。人間は、毎日毎時、いかに醜い争いをしているのか3分間で分かりますよ。21世紀になっても戦争はなくなりません。ウクライナだけではありません。パレスチナ、シリア、スーダン、アフガン…と紛争、内戦が続き、明日の生活もままならない難民が溢れています。人間は所詮、他者を支配して楽をして過ごしたい無責任な生物なのです。弱肉強食のジャングルでの仁義なき戦いの世界です。人生に意味も目的もありません。それでお仕舞い。
えっ? それを言っちゃあ、おしめえよ、ですか?ま、確かに、ここまで言ってしまっては身も蓋もありませんね。ただ、私も「あること」があってから、随分、醒めました。達観して冷血人間になりました。でもー。
出来る限り、勇気と夢と希望を持ってください。人間にとって最も大切なことは慈愛であり、思いやりである、と思ってください。恵まれない他者には親切にしてください。ボランティア奉仕と寄付と布施に励んで、陰徳を積んでください。
というのが私の本心、としておいてください。
◇物理学、万歳
その一方で、自然科学は宇宙の真理を教えてくれます。人間なんていなくても構いません。地球46億年、宇宙138億年の歴史から見て、人間は小数点以下のページにやっと登場するに過ぎません。すっかりひねくれてしまった私としては、それが実に爽快なのです。宇宙に終わりがありますが、その前に、我々が住む天の川銀河の終末があります。いや、その前に太陽系の崩壊、消滅があります。そうなれば、人間も、その記憶も、文化遺産も何もかもなくなります。
このように理系の学問は随分、悲観的絶望的な危険思想なのに、どういうわけか生きる勇気と希望が湧いてきます。人間が考え出した神や如来や宗教を超えた絶対真理を追究するからなのでしょう。泣こうが喚こうが人間を超えた学問とも言えます。
ですから、「光の速度は不変なので、時間と空間が相対的に変化する。時間が遅れたり、空間がねじれたり、縮んだりして見える」(アインシュタイン特殊相対性理論)と言われても、門外漢でもすんなりと理解できるのです。いや、人間を超えた真理なので、泣こうが喚こうが、そう理解するしかないのです。
でも、科学は、それほど乱暴な話ではありません。発表された当初は仮説だったとしても、ちゃんと科学的実験で証明されていきます。例えば、2020年、東大、理化学研究所、島津製作所などが光格子時計という最新技術を使って、東京スカイツリーの地上階と450メートルの展望階とで時間の進み方を測定したところ、約5京分の1、展望階の方が地上階より時間が速く進んでいたことが証明されたというのです。
えっ?本当ですか? 典型的な文系人間のズブの素人の私なのに、このNewton 別冊「相対性理論」は実に面白く読めます。