花の美しさはない=雲の波間に消え去った彼

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 雲をつかむような話です。

 遠く異国に棲む旧友であり、都会の賢人でもあるT君が夢枕に立ち、「美しい花がある。花の美しさというようなものは無い」と急に言い出しました。

 急に何のことなのだろうか、と訝しがっていると、彼はこう続けました。

 一匹の猿が山桜を眺めていたとしましょう。果たしてこの猿は、山桜の美しさを愛でていたのでしょうか? 恐らくそうではあるまい。花や葉に隠れて、何か食べられる実でもなっているのかどうか、確かめていたに違いないのです。同じように、川面に立つシロサギが一心不乱に川の流れを見つめています。果たして、このシロサギは光が屈折して反射する美しい川の流れを我を忘れて眺めていたのでしょうか? そうではなく、生きる糧である小魚でも探していたに違いないのです。

 つまり、美しい山桜があるが、山桜の美しさというものはない、のです。

 美しい川はあるが、川の美しさというものはない、のです。

 翻って、ヒトは何故、桜を愛でたりするのでしょうか? 美しい桜はあるが、桜の美しさはないというのに…。

うーむ、そう言われてみると、そうなのかもしれません。

 彼はさらに続けます。

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「欲望の資本主義」が最期に行き着く所は、貧富格差の膨大な拡大と人類の破滅です。現代の経済学は、数理化、数値化し、金融工学として発展し、人間一人ひとりの感情を置いてきぼりにして、疎外していきました。

 今一番、見直さなければならないのは、宇沢弘文(1928〜2014年)が唱えた社会的共通資本です。地球環境も、医療も教育も人類が持つ社会的共通資本です。これらが、金融工学のような功利主義や儲け主義と合うわけがありません。そもそも、環境保護も医療も教育も投下資本に見合った見返りがあるわけがなく、最初から採算が合わないものなのです。

 僕も、毒された欲望資本主義には異議を唱えたい。

 冷静に考えれば、文学も美術も音楽も芸術など表象(シーニュ)に過ぎないのです。ブランドに過ぎないのです。何?ベートーヴェン? 交響曲7番? サントリーホールで、クラウディオ・アバド指揮のベルリン・フィル? そりゃあ何万円しようが、チケットは手に入れなければー。といった調子で、人々はシーニュに踊らされているだけなのです。それが貴方の人生なのですか?と言いたい。

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 僕はね、そんな毒された欲望資本主義には背を向けて、この世に生まれて来たからには、何でも自分でやろうとしてきたんだよ。ピアノとギターを独習して、何十曲も自分で作詞作曲してきたし、下手なりに油絵も水墨画にも挑戦してきた。

 料理も自分なりに工夫して作ってきた。食べられるキノコや雑草まで散々調べたし、美味い野菜を作るために土壌の勉強までしてきた。これもそれも、オーダーメードの、ありきたりの、お膳立てされたものばかりでは飽きたらなかったからなのです。味噌も作ったし、漬物もパンもお手製で作ってきた。

それが人生ってもんじゃないのかい?親や教師や上司がお膳立てした道を歩めば、そりゃ楽だろう。でも、そんな他人が決めた人生をなぞって何が面白いのだろう?

僕はもう若くないし、後戻りはできないけど、自分なりに苦労して切り開いてきた道に関しては、一点の曇りもないほど後悔はしていませんよ。功成り名遂げたわけではないけれど、少なくとも自分は強欲ではなかったし、常に謙虚であることを心掛け、他人を利用したり、踏台にしようとしたことなど一度もありませんでしたから。

そう言うと、彼は、雲の波間に吸い込まれるように消えていきました。

あの人が手ぐすねを引いて返り咲きを狙っているらしい

2021年4月30日 緊急事態宣言下の東京・銀座

 4月29日は、3度目の緊急事態宣言が発令された東京都内で新たな新型コロナ感染者が1027人に上りました。1日の感染者が1000人を突破したのは3カ月ぶりですが、我々はこれから一体、何処に行くのでしょうか?

 とはいっても、昨年4月に初めて緊急事態宣言が発令された時と比べて、緊張感がありませんね。4月28日まで、「越境呑み」なるものが流行ったらしいのです。緊急事態宣言が発令された東京では、居酒屋でさえお酒の提供が自粛されたので、東京人が川を越境して隣りの県の居酒屋に流れ込んだというのです。「せんべろ」(千円呑んでベロベロ)で有名な東京・北区の赤羽で飲めなくなった東京人は、荒川を渡って、縁もゆかりもない隣りの埼玉県川口市へ。東京南部にお住まいの東京人は多摩川を渡って、お隣りの神奈川県川崎市や横浜にまで遠征。東部の東京人は江戸川を渡って、千葉県の船橋市や浦安市や松戸市へなだれ込んで、「お酒を求めて三千里」の旅です。

 こうなれば、各紙も報道しているように、度重なる宣言で「緊張が緩んだ」というより、もう「我慢の限界」てなところでしょうか。(28日以降は、東京近県の都市もお酒提供が自粛になりました)

 私が住む街も民度が高いとはいえず、緊急事態宣言が発令されたわけではないので、駅近くの立ち飲みが多い居酒屋街ではどこの店も満員です。扉を開放しているので、外からでも中が丸見えです。マスクなしで至近距離で大声で話しながら、つばきを飛ばしながら、密集して呑んでいるので、大丈夫かなあ、と思ってしまいます。

 まあ、余計なお世話なんでしょうが、変異ウイルスはかなり強烈で、見くびれないということを肝に銘じておくべきだと思います。インドでは、変異ウイルスで28日に1日の感染者が35万人を超え、死者も3000人を超えたというではありませんか。

銀座 長寿庵 かつ丼1100円 朝、自宅近くで通勤途中、狭い歩道を、自転車で道路交通法違反の右通行で突進して来た女に轢かれそうになりました。民度の低い街です。

 恐ろしいのは、一度新型コロナに罹れば、免疫ができて、一安心かと思っていたら、後遺症がかなり長期にわたり、しかも激しいらしいですね。4月23日付の「日経サイエンス」によると、発症から半年後も6割以上の人が倦怠感と筋力の衰えを感じているといいます。新型コロナによる死亡率は65歳以上の高齢者が圧倒的に多いのですが、後遺症に関しては、軽症と思われていた20代、30代の若年層の方が多いといいます。

 後遺症の症状は、倦怠感の他に、睡眠障害、脱毛、臭覚障害、動悸、関節痛、記憶障害、集中力の低下などです。これではまるで精神疾患と同じです。倦怠感などは外見では分からないので、酷いケースでは、単に「こいつは怠けている」とみなされて、家族からも、会社からも理解されることなく、仕事をクビになる人もいたといいます。

◇我々は何処へ行くのか?

 さて、最初の難問に戻って、我々、この先、何処へ連れていかれるのでしょうか?

 私は占い師でも予言者でもないので、先のことは分かりませんが、最悪のシナリオは、このまま感染が拡大して収束しなければ、東京五輪開催は中止。強引に強行したとしても「無観客試合」で、入場料収入が見込めない大会組織委員会は、大幅な赤字を抱え、国民の皆さま(その前に開催地の都民の皆さま)に赤字補填の御願い。当然、国民の支持を失った菅内閣は総辞職し、あの健康回復した安倍さんが「意欲満々」を取り戻して、再々出馬し、総理大臣に返り咲き。もう勘弁してくれよ~と叫びたくなります。

【追記】

 東京都内は映画館、劇場も閉鎖されてしまったことから、東京にお住まいの会社の同僚は、川崎まで越境して、アカデミー賞作品賞・監督賞受賞の「ノマドランド」を見に行ったらしいです。この作品、私は早めに公開日に見てしまいましたからね。アカデミー賞まで取るとは思いませんでしたが。

映画字幕で楽しく英語のお勉強

富士山 Copyright par Duc de Matsuoqua

  昨日のこのブログで「予想が裏切られた時、深い情報処理が起こる=『英語独習法』」のタイトルで、映画の字幕を活用した英語独習を紹介(というか引用)させて頂きました。

 自分では易しく、つまり分かりやすく書いたつもりだったのですが、皆さま御存知の釈正道老師から早速反応がありまして、「私には難解です。貴兄の原稿は、素人にはチンプンカンプンでした。」とのコメントを頂きました。

 あれえ~?私には大した学も教養もないので、小生のようなレベルの文章は朝飯前のはずです。しかも、釈正道老師は現役時代、誰でも知っている大手マスコミのエリート幹部としてブイブイ言わせた御仁です。難解、なんて言ったら御卒業された福沢先生が泣きますよ。

 その一方で、フェイスブックで繋がっているK氏から「我が意を得たり!」と同感して頂きました。私の嫌いなフェイスブックのサイトでこのブログをお読みの方は10人ぐらいでしょうから、敢て「本文」に再録させて頂きます(笑)。ちなみに、K氏は謙遜されておられますが、東京外国語大学英米語学科を卒業された「英語の達人」です。

(すみません、勝手ながら、引用文は少し加筆、改変してます)

築地「ふじむら」 カキフライとなかおちのハーフ定食1100円

 …「英語独習法」の著者今井むつみ氏の提唱される「映画熟見」は、まさに僕が貧弱な英語力を落とさないよう細々と続けているメソッドとよく似ており、一番効果的と感じるものの一つです❗️何たって、楽しみながら謎解き気分で熱中できるところがいいですね。コロナ禍で、NHK BS や Amazon Prime の名画を楽しむ機会も格段に増えましたが、まさに目からウロコの連続です。

 予期せぬ副産物もあります。例えば、「カサブランカ」のボギーの名セリフとされる「君の瞳に乾杯」Here’s looking at you, kid.は、続けて観た「旅情」では、キャサリン・ヘプバーンが宿屋の女主人、つまり同性から言われており、男女のロマンとは関係ないことが分かりました。(ちなみに、「君に乾杯」は、Here’s to you, とも言うらしい。おお、サイモン&ガーファンクルの「ミセス・ロビンソン」の出だしに出てきますね!=この項、渓流斎)

 また、「マイ・フェア・レディ」でオードリー・ヘプバーンが使うコックニー(英労働者階級が使うとされる英語)には、女性が普通使わない表現や、文法上おかしい表現が混じっていることを発見したりして、とてもここには書き切れません。(中略)貴兄のおかげで、英語へのアプローチで同じような楽しみ方をなさっている方がいるのがよく分かりました。…

 いやはや、勝手に引用されて、K氏も怒っておられるかもしれません。こうして、私もブログで何人もの大切な友人を失って来ました…。「日乗」と銘打っている関係上、ほぼ毎日更新しているため、どうかお許しを。

集団主義と個人主義の日仏異文化論=東京外語仏友会にオンライン参加

イチハツ 一初 Copyright par Keiryusai

 昨日は、大学の同窓会「仏友会」にオンラインZOOMで参加しました。仏友会というのは、「仏教を愛する会」というのではなく、東京外国語大学でフランス語を専攻した卒業生の親睦会です。正式には東京外語仏友会なのですが、戦前の昭和初期に作られたようです。

 私の学生時代は外国語学部だけでしたが、現在は3学部制になっていて、言語文化学部と国際社会学部の中にフランス語専攻があるようです。私の学生時代のフランス語科は60人でしたが、現在でも仏語専攻は60人ぐらいのようです。(半数の30人は必ず留学するそうです)

 東京外大のHPによると、大学の起源は幕末の1857年に開校された「蕃書調所」(西洋の書籍を解読して海外事情を調査)にまで遡ることができます。(東京・九段下に「蕃書調所跡」=竹本図書頭拝領屋敷上地=の碑がありますので、ご興味のある方は是非訪れてみてください。)

 過去の仏語出身者の中には、無政府主義者の大杉栄(1905年中退)、仏文学者でアンドレ・ジッド「狭き門」などの翻訳で知られる山内義雄(1915年卒)、無頼派作家の石川淳(1920年卒)、無頼派詩人の中原中也(1933年選科卒)、詩人でポール・ヴァレリー翻訳家の菱山修三(1909~67年)らがいます。

 私が学生時代に講義を受けた哲学のM教授(東京大学卒)は「外大フランス語の出身者というのは大杉栄とか中原中也ぐらいしかいないだろう?反逆者ばかりで主流派はいねえなあ」と言い放ったことが印象に残っています。確かにそうかもしれませんけど、主流派なんて言っても単なる体制派のことでしょう?人間生まれてきたからには「反抗精神」がなきゃつまらないじゃありませんか(笑)。

エニシダ Copyright par Keiryusai

 ということで、仏友会は変わり者の集まりと見られては困りますし、そんなこと言ったら藤倉会長から怒られますが、一癖ある個性派集団で、今でも大変優秀な人材を社会に輩出しております。上から言われたことを唯々諾々と従うことを良としない人が多いと言えるかもしれません。それなのに、仏友会は(途中戦争等で中断したこともありますが、)100年近くも続いていることは奇跡です。何故なら、同じ大学でも、英米語やロシア語専攻の出身者には同窓会がない、と聞いたことがあるからです。仏語専攻は恵まれています。個人主義ながら、結構、結束が固いのです。

 昨日の仏友会の講演会のゲスト講師は、東京外国語大学のジェローム・ルボワ准教授で、演題は「日仏文化の差異を考える」でした。非常に面白い話でしたが、時間が足りなくて、尻切れトンボのような感じだったので、もっと聴きたかったでした。まさに、今書いてきた個人主義に関する話だったからです。

 話を単純化すると、地理的に、歴史的に、文化的に、日本人は集団主義(ルボワ氏は集団性と表現していましたが)、フランス人は個人主義(同じく個人性)という大きな違いがあるというお話でした。(道理で、フランス語を専攻する日本人は個人主義になってしまうのか、もしくは、集団主義に馴染めず個人主義的傾向が強い日本人だからフランス語を専攻したのか、ということがはっきりしましたよ=笑)

 異文化論として、日本とフランスを比較すると、日本の国土は約37万平方キロメートルで、仏は約57万平方キロメートル。つまり、仏は日本の1.5倍の国土を持つ。それなのに、日本の人口は1億2800万人で、フランス(6500万人)の2倍もある。しかも、日本の国土の3分の2は人が住みにくい山地なので、仏と比べて遥かに人口密度が高い。そして、農耕時代から灌漑や農作業などで集団で「和」重んじて協働しなければならないので、地理的、歴史的、文化的に日本人は集団主義にならざるを得なくなった。一方のフランスは、早いうちから自律を求められることから、個人主義が芽生えていく。そんな話をルボワ准教授は展開していきました。

タチアオイ Copyright par Keiryusai

 ルボワ准教授は、17世紀後半にルイ14世の財務総監だったコルベールによってフランス外交の威信を高めるための外国語学校として創立された超難関校・国立東洋言語学院(INALCO=Institut national des langues et civilisations orientales)で博士号(「古代日本における皇室の女性」)を取得したということで、日本語はペラペラで、自らホワイトボードにスラスラと漢字を書きながら説明しておりました。

 日本とフランスを比較して、どちらが良くてどちらが悪いという話ではないことをルボワ准教授は強調しておりました。何しろ、個人主義のフランスには、同窓会もなければ、運動会も校内クラブ活動も、〇〇式も存在しないし、七五三もなければ、お祭りもないといいます。(ニースのカーニヴァルなどがあるが、あれは神事ではないし、日本のようなお祭りではないとか)

 「仏友会がある皆さんはうらやましい」とルボワ准教授は、しみじみと言いました。

 大変面白かったのは、講演後の質疑応答で、「仏男性と日本人女性が結婚するカップルが多いのに、日本人男性と仏女性の結婚が少ないのは何故だと思いますか」という質問でした。ルボワ准教授は「謎です」と言って、それには直接答えることはできませんでしたが、仏女性が結婚相手に最も重視するの「信頼」、二位が「気遣い」、三位が「ユーモア」。仏男性が結婚相手に最も重視するのは「見た目」(ここで会場から爆笑)、二位が「信頼」、三位「賢さ」という内訳を明らかにしてくれました。

 さらに、フランス語の la famille と日本語の「家族」というのは、別物であることを図示してくれました。日本の場合、両親と子どもがいるのが普通の家族なのですが、フランスの場合、結婚適齢期の半分は未婚で、半分の既婚者のうちその半分は離婚しているといいます。その離婚した者同士が子連れで結婚して、また、離婚したりするケースも多いので日本ほど「家族」は単純ではない、というのです。その典型的な例として、S氏が登場していましたが、このS氏とは、恐らくサルコジ元大統領のことではないか、とZOOMのチャット上で話題になりました(笑)。

【追記】

思い出しました!大学1年生の時、フランス人のデルモン先生から「何故フランス語を専攻したのですか?」と質問され、「フランス人女性と結婚するためです」と答えたことを思い出しました。

勿論、実現しませんでしたけど(笑)。

 

菅政権の政策は後手後手に回っているのでは=3回目の緊急事態宣言を考える

 銀座・熊本館

 本日4月25日(日)から東京、大阪、京都、兵庫の4都府県で3回目の緊急事態宣言a state of emergency が発令されました。

 解せないのは5月11日までのわずか17日間だということです。昨日4月24日の時点で、大阪の感染者数は1097人、東京は876人。ちなみに…

第1回緊急事態宣言 2020年4月7日から5月25日までの49日間(発令日の東京の感染者数は87人だった!)

第2回緊急事態宣言 2021年1月8日から3月21日までの73日間(1月7日の東京の感染者数は2447人!)

 過去2回の緊急事態宣言と比べて、異様に短いことが分かります。変異ウイルスが大量に増えてきたというのに、です。

 今回、わずか17日間というのは、5月17日に国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が来日するので、それまで何としてでも解除しておきたいという政治的忖度が働いたためではないかと噂されていますが、市民の生活よりも、経済との両立よりも、新型コロナ撲滅よりも、「オリンピックを優先させたい」という菅政権の思惑がチラつきます。

銀座・熊本館 1階は物産店ですが、2階には簡単な食堂がありました

 今回の緊急事態宣言でチグハグなことは、東京のよみうりランドや大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンは閉鎖させるというのに、東京ディスニーランド・シーの営業はオッケーよ、という政治的配慮です。ディスニーランド・シーは、普段は頭に「東京」を付けて観光客を煙に巻いておきながら、実際は千葉県浦安市にあることから、「緊急事態宣言地域じゃないもんね」ということで、御注進でもあったのかしら?今、総務省や厚生労働省などではタダ酒接待が流行っていますからね(笑)。遊園地関係の監督官庁は国土交通省なのかしら?(報道では、千葉県からの要請らしいですが)

銀座・熊本館 「天草 海鮮丼」(真鯛漬け丼)1000円

 もう一つは、対象地域の居酒屋では、時短営業どころか、酒類提供を禁止させることです。「お酒のない居酒屋なんて」とコマーシャルに使えそうです。それでいて、コンビニ等では酒類販売はオッケーということで、戸外の公園や路上だけでなく、夜の通勤電車の中で、堂々とビールや酎ハイなどを飲んでいる乗客が多いと聞きます。

 まさに政治家による恣意的、感情的、意図的政策があからさまに見え隠れします。

 個人的には、都内の映画館や劇場や美術館などが休館させられてしまい、ゴールデンウイークなのに行く所がなくなった難民化して、「あんりまあ、どうしてくれるんだよお」てな感じで嘆いているぐらいです。

2020年4月 第1回緊急事態宣言下の東京・銀座

 しかも、連休には、久しぶりに遠出して、鎌倉の寺社仏閣散策を再開して、今回は、建長寺、円覚寺などの禅宗寺巡りでもしようかなと思っていたら、神奈川県の黒岩知事は「神奈川県には遊びに来ないでください!」と、東京都の小池知事の「東京には来ないでください」の真似するぐらいですからね。

 せっかく、神奈川県のために、神奈川県の地で、大量のお金を散財しようかと思ったのに、残念なことでした。

 SNSで写真が投稿されていましたが、緊急事態宣言が発令されていない比較的感染者が少ない県のレストランの中には「他県からのお客様はお断り」の張り紙まで出す始末。「自分の県さえよければそれで良い」という実に分かりやすい日本人的行動ではあ~りませんか。

◇ワクチンの副作用で何人亡くなったのか?

 メディアでは、盛んにワクチン、ワクチンと騒いでいますが、「副反応」と分かりにくい用語を使って目くらませして、副作用で何人の死者が出たかについては積極的に報道してくれません。その前に、国民全員にPCR検査をして感染者を隔離する方が先、の話なのに、今の菅政権の政策は後手後手に回っています。

 まあ、今年のゴールデンウイークも読書三昧で、こうして「嘆き節」を唄ってお終いになりそうです。

 

「仙台藩士幕末世界一周」とhontoのこと

亀戸天神 藤棚 Copyright par Priest Syakushodou

本日は、人様のふんどしをお借りして相撲を取る所存。つまり、写真も文章も勝手ながら、大変優秀な皆様方から引用させていただくことに致します(笑)。

 写真は、最近、悪の道から離れて改心された釈正道老師。大変お忙しい中、上野山の東照宮の牡丹祭と亀戸天神の藤棚の写真を撮影して「寄進」してくださいました。

 文章は、最近、「ドライビング・ヒストリック・アメリカ」(同時代社)を上梓された松岡將氏。以下は、同氏から小生宛の私信メールで、個人情報もありますが、なるべく「素材」を生かして進めていきたいと存じます。(新聞協会の用語集に準拠して漢字に改めた箇所などあります)

上野・東照宮 牡丹祭 Copyright par Priest Syakushodou

 渓流斎様

(前・中略)

 ところで、「ドライビング・ヒストリック・アメリカ」(同時代社)の謹呈先の一人に、生粋の仙台っ子で、小生の東北学院中・高在学時の6年間一緒で、いつも仲良くトップを争そっていた三浦信なる人物(東北大工学部電気通信科から郵政省入りし、ジュネーブ在の国際電波割当委員会=当時=の事務局長などを歴任)がいるのですが、その彼から連絡があって、彼の五代前の祖先、仙台藩士玉蟲左大夫誼茂が、(「ドライビング・ヒストリック・アメリカ」第Ⅵ話にでてくる)ポーハタン号に乗艦してアメリカに行ったということを思い出して電話で教えてくれたのでした(不覚にも小生は寡聞にしてそれまで不存知)。

  早速、調べて見ると、玉蟲左大夫というのは仙台伊達藩の家臣で、その筆力を買われて仙台伊達藩の随員としてポーハタン号に乗って世界一周し、鋭い観察眼による「航米日録」なる長大な日誌を残していました。その後、戊辰戦役の際、奥羽越列藩同盟にあって、主要な役割を果たしたため、明治2年、戊辰戦役敗戦後捕縛され、仙台藩牢中で切腹した人物でした。明治維新後も勝海舟や榎本武揚の如くに存命であったなら、さぞかし“男を上げていたろうに”と思うと、まことに残念であるとともに、仙台藩の戊辰戦役敗戦処理が、明治大正昭和期に至るまで東北地方にもたらしたマイナスに、改めて想いを馳せつつ、ネット上で「うつつなく太守のブログ」玉虫左大夫のこと〜「仙台藩の坂本龍馬」と呼ばれた男の惜しむべき最期」という記事を発見して、彼の墓の所在を突き止め、そのネット上でのお墓参りもやったのでした。

 その後の旧友三浦君との電話連絡や小生の更なる調査で、岩波書店に「航米日録」が所収出版されていることのほか、玉蟲左大夫の残された三人の孫娘が、それぞれ山本、三浦、玉蟲姓を名乗り(明治22年の憲法発布時に玉蟲家のお家再興が許され、その際未婚だった三番目が婿取りをした――その孫が、有名な玉蟲文一)、その山本家の(小生と同じ年代の)玄孫、山本三郎氏が、2010年に、在仙台の「荒蝦夷」社から、「仙台藩士幕末世界一周」なる、玉蟲左大夫の「航米日録」のいわば現代語訳を出版していることを知りました。

 そんなこんなで、三浦君が早速、手持ちの「仙台藩士幕末世界一周」を送ってくれ、現在、手許でパラ見していますが、500ページにも及ぶ立派な本であり、玉蟲左大夫の玄孫である著者の山本三郎氏の心意気を、改めて感じています。なお、数年前に亡くなられた彼は、小生の二期下の東北大法学部卒で東北放送の出身。どうやら、最晩年をもっぱら仙台で、「仙台藩士幕末世界一周」の執筆、出版、普及に充てたようです。

 小生にあっては、たまたま、ポカホンタスとの関連から、ポーハタン号に言及していたのだが、それが、今回のような“出逢い”となって、三浦信君ともども「お互い長生きした結果だ」と喜び合っています。

 そんな次第であるので、もし貴兄が、山本三郎著「仙台藩士幕末世界一周」(2010年、荒蝦夷)を未読であれば、(2300円+税という安価でもあり)騙されたと思って是非ご購入の上、あちこちチラ見して、「たった一世紀半前の日本とアメリカ」とに、想いを馳せて下さい。

敬具

亀戸天神 藤棚 Copyright par Priest Syakushodou

 如何ですか?このようなメールを頂けば、「仙台藩士幕末世界一周」を購入したくなりますよね。もう10年以上昔の本ですから、本屋さんにあるかどうか…。手始めに、いつも私が利用している楽天の通販で検索してみました。

 残念ながらヒットしませんでした。

 仕方がないので、アマゾンで検索してみました。(仕方ない、というのは、別にベゾスさんとお友達でもないし、会ったこともないからです)すると、3389円+送料257円でした。あれっ?松岡氏の話では、2300円+税という話じゃなかったでしたっけ?

 よく見たら、中古本でした。それが一番安く、一番高いものは1万円以上もしました。新品も一番安くて6640円です。あれ?話が違う。。。稀覯本になってしまったのか?ちょっと、手が出ませんね。

 諦めかけていたところ、hontoという本専門の通販サイトが見つかりました(後で分かったのは、これは大日本印刷が運営するオンライン書店でした!)ここでは「仙台藩士幕末世界一周」は税込み2310円(他に送料等440円)で売っておりました。

 これなら話が合うので、早速、会員登録して購入することにしました。このhontoというサイトはなかなか優れもので、色々検索すると、欲しい本の在庫がある全国の書店まで紹介してくれます。hontoから宣伝費を貰っているわけではありませんが(笑)、もし、御存知でなかった方にはお勧めです。

山本悦夫氏が小説「ホーニドハウス」を出版へ

モッコウバラ 木香薔薇 Copyright par Keiryusai

 皆さま御存知の山本悦夫氏が自ら立ち上げた出版社「(株)インターナショナルセイア」から、5月中旬に「ホーニドハウス」という小説を出される予定で、日販、東販、栗田書店などの取次を介して全国書店に配布し、5万部の販売計画を立てている、というニュースが飛び込んできました。

 第一感想は「凄いなあ」の一言です。山本氏には既に「インドに行こう」(インターナショナルセイア)や「蛇とニーチェ」(創英社)などの著書があり、個人情報ながら(ネット上でも公開されておりますので)敢て触れますが、1934年生まれで今年87歳です。その無尽蔵のヴァイタリティには感服するしかありません。

 山本氏とは「おつな寿司セミナー」を通じて30年程前に面識を得て、東京都内の一等地の御自宅に何度かお邪魔したことがありますが、民芸輸入商社の社長さんということぐらいしか知りませんでした。20年程前に、1995年から8年7カ月、内閣官房副長官を務めた(歴代最長)古川貞二郎氏とは九州大学時代の無二の親友だということを初めて知り、長崎の御出身だと思っていたら、10年程前に、生まれも育ちも台湾の台北(戦前の日本領時代)だったということを初めて知りました。

 今回初めて知ったのは、山本氏が九州大学を卒業して上京して就職したのが、学陽書房という行政、法律、実用書関係が中心の出版社だったということでした。今でこそ有名ですが、当時、同社は、東京・雑司ヶ谷の菊池寛邸にあった小さな出版社で、山本氏は、その出版社の顧問をしていた藤沢閑二さんから我が子のように親身になって可愛がられたそうです。その藤沢氏は、菊池寛の遠縁に当たり、ご夫人の瑠美子さんは菊池寛の長女だったという関係で、戦前は、文芸春秋の専務として創業者の義父菊池寛を助けた人でした。

 山本氏が出版社に就職したのも、少年時代からの夢だった小説家になることがあったからだったようです。

 山本氏がこれまで上梓された本は主に研究書、ノンフィクションでしたので、今回の小説は、70数年目にして少年時代の夢を実現したことになります。

 小説「ホーニドハウス」の「前書き」に「この物語は、一九六五年のアメリカのディープサウス(深南部)が舞台である。この年、アメリカによるベトナムの北爆が始まり、夏には米国北部の大都市を中心とする『長く暑い夏』と呼ばれる黒人の暴動が荒れ狂った。 主人公、太郎は、ジョージアの境界に近い北部フロリダの小さな町の大学に通っていた。」とあります。山本氏自身も米フロリダ大学経済学部大学院に留学した経験があるので、主人公の太郎は山本氏自身がモデルになっているのかもしれません。

 「文学しているなあ」というのが第二の感想です。何と言っても途中で諦めないところが凄いです。長年、文芸同人誌「四人」(105号刊行予定)を発行し続けて来たことだけでも、その凄さを証明できます。

 先日亡くなった気象予報士の富沢勝氏も、この同人誌「四人」の同人だったことから、山本氏が最初に富沢氏の訃報を知り、関係者に連絡して頂いたという話も聞きました。

 結局、文学も人生も、人との繋がりが肝要だということになります。

【追記】記事表紙の写真の花の名前は、いつもながら碩学Y氏による御教授の賜物です。有難う御座いました。

渋沢栄一 守屋淳訳「現代語訳 論語と算盤」を読む

 雪の大谷 Copyright par Syakuseidou

 悪の道に走りかけた釈正道老師が心を入れ替えたらしく、彼から急に写真が送られてきました。キャプションは

天気には恵まれました。雪の大谷、今年は積雪量は14メートルとかで。多くは無いのかな。山の写真は剣岳などです。

 これだけです。

 またもや暗号です。場所は何処なのか?このコロナ禍で、緊急事態宣言が出掛かっているこの非常時に、まさか旅行にでも行かれたわけではないはず…。私が調べたところ、「雪の大谷」とは富山県の有名な観光スポットらしい。ということは、わざわざこの時期に東京からベンツにでも御乗車されて旅行ですかあ!?

剱岳 Copyright par Syakuseidou

 しかも、肝心の剱岳と思われる写真は、この通りピンボケです。(バランスも悪い。)こんな芸術作品を撮影できるのは、ロバート・キャパと釈正道老師以外考えられませんね(笑)。

 さて、今年(2021年)、NHK大河ドラマ「青天を衝け」が放送されていることから、主人公渋沢栄一が、この1年間、あらゆる媒体で引っ張りだこです。他の民放テレビで特集番組が放送されたり、雑誌で特集記事が組まれたりしています。嗚呼、NHK畏るべしです。

 私も本屋さんに行ったら、この渋沢の代表作「論語と算盤」(ちくま新書)が山積みになっていたので、思わず買ってしまいました。現代語訳ということで、類書の中で最も売れているらしく(新書売り上げナンバーワン)、私が先月買った時は42万部でしたが、4月17日の時点で既に60万部を超えているようでした。年内に100万部いくかもしれません。

 それだけ、読み易い本でした(いつぞや、このブログに書いた通り、他に読む本があって、しばらく「つん読」状態でしたが)。同書はもともと講演会の速記録を文字で起こしたもので、大正5年(1916年)に東亜堂書房から発行されました。ちょっと、ふと思ったのですが、「現代語訳」ということですから、速記録は文語文ということなのでしょう。でも、渋沢翁は、講演会でも文語調で講演していたということなんでしょうか?まあ、どちらでもいい話ですが。

雪の大谷 Copyright par Syakuseidou

 「論語と算盤」は、乱暴に一言で要約してしまうと、一見、人としての倫理観を説く「論語」と、金儲けの「算盤」とは矛盾するようだが、そんなことはない。商売するにしても、自分さえ良ければ良い、とか自分だけが儲かればそれで良いという考えでは商業資本主義は発達しないし、結局、損することになる。論語が説く倫理観が絶対に必要だ、といったところでしょうか。

 青年期に幕末、維新の激動時代を生き抜き、フランスへ徳川昭武の随行員に選ばれて、最先端の資本主義を見聞して、帰国後に500近い企業を起こした渋沢栄一だけに、確かに説得力があります。渋沢は1840年生まれですから、この本が出版された時は76歳ぐらいですか。功成り名を遂げた名士として、社会福祉活動にも力を入れていた時期です。渋沢栄一の思想哲学が凝縮され、「こういう考え方の人だったからこそ、大きな仕事を成し遂げることができ、偉人とも巨人とも言われたんだなあ」とよーく分かります。

 でも、はっきり言って、「成功物語」なので、誰もが渋沢栄一になれるわけではないので、この本を読めば出世できる、とか金持ちになれるなどと誤解しない方が良いです(笑)。

 渋沢もこう言ってます。

 世間には、冷酷無情で全く誠意がなく、行動も奇をてらって不真面目な人が、かえって世間から信用され、成功の栄冠に輝くことがある。これとは反対にくそ真面目で誠意にあつく、良心的で思いやりに溢れた人が、かえって世間からのけ者にされ、落ちこぼれとなる場合も少なくない。(75ページ)

 この一節を読んだだけでも、渋沢栄一という人は、人間観察に鋭敏な人だったことがよく分かります。

 落ちこぼれで、失敗と挫折ばかりしてきた私自身も、渋沢の説くこの後者だったので、よーく分かり過ぎるくらい分かるのです。

 【追記】「歴史人」によると、日本史上「子だくさん」の第1位は、本願寺の中興の祖、蓮如で男子13人、女子14人の計27人でしたが、渋沢栄一の場合、二人の正妻以外に妾や愛人もたくさんいて、同書によると、庶子を含めて30人の子どもをなしたといいます(50~100人の説も)。となると、蓮如さまどころではなく、明らかに渋沢栄一こそが、日本一の艶福家となりますね。(そう言えば、十一代将軍徳川家斉は、大奥制度もあり、53人の子をなしたといいます)

 東京・王子飛鳥山にある「渋沢栄一記念館」に行くと、展示パネルに、今も活躍する企業や子孫の系図も出てきて、どこまで行っても「渋沢栄一」の名前があらゆるところに出てくるので眩暈を覚えたことがありました。

ヒスパニックか?エイジアンか?=それが問題だ

銀座・ひょうたん屋 Copyright par Keiryusai

  この話は、都内で語学学校を経営されていると思われる中村治氏にとってご参考になる話かもしれません。いきなり、御指名されて、さぞかし驚かれていることでしょうが(笑)。

 英語の話です。

  先月4日に、「杉田敏先生のラジオ講座『実践ビジネス英語』が今月で終わってしまうとは!=33年で幕」という記事を書きましたが、この中で書いた通り、「杉田ロス」にはなりたくないので、商魂たくましいNHK出版が発行する季刊ムック「杉田敏の現代ビジネス英語」を聴き始めました。ラジオ放送はなく、スマホにアプリをダウンロードして聴く方式です。 

 今のところ、公私ともに多忙で、なかなか聴く時間が取れないのですが、レッスン1の「The Power of Diversity 多様性の力」は、なかなか考えさせられる濃い内容でした。

 移民の国アメリカですから、米国には多様な人種の人が住んでいます。現在は、白人系が大半を占めていますが、2045年には、ヒスパニックや黒人(アフリカン・アメリカン)、アジア系などのマイノリティ(少数派)が人口比で白人を上回り(もしくは白人が50%を切り)、minority majority(マイノリティ多数派)の時代になるというのです。

 テキストの物語は、ニューヨークに本社を置く世界的な消費財メーカーを舞台に、日本人の主人公・井出恭平が米国に渡り、Diversity Marketingチームに配属されるところから始まります。チームのトップは、ユダヤ系のジェーン・ローゼンバーグ、同僚に、ヒスパニックやネイティブ・アメリカンのチェロキー系やレバノン系らがいてダイバーシティに富みます。

銀座・ひょうたん屋 鰻丼(昼のみ)1850円 Copyright par Keiryusai

 さて、このレッスン1の中で、ヒスパニックの話が出てきました。文字通りスペイン語を話す人という意味で、中南米系の人たちを指します。他にLatino(ラテンアメリカ人=男性)とかLatina(女性)という場合もありますが、男性女性関係なくジェンダーフリーでLatinx(ラティネックス)という言い方があることをこのテキストで初めて知りました。

銀座・みゆき館 Copyright par Keiryusai

 また、さて、なのですが、このことについて語学学校の講師を務めるウンベルト君に聞いてみました。彼はロサンゼルス生まれ、育ちの米国人ですが、メキシコ系です。両親が20代の時に、メキシコからロサンゼルスに移住して来ました。ちなみに、この両親の出身地は、ロックバンド「サンタナ」のカルロス・サンタナと同じメキシコ・ハリスコ州アウトラン・デ・ナヴァロです。今でも彼の祖母ら親戚がそこに住んでいるそうです。となると、彼は「ヒスパニック」の典型ですね。家庭内ではスペイン語が使われていたといいますから。

 そこで彼に聞いてみました。「あなたはヒスパニックで、ラティーノですか?それとも、ラティネックスと言われた方がいいですか?」

 彼は、浮かない顔で、しばし考えた後、「うーん、ラティネックスって聞いたことないですねえ。日本に来てもう5年になるから…。今向こうで使われているかもしれないけど…」と正直に答えました。そして、またしばらく間を置いて、

「うーん、ヒスパニックもラティーノもねえ…間違いじゃないし、問題ないんですけど…。そうだ、やはり、メキシカン・アメリカンが一番だ」と言うではありませんか。

 今度は、こちらが考える番です。「それが一番良いの?」

 すると、彼は「もし、エイジアンと言われてどう思いますか?インド系も中国系も韓国系も皆、エイジアンです。やはり、自分はジャパニーズ(日系)・アメリカンと言われた方がすっきりしませんか?」

 なあるほど、凄い明解ですっきりしました。つまり、エイジアンやヒスパニックではあまりにも範囲が広すぎるのです。

銀座・みゆき館 モンブランとコーヒー 1265円 ランチとデザートで3000円超えてしまった!

 テキストでは、黒人のことを、Black Americanまたは African American という他に、BIPOC(blackIndigenous and people of color)と呼ぶようになったというので、このことも彼に聞いたら、「BIPOC? うーん、知らない。聞いたことないですねえ」とまた正直に答えました。このテキストを創作した杉田敏先生は、毎日欠かさず、ウォールストリート・ジャーナルとニューヨーク・タイムズとザ・ガーディアンの3紙には目を通しているといいますから、ジャーナリズムの最先端に出てくるフレーズや言葉には精通しています。まあ、ネイティブ以上と言えます。逆に新聞を読まない世代は、米国人でも異国に住めば最新用語を知らないのかもしれません。

 この後、私も色々と考えて、「黒人の人も、ヒスパニックの例と同じように、アフリカン・アメリカンと言われるよりも、ケニアン・アメリカンとか、タンザニアン・アメリカンとか言われる方が嬉しいかもしれないね」と言うと、彼も「そうですね。その通りかもしれませんね」と相槌を打つのでした。

 テキストだけでは絶対に分からない微妙なこと(ニュアンス)まで学べた、というお話でした。

 

山形は堅かった=銀座食べ歩き「山形田」の肉蕎麦

  いつの間にか、「銀座食べ歩き」ブログの様相を呈してきましたが、恥じ入ることなく、正々堂々と真っ向勝負していきましょう(笑)。

 職場の同僚O君は、席が隣り同士なので、プライベートなことまでよく話をします。今日は、彼の義兄さんの話でしたが、その方が亡くなられたという話を聞いて吃驚してしまいました。一昨日、その方の話を初めて聞いたばかりだったからです。

 義兄さんは、普段は健康そのもので、病気一つしたことがなかったのですが、半年前に急に胆石が見つかり、手術をしなければならなくなり、入院したら、他にも悪い箇所が見つかり、結構長い間入院されていたようです。そして、医者が宣告した通り、半年後の昨日、急死されたというのです。行年67歳だと聞いています。

 60代だと病気の進行は早いし、「あっけなかった」とO君も言っていました。

 まだ、元気だった半年前。O君は偶然、その義兄さんと銀座でバッタリ会ったというのです。どうやら、胆石の手術をしなければならないことをその時初めて聞いて、吃驚したといいます。義兄さんは、御徒町で長年続く宝石店の二代目だったらしいので、銀座に出てくることは滅多にないのですが、何かの用事があったらしいのです。

 その時に教えてもらったのが、この「山形田」というお蕎麦屋さんです。「美味いから一度行ってみたら」と言われて、その日は別れたそうです。後日、出かけたそうですが、彼も美味かったというので、本日、私も行くことにしたのでした。

 場所は松屋デパートの裏手、王子製紙本社ビルの近くにありました。何しろ、とても古いビルの地下にあり、表の看板も目立たないので、「口コミ」がなければ、通り過ぎて、絶対に行かないような店でした。

 それでも、狭い店内の壁には有名人らしきサイン色紙がいっぱい飾られていたので、知る人ぞ知る、通が集まる有名店なのでしょう。

 私は、この店で人気一番で、地元では「肉そば」と呼んでいる「蔵王冷やし地鶏そば」960円を迷わず注文しました。

 最近、戦国武将に凝ってしまったせいか、山形といえば、すぐに、初代山形藩主も務めた最上義光を思い浮かべます。この蕎麦は、最上義光も食べたのかなあ、と想像しながら食してみました。

 そしたら、吃驚(いつもビックリしていますねえ)、お蕎麦が太くてゴムのように堅い!―なんて書いてはいけませんね。実にコシがあって、噛み応え十分だった、と正確に書かなければいけません。そうでなければ、また、あの釈正道老師から「大間違い。他人のミスに気が付くのは超キモチイイー」などという投書が来るかもしれませんからね。

 出汁に何を使っているのか分かりませんが、スープがまろやかでとても美味しかったでした。リピーターが多いはずです。

 再び、「最上義光もこういうお蕎麦を食べていたのかなあ」と感嘆、感服することしきりでした。