人類は疫病との闘いの歴史だった

 ブログを毎日書き続けていくことは結構大変なもので、昨日は予告もなく休んでしまいました。強烈なネタがないのと、金曜日なので、毎日都心まで出勤している疲れが出てしまったからでした。勿論、「こんなことをブログで書いたらヤバイ」という自己検閲もあったことも告白しておきます(笑)。

 一昨日のように、篤信家の入江さんが写真を送ってくださったように、読者の皆さんからネタを提供してくだされば助かるんですけどね…。大歓迎です。えっ? 渓流斎から下手にいじられたくない?

 ハハハハ、これは一本取られました(笑)。

ネタ探しに苦しむリーリー Copyright par Syakusyodou

 新型コロナウイルスの感染拡大は止まりません。緊急事態宣言が発令された今年4月より感染者や重症者は遥かに多いのに、菅義偉首相は、相変わらず、「Go to キャンペーン」の一時中断など、「考えていない」とか。

 政府の感染症対策分科会(尾身茂会長)が、キャンペーンの一時停止を全会一致で求めても、菅さんは聞く耳を持たないんですからね。日本学術会議で、気に入らない学者の任命を拒否するぐらいですから、根本的に学者の言うことは聞かない人なのかもしれません。あ、これは、昨日は自己検閲して書かないことにしたことでした(苦笑)。

銀座日向

 さて、私は歴史好きですから、歴史に学ぶことが多いです。今、現代人は世界的に新型コロナの「流行り病」に悩まされていますが、人類の歴史は、まさに、こういった「流行り病」との闘いと言っても過言ではないかもしれません。

 例えば、大宝律令を編纂し、「日本書紀」を編纂した中心人物で、まさに日本の古代をつくった藤原不比等。その子息である藤原四兄弟(武智麻呂、房前、宇合、麻呂)は、奈良天平時代、政権の中枢にいながら全員、当時の流行り病で亡くなってしまいます。史料に明記されていませんが、死因は天然痘だったと言われます。

 平安時代の陰陽師、安倍晴明が一条天皇や藤原道長らに重用されるようになったのは、疫病を退治する呪術師として活用されたことがきっかけらしいのです。疫病とは、赤痢や咳逆(がいぎゃく)と言われた今のインフルエンザが多かったようです。

 いずれも、古代に電子顕微鏡があるわけがなく、疫病は目に見えないものですから、当時の人は、訳も分からず、予防法も分からず、マスクもなく、恐れ慄くばかりだったと思います。となると、何とかして疫病の正体を具現化したいと思うのが人の常です。その一つが「鬼」だったというのです。

 先日、テレビの番組で、京都府北部の大江山の鬼退治伝説を特集していました。室町時代に成立したと言われるこの物語は、飛鳥時代、聖徳太子の弟に当たる麿子親王による鬼退治や平安時代中期の武将源頼光による鬼の王・酒呑童子討伐といった伝説が出てきましたが、これら鬼とはどうやら疫病のメタファー(隠喩)だったというのです。これには「へー、そうでしたか」と感心してしまいました。ある寺院では、鬼退治の絵を「秘画」として、御開帳の時に、説教しながら信者や檀家や門徒らに見せて、喜捨も募ったという話もやっていたので、「さすが」と唸ってしまいました。

福井名物 焼きサバ棒寿司御膳 980円 こりゃあ旨い

 話は凄く飛びますが、インドには身分制度であるカースト制度があります。私自身、仏教思想に興味があるので、ちょっとこのカースト制度を調べてみたら、カーストというのはポルトガル語のカスト(身分)から来た言葉で、インドではヴァルナ(四種姓)と言うんですね。

 この四種のヴァルナは、皆さん御存知のように、バラモン=婆羅門(司祭、支配者階級)、クシャトリヤ=刹帝利(せつていり=武士、貴族階級)、ヴァイシャ=吠舎(農民、職人、庶民階級)、シュードラ=首陀羅(隷属民階級)のことです。さらに、この下に不可触民階級があります。現在のインド憲法ではカースト制度による差別は禁止されていますが、制度そのものが廃止されたわけではなく、いまだにインド社会ではその影響が根強く残っています。

 カースト制度は、紀元前1500年ごろ、アーリヤ人による侵略により南部のドラヴィダ人(インダス文明を築いたと言われる。現代はタミール人がその子孫とも言われている)を征服したことにより始まったといわれます。アーリア人が唱えたバラモン教(古代ヒンドゥー教)により、征服民であるアーリア人が上位3位のバラモン、クシャトリヤ、ヴァイシャを独占し、ドラヴィダ人は奴隷のシュードラ階級に甘んじさせられたわけです。

 このカーストの身分制度に異議を唱えて、平等主義の宗教を確立したのが紀元前500年頃の釈迦(王侯のクシャトリヤだったという)の仏教ですが、インドではどういうわけか、仏教は衰退してしまいます。今のインドはカースト制度を色濃く残したヒンドゥー教信者が多数を占めています。仏教復活を願って信者も増えていますが、彼らはかつて、シュードラや不可触民と呼ばれた人たちが多いといいます。

 とにかく、紀元前1500年のアーリア人が何で身分制度をつくったのか長らく疑問を持っていましたが、どうやらこれも疫病と関係しているらしいのです。この疫病はコレラなどの風土病だと思われますが、ドラヴィダ人には既に免疫を持っていましたが、征服者のアーリア人には免疫がなく多くの人が死んでいきました。そこで、支配者が、被征服民との接触を極力避けるために身分制度をつくったという説があるというのです。

 これまた疫病と関係があるとは、「へー」と思ってしまいました。

75歳以上の医療費負担の引き上げの舞台裏?まさか…

九品仏 浄真寺 Copyright par Syakusyoudou

渓流斎ブログの熱烈な読者と思われる東京にお住まいの入江さんから、どういうわけか写真が送られてきました。

上野動物園 Copyright par Syakusyoudou

 「ネタが生まれない渓流斎をイメージしました。ちょっとピンぼけですが、苦しむ上野動物園のカバのジロー。ネタを欲しがる渓流斎です」

 「さん」ぐらい付けなさい!

 でも、その通り、ネタ探しで毎日苦しんでおります。送って頂いた写真には、紅葉あり、五重塔ありで、まるで節操がない不統一感…。「どーせー、ちゅうねん?」と下手な関西弁が飛び出てきました。

 仕方がないので、久しぶりに本日は空想小説を書くことにしました。

尾山台の伝乗寺 Copyright par Syakusyoudou

 時は元禄…じゃなかった、時は令和二年師走九日午後六時十九分。場所は、江戸・紀尾井町の巨大旅籠屋「ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町」。屋内の高級料亭「WASHOKU 蒼天 SOUTEN」のことでござった。

 主賓は、秋田は佐竹藩の国家老・菅野主膳。その相手は水戸藩出身の信濃町奉行・長州夏之進治部少輔。

 菅野主膳 さては、調整が難航している75歳以上の医療費負担の引き上げについてじゃがのお。儂は「年収170万円以上」にすべきだと思うが、如何か?

 長州夏之進 いえいえ、御家老殿、それでは対象が広過ぎまする。せめて「年収240万円以上」にすべきかと…。

 菅野主膳 うむ、民百姓のため、それぐらいにする案もあるようじゃが、それでは負担が掛かる若者層に示しがつかないのではないのか? それにしても、この鯛のカルパッチョは実に美味やのお。

 長州夏之進 いえいえ、御家老殿、ここは和食屋なので、カルパッチョではござらん。焼き鯛のとろろ風味やまいものきんぴら添えかと存じます。愚生は水戸藩出身ながら、名前の長州から、酒は獺祭を御用意させて頂きました。

 菅野主膳 いつもながら、おぬしの手筈は江戸一じゃのお。むはっはっはは…

 長州夏之進 いえいえ、御家老殿、そこでで御座います、令和4年度から75歳以上の医療費負担を1割から2割に引き上げることについてで御座いまするが、御家老が主張される「年収170万円以上」と愚生が主張する「年収240万円以上」の間を取って、「年収200万円以上」としたら如何でしょうか?これなら、若者層からも文句は出ますまい…とかように存じます。

菅野主膳 むふふふ、間を取ったか…間男らしい。治部少輔、おぬしも悪やのお…むふふふ

長州夏之進 いえいえ、御家老こそ…隅に置けませぬ…さっささ、盃を開けてくだされ…

菅野主膳 おっ? これは一本取られたわいな…むはっはっはは…

九品仏 浄真寺 Copyright par Syakusyoudou

 めでたし、めでたし。

 嗚呼、それにしても入江さんから送って頂いた写真と文章との関連性が全くなく、節操もない、統一感もないお話になってしまいました。

 最後の紅葉の写真のアングルといい、中途半端に写っている若い女性といい、撮影者のセンスが光っています。

上野動物園 Copyright par Syakusyoudou

これも何だかよく分かりません。

 渓流斎ブログの文章は読まず、写真しか見ない方もいらっしゃるようですから、写真で大いに楽しんでくだされ。

 また、書くネタに苦しんだ時、これらの写真を使わせて頂きます。

新型コロナ第三波を考える=でもキムラヤのビーフシチューは美味でお得感

 釈正道と称する立派な在家の読者の方から「読みたくも無い長文の記事を拝見しておりますが、関心が高いのは、美味そうなランチの写真の方です。店名と値段を忘れずにキャプションに書いて下さい。上から目線のコメントに怒ってはいけません。修行が足りない証拠です」との”脅迫状”が届きました。

 サイコパスの方かもしれないので、無視するわけにもいかず、「努力目標と致します」と返事を認めておこうかと思っています。

 でも、小生が伝えたいのは長文の記事の方です。昨日12月8日に書いた記事「凶悪犯も詐欺師も冒険家もジャーナリストもサイコパス?=物事には両面あり」も、読み返す方は一人もいないでしょうが、見出しも含めて、5回も書き直したり、追加したりしました。記事には終わりがないのです。「ああ書けばよかった」「こう書き直した方が良かった」とキリがないので、その辺りを斟酌して頂いて、見るだけでなく、読んで頂ければ幸甚です。。。

銀座 キムラヤ 3階「洋食グリル」では憧れの窓際の席を確保してくれました

 いつものように前触れが長くなりましたが、新型コロナは第三波が襲来していることは間違いないでしょう。12月8日の時点で全国で2171人が感染し、このうち、人工呼吸器や集中治療室での治療を受けるなどしている重症者は、過去最多の536人だそうです。ここ数日、医療関係者から「医療崩壊の危機」が叫ばれてますが、政府は「GO to トラベル」も「Go to イート」もキャンペーンを中断する気配が一向にありません。

 何故なんでしょうか?東大などの研究チームも「Go To トラベル」の利用者の方が、利用しなかった人よりも多く新型コロナ感染を疑わせる症状があったとの調査結果を7日に公表して、関連性を裏付けたではありませんか。

 「GO to トラベル」を続けるのは、「自民党の二階俊博幹事長が全国旅行業協会の会長を務めているから」、「GO to イート」の方は、「菅義偉首相とぐるなびの滝久雄会長が昵懇の仲で、菅首相の政治団体にぐるなびが献金してくれるから」と明確に答えてくれれば、国民も納得できますが、国会答弁でも官僚の作文を朗読することが大好きな菅首相は、記者会見で「二階幹事長が特別ということじゃなくて」と応えるにとどまっています。

 このブログで私がいくら「いかがなものか」と叫んでも所詮、犬の遠吠えですから、無気力感に苛まれます。

銀座「キムラヤ」3階「洋食グリル」のビーフシチュー 2100円

  そこで気分を変えて、ランチは思い切って、東京・銀座「キムラヤ」のビーフシチューにしました。

 普段食するランチの2倍ぐらいの値段でしたが、先日、銀座の魚金さんでポイント貯めて、タダでランチさせてもらったので、これで清算されることになりますから、渓流斎財閥はビクともしません(笑)。

 銀座には美味しいビーフシチューが沢山あります。まだ行ったことがありませんが、昭和30年創業の専門店「銀の塔」は、シチューのランチは2650円、昭和16年創業の老舗・資生堂パーラーのビーフシチューは3700円。その点、キムラヤは2100円と価格も手ごろです。

貧乏人根性丸出しだあぁぁぁぁ

 しかも、キムラヤはパン屋さんですから、ランチのパンは食べ放題!

 ということで、貧乏人根性を発揮して沢山、取ってしまいました。しかも、また、給仕してくださる方が「お代わり」で回ってきました。さすがに三度目に回ってきた時、「もう十分です」とお断りしました。でも、明治2年創業の洋パンの老舗中の老舗・木村屋(家)。色んな種類が食べられ、全部美味しかった。

 どうです。この経済性(笑)。

 あれ? でも、これ、もしかしたら、釈正道さんの罠にハマってしまったのかもしれません。「場所」と「価格」もしっかり書き、そのお得感まで書いてしまいました。

 渓流斎ブログの愛読家でもあると勝手に想像している釈正道猊下、こんなとこでよかとですか?

 

凶悪犯も詐欺師も冒険家もジャーナリストもサイコパス?=物事には両面あり

  現代人の悩みの8割は人間関係だと思っています。

 「ウチのポチが言うこと聞いてくれないの」という有閑マダム(死語)もいらっしゃるかもしれませんが、大抵は「ウチの嫁が寄り付かず孫の顔も見られないの」とか、「先生が依怙贔屓する」とか、「マコトさんの気持ちが分からなくなった」なぞといった類のものが多いことでしょう。

 私も現代人ですから、御多分に漏れず、似たようなものです。恐らく、仕事の関係で、有名無名に関わらず、普通の人よりちょっと多くの人と会ってきましたが、本当に色んな人を見てきました。まあ、ほとんが信頼が置ける真面目そうな人でしたが、中には、他人を出し抜いて自分の手柄にして出世しようとする人、平気で嘘をつく人、約束を守らず適当な人、自己中心的で人を支配しようとする人、仕事をさぼって楽して金を稼ごうとする人…等々もいました。いわゆる、とんでもない奴、困った人たちです。

 直接関わらなくても、大嘘をついても平気な政治家、自分の快楽のために何人もの若い女性を誘惑して殺害してしまう人、か弱い老人を騙してオレオレ詐欺を働く輩、狂気的な連続殺人をする犯罪者らは毎日のようにニュースで見聞きさせられます。

 こういう人達には罪悪感がないのか? 良心の呵責も、自責の念もないのか? 自己嫌悪にもなったこともないのか? そういう思いと疑念を抱きながら何十年も過ごしてきましたが、中野信子著「サイコパス」(文春新書、2016年11月初版)を読んで色々と腑に落ちました。4年前に出た本ですが、さほど古びず、読み終わってしまうのが惜しいほど面白くてたまりませんでした。

 中野氏は脳科学者ですから、こういった罪悪感のないサイコパスは、脳の扁桃体(人間の快・不快や恐怖などの情動を決める場所)の活動が低く、物事を長期的な視野に立って計算して、様々な衝動にブレーキをかける前頭前皮質との結びつきが弱いことなどを指摘しています。科学的なエビデンス(この言葉、個人的に嫌いだなあ)を言われると納得できますね。

 また、サイコパスには脳科学者らが唱える遺伝説と教育学者や社会学者らが唱える環境による後天説(こちらは、サイコパスと言うよりソシオパスと言うらしい)があるらしいのですが、私自身は両方の要素が複雑に絡み合っているんじゃないかなと思います。

  とにかく、サイコパスには凶悪犯罪者とか詐欺師といったマイナスのイメージが強いのですが、実は社会的に成功した経営者とか、外科医や冒険家、開拓者、そしてマスコミ(これは実に分かる!)に多いとも言われてます。不快や恐怖感を味わうことが少ないので大胆なことができるということなのでしょう。サイコパスは100人に1人の確率でいるということですが、本来なら、人を出し抜いたり、犯罪を犯したりする輩は淘汰されるはずですが、生物学的に1%の確率で生き残っているという事実は、それだけ存在意義があるということなのでしょう。中野氏はサイコパスと思われる人物として、織田信長や毛沢東、アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズ、月面着陸に成功したアポロ11号のアームストロング船長らを挙げていました。

 このように物事にはプラスとマイナス面、ポジティブとネガティブな部分があるということなのでしょう。

Kyoto

 私はどちらかと言えば、物事を悲観的に考えがちで、不快や不安や恐怖を感じやすいタイプなのですが(ということはサイコパスではなく、ジャーナリスト失格か?)、中野氏によると、不安感というものは、先を見通す力、将来を考える力があるからこそ芽生えるといいます。逆にサイコパスの人たちは、不安感が少ないのであまり先のことは考えず、浮ついた気持ちで刹那的な快楽を求め、ブレーキが効かないので反社会的な行動を取りがちだというのです。

 これは、実に目から鱗が落ちるような話でしたね。私自身は、いつも自責の念に駆られたり、自己嫌悪に陥ったりしますが、「失敗を繰り返さない学習能力がある」「おかげで反社会的な行動はしない」などとポジティブに思い込んだ方が良さそうです。

 久しぶりに示唆に富む良い本を読ませて頂きました。

 

「ティファニーで朝食を」ではなく、銀座でただのランチを

 またまたレベルが低い(?)話で申し訳ないのですが、ついに、東京・銀座でただのランチを食しました。

 本当です。

 別に慈善事業でも、不法行為でも不正行為でも何でもないのです。判子を押してもらうポイントが10個貯まったので、「ランチ1食プレゼント」ということで、正当にその恩恵に預かったのでした。

 お店は、以前このブログでもご紹介させて頂いた「500円ランチ」の魚金さんです。さすがに10回通い詰めると飽きてしまいました(笑)が、ごめんなさい、プレゼント・ランチは一番高い「マグロのレア・カツ定食」1300円(通常1500円を開店記念キャンペーン)を注文しました。

 前回、10ポイント溜まった時に、お店の人に聞いたら、「ええ、次回は無料ですよ。一番高いのを、大盛で注文してくださいね」と逆に発破をかけられてしまいましたからね(笑)。「お店の人がそんなこと言っていいんですか?」と私は応じましたけど。

「マグロのレア・カツ定食」1300円が…

 そう言っておきながら、本日は、一番高いランチを選びました。まるで、おとぎ話の「舌切り雀」の、大きなつづらを選んだ欲張り婆さんになった気分でした。

 勿論、おとぎ話のように、つづらから魑魅魍魎や蛇や虫が飛び出してくることはありませんでした。逆に一番高いランチだけあって、一番美味しかったかもしれません。

  おとぎ話の「舌切り雀」では、小さいつづらを選んだ正直爺さんは、家に帰ってつづらを開けると、そこから金や銀やサンゴなどがザックザック出てきました。

 ということは、1番安い500円(通常800円)の「いろいろマグロのごちゃ混ぜ賄い丼」を頼めば、家に帰れば、何か良い事が起きていたのかもしれません。

 しかし、むふふ…です。九州の叔母さんが実家で採れた蜜柑を送ってくれたとのことで、今夕、着く予定なのです。

 正直爺さんは大きなつづらを選び、家に帰ったら、蜜柑がどっさり届いたとさ。

凄過ぎる木下グループ=PCR検査までやるとは

  東京・新橋駅前に来店型の「新型コロナPCR検査センター」が12月4日から開業したことをニュースで知りました。完全予約制(ウエブなど)で、店舗で唾液を採取(所要時間3分前後)し、翌日には結果が本人に通知されるそうです。検査価格は2900円(税別)。それは良いとして、驚いたことに、この「新型コロナ検査センター」という会社は、木下グループの一員だということです。

 木下グループは、木下工務店を中心にした建設会社グループだと思いきや、映画「関ケ原」などの製作や、ハリウッド映画「ミッドウエイ」など海外映画の配給をやっているキノフィルムズ、東京や福岡にある映画館キノシネマ、俳優の小林稔侍、光石研、オダギリジョーらが所属する芸能プロダクションの鈍牛倶楽部、それにラジオのインターFMの100%株主といった芸能、報道関係、それに木下スケートアカデミーや水谷隼、張本智和ら卓球選手のスポンサーなどスポーツ関係の会社を運営しています。

 そこまでは、私も何となく知っておりました。仕事で調べたことがあったからです。でも、この木下グループが医療、福祉、教育関係にまで「進出」していたとは知りませんでしたね。木下グループのホームページを見ると、「木下の介護」「木下の保育」「木下福祉アカデミー」「木下未来学園」…何でもござれです。「新型コロナ検査センター」はグループ100%子会社で、グループ内の医療法人和光会が監修しているとのこと。意外でしたね。知らなかった人も多いと思います。

 建設会社から芸能、病院まで、どこか節操がないほど広範囲にカバーしている木下グループは凄過ぎますね。これだけ節操がないことで思い出すのは、このブログでどういうわけかアクセス数が多い、2017年2月23日に書いた「凄過ぎる滋慶学園」ぐらいです。

Luca Two-year old birthday

 つい、「節操がない」などと言ってしまいましたが、建設会社として出発して、芸能も医療も福祉も必要だったから、段々、拡大していったのかもしれません。

 木下グループは、株式を上場していないせいか、「会社概要」情報は「四季報」にも掲載されておらず、ネットでも正式に公開していないみたいですが、非公認のネット情報によると、現在のグループCEO木下直哉氏(1965年生まれ、福岡県出身)が2004年 に1000億円の債務超過に陥っていた木下工務店を買収して代表取締役に就任されたようです。木下氏は、同姓ながら木下工務店の創業者と関係がないようですが、キノフィルムズなど拡大戦略はこの人の経営手腕によるものだったんですね。かなりのやり手です。

 ラジオのインターFMを聴くと、盛んに「木下抗菌サービス」などのCMを流しています。メディアを広告媒体として相乗効果を狙っているのでしょう。

 コロナ禍の中、日本では縦割り行政の弊害でPCR検査が遅々として進んでいません。その間隙を縫って、営利事業としてPCR検査までやってしまうとは、木下グループ、凄過ぎる。

 12月5日午前11時の時点で、木下グループのPCR検査の予約サーバーが込み合っていて繋がらず。「12月8日まで予約は埋まっているので、9日以降のご予約を受け付けます」との告知がありました。

ランチで2~3万円はとても、とても=「銀座百点」12月号を読んで

 「銀座百点」という冊子があります。1955年に創刊、ということは今年で65周年にもなります。

  銀座に出店している小売店から大型店まで会員になっている協同組合「銀座百店会」が発行しています。紳士服の英國屋、カバンのタニザワ、真珠のミキモト、文房具の伊東屋、それに三笠会館や歌舞伎座、近年銀座に進出したユニクロまで現在会員数は125店に上ります。


 銀座百店会の広報誌的役割を持つのがこの「銀座百点」です。広報誌的とは言ってもあまり宣伝臭くなく、創刊号から久保田万太郎、吉屋信子、源氏鶏太ら一流作家が執筆し、また同誌に連載された作品で、向田邦子「父の詫び状」、池波正太郎「銀座日記」などがベストセラーになったりしています。

 年間定期購読料は4248円ですが、私は銀座の店で食事をしたり、物を買ったりした時、加盟店の店頭に「ご自由にお持ち帰りください」と置いてある時があるので、たまに貰っていくことがあります。

 先日は、銀座の天ぷら「ハゲ天」に久しぶりにランチをし、ハゲ天も銀座百店の会員で、お店にこの冊子の最新12月号が置いてあったので、お店の人に断って持ち帰ったのです。

 久しぶりに読んでみたら、私の大学時代の同級生・生駒芳子さんが「審美眼が求められる街」というタイトルで、エッセイを書いておられました。出世されましたねえ(笑)。彼女はファッション雑誌「マリー・クレール」の編集長なども歴任したファッション評論家ですが、10年前に、金沢に行って伝統工芸に目覚めてからは、「伝統工芸・ファッションプロデューサー」の肩書で今はお仕事されているようです。

 彼女が駆け出し雑誌ライターだった頃、東銀座のマガジンハウス(恐らく当時は平凡出版だったかも)にほぼ毎日、朝まで詰めて原稿を書いていたらしく、その時に一番楽しみにしていたのが、歌舞伎座の裏にあった「さつまや」というご飯屋さん。「そこで頂くおでんやお魚定食は、美意識に溢れた本物の味」と書かれていたので、「行ってみようかなあ」と思ったら、程なくして閉店してしまったそうです。嗚呼、残念でした。

 ほかに、私も25年ぐらい昔、六本木の事務所でインタビューしたことがある作曲家の三枝成彰さんが「いつまでも特別な場所」というタイトルで、同氏が贔屓にしている行きつけの銀座の店を書いておられます。

 そしたら吃驚、ビックリ、そのまたびっくりです。

 三枝氏ご贔屓の「すきやばし次郎」はミシュランが認めた超一流の寿司店ですが、確か、ランチでも3万円はくだらない値段です。数寄屋橋通りのおでん店「おぐ羅」は、グルメネットの相場を検索してみると、7000円ぐらい。歌舞伎座の向かいの路地にある京料理「井雪」は、「日本料理の神髄が味わえる」らしいのですが、5万円から6万円。新橋演舞場近くにあるステーキ店「ひらやま」は、「肉好きの方には是非一度、行っていただきたい」と三枝先生は仰いますが、ランチが1万5000円~2万円、ディナーは5万円~6万円が相場のようです。

東銀座「井雪」 「日本料理の神髄が味わえる」そうですよ。

 並木通りのフレンチレストラン「ロオジエ」は、三枝氏がよく行かれる店のようですが、こちらもランチが1万5000円~2万円、ディナーは5万円~6万円。「金春湯」の近くにある高級居酒屋「大羽」も「好きな店だ」と書かれてますが、2万円~3万円。

 まあ、これぐらいにして、凡夫の私が吃驚仰天するのはお分かりになって頂けたかもしれません。何しろ、私は「銀座で500円のランチが食べられた!」と嬉々としてブログに書くような輩ですからね。人間的にも器が小さい、小さい。我ながら嫌になりますよ。

 でも、オペラも作曲される三枝氏のような大物の有名作曲家ともなると、毎日のようにランチ2~3万円、ディナー5~6万円は普通で何ともないんですね。協奏曲や管弦楽曲などのほかに、映画音楽やテレビニュースのテーマ曲、CMなど作品の印税が入って来るからだと思われます。人間的にも器が大きくなるはずです。

 

どうなる眞子さま、ご結婚問題?=そして、橋田壽賀子先生の思い出

  今、世間ではあの話題で騒然、まさに沸騰しています。

 戦前なら「不敬罪」で、獄中入り間違いなしでしょうが、自由と民主主義の成熟した国家になった今は大丈夫だからなのでしょう。多少、度が過ぎた報道もありますが…。

 例えば、週刊文春は、「総力取材」と称して「虚栄の履歴 小室さん母子の正体」「抗議殺到、職員連続退職…追い詰められる秋篠宮家」と見出しだけで内容が分かるような書き方です。中には「高3 社長令嬢との交際に母歓喜『いいじゃない!』」は、笑わせてもらいました。

 いつも斜から世間を見据える週刊新潮は、「『眞子さま』ご結婚でどうなる 『髪結いの亭主』との生活設計」と大見出し。眞子さまを何でかぎかっこにするのか不思議です。あの世間を騒がせている眞子さま、と強調したいんでしょうか(笑)。中見出しの中には「『あの方々が親戚になるの…』女性皇族から戸惑いの声」とインサイダー情報まで載せています。

 もう一つ、同誌では「『皇室を揺るがす婚姻』に思う」と題して識者にインタビューしています。この中で、脚本家の橋田壽賀子さんが登場し、「渡る世間に佳代さんがいても」などととコメントしています。

 で、お前さんはその週刊誌を買ったのかい?と聞かれそうですが、これだけ充実した(?)見出しを読まされると、何か、全文読んだ気になってしまい、もうお腹いっぱいです(笑)。特に、私なんか、見出しを読むどころか、こうして、わざわざ、一字一句書き写していますからね。勿論引用として。

 ところで、最後に引用した橋田壽賀子さんには、個人的な思い出があります。

京都・光明寺 Copyright par Kyoraquesensei

 今ではシリーズ化して日本人なら知らない人はいないドラマ「渡る世間は鬼ばかり」をTBSが開局40周年企画として初めて製作発表した1990年のことですから、もう30年も昔の話です。

 マスコミ用語に「かこみ」取材というものがありますが、椅子に座って対峙した正式な記者会見のほかに、懇親会か何かで、対象者を囲んで話を聞いたりする取材があり、「かこみ」はその後者を指します。その「渡る世間…」の製作発表の直後だったか、後日改めて大々的に開かれた懇親会だったか忘れてしまいましたが、長山藍子さんや中田喜子さんといった女優さんと一緒に脚本家の橋田さんも参加していました。

 その時、橋田さんを囲んだのは私を含めて3人か4人ぐらいだったと思います。私はもともと、こういった家庭ドラマは興味も関心もないし、嫁と姑めの古典的な争いも何かマンネリみたいな感じだったので、仕事として適当に話を聞いていました。

 橋田先生は饒舌な方で、喋るは、喋るは…。「早く終わらないかな」といった表情を私がしたのかもしれません。突然、喋り続けていた橋田先生が、ピタッと話をやめ、よりによって、私の傍に近寄ってきて、「ああた、さっきから私の話、聞いてないでしょ!!」と怒り出したのです。

 「その通りです」と正直に告白するわけにもいかず、「いいえ、そんなことありませんよ。一生懸命聞いてますよ」と、冷や汗をかきながら自己弁護するのに必死になったことを今でも覚えています。(橋田先生は、TBSの社長が車寄せまでお出迎えするほど超VIPだということは後で知りました)

 ということで、正直、私自身、日本人なら知らない人はいない著名ドラマ「渡る世間は鬼ばかり」を全編通して真面目に見たことはありません。そして、今でも橋田壽賀子先生の「ああた、さっきから私の話、聞いてないでしょ!!」というお言葉が、耳の奥にこびりつくように残っています。

でも、どうして分かっちゃったのかなあ? 正直者なので、顔に出ちゃうのかなあ…?橋田壽賀子先生、覚えていますか?

スウイング感に痺れました=エラ・フィッツジェラルド「エラ ~ザ・ロスト・ベルリン・テープ」

 久しぶりに、本当に久しぶりにCDレコードを買いました。

 20世紀最高の女性ジャズ・ヴォーカリストの一人と言われるエラ・フィッツジェラルド(1917~96)の「エラ ~ザ・ロスト・ベルリン・テープ」(ユニバーサル)です。

 「最高の一人」という言い方も変なのですが、「女王は、ビリー・ホリデイだ」「いや、サラ・ヴォーンでしょう」という人がいるからです。あとは好みの問題でしょう。

 このアルバムは、音楽プロデューサーで、「ヴァーヴ」などのジャズレーベルを創設したノーマン・グランツ(1918~2001)がプライベート・コレクションとして保管していた未公開ライヴ・テープをCD化したものです。テープは最近になって発見されたそうです。これは1962年にベルリンで録音されたライヴ音源で、私も先日、FMラジオで初めて聴いて、すっかり魅せられてしまい、久しぶりにレコード店に足を運んだわけです。

 エラのベルリン・ライヴといえば、1960年に録音された有名な「マック・ザ・ナイフ~エラ・イン・ベルリン」があり、これはグラミー賞受賞した名盤です。

 でも、はっきり言って、同じベルリン・ライヴでも、私自身は、こっちの62年録音の「ザ・ロスト・ベルリン・テープ」の方が好きですね。

  スウイング(ノリ)感が全然違います。特に、60年盤でタイトルにもなって有名になった「マック・ザ・ナイフ」は、62年盤では脂の乗り切ったといいますか、少女のような可憐さとベテランの熟練さを合わせ持ったようなヴォーカルです。途中で、乗りに乗ってサッチモ(ルイ・アームストロング)の真似もしています。調べてみたら、この時彼女は45歳だったんですね。

山野楽器の入り口は狭くなりました

 60年盤はギターも入ってますが、62年盤は、ポール・スミスのピアノ、ウィルフレッド・ミドルブルックスのベース、スタン・リーヴィーのドラムスのトリオ。わずか3人なのに、オーケストラのような厚みのある音色を奏でるのです。特に、エラのお気に入りのスミスのピアノは、ピカ一ですね。音楽理論に詳しくないのですが、ジャズ・ヴォーカルのピアノ演奏は、クラシックともロックとも違い、独特というか、異様です。不協和音に近い独特の度数の兼ね合いで、さすがプロ、よくぞ、音程を外さないで唄えるものでした。勿論、この微妙な不協音が、聴く者に心地良い緊張感も与えてくれます。

 1962年といえば、ちょうどビートルズがデビューした年です。エラの「ザ・ロスト・ベルリン・テープ」には「ハレルヤ・アイ・ラブ・ヒム・ソー」も収録されていました。この曲は、1957年のレイ・チャールズのヒット曲ですが、デビュー前のビートルズがドイツのハンブルクで演奏していた曲だったので、「おー、あの曲だあ」と思ってしまいました。

 今はネットで情報が沢山入ってきます。調べてみると、エラの生涯も子どもの頃に孤児院に入れられたり、早く親を亡くしたり、幸せな環境で生育したとはいえませんでした。二度の離婚経験もありました。孤児などという境遇はフランス・シャンソンの女王エディット・ピアフに似ていますね。ジョン・レノンも子どもの頃に両親に「捨てられた」というトラウマが大人になってもなくなりませんでした。歴史に残る大スターに共通しているので、子どもの頃の不幸は、スーパースターになる条件にさえ思えてきてしまいました。

 このCDを買ったのは、東京・銀座の山野楽器です。半年ぐらい、ビルを改装していましたが、新装開店したこの店に入って吃驚です。2階を中心に、大手携帯電話会社のショップが入居し、CDレコードは4階に追いやられていました。

 しかも、演歌もロックもクラシックもジャズも同じフロアです。以前は、地下にDVDがあり、1階はJ-POPSや演歌、2階は確か(笑)クラシック、3階は確か(笑)ジャズと別れていたのに、凄い縮小ぶりです。

携帯電話ショップになってしまった山野楽器

 つまりは、皆、CDを買わなくなっちゃったということなんでしょうね。今、ネットでユーチューブもあれば、スポッティファイもあり、わざわざお金を出さなくてもタダで音楽は見たり聴いたりできちゃいますからね。

 それに、少子高齢化でピアノを始め、楽器を買う家庭も少なくなってしまったのかもしれません。

 小生は14年前に、この山野楽器で思い切って、目の玉が飛び出るほど高いフォークギター「マーチンD-28」を買ったことがあります。このギターは、ビートルズのプロモーションビデオの「ハローグッドバイ」でジョン・レノンが弾き、映画「レット・イット・ビー」の中では、ポール・マッカートニーがこのマーチンで「トゥ・オブ・アス」を唄っていました。

 山野楽器のギターショップも縮小されたでしょうが、何か哀しくて、そこまで行けませんでした。

朝日新聞が危ない!?=中間決算で419億円の大赤字

 昨日、朝日新聞社が2020年9月中間連結決算を発表しましたが、純損益が約419億円の大赤字だったことを明らかにしました。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、売上高が前年同期比22.5%減の1390億円余だったらしいのですが、それにしても赤字幅が莫大です。9年ぶりの赤字だそうですが、渡辺雅隆社長は来年4月1日に社長から退き、中村史郎副社長を後任とする意向を表明しました。

 若い人の新聞離れで、購読者が激減したことが赤字の原因であることは確かですが、もう一つ、広告収入の激減も要因だと思われます。コロナ禍では、旅行の広告はほぼゼロになりましたし、宝飾品やブランドものの高級品も売り上げが落ち、広告を出稿するどころではありません。

 朝日は日本一のクオリティーペーパーだというのに、昔だったらプライドが邪魔して掲載しなかった摩訶不思議な滋養強壮剤や三流の格落ちの通販の広告ばかりで穴埋めするようになりました。

 結局、本業の新聞業では儲からないので、東京・銀座の一等地などにある不動産業で鎬を削っているのが実情です。別に朝日だけでなく、天下の読売新聞も毎日新聞も似たような状況です。

 今や新聞業界は斜陽産業化し、優秀な人材も入って来ないという悪循環に悩まされています。でも、これは、単に、新聞業界だけの問題ではなく、日本全体の問題になることをほとんどの人は知りません。健全なメディアがあってこそ、健全な国家ができるからです。政治家の汚職をチェックする報道機関が劣化すれば、悪徳政治が蔓延るわけです。

 とはいえ、そういう危機的状況が日増しに深刻になってきました。誰が、こんな状況を想像できたことでしょうか?

 勿論、一番大きい原因は、インターネットの発達だと思いますが、それ以外にも要因があると私は睨んでいます。

 特に朝日新聞は日本を代表する新聞社です。それが故に、取材記者も社風もかなり傲慢な点が垣間見られ、私自身のかつての経験から、「驕れるものも久しからず」と、いつか朝日新聞は衰退するのではないかと思ったことがあったのです。

 もう時効ですから、この際、書いてみます。今から28年ぐらい昔の1993年1月のことでした。

Mt Fuji Copyright par Duc de Matsuoqua

 園山俊二という漫画家がいました。私も「はじめ人間ギャートルズ」とか「花の係長」などを愛読していました。彼は、その1993年1月20日に57歳の若さで亡くなるのですが、その翌日の21日の午前11時頃だったと思います。私は当時、通信社の文化部記者でした。デスクにいたら、「どうも園山俊二さんが亡くなったらしい」という一報というか、噂が流れてきました。著名人ですから、訃報記事を書かなければなりません。

 私は、早速、園山さんの自宅に電話しました。そしたら、電話に出てきた遺族らしき方から「そういう話でしたら、朝日新聞の方に聞いてください。そちらが窓口になっていますから」と仰るので、朝日に電話を掛け直しました。

 園山さんは前年の12月まで朝日新聞に「ペエスケ」という四コマ漫画を長期連載していたので、「窓口」になることは理にかなっていました。

 そして、朝日新聞の代表に電話をし、こちらの名前と所属もはっきりと伝えて、担当者につないでもらいました。そしたら、出てきたその「担当者」らしき人物は「今日のウチ(朝日新聞)の夕刊に(園山氏の訃報が)出ますから、それを見てください」と言い放ったのです。

 「えーーー」ですよ。こちらは夕刊の締め切りに間に合わせようと必死に取材しているのに、何でそんな木で鼻をくくったような応対しかできないのでしょうか。通信社は新聞、テレビ、ラジオ等全国のいや、全世界に第一報を伝える使命があり、速報だけはどこの社より先んじなければなりません。

 担当者はそれを知っていて、ワザと「教えてあげないよ」といった態度を取ったのかもしれません。通信社が配信すれば、他のライバル新聞社も情報を知ることになります。園山俊二さんは朝日に長期連載していた、いわば自分の社が囲っていた作家さんです。他社にスクープされてはたまったものではなかったのかもしれません。

 話は前後するかもしれませんが、その時だったのか、その前のことだったのか、「朝日に載らない記事はニュースではない」と朝日新聞の関係者に聞かされたことがありました。何と言う傲慢。今のようなネット時代、普通の市民でさえニュースを発信する時代では、こんな話を聞かされれば、単なる笑い話に過ぎませんが、当時は、実際、その通りの話でしたので、こんな風に邪見にされると、「驕れるものも久しからず」と怒りに任せて、心の中で呟いたものでした。

◇頑張れ!朝日新聞

 あれから28年。朝日新聞の凋落は目を覆うばかりです。名物コラム「天声人語」を読んでも、まるで「渓流斎日乗」を読んでいるみたいで、パンチも風刺も鋭い知性すら感じず、気の抜けたビールのような文章です。

 「為政者には耳が痛い事ばかりを書く朝日を潰せ」といった政治家の陰謀説の噂が流れていますが、そんな陰謀説の前に、このまま赤字が続けば、風前の灯火といった状況です。

 9連覇を達成した読売巨人軍のように、あの憎たらしいほど強かった傲慢な、そしてその実力が伴った朝日新聞に戻って来てほしいものですが、私のような者から同情されるようでは駄目ですよ。私自身も、こんなことを書いて、「意趣返し」などと思われたくありませんから。

 私が書いた長い記事がそのまま朝日新聞に掲載された時は、嬉しかったことを付け加えておきます。(読者は全く知らないことですが)