荷風の日常


ウチにやっとマイナンバーなるものが来ました。ウチには来ないものと思っていたのですが…。

これで、国家は、番号一つで、国民を管理し、税金を絞るだけ絞って、脱税なんぞはもうあり得ない現象になるかもしれません。
何しろ、この番号はその人に一生涯、付きまとわりつくというではありませんか。詳しいことは分かりませんが、今は、年金や納税用かもしれませんが、そのうち、戸籍代わりになり、出身地から学歴、職歴、そして、犯罪歴まで一目瞭然で分かるようになるかもしれませんね。

あ、そうそう、安保法案も可決したことですし、将来、徴兵しやすくなるかもしれません。政治犯や囚人になったら、マイナンバーの番号で呼ばれるのかしら。ま、12桁もあるので覚えられないと思いますが…。

扨て、最近、ちょくちょく、永井荷風が出てくるのは、今、少しずつではありますが、川本三郎著「荷風と東京ー『断腸亭日乗』私注」(都市出版)を読んでいるからでした。索引を入れて600ページ以上の大冊です。平成8年9月5日が初版なので、もう20年近く前の出版。既に読んでおられる方が多いことでしょう。

この本では実に多くのことを教えてもらいました。漢字が読めないので、久しぶりに「漢和辞典」を横に置いて読んでいます。何しろ、荷風散人は、英語、フランス語だけでなく、漢籍の素養が豊富にあったからでしょうね。こういった教養面では、戦後の日本人は駄目になりましたね。

湯灌場(ゆかんば)、◇(草かんむりに兼)◆(草かんむりに暇のつくり)=けんか、俗累(ぞくるい)なんて、読めないし、意味も分かりませんでしたね。何しろ、フリガナさえふっていないのです。

荷風が自宅にした東京・麻布の偏奇館は「偏屈な変わりもの」だから、命名したのかと思いましたら、洋館に水色のペンキを塗ったからだそうですね。ま、両方をかけているんでしょうが。

断腸亭も、持病の腸が悪いことから断腸の思いで付けた雅号かと思いましたら、花の好きな荷風が断腸花(秋海棠)から付けたそうです。もっともこれも、両方をかけているのでしょう。秋海棠と言えば、中原中也が小林秀雄と鎌倉で散歩している時に、この花を見て「ぼーよー、ぼーよー」とうめき、後で小林が「ぼーよーってどういう意味なんだ」と聞いたところ、中也は「前途茫洋ということだよ」と言った話は有名ですが、私はてっきり、秋海棠だと思って調べてみたら、実際は「海棠」の花でした。

この本は何処の章から読んでも面白いです。都市出版ですから、恐らく雑誌「東京人」に連載されていたのでしょう。

日本で最初の地下鉄は、昭和2年に浅草―上野間を開通した今の「銀座線」ですが、どんどん延長されていくことが「断腸亭日乗」に書かれています。荷風は懐古趣味だけでなく、最先端をいくジャーナリストでもあったのですね。

実は、この路線は、浅草の松屋、上野の松坂屋、日本橋の三越、白木屋、高島屋、銀座の松屋、三越、松坂屋を結ぶ「デパート線」だったことがこの本で初めて知りました。

何しろ「三越前」は、三越が駅名に「三越前」を採用してもらう条件で、工事費のほぼ全額を三越が負担したそうです。日本橋駅は白木屋と高島屋、銀座駅は、松屋が駅建設費の多くを負担したそうです。

久しぶりに「知的好奇心」が満たされました(笑)。

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