「完全なるチェックメイト」★★★★

 When I was fine.

今年最後の、そして日本アカデミー賞協会会員としては最期の映画を観てきました。

何にしようか、迷いましたが、1972年にチェスの世界チャンピオンになったボビー・フィッシャーの実話を描いた「完全なるチェックメイト」(東京・日比谷シャンテGK)を観ることにしました。

私自身、チェスはやったことがないので、ルールも知らないのですが、そんな細かいルールを知らなくても十分に楽しめる映画でした。チェスって、サイコ・ゲームなんですね。サイコロ・ゲームでも最高ゲームでもありませんよ(笑)。psycho(精神病質的な)ゲームです。

原題は、「Pawn sacrifice」。意味が分からないので調べてみたら、両方ともチェス用語で、Pawnは、将棋の「歩」に当たる駒、 sacrifice は、「捨て駒」のこと。私の知っている範囲の単語力で、「担保の犠牲」かと思ったら、全然違いました(苦笑)。でも、「ポーン・サクリファイス」じゃ邦題にはなりませんよね。チェックメイトならチェスの話だと分かります。

ボビー・フィッシャーを演じたのは、スパイダーマンのトビー・マグワイア。彼は、あまりにも、スパイダーマンのイメージが強すぎて期待していなかったのですが、実は、プロデュ-サーも兼ねて、脚本からキャスティングまで関わったそうなので、この映画に賭ける意気込みもスクリーンに出ていました。

米ソの東西冷戦の最中の1972年のチェスの世界選手権(アイスランドのレイキャビク)で、ソ連の王者のボリス・スパスキーを米国人のボビーが破って世界チャンピオンになる話ですが、結果が分かっていても、手に汗を握るほど、ヒヤヒヤします。ソ連のブレジネフ書記長や米国のニクソン大統領、キッシンジャー国務長官が、直々に電話をかけてくるなど、まるで、国家の威信を賭けた冷戦の「代理戦争」みたいでした。

世界トップのチェス・プレイヤーともなると、芸術家の域に達するのか、我儘で、癇癪持ちで、傲慢で、気分屋。気に入らないと試合を放棄したり、閉じこもったりします。まさしく、天才(ボビーはIQ187もあったらしい)ゆえの、奇人、変人です。

ボビー・フィッシャー(1943~2008)は伝説の人物ですから、1970年代当時から太平洋を渡った島国でも広く知れ渡っていました。一時、日本(東京・鎌田)に住んでいて、国外退去になった話題も私は、ニュースで知っていました。彼は、奇しくも、世界選手権の行われたアイスランドが亡命を受け入れて、レイキャビクで64歳で亡くなります。

彼が、日本に、しかも、渓流斎が生まれた蒲田に住んでいたとは!そのせいか、奇人とはいえ、随分、身近に親しみを持って見ることができました。

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