大連・食べ物横町 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur
日本経済新聞社編著「シャープ崩壊 名門企業を壊したのは誰か」(日経出版社)を読了しました。
いやあ、凄まじい内容でした。
下手な小説より、遥かにずっとずっと面白かったです。同じサラリーマンとして大変身につまされました(苦笑)。
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日本の優良企業シャープを崩壊させたのは、確かに、経営者の人事抗争で「人災だった」という本書の主張は十分納得させるものがあります。
それにしても、経営者幹部のほとんどが責任を取らず、自分たちは辞めずに、トカゲの尻尾切りのように、大切な社員を「希望退職」の名の下でリストラしたことは本当に許しがたい行為ですね。
2012年に2960人、15年に3234人。計6194人にも及ぶ首切り。数字で書けば簡単ですが、この6194人のほとんどが家族持ちだったでしょう。裸一貫で南極か、猛獣のいるジャングルに投げ出されたと言っても過言ではないでしょう。
これが、グローバリズムの正体でしょうかね?日本の伝統風土だった「終身雇用」や「年功序列」はなくなり、まるで弱肉強食の世界へ。
本書の初版出版は今年の2月17日。台湾の鴻海精密工業によるシャープ買収の正式合意が4月2日ですから、当然ながら、本書は、崩壊したシャープは、この先どうなってしまうのか、という「未完」で終わっています。それでも、凄まじい人事抗争(特に町田勝彦四代目社長と片山幹雄五代目社長の対立)や密約やらの内部情報が盛り込まれていて、「結果」が書かれていなくても読み応え十分でした。
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本書の中では、買収した鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘会長は、シャープを買収したら、(現在日本電産の副会長になっている液晶のスペシャリスト)片山五代目社長を呼び戻す、というようなことが書かれていました。
しかし、4月2日の記者会見では、鴻海の郭会長は、シャープを買収したというわけではない。鴻海―シャープ連合で、当分、シャープは日本の経営者に任せる、といった趣旨の発言をしています。
アップルのiPhoneなど世界最大手の精密機器製造会社の創業者の発言ですから、これからどうなるか、分かりませんね。
東芝の白物家電部門が、中国の美的集団に買収される(3月30日)など、日本の社会が歴史的転換期に入ったことは確かです。
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いずれにせよ、犠牲になるのはいつも弱者です。
経済誌を立ち読みしていたら、大手商社の社長さんの年収が1億~2億円だと書かれていました。
それだけの収入をもらえば、ヒトは誰でも権力にしがみつくものですね。よーく分かりました。