崇政殿 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur
◇英国のEU離脱
英国が23日の国民投票で、EUからの離脱を決定したそうで、離脱派の皆様にはおめでとうございます。残留派の皆様は、ご愁傷様でした。どうなんでしょうかね。地獄の世界が待っているのか、天国の世界が待っているのか、神のみぞ知る、でしょうか。
しかし、あれから、一夜明けて、世界各国で、株価がリーマン・ショック以上に大暴落して日経平均は一時1300円も下落、円は、一時100円を切る99.97円の値を付けて、急激な円高。
輸出型グローバル企業の典型である日本の大手自動車会社は、1円の円高で360億円も損失するとよく言われていますので、日本にとってはいい迷惑です。360億円の損失、という神話はよく聞かされますが、国内の自民公明連合の大企業優遇政策によって、年間3000億円の「お目こぼし」があることは、あまり知られていませんが。
まあ、英国は離脱を選んだのですから、外国人は成り行きを見守るしかありません。
◇スコットランドも離脱か
同じ英国のスコットランドや北アイルランドは、残留派が大半を占めていたので、再び、UK(United Kingdom of Great Britain and North Irleland)からの離脱の声も高まっているそうですね。
また、国民投票でもしてくださいな。
今回の国民投票も、よく言われていますように、パナマ文書スキャンダルで二進も三進もいかなくなったキャメロン首相による一大芝居だったようです。つまり、国民投票なんて、しなくてもよかったのです。
離脱派の勝利で、早々とキャメロン首相は辞意を表明したことから、最初から、自爆目的で仕掛けたのではないか、という憶測も流れています。
鳳凰楼 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur
◇傍迷惑な行為
しかし、諸外国にとっては、この英国離脱は、いい迷惑になりました。独仏あたりから、早速、「離婚したければ、さっさと出ていけ」と夫婦関係を持ち出すまで憤慨しています。恐らく、一番怒っているのは、ブリュッセルでフカフカのカウチソファーで惰眠を貪っていたEUの高級官僚の連中でしょうが。
EU離脱まで2年間の猶予があるとはいえ、これで、恐らく、英国の凋落が始まることでしょう。
まず、王国連合は、スコットランドの独立で連合崩壊。GBの略称も返上しなければならないでせう。第一、大英帝国のように、21世紀にもなって自分の国の名前に「大」と付けているのは、英国のアングロサクソンと大韓民国の朝鮮民族ぐらいでせう。英国も偉大なgreatを返上して、脆弱なvulnerable となり、VB=Vulnerable Britain になるでせう(笑)。言っておきますが、冗談ですが。
あの失業者が街に溢れて「英国病」と言われ、ロンドン市内はゴミだらけで、破壊的で無秩序なパンク・ロックが流行した1970年代に後戻りするかもしれませんね。
鳳凰楼玉座 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur
◇サイクス・ピコ協定の密約
そして、肝心な我が日本はどうなってしまうのかも心配です。英国もアメリカも、イタリアもドイツもフランスも、世界の先進国各国で、内向きと言いますか、保護貿易と排他主義的な極右政党が、勢いを増しています。日本だけかと思ったら、世界各国共通だったとは!
今年は、サイクス・ピコ協定の密約が結ばれてちょうど100年。私自身は認めたくなくても、これまでとは違う新しいエポックに入ったことは確かな気がします。
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◇大師号の欠落
さて、先日、この渓流斎ブログで、6480円もする吉川弘文館編著の「日本史必携」を購入したことを自慢しました、はい(笑)。
古代からの氏姓制度や官位官職、有職故実、古文書に記される甲子など干支で示された年号の西暦などを知りたくて、この事典を購入して満足していたのですが、落丁とまでは言いませんが、記載がない事項を発見して少しがっかりしました。
それは、「大師号」です。最澄=伝教大師、空海=弘法大師で有名なあの大師です。
日本で一番、この大師号を持つ大僧侶は、どなたかご存知でおられるか?
法然上人ですね。
(1)1697年 円光(えんこう)大師 ?東山天皇
(2)1711年 東漸(とうぜん)大師 ?中御門天皇 500回忌
(3)1761年 慧成(えじょう)大師 ?桃園天皇 550回忌
(4)1811年 弘覚(こうかく)大師 ?光格天皇 600回忌
(5)1861年 慈教(じきょう)大師 ?孝明天皇 650回忌
(6)1911年 明照(めいしょう)大師 ?明治天皇 700回忌
(7)1961年 和順(わじゅん)大師 ?昭和天皇 750回忌
(8)2011年 法爾(ほうに)大師 ?今上天皇 800回忌
このように、法然上人は、500回忌以降、50年おきに朝廷、いや天皇陛下から大師号を賜られているのです。(寺内大吉著「念仏ひじり三国志」を参照)
法然の大師号は8回あるはずなのに、吉川弘文館編著「日本史必携」には、明治天皇が贈られた6回までしか明記されていないのです!この事典は2006年の初版なので、2011年の今上天皇の大師号が抜けるのは当然ながら、昭和天皇が贈られた大師号を落とすとは!しかも、法然の法の字も出てこなくて「源空」とだけ表記されていますので、素人に分かりづらい。せめて、「法然房源空」としてもらいたいですね。
◇「読史備要」は史書のホームラン王
以上、杜撰でいい加減な吉川弘文館編著の記述にがっかりしてしまい、京都にお住まいの京洛先生に愚痴ったところ、カッカッカと大笑されました。
「いい加減なもんですよ。そんなことで目くじらたててはいけませんよ」と、京洛先生は諭すわけです。
私は、最近、本当に有り難いことに、異様なる知的好奇心が大復活しまして、手元にもっと詳しい日本史用語辞典を置いておきたくて、今まで重宝していた山川出版の「日本史小辞典」の改訂版がいいか、それとも、杜撰な(?)吉川弘文館か、信頼できる(?)平凡社か、少し格落ちする(?)旺文社か、東京堂か、どれにするか、迷っていると、ご相談したところ、
「どこも同じですよ」と京洛先生は一刀両断されるのです。
「それより、『読史備要』をご存知ですか?『毒史』じゃありませんよ。『読史』です(笑)。ここには、官位官職はもちろん、様々な系図、名数って分かりますか?その名数も載っていますし、歌舞伎俳優の系図まで載っています」
えっ?何でしょうか?
「帝国大学史料編纂所の編著です。知らないと潜りですよ(笑)。国会図書館のデジタル公開でも見ることができますが、やはり、こういう本は、手元に置いておくものですね。まあ、この『読史備要』が、米大リーグ機構発行の公式名鑑だとしたら、吉川弘文館の『日本史便覧』は、スポーツ新聞の選手名鑑みたいなもんですよ、カッカッカ」
ひょっえー、改めて、京洛先生の無尽蔵の碩学ぶりに驚嘆してしまいました。