伊藤淳著「父・伊藤律 ある家族の『戦後』」

繁華街に人また人 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

 何か、パソコンで苦戦しまして、2時間以上も時間を無駄にしてしまいました。せっかく、歌舞伎座にでも行こうかと思いましたが、時間がなくなりました。ったく。

 私自身、そうパソコン技術に詳しくないのが難点です。マウスの調子が悪くて、ポインターが少しも動きません。電池を入れ替えたりして、いろいろやっても動かなく、しばらく、ほおっておいたら直りました。どうなっているのやら?

 あと、昔、登録していた外資系航空会社からのメールがうるさいので、登録抹消しようかと思いましたら、PIN番号とやらを最初から設定し直さなくてはならず、その後も「登録情報」を変更するとなると、「ワンタイムパスワード」の入力が必要とかで、その有効期限がありまして、やっと向こうから送られてきた「ワンタイムパスワード」が使える時間が、あと10秒しかない!というこの客を大馬鹿にしたような離れ業を強いられたのです。

 普通はできるわけありませんが、3回目でやっと登録完了しました。これで、客を馬鹿にするうるさいメールはもう来ないでしょう。

 機械が相手なので、誰にも文句言えません。何が人工知能だ!?これから、ますます酷い世の中になっていくのではないでしょうか?

 食い物屋も沢山 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

 7日16日に参加した出版シンポジウム(お茶の水・明治大学)で購入した伊藤淳著「父・伊藤律 ある家族の『戦後』」(講談社)をやっと読了しました。

 著者の伊藤淳氏には何度かお会いしたといいますか、お目にかかったことはありますが、とても口数が少ない方で、何となく、人見知りをされているような感じで、恐らく、再び、小生がお声を掛けても「あんた誰?」と言われてしまうのが関の山なので、シンポではご挨拶しませんでした。
 が、この本を読んで、彼の長年の70年の半生で「伊藤律の息子」として経験した重みやら、つらさやら、違和感やら、うんざり感やら、誇りやら、運命やらを正直に過不足なく表現されていたので、彼がどんな思いをしてきたのか、初めて分かったような気がしました。

 果物やもあります Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

 もう既に歴史上の人物となった伊藤律について、知っているか、興味がある方は、もうかなり少数ではないかと思います。
 
 しかし、彼が亡くなる25年ぐらい前まではかなりの有名人でした。

 伊藤律とは何者か?

 最初は、著者が「はじめに」にも書いている通り、「ゾルゲと尾崎秀実らゾルゲ事件の関係者逮捕の端緒をつくった裏切者」(特高警察)、「生きているユダ」(尾崎秀樹)、「革命を売る男」(松本清張)、そして、「権力のスパイ」(日本共産党)というレッテルを貼られていました。

 それが、27年もの長い間、北京に幽閉され、文革時代は生命の危険にさらされた伊藤律が1981年に帰国すると、これらの偽りのレッテルが次々と剥がされて、彼の身の潔白は、徐々に証明されていきます。これは全て、公安当局や川合貞吉や、GHQや、そして何よりも、野坂参三らの陰謀と裏切りとその尻馬に乗った文豪松本清張や日本ペンクラブ会長まで務めた尾崎秀樹らの過誤だったことが明らかになっていきます。

 問題が複雑だったのは、伊藤淳氏とその母親で、伊藤律の妻だったキミ氏が党員だったせいかもしれません。本来の思想は、弱者に優しく、格差をなくし、皆で協力し合って平等な社会を築き上げていくということだったはずなのに、組織となるとどうしても格差ができ、平等ではなくなるというのが宿命なのかもしれません。

 私がこの本を読んで、「ハイライト」だと思ったのは、「伊藤律、北京生存」のニュースが家族のもとに伝わり、彼の帰国について、伊藤律の妻キミが「どうしたものか」考えあぐねた末に、最初に中国大使館に行って、手続きを進めたことでした。これが、決定的に伊藤家のその後の運命を左右します。著者とその母親は、中国大使館を訪れた後に、東京・代々木の日本共産党本部に行きます。そこで、野坂参三議長(当時、以下略)との面会を望んだところ、「会議中」を理由に断られます。

 そこで、用件を伝えて帰宅すると、その夜に、何と、野坂議長本人と戎谷春松(えびすだに・はるまつ)副委員長と秘書が、黒塗りの高級車に乗って、伊藤淳氏のアパートにすっ飛んできて、伊藤律の妻キミに「キミ同志はなぜ律と離婚しなかったのか」「なぜ党に事前の相談もなく、中国大使館と連絡を取ったのか。これは党に対する裏切り行為であり許されない」と詰問するのです。

 これは、後に、実は、裏切者は、伊藤律ではなく、野坂参三本人だったことが歴史的に証明されているので、漫画のようなシニカルな笑いが漏れる場面です。
野坂は、北京に売ったはずの伊藤律が27年間も幽閉されて、まさか、生きているとは思わなかったので、慌てて、証拠の握り潰しを図ったというわけなのです。野坂の驚愕が目に浮かぶようです。「死人に口なし」というわけにはいかなかったのです。

 野坂は、ソ連にいた同志の山本懸蔵らも密告して、スターリンの大粛清の犠牲にするなど、野坂こそが仲間を売る裏切者だったという公文書が次々と発見され、100歳の時に共産党名誉議長を解任、党も除名されます。

 まあ、こういう話はあまり、聞いていて気分がいいものではありませんよね。こんなことがあるから、日本国民の信用もイデオロギーに対する信頼も消滅してしまうのです。

 いくら主義主張や思想信条が高邁でも、組織こそが階級を産み、同時に組織内の階級闘争を産むため、出世や権力保持のために、平気で仲間を裏切ったり、売ったりする権力志向の人間が必ず現れるという証明でしょう。右翼も左翼も関係ありません。政治の世界だけでなく、会社組織でも同じです。

別に綺麗事を並べているわけではありません。これは、人間の性(さが)であり、組織や集団というものが持つ根本的な体質で、未来永劫なくならないということです。

これは、自分の人生体験で得た信念です。

私も、食うために仕方なく団体や会社組織に所属しましたが、そりゃあ多くの人間のイ汚い面を見てきたものですよ。

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