「ボクシングと大東亜」

世久阿留

名古屋にお住まいの海老普羅江先生から書簡が送られてきて、ある本を読みなさい、とのお勧めでした。

それは、乗松優著「ボクシングと大東亜 ~東洋選手権と戦後アジア外交」という本でした。

未読です。

著者の乗松優(のりまつ・すぐる)さんという方は、1977年生まれの若き、といいますか、新進気鋭の社会学者で、現在、関東学院大学兼任講師なんだそうです。

渓流斎の興味や関心事は、近現代史とその表舞台に出てこない裏社会の人やフィクサーにありますが、この本もその知られていない歴史に埋もれた真実を暴いた力作のようです。

私の世代の子どもの頃は、今以上にボクシングブームで、ファイティング原田や海老原ら多くの世界チャンピオンを輩出して、テレビの視聴率も異様に高く、よく言われていますように、敗戦で打ちひしがれていた日本人に勇気を与えた、と言われています。

当時は、WBAやWBCの世界戦だけでなく、東洋太平洋級までもが大いに注目されました。

あの「あしたのジョー」も、確か、最初はこの東洋太平洋級チャンピオンになったと思います。

で、この乗松さんの本は、宣伝文句を換骨奪胎しますと、関係者の証言や資料をもとに、太平洋戦争で100万人以上が犠牲になったフィリピンとの国交回復をめぐる葛藤と交流の軌跡を描いた力作なんだそうです。

そこには、「鉄道王」小林一三の異母弟で、「ボクシングの聖地」後楽園を築いた田辺宗英、稀代のフィリピン人興行師と共に暗躍した元特攻隊ヤクザ、「メディア王」正力松太郎、そして「昭和の妖怪」で現首相の祖父岸信介らが登場します。

またまた、宣伝文句を引用しますと、「テレビ史上最高視聴率96%を記録した戦後復興期のプロボクシング興行の舞台裏で見果てぬアジアへの夢を託して集った男達の実像に迫る、『もうひとつの昭和史』」ともいえる作品なんだそうです。

ここまで、引っ張られれば、読みたくなりますよね?

で、ここまでは、表面的なご紹介で、海老普羅江先生は、「後楽園」をつくった田辺宗英と、読売新聞の社主にして東京読売巨人軍の創設者である正力松太郎との関係について触れます。

「二人は、いわゆる『刎頸の友』で、巨人と後楽園球場との契約も、ほとんど『口約束』だったと言われますよ」などと、超極秘情報を掴んでおられましたの。さすがです。

長くなるので、続きは次回。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

旧《溪流斎日乗》 depuis 2005 をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む