昨日8月15日は、終戦記念日ということで、戦没者の皆様方の慰霊と追悼の意味も込めまして、東京・上野の東博で開催中の「国宝 聖林寺十一面観音」特別展(9月12日まで)にお参りに行って来ました。
コロナ感染拡大で、「過去最多」を更新し、全国的な大雨前線の影響で、都心もかなりの大雨でしたが、釈正道老師のお薦めもありまして、馳せ参じました。
せっかくですので、しっかり予習をしていきました。まず、十一面観音とは?
観音とは観世音菩薩のことで、菩薩とは最高の如来になるために修行している人のことでしたね。俗に観音様といわれ、日本人の信仰が篤いので、最も知られているのではないでしょうか。阿弥陀如来の脇侍でもあり、観音経によると、聖観音、千手観音、如意輪観音など三十三身が示現するといいます。十一面観音もそのお一人となります。
そのものズバリ、お顔(面)が十一あるのが十一面観音です。本体の他に、頭上に10の面があるのです。まず、正面に3面ありますが、お顔は慈悲相(仏の教えに従う人に慈悲)を表します。左の3面は忿怒相で、仏の教えに従わないで好き勝手なことをしている人(貴方かも?)に怒りを表しています。そして、右3面が、善行の人を褒め称える白い牙相となっています。最後に、後ろの1面は、笑面といい、ゆとりを表しています。正面3+左3+右3+後ろ1=10となりますが、これは仏様の「十の誓願」を表しています。それはー。
(1)諸病の苦をとる
(2)如来の愛護を得る
(3)財宝を得る
(4)敵の危害から守る
(5)上司の庇護を受ける
(6)毒蛇、寒熱の苦を免れる
(7)刀杖の害を受けない
(8)水に溺れない
(9)火に焼かれることがない
(10)天命を全うすることができる
ーということで、この観音様を拝むと災害から免れると信じて、平安時代は特に盛んに崇拝されたといいます。作例が多いので、国宝に指定されている像は全8体ともあります(滋賀・向源寺、奈良・法華寺、京都・観音寺、大阪・道明寺、岐阜・美江寺など)
これだけ、予習したのでバッチリです(笑)。
ところが、いざ、実際、実物に相対して、お顔の数を数えてみると本体の他に頭上には8面しかないのです!あれっ?これでは、十一面観音ではなく、九面観音ではないでしょうか?
間違いないと思います。私はこの観音様の周りを20回ぐらい巡回して数えましたから…。こんな怪しい行動を取るのは、世界広しといえども、私一人ぐらいだと思います。周囲の人は私を白い眼で見ていました(笑)。正面3面、左3面、右2面、後ろ0面=8面でした。(恐らく聖林寺では後ろまで拝観できないことでしょう)
まさに、子どものように「王様は裸だ!」「これは九面観音様だ!」と叫びたくなりました。
実は、この特別展の会場は狭く、わずか一室だけで、展示品も少ない。予習もしないで、パッと見に来ただけでは、5~6分で済んでしまうと思います。これで入場料が当日1500円とは、なかなかだと思いましたが、そんなケチ臭いことを言うと、罰が当たりますね(苦笑)。
時間が余ったので、本館の他の展示品も少し拝観しました。そしたら、奈良・秋篠寺の十一面観音立像(重要文化財)もあり、早速、数えてみましたら、しっかり十一面ありました。
しかしながら、「聖林寺十一面観音」(8世紀、天平彫刻)は、その静謐さといい、威厳さといい、その慈悲深いお顔立ちといい、全く他に比類がなく、本当に心が洗われました。
【参考文献】
松濤弘道著「日本の仏様を知る事典」(日本文芸社)
かみゆ歴史編集部編「仏像をめぐる日本のお寺名鑑」(廣済堂出版)