中村哲氏と火野葦平

アフガニスタンで献身的な医療活動を続けている中村哲氏と、芥川賞作家の火野葦平が甥と伯父との関係であることを初めて知りました。(8日付朝日新聞土曜版)

火野葦平は、言わずと知れず「麦と兵隊」で知られる芥川賞作家。本名、玉井勝則。自伝的長編「花と龍」では、北九州の若松で、荒くれ者の沖仲士を束ねた両親(玉井金五郎とマン)を主人公に「切った、はった」の世界を生き抜く姿を活写しています。1962年の石原裕次郎と浅岡ルリ子、69年の高倉健と星由里子など過去5度も映画化された名作です。

中村哲氏は、数年前、本屋で偶然「医は国境を越えて」を見つけて、彼の生き方に共鳴して、「アフガニスタンの診療所から」「ペシャワールにて」など何冊か愛読したものです。医師が本職なのに随分、文章がうまいと思ったら、火野葦平の甥っ子だったのですね。中村氏の母親が玉井夫妻の次女秀子です。その母親の肩口に「勉命」と彫り物があったそうです。勉はもちろん、ご主人の名前。両親に結婚を反対されて駆け落ちしたそうです。「ウチの家系は一途な人が多い」という中村医師も「一途」の塊みたいな人です。

それに比べ、世界はもうすっかりアフガニスタンのことを忘れてしまっています。アメリカによって、「9・11の報復」という大義名分で戦乱を引き起こされたというのに、オサマ・ビンラディンもタリバンのオマル師も行方が知れていません。あの時、殺されたアフガニスタンの無辜の民に対して、我々はどう弁解したらいいのでしょうか。

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