ローマ
公開日時: 2007年3月8日 @ 10:08
渡辺淳一著「鈍感力」が売れているようですね。発売1ヶ月余で、36万部突破とか。驚異的な数字です。どうやら、現職以上に今も人気の高い小泉前首相が「この本はいい」と言ったとかで、売れ行きに拍車を掛けたようです。
宣伝のキャッチコピーを見ると、「鈍感力」とは、「へこたれない鈍さこそ、現代を生き抜く力。雑音は気にしない。嫌なことはすぐ忘れる。許す度量…」などとあります。
どこかで聞いて事がありますよね。昔から、人生、成功の秘訣として「運・鈍・根」が大切だと言われています。
運は運勢、鈍は鈍感力、根は根気…。ほら、ありましたね。
「嫌なことはすぐ忘れる」というのも、どこか「老人力」に通じます。
「許す度量」なんて、まさに昨日書いた「論語」で孔子が唱えた「恕」ではありませんか。
こういった類書、関連本の類には枚挙が遑がないことでしょう。
では、なぜこの本は売れているのでしょうか?
渡辺淳一だからです。
誰も無名の人が書いたものなんて読もうとはしません。
推理小説界の大御所、森村誠一氏も、若い頃、全く売れなかった時代、「作家にとって、名前がないということ(つまり、有名ではないという意味)は罪だと思いました」と語っていたほどです。
有名になった作家には、読者がついていきます。「限りなき透明に近いブルー」でデビューした村上龍氏は、いまだにベストセラー作品を書き続けていますが、「それは、デビュー作が100万部も売れたから。その100万人の読者がついてきているのです」という話を出版社の編集者から聞いたことがあります。
このように、出版界でも、売れている作家というのはわずかなのです。作家だけて食べていけるのは、全体の2割もいないのではないでしょうか。
芸能事務所でも、売れているタレントの2割が事務所の総売上の8割以上を稼ぐという「法則」を聞いたことがあります。
ところが、国税庁の05年の統計によると、株式売却などで稼いだ所得として確定申告した約2兆6千億円の約半分は、申告人数(約31万人)で1%にも満たない高額所得者(総所得2億円以上)の約2千人だったというのです。
要するに、売れる人はますます売れて、お金持ちの人はますますお金持ちに。ワーキングプアは、ますます貧しく。
そういうことなんすかねえ。