良識について

 テルミニ駅

 

昼過ぎの電車の中。読書をしていたのは、初老の男性一人のみ。隣りの隣りの席で、若い女が小型のゲーム機に没頭。イヤホンをしているので、音は漏れていなかったですが、指でピコピコ押す音が、うるさかったですね。本人は没頭して周囲の迷惑に気づいていませんでしたが。

 

そのうちに、隣りに座ってきた若い女が、携帯でメールかゲームを始めます。この人は禁じ手の音出しです。「シャーン、シャカ、シャカ、シャーン、シャカ、シャカ」 金属音が耳にイラつきます。溜まりかねて、私ではなく、隣りの隣りにいたおじさんが「うるさいぞ」と注意しました。ずるい私は、それに便乗して「音を消すことはできないの?」と非難したところ、その娘は「途中でやめられないもん」ときたもんです。すごい度胸。世の中怖いもんなし、といった感じでした。

 

政府政権与党は、目下、教育基本法を改正して、道徳教育に力を入れようとしています。こういう公共の場で不愉快な経験をすると、「どんな教育を受けているんだ?」と怒りに駆られます。小賢しいテストの成績ばかり重視する教育は、もう沢山。修身を復活せよ、という意見に与したくなります。

 

以前の日本人の美徳が全く通用しなくなりました。生存競争がそれだけ厳しくなったということでしょうか。掟破りの何でもありの無法地帯と化してします。要するに良識がなくなったのです。

 

「良識とは受身に立たされた側が云々することなのだ。行動の主導権を握った側は、常に非良識的に行動するものである」(塩野七生「海の都の物語」)

“良識について” への1件の返信

  1. 塩野七生

    塩野七生塩野 七生(しおの ななみ、1937年7月7日 – )は、東京都出身の作家、小説家。プロフィール東京都立日比谷高等学校、学習院大学文学部哲学科卒業。1963年からイタリアへ遊学し、1968年に帰国すると執筆を開始。雑誌『中央公論』掲載の『ルネサ…

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