幕別町
五木寛之著「林住期」(幻冬舎)を読了。2時間くらいで読めてしまいます。繰り返しが多く、同じことが書いてあったりするので、「随分、粗雑に作っているなあ」と思ったら、書き下ろしの単行本ではなく、新聞、週刊誌に書かれたものを寄せ集めしたようでした。五木氏は、昨年1年間で11冊も本を出したとおっしゃっていたので、あの年(現在74歳)で、すごいパワーだなあ、と思ったのですが、対談集や、こうした連載をまとめたものもありますし、やはり、それ相応だったということで安心しました。
ちょっと、最初からケチを付けてしまいましたが、五木氏が、現在、最も影響力の持つ作家の一人であることは間違いないでしょう。
この「林住期」も大いに納得してしまいました。古代インドで、人生を「学生(がくしょう)期」「家住(かじゅう)期」「林住(りんじゅう)期」「遊行(ゆぎょう)期」の4つの時期に区切って考える哲学が生まれたといいます。簡単に現在の「人生百年」をもとにして、言いますと、
「学生期」(0歳から25歳の青年)は、いわゆる青少年時代で、心身を鍛え、学習、体験を積む。
「家住期」(25歳から50歳の壮年)は、就職し、結婚し、家庭を作り、子供を育てる。
そして、50歳から始まる「林住期」(75歳までの初老)に人生の黄金時代と考え、自分の本来やりたいことを成し遂げる。
「遊行期」は、75歳から100歳の老年期。
というわけです。
ここでは、今まで、あまり省みられなかった「林住期」にスポットを当て、この時期にこそ、人生で最大のピークに持っていこうという発想なのです。もちろん、長年の使用で体にガタがくる時期ではありますが、開き直って「オマケの人生」であると認識せよ、と五木氏は言うのです。
「会社や組織に属している人間は、50歳で定年退職するのが理想だと思う。60歳では遅いのだ。人体の各部が50年をめどに作られているのなら、その辺で働くのはやめにしたい。あとは好きで仕事をするか、自由に生きる。働きたい人は働く。しかし、それは暮らしのためではない。生きる楽しみとして働くのだ。楽しみとは趣味であり、道楽である」
うーん、ここまで言われたら、私も早速、仕事をやめて、家出をして、放浪でもしますか。中年の皆さんには、随分、心励まされます。しかし、この本も大ベストセラーですから、一番得したのは五木氏と単行本化を熱心に奨めた幻冬舎の見城徹氏かもしれませんが…。あ、また、斜に構えてしまいました。