ヤメ検、昭和初期の若きエリート…

 ちょっとピンボケ


 インド象さんに奨められて「現代」10月号を読みましたが、なかなか読み応えがあってよかったですよ。750円の価値がありました。


 


 一番面白かったのが、やはりノンフィクションライターの森功氏の「ヤメ検ー司法に巣喰う生態系の研究」です。


公安庁元長官のヤメ検弁護士の緒方重威(しげたか=73)氏が、朝鮮総連の不動産売却にからんで詐欺事件として逮捕されましたが、緒方氏のような功なり名を遂げた、お金にも不自由をしていないように見える超エリートが、何で、こんな馬鹿げた事件を起こしたのか、一般庶民はさっぱり分からなかったのですが、事件の背後に潜むどす黒い闇が、この記事を読んで何となく分かるような気になりました。


 やはり、あれとあれだったんですね。


 


 非常に興味深かったのが、緒方氏の父親が、満州国最高検の思想検事として、戦時中に諜報活動家として名を知らしめた緒方浩弁護士で、公安調査庁の生みの親だったということです。


 


 緒方氏は、東京・六本木にあるTSKビルの再開発に乗り出すことが、最初に触れられますが、このビルはプロレスラーの力道山の盟友だった町井久之氏こと鄭建永氏が会長を務めた広域暴力団「東声会」が建設したビルだったということも明らかにされています。東声会は、あの政界フィクサーと恐れられた田中清弦氏を襲撃した団体としても知られています。


 このほか、NHKの人気キャスターだった宮崎緑さんの元夫だった椿康雄弁護士や、今年二月に大物華僑・葉剣英を自称して投資詐欺事件で逮捕された畑隆氏らも登場します。役者がそろった感じです。今回が第一回ですので、次回も楽しみです。


 


 佐藤優氏が、沖縄密約を証言した外務省元アメリカ局長の吉野文六氏の半生に迫った「国家の嘘」も面白かったです。吉野氏は旧制松本高校から東京帝国大学法学部に進み、大学3年で、高等文官試験の行政科、司法科、外交科のすべてに合格した超エリートだったのです。今で言えば、財務省官僚にも、裁判官にも、外交官にもなれるわけです。


 


 この論文を読んでいると、昭和初期の若きエリートたちのたたずまいが如実にわかりますね。当時、マルクス、社会主義が流行し、旧制弘前高校出身の太宰治(1909-1948)などは、組織に入って地下活動を展開し、後に転向する経験をしますが、吉野氏(1919-)は非常に理想的というより、現実主義的なところがあって、カント、ヘーゲル、ニーチェらドイツ観念論やマルクス主義関係の書物ではなく、アダム・スミス、ジョン・スチュアート・ミルら英国経験論やアメリカのプログマティズムの書物に惹かれていたというのです。高校生、とは言っても今の大学の教養課程に当たるのですが、その分際で、旧制高校の連中は、このような書物をすらすら読んでいたのですからね。今の学生は、くだらない民放のお笑い番組を見て、ガハハと笑っているか、ゲームや携帯にはまっているだけでしょう。


 


 明治期に創設された第一高等学校から第八高等学校までは、「ナンバースクール」(一高:東京、二高:仙台、三高:京都、四高:金沢、五高:熊本、六高:岡山、七高:鹿児島、八高:名古屋)と呼ばれ、多数の政財官学界に人材を輩出し、他の旧制高校から区別されていたということも興味深かったです。ナンバースクールの連中に入る連中は、いぎたない野心の塊のような印象も受けました。


 

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