複雑多難な国スリランカ

 4月21日に突然に、スリランカの最大都市コロンボなどで起きた爆発テロ事件。キリスト教会や五つ星の高級ホテルが襲撃され、200人以上が死亡し、この中で日本人も1人が死亡、4人が負傷したようです。

 何で起きたのか、専門家もまだ詳細に分析できないようですね。私の拙い知識では、スリランカというより、以前に名乗っていたセイロンの方が私の世代では馴染みが深く、それとともに、セイロン紅茶がすぐ思い浮かびます。また、コロンボは、「2001年宇宙の旅」などで知られるSF作家アーサー・C・クラークが永住していた街だったことが意外だったので記憶があります。スリランカは多民族国家で、1948年に英国から独立しましたが、仏教徒を優遇した政策から、仏教徒とヒンズー教徒との間で長い間紛争が続き、その紛争は10年ほど前に収まり、平和な国になったと聞いていました。

 日本の外務省の資料によると、スリランカ国内の宗教分布は、仏教徒70.1%,ヒンズー教徒12.6%,イスラム教徒9.7%,キリスト教徒7.6%。 民族は、シンハラ人(主に仏教)74.9%,タミル人(主にヒンズー教)15.3%,スリランカ・ムーア人9.3%となっています。

 今回襲撃されたのはキリスト教会と高級ホテルであることから、イスラム過激派が主犯で外国人観光客を狙ったものと言われてますが、その目的も狙いもさっぱり分かりませんね。観光産業を振興する政府に対する反政府運動なのかもしれませんが、観光の打撃になることは確かでしょう。爆発テロが遭った時、教会では復活祭のミサの最中だったという報道もありました。

 私自身、スリランカとは紅茶以外に個人的な接点はなかったのですが、驚いたことに、先日の大学の同窓会で謦咳に接した建築ジャーナリストの淵上氏からスリランカの建築家ジェフリー・バワ(1919~2003)の「生誕100年記念 現地建築ツアー」の案内が届いていたので、つい、大丈夫かなあ、と思ってしまいました。スリランカに世界的に著名な建築家がいたことも知りませんでした。でも、建築ツアーは9月開催ので、その頃までには落ち着いていることでしょう。

 そう言えば、日本人の多くに知られていないのが、スリランカ南部にあるハンバントタ港です。2017年7月にスリランカ側が中国国営企業に港の管理会社の株式の70%を99年間譲渡する11億2千万ドルの取引の合意文書に調印し、高金利債務の返済に困ったスリランカ側は、同年12月に中国側に港湾を引き渡したことです。これでは、まるで、アヘン戦争を起こした大英帝国が、戦勝後に香港を借款した手口を真似したような印象です。

 中国は、「一帯一路」戦略の一環として、借款した同港を軍港として整備しているとも言われています。日本の防衛省も、マレーシアのマハティール首相も、中国に依存することが「債務のわな」につながる可能性が高いと批判していました。

 こうしてみると、スリランカという国は、南国の穏やかな天国に近い島ではなく、国家財政が厳しく、多くの複雑な「内憂外患」を抱えていることが分かります。