業態を変えるのか新聞業界?=ジャーナリズムのレベルが民度のレベルでは?

beautiful Mt. Fuji Copyright par Duc de Matsuoqua

 最近ご無沙汰している日本新聞協会がネットで公開しているデータによると、2000年に約5370万部あった全国の新聞発行部数が、2020年には約3509万部に落ち込んだといいます。つまり、この20年間で、1861万部も激減したことになります。いわば20万部の地方紙が90紙も廃刊したことになります。

 内訳を見ると、一般紙が4740万部から3245万部へと1495万部減、スポーツ紙が630万部から263万部へ367万部減と惨憺たるものです。大雑把ですが、天下の読売新聞も1000万部から700万部、朝日は700万から400万部、毎日に至っては、400万から200万部へと、全国紙と呼ぶには「危険水域」です。

 書籍と雑誌の売上も1997年の2兆4790億円をピークに、2012年になると、その半分以下の1兆2080億円にまで激減しています(経済産業省・商業統計)。

◇スマホが要因?

 「若者の活字離れ」とか、「駅のキオスク店の廃業」などが原因と言われていますが、紙媒体の減少に拍車を掛けた最大の要因はスマートフォンの普及のようですね。総務省によると、スマホの世帯保有率が2010年末にわずか9.7%だったのが、2015年末には72.0%と、この5年間で急速に普及したといいます。

その店は築地の奥深い路地にあります

 その5年間に何があったかと言いますと、日本でアップルのiPhoneが発売されたのは2008年ですが、2010年からスマホは3Gから4Gとなったことが大きかったようです。これにより、データ量が大幅に増量し、文字情報だけでなく、動画もスムーズに観ることができるなど、まさにスマホは、日常生活で手離せないツールになったわけです。

◇ネットに負けた紙媒体

 その中で、ネットサイトの最大の「売り」のコンテンツがニュースだったのですが、1990年代の既成マスコミ経営者は、これほどネット企業が成長するとは夢にも思わず、ほぼタダ同然で、ドル箱のニュース商品をネット企業に渡してしまったことが後を引くことになります。(日本最大のヤフージャパンは、2000年の時価総額が50億円だったのが、20年後には3兆円にまで成長しています。月間250億ページヴューPVにも上るとか)

知る人ぞ知る築地「多け乃」 結構狭いお店と厨房の中に、スタッフが6人もいらっしゃって吃驚

 勿論、既成の紙媒体も指を咥えてこの動向を見ていたわけではありません。2011年から有料の電子版を発行した米ニューヨークタイムズは、コロナ禍の巣ごもりで購読者が増えて、2020年12月末の時点で500万件を超えたといいます(アプリと紙媒体を合わせると750万部)。NYTは、クオリティー・ペイパーと言われていますが、1990年代の発行部数は確か30万部程度の「ローカル紙」でした。また、19世紀から続く英老舗経済誌「エコノミスト」も電子化に成功し、紙で10万部そこそこだったのが、2020年の電子版は102万部に上ったといいます。

◇頑張っている十勝毎日新聞

 日本では、私も帯広時代に大変お世話になった十勝毎日新聞が、いまや1万人もの電子版の有料会員(本紙8万部余)を獲得していると聞きます。私が通信社の支局長として帯広に赴任していたのは2003年~2006年でしたが、当時の十勝管区の人口は36万人、帯広市の人口は16万人で、十勝毎日新聞の発行部数は9万部だったと覚えています。北海道といえば、北海道新聞の独壇場なのですが、十勝と苫小牧ぐらいが地元の新聞が頑張って部数で道新を凌駕していました。

結構、テレビの取材が入る有名店で、この日はカレイ煮魚定食 1500円 に挑戦。味は見た目よりも薄味でした

 ということで、数字ばかり並べて読みにく文章だったかもしれませんが、私自身、長年、新聞業界でお世話になってきたので、最近、「売れる情報」とは何かということばかり考えています。

 このブログも関係しているのですが、俗な書き方をすれば、「お金を出してでも欲しい情報」とは何かです。それは、生死に関わる情報かもしれません。その筆頭が戦争で、新聞は戦争で部数を伸ばした歴史があります。

 平和になっても、日本は災害大国ですから、地震や津波、洪水、地滑りなどの災害情報は欠かせません。

 結局、突き詰めて考えてみると、「医食住」に関わる情報が多くの人が有料でも手に入れたいと思うかもしれません。だから、グルメ情報もバカに出来ませんよ(笑)。

◇官報は無味乾燥

 今では、官公庁や役所、役場などがサイトで情報公開してますが、失礼ながら「官報」は、素材ですから、味気も素っ気もなく面白くありません。第一、素材を読んだだけでは、情報の裏にある背景や本当の真意も、よほどの通でなければ分かりません。

 となると、既成新聞は、これまで以上に、情報の解説や分析、歴史的背景、将来予想、そして何よりも政財官界の汚職追及と社会不正糾弾などで生き延びていくしかないかもしれません。新聞社は都心に多くの不動産を持っていて、「貸しビル業」で存命を図っているようですが、原点に帰ってニュースで勝負してほしいものです。

ジャーナリズムのレベルがその国民のレベルなのですから。