食を通して、国際問題を考えるシリーズー。第365回(フェイクです)の本日は、今、毎日の新聞紙面で見かけない日はないミャンマーとその料理です。
の、つもりでしたが、ガビーン。探して、探して、行ったらお店は閉まっていました。おかしいなあ…。月~金11:30~14:00はランチって書いてあったのになあ…。
世界中の料理が食べられる「世界のグルメ 銀座」の触れ込みなのですが、銀座にはミャンマー料理店は1軒もないようです。都内の「ミャンマー料理店」を探してみたら、どういうわけか、高田馬場に集中していて、ここだけ20軒近くあります。在日ミャンマー大使館は北品川にありますが、高田馬場は、在日ミャンマー人が多く住んでいるということなのかもしれません。
昨日のこのブログで、ロシア料理店のことを書きましたが、大好きな「チャイカ」は、高田馬場にあって、銀座から遠いので昼休みに行けない、といったことを書きました。ということで、同じように、高田馬場にあるミャンマー料理店にも行けそうにありません。
結局、もう一回調べたところ、銀座に近い新橋に1軒だけあることが分かり、本日はその店を目指して出かけたわけなのです。会社から急いで歩いて20分かけて。
「くしかぶき」という店でしたが、最初に書いた通り、さんざん探して見つけたと思ったら、閉まっていたわけです。コロナ禍の影響でしょう。仕方ないので、「証拠写真」としてメニューの看板写真を撮っておきました。
ここで、ミャンマー料理を食べながら、ミャンマーに思いを馳せるつもりでしたが、残念。仕方がないので、この近くの居酒屋「新橋三丁目 魚市場」という店で、コロナ禍で仕方なく始めたらしいランチ「漬け刺身定食」(980円)を食べながら、軍事政権下で苦しむミャンマーの人々への思いを馳せました。
ミャンマー国軍による突然の軍事クーデタが勃発したのは2月1日のことでした。それから全土で民衆のデモが広がりましたが、1カ月半経った3月16日の時点で、少なくとも180人を超える犠牲者が出ていると報道されています。
ミャンマーで何が起きたのか、何が起きているのかーについては、日経ビジネスの取材で、ミャンマーの政治・軍関係者とのつながりが深い日本経済大学の井本勝幸特命教授が明解に答えています。結論を先に言えば、混乱の要因は、国軍がここまで民衆の反発が強いとは想定していなかったことにあるといいます。民衆は、陰で文句を言いながらも、最後はクーデタや国軍の支配を受け入れるだろうと国軍が浅読みしていたからだといいます。
勿論、アウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)が国軍の動きを見誤り、対応に失敗したことが混乱の最大の原因です。しかも、スー・チー氏拘束でリーダー不在となり、NLDはほとんど機能していないといいます。
井本特命教授によると、表向き、全権を握ったのは国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官(64)となっていますが、裏で糸を引いているのは、旧軍政トップとして独裁体制を敷いたタン・シュエ氏(88)ではないかといいます。
また、ミャンマー国内外では、「中国が国軍を支援している」との見方が強まっていますが、むしろ、中国一辺倒だったのは、スー・チー政権の方で、国軍は中国の影響力の増大には危機感を強め、近年、中国ではなくロシアから兵器を購入していたといいます。クーデターの数日前にはロシアの国防相がミン・アウン・フライン総司令官と会談しているので、国軍は中国とロシア、そして中国の進出に神経をとがらせる隣国インドとのバランスをうまく取りながら、難局を乗り越えていこうしているのではないかと、井本特命教授は見ています。
なるほど、随分、すっきりした解説でした。
どうも、国際社会は、「スー・チー氏=善 VS 国軍=悪」と、単純に断罪しがちですが、そう物事は単純ではなさそうです。勿論、クーデタを起こし、民衆を武力鎮圧する国軍側に非があるという前提の上ですが、ノーベル平和賞受賞のスー・チー氏でさえ、ロヒンギャ族虐殺・迫害に関しては、黙認したことから、批判の矢面に立たされ評判を落としました。
東南アジアでは、お隣のタイ軍事政権もそうですが、軍人が最も高い水準の教育を受けることから、軍人のエリート意識は異様に高く、支配者階級となるのは当然だという傾向が強いと言われています。
日本とミャンマーの関係は深く、先の戦争では「インパール作戦」が展開され、援蒋ルートなどもできました。あの「戦場にかける橋」や「ビルマの竪琴」の舞台になったのもミャンマーです。現在では、日本政府の円借款などで、最大都市ヤンゴンから南東に20キロに同国初の経済特区ティラワが設けられ、多くの日本企業も進出しています。
ミャンマーは熱心な仏教徒が多いわけですから、殺生や争いごとは本来、なじまないはずです。旧宗主国の英国の影響力は低下し、恐らく水面下で、米、中、ロ、印による駆け引きが続いていることでしょうが、日本も何らかの形で解決に貢献できないものか。陳腐な表現ながら、一国民として願っています。