「大東亜以下⑨」が意味するところ

 本日は、いや、本日も、とりとめのない話です(笑)。

 一昨日のブログ「邪馬台国は我々の世代では『永遠の謎』で終わってしまいそう」という記事の中で、「貴様~!」と自分で書いておきながら、我ながら、「貴様とは、本来なら貴人に対する尊称なのに、いつの間にか、相手をののしる言葉になってしまったのは何故なんだろう?」と疑問を持ってしまいました。

 ある国語辞典によると、「貴様」は近世初期まで武家の書簡などで敬意をもって用いられたのに、江戸時代後期になると、同等またはそれ以下の者に対して用いるようになったといいます。理由はよく分かりませんが、「貴様」さんの身にしては、天国から一気に地獄に堕ちた気持ちになることでしょう。

 これは「御前(おまえ)」も同じことが言えます。古代では、神仏や貴人の前で言う尊称だったのに、これまた江戸後期から同等や目下の者に対する呼びかけとなったようです。何だあ、真逆じゃないかい! 幕末に言語革命でもあったんでしょうか?幕末は、新選組や渋沢栄一らの例に見られる通り、農民から武士に引き立てられるなど、かなり身分の厳格化が薄れていったため、話し言葉にも、格差解消が少し反映されていったのかもしれません。これは、私の説なので当てになりませんが(笑)。

東京・銀座 3丁目「囃shiya (はやしや) 」のハヤシライス1000円。見た目とは違って、こだわりの店らしく、濃厚で、この上なく美味でした。

 これまた私の感想なので当てになりませんが、日本語ってどうしてこう言葉が変化していくのでしょうか。以前、ドストエフスキーの翻訳家としても著名なロシア文学者の亀山郁夫氏にインタビューしたことがあるのですが、その時、同氏がドストエフスキーの時代の19世紀のロシア語と現代のロシア語とほとんど変わっていない、という話を聞いた時は、本当に吃驚したものでした。現代日本人は、もはや明治時代の文語文は容易に読めませんからね。

 21世紀になり、ネット社会になり、日本語の変化はますます秒速並みに早くなっています。今年の新語・流行語大賞には、米大リーグ、エンジェルス大谷翔平の「リアル二刀流/ショータイム」が選ばれましたが、例えば、3年前の2018年の大賞を覚えている人はほんのわずかでしょう。(答えは「そだねー」)

 今年の流行語のトップテンに選ばれた中で、「親ガチャ」「うっせぇわ」は何とか分かりますけど、「スギムライジング」「ゴン攻め/ビッタビタ」ともなると、私の場合、オリパラを熱心に見ていなかったので、知りませんでした。

 となると、時代の流行に敏感なJKら高校生クラスの間で流行ったといわれる「はにゃ?」とか「ひよっているやついる?」ともなると全くのお手上げです。

今朝は、就職情報サービス「マイナビ」が新卒大学生向けに6日に送信したメールのタイトル「<第1>大東亜以下➈」が「学歴フィルターを掛けている」と大騒ぎになっていました。

 私自身、「<第1>大東亜以下⑨」とは何を意味するのか分からなかったのですが、本日の読売新聞夕刊などによると、「大東亜以下」とは大東文化大学、東海大学、亜細亜大学の頭文字で、本来ならこの後、「帝国」と続き、それぞれ帝京大学、国士舘大学を意味するそうで「大東亜帝国」の大学の偏差値が「近い」というのです。確かに読売新聞は、偏差値が「高い」「低い」ではなく、「近い」という言葉を使っておりました。ただ、肝心の「⑨」については触れず仕舞いでした。

 実は、これは朝のラジオで聴いたのですが、この⑨は「まるきゅう」と読むらしく、ネットスラングで「馬鹿」という意味らしいですね。

 恐らく、メールを送られてきた学生さんは「馬鹿にすんな」と怒り心頭に達したのでしょう。

マイナビは「このメール作成とは別の作業でコピーしたワードをペーストしたもの。学歴によって一部の学生が有利になるようなことは行っていない」と苦しい弁解をしましたけど、逆に「学歴フィルター」を掛けていることがバレバレになってしまったわけです。

 ネットスラングにしても、すぐに広まってしまうわけですから、ネット社会の恐ろしさも痛感しましたよ。