ホモ・サピエンスが繁栄したのは「集団脳」のお蔭=ネアンデルタール人は何故滅亡したのか?

 2月24日のロシア軍による残虐で想像を超えた凄惨なウクライナ侵攻以来、人類の歴史に関してはすっかり興醒めしてしまいましたが、それではいけませんね。逆にもっと人類に関して勉強して知識を増やさなければいけません。

 そんな時、タイムリーな番組が放送されました。NHKスペシャル「ヒューマン・エイジ 人間の時代 プロローグ さらなる繁栄か破滅か」です。再放送も予定され、今後数年間に渡ってシリーズ化されるようです。「火星進出まで実現する技術を生み出す一方、戦争や環境破壊で地球の未来をも危うくしている人間。その先にあるのはさらなる繁栄か?破滅か? MC鈴木亮平と壮大な謎に迫る!」といった内容です。俳優の鈴木さんは、東京外語大英米語科卒で英語はペラペラ。インテリ俳優さんです。司会進行もしっかりしていました。

 今回、私が注目したのは、同じヒト属でありながら、現生人類であるホモ・サピエンスは生き残って繁栄したのに、何故、ネアンデルタール人は滅亡したのか?ということでした。30万年前に誕生したホモ・サピエンスは今や、火星移住まで目指す技術革新を遂げています。その一方で、ネアンデルタール人は4万年前に滅亡してしまいます。

 これについて、米ハーバード大学人類進化生物学のジョセフ・ヘンリック教授が「集団脳がヒトを動物より賢くさせた」という説を唱え、非常に納得しました。ヘンリック教授は世界各国の狩猟、漁猟民族を訪ねて、その集団の大きさ(人口)を観察し、人が多ければ多いほど、狩猟や漁労の道具が増えていることに注目します。

 ネアンデルタール人は数人の家族という小規模な集団で生活していました。一方のホモ・サピエンスは150人ぐらいの集団で暮らしていたといいます。小集団のネアンデルタール人は、道具も親から子、そして孫に伝わる過程でほとんど改良せず、同じ道具のままなのに、ホモ・サピエンスの場合は、「集団脳」が働き、技術革新され、さまざまな道具が生み出されてきたというのです。

 ヘンリック教授は「個人が賢いわけでもなく、一握りの偉大な天才のお蔭でもない。何世代にも渡って技術が累積するから高度な技術革新が生まれる。そのためには大きな集団が不可欠。大きな集団によってコミュニケーション技術も発達し、集団脳も働く」といった趣旨の発言をしていました。天才でもない煩悩凡夫の私は特に納得してしまったわけです。

 火星に行くロケットも、1980年代に発明された3Dプリンターがインターネット時代になってパテントが解禁され、世界各国からの「集団脳」が集積して飛躍的に技術的に進歩し、それによって、火星ロケットに相応しい軽量で部品が少ないエンジンが開発されていったというのです。

 番組では、人類の歴史上、過去250以上の文明が滅亡したので、その原因の分析と解明をするプロジェクトを進めていくとしています。滅亡した文明の中には、世界最古のシュメール(文字や戦車を発明)文明やローマ帝国、マヤ、アステカ文明などが含まれます。あれだけの栄華を誇った文明も必ず滅びるとしたら、現代の欧米やウクライナ侵攻しているロシアもいずれ滅亡するということなのかもしれません。

 自己中で強欲傲慢な人間嫌いになっても、結局、人類への関心は捨てられません。