「江戸の銭勘定」は一読の価値あり

自宅近くの本屋さん「よむよむ」で見つけた山本博文監修「江戸の銭勘定」(洋泉社歴史新書)を読んでます。

斯界の権威山本博士は監修になっているので、御本人の執筆ではなく、自分の東大の院生にでも書かせたのかもしれません。あくまでも空想に近い推測ですが(笑)。

それでも面白いことに越したことはありません。恐らくテレビの番組制作会社の三次団体の若いADがクイズ番組の種本にするにはもってこいかもしれません(笑)。

そもそも、私自身は、江戸を舞台にした時代劇や小説や歌舞伎に出てくるお金が今の幾らぐらいになるのか、素朴な疑問がここ何十年もあったのでした。この本はその疑問に見事に答えてくれます。

江戸時代は300年近くも続きましたから、そりゃ、物価の変動はかなりあったことでしょう。そこで、本書では目安として、文化文政期を基本にして、1両=18万円、1匁=3000円、1文=30円としております。

握り寿司一貫4文=120円、蕎麦一杯16文=480円、銭湯8文=240円で、大体現代と変わりませんが、酒一升250文=7500円はちょっと高いですね。

文化文政期の職人(上大工)の年収はおおよそ26両2分=447万円だったようです。

庶民の娯楽の歌舞伎の木戸銭は100文=3000円、大相撲となると銀3匁=9000円と結構したようですね。勿論、座席はピンからキリまでありますから、概算です。

「千両役者」ともなると、年収が1億8000万円ということになるんですか。花形ですね。

私が注目したのは、江戸時代の新聞、瓦版で当時は読売と呼ばれていたそうですが、今もあるじゃん!(笑)

この本によると、現存する最古の読売は、元和元年(1615年)5月8日発行の「大坂阿倍野合戦図」で、あの真田幸村が活躍した大坂夏の陣を報道したものらしいですね。江戸時代の探訪記者、従軍記者も頑張ってたんですね。

このことは、横浜にある日本新聞協会の新聞博物館にもない「新事実」でした(笑)。

関ケ原の戦いはつい最近のこと

「歴史人」の関ケ原特集

本屋さんが潰れてます。私の利用する駅前の書店はもう5年以上前に2軒も閉店しました。

私のシマである銀座界隈も、日比谷東芝ビルの旭屋書店が5年以上前に店仕舞し、銀座コアビル内のブックファーストも昨年閉店し、つい最近は、日比谷シャンテに入っていた八重洲ブックセンターまで先月いっぱいで撤退してしまったといいますからね。

いくら映像芸術が発展しても、文化の基本は活字ですから、出版文化の衰退には危機感を覚えます。

もっとも、書店廃業の原因の一つにはアマゾンの影響という説がありますから、「便利な」資本主義の総権現のような黒船に日本文化が乗っ取られたという言い方ができるかもしれません。

※※※※※

私としては、どうしても日本の伝統文化は残しておきたい信念の持ち主ですから、自宅近くの本屋さんは潰れてほしくない。そこで、月に何回か覗いて、何冊か本や雑誌を買って貢献することにしてます。

昨日買ったのが、写真の関ケ原の戦いを特集した「歴史人」という雑誌です。この雑誌はユニークで、日本仏教を特集したり、歴代天皇家を特集したりしており、たまに買うことがあります。

今、私も先日見た映画「関ケ原」が公開中のせいか、何冊か関ケ原を特集した本や雑誌が並んでいましたが、この「歴史人」が、地図やグラフィックや表を多用して分かりやすかったので、買い求めました。

映画を見た感想の中にも書きましたが、あの映画は原作は司馬遼太郎で、どうも講談調の(失礼!)司馬遼史観から抜け切れず、人物の相関関係がうまく描き切れていないと思いました。

それが、この雑誌では、通説では悪人となっている安国寺恵瓊や直江兼続なんかもちゃんと中立に「直江兼続には子孫がいなかったため、上杉の失策を全て押し付けられたところがある」などと冷静に分析しているのです。

まさに、私が欲しかった情報です。そもそも、後世の人間から見ると、天下分け目の関ケ原で、徳川方が勝利を収めることは当たり前過ぎるのですが、冷徹な石田三成が最初から負ける戦さをするわけはなく、当時は実はどちらが勝つか分からなかったのです。

わずか6〜8時間で、決着が付いた関ケ原の戦いですが、もし、小早川秀秋が裏切らなかったら、もし、島津と毛利が「高みの見物」ではなく、しっかり兵を動かして参戦していたら、西軍=三成の勝利になっていたはずでした。

この雑誌には、東軍と西軍の大名の顔写真(笑)から石高、戦後処理の状況まで事細かく書かれているので、大変参考になり、夢中になって読んでしまいました。

最後に驚くべきエピソード。敗軍の将、石田三成は、小西行長、安国寺恵瓊らととも京都六条河原で斬首の刑で晒されます。

しかし、どういうわけか、家康は三成の子息にまで刑を及ばせなかったんですね。お陰で、三成の孫のお振りの方が、三代将軍家光の側室となり、2人の間の千代姫の子孫が現代にまで生き延び、その一人が大正天皇の貞明皇后だというんですよね。

つまり、昭和天皇にも、今上天皇にも石田三成の血が受け継がれていたというわけです。勿論、徳川家康の血脈もですが。

そう考えると、400年前の天下分け目の戦いがつい最近のような気がしてきます。

「終わった人」は終わっていなかった人というお話

真夏の夜の夢 Copyright par Duc de Matsuoka

心に浮かぶよしなしごとを書き連ねて半世紀。一昨日の9月8日(金)、東京駅前の新丸ビルにある高級居酒屋「神田新八」で、小学校〜中学校時代の同級生だった三由君と石田君と3人で10年ぶりぐらいに懇親会を開き、昔話と病気自慢の話で花が咲きました。

お店の女の子に勧められるまま、高級魚と「森伊蔵」や「佐藤」とか「魔王」とか注文していたら、あとで眼の玉が飛び出るほどの金額を請求されてしまいました(笑)。

「男は過去の自分に用がある。女は未来の自分に忙しい」という格言があるらしいですが、男の方が案外女々しくて過去の自分に未練があるようです。

「ああしておけばよかった」「あの時、こうしておけば今頃、出世して日々の暮らしに困っていなかったはず」云々…。

とはいえ、あたしの場合は、大病したせいか、もう過去のことに拘りがないんですよね。三由君の場合も、小生よりもっと重い病気で9カ月も入院して会社も休職して散々苦労したので、今を生きる有り難みを感じているようでした。

桃源郷  Copyright par Duc de Matsuoka

彼は、子どもの頃から頭がよかったので記憶力は抜群でした。私が中学に入って、不良の友達と付き合うようになって、ボウリング場やビリヤード場に出入りしたり、タバコを吹いて(当時は吸うこと知らず=笑)、警察に補導されたりして、散々遊んで成績が急降下したこともよく覚えてました。

「タカちゃん(私の子どもの頃の愛称)は、学年でトップクラスだったのにね。平田典子は東京都で1番か2番で特別だったけど、俺とか、石田とか、バチローとか、高橋とか、須田とか、その隙にスイスイと成績上げていったなあ」などと、一応、過去の私を持ち上げてくれました(笑)。

東京都下の田舎の公立中学校でしたが、公務員住宅という団地から通って来る子弟(あたしもそうじゃん)もおり、東京都内でもトップクラスの子どもが多かったようです。考えてみれば、親が大蔵省や外務省や法務省などの役人だったわけですから、大人になれば、その理由は納得できます。

それにしても、思い出してみても、自分の中学生時代は、頭の中に蜘蛛の巣が張った状態で、勉強に手がつかず、おかしな行動ばかりしていました。

それでいて、つまらない自尊心があったので、自分より遥かにできなかった周囲の生徒からドンドン追い越されてしまい、挫折心の塊のような人間になってしまいました。

恐らく、今の捻くれ者の性格は、中学校時代に養われたんでしょうね(笑)。

陽朔 Copyright par Duc de Matsuoka

ということで、2〜3日前から内館牧子著「終わった人」(講談社)を読んでます。2015年9月16日初版。当時、かなり話題のベストセラーとなり、「終わった人」も流行語となり、私もよく使わせてもらってます(笑)。

小説を読むなんて、20年ぶりぐらいです。20年ほど前から、「他人の書く作り物や妄想に付き合っている暇はない」と偉そうに傲岸不遜な人間となり、読むものは、歴史や社会科学やノンフィクションに転向したためでした。

「終わった人」は、脚本家かドラマ作家が書くような小説で(そのままズバリじゃん)、読者が飽きそうになると、色恋ものを入れたり、登場人物が急死したり、現実ではあり得ないことのオンパレード。まるで、テレビドラマを見ている感じでした。

主人公の田代壮介は、盛岡市出身で、名門県立南部高校から東大法学部に入学し、1972年に同校卒業後、国内トップのメガバンク万邦銀行に入行したエリートして設定。49歳で関連会社に出向を命じられ、その会社で専務取締役となり63歳で定年退職して、それからの話がああだこうだと独白調で書かれ、投げだしたくなると、波乱が出てきて、最後まで読ませてしまうのはベテラン作家の力量ってことなんでしょうね。

結局、「終わった人」だと思っていたら、まだまだ、煩悩もあり、最後は、「終わってない人」じゃん、と思わせる小説かもしれません。

あ、批判ばかし並べましたが、IT企業のミャンマー進出の話や熟年離婚の話やら、色々タイムリーな話を盛り込み、あとがきによると、専門家にもかなり取材して書いたようで、ま、よく出来た小説でした。と、付け加えておきます。

書評「戦争の古代史」

「戦争の古代史」

北朝鮮が今朝、ついに日本の領空を侵犯してミサイルを飛ばしました。

グアムを目指していたはずなのに、北海道ですか。世界最強の米国の怒りを怖れてのことでしょうけど、やはり、北朝鮮の真意は図りかねますね。

東アジア情勢で、最大の不安定要素は朝鮮半島であることは、今に始まったわけではありません。実は、東アジアに人類、いや霊長類が住み着き始めた古代から、何らかのいざこざ、闘争、紛争、戦争があったことを最近知りました。

今読んでいる倉本一宏著「戦争の古代史 好太王碑、白村江から刀伊の入冠まで」(講談社現代新書)のことです。この本ほど、そんな東アジア情勢の歴史の謎を解き明かしてくれる本は、私は未だ嘗て読んだことはありませんでした。

実に面白い。目から鱗が落ちる逸話ばかり満載されてます。この3年、いや5年間に読んできた本の中で一番面白いと言っても過言ではありません!

古代史の中で私が最も興味があるのは、西暦663年の白村江の戦いなのですが、何で負けると分かっているようなあんな無謀な戦をしたのか後世の人間としては大変疑問に感じていました。

因みに、白村江の戦いとは、天智2年(663年)、百済の救援として出兵した倭・百済連合軍が、今の韓国忠清南道の白村江(いまだ、定説がないらしく、錦江河口から東津江河口までの間の海上が最有力)で、唐・新羅の連合軍に大敗を喫した戦争のことです。

この本では、この白村江の戦いの一部始終からその戦後のことまで明らかにされ、あっと驚かされます。

まず、無謀な戦について、後世の人間は単純にそう思うかもしれませんが、実は当時の最高支配者だった中大兄皇子と中臣鎌足が練りに練った深謀だったのではないか、と著者の倉本氏は大胆な仮説を立てます。

つまり、「中大兄らの起こした」対唐・新羅戦争というのは、負けることが分かって参戦し、実際に大敗したことによって、国民(という概念は当時ないが)に対して、中央主権の軍事国家を作らなければ、周辺の大国から滅ぼされてしまうという危機感を煽り、全国統一することができたというのです。

しかも、日頃から倭王朝の言うことを聞かずに、土地の私有権を独占してきた地方豪族から徴兵したお陰で、大敗によって地方豪族の力が衰え、倭政権に刃向かうことをできないようにしたのではないか、と著者の倉本氏は大胆過ぎるほどの可能性を示唆するのです。

外敵を利用して結束を図るというやり方ですね。これは参った!

この本で非常に感心したことは、白村江の戦いの後の状況まで詳述してくれていることです。百済から亡命した人が、続々と日本にやって来て色んな地方の土地を充てがわれたりします。

(「続日本書紀」には、桓武天皇の母親が百済出身の高野新笠だったなどと書かれているように、半島からの渡来人は、高位高官から職能集団に至るまで現代人が想像するよりかなり多かったようです。その反対に、任那に日本府があったように、早い時期からかなりの倭人が半島に進出していたようです。)

また、白村江の戦いに敗れて唐に捕虜になった築紫の兵士が実に44年振りに帰国したという記述があることには驚かされました。

先の太平洋戦争では、グアム島の横井庄一さんが28年振り、比ルバング島の小野田少尉が29年振りに日本に帰国して、度肝を抜かされましたが、それよりも長く、古代に44年間も捕虜になって帰国した兵士がいたとは驚きです。しかも、古代人ですから、寿命だって60歳そこそこだったことでしょう。ただただ驚くばかりです。

まだまだ色々と書きたいのですが、古代の人の名前が随分と粋で通好みなので笑ってしまいました。教科書にも載っている遣隋使の小野妹子の曽孫が、後に新羅使や渤海使になりますが、その名前が小野田守、つまりタモリさんなんです(笑)。

蘇我馬子や入鹿、蝦夷も随分変わった名前だと思ってましたが、例えば、第一次百済救援軍の将軍として、物部熊(もののべのくま)、阿倍比羅夫(あべのひらふ=東北の蝦夷征服)、守大石(もりのおおいわ)などと、当時としては普通でしょうが、今では随分変わった名前の人がいました。また、日本に滞在していた百済の王族豊璋(後の百済王)の護衛として百済に渡った武将に狭井(さいの)あじまさ、秦田来津(はだのたくつ)などという人もいました。現代のキラキラネームもビックリです。

そうそう、忘れるところでしたが、5〜6世紀頃の三国時代(高句麗、新羅、百済)。朝鮮半島南部の新羅、百済が韓族だったのに対して、今の北朝鮮の高句麗は、北方ツングース系民族のはく族だったというのです!これは、全く知らなかったことでした。

高句麗は、今の中国東北部からロシアのハバロフスク辺りまで勢力を伸ばしていたようです。

今の北朝鮮にどれくらいの高句麗の子孫が残っているのか知りませんが、これでは、北朝鮮が韓国(新羅)や日本(倭)と対立するのは、今に始まったわけではない、1500年以上昔からの因縁ではないかと、勘繰ってしまいたくなりました。

本書にも少し出てきましたが、現代韓国では、白村江の戦いも任那も、古代に滅亡した百済も教えられていないので、殆どの韓国人は知らないそうです。

村上世彰という人物

滝の城址

昨日は久しぶりに体調崩しましたが、一日寝たら回復しました。まだ、若いです(笑)。

読了しました村上世彰著「生涯投資家」(文藝春秋)の中で、備忘録として残したいことを引用しときます。

●日本の株式市場の規模は約600兆円。米国の規模は2000兆円で日本の約3.5倍だが、両者とも上場企業の数は2000数百社と変わらない。

●日本の株式市場の比率は、外国人投資家30%、事業法人20%、信託銀行20%、個人20%、生保・損保5%、都銀・地銀5%。

●米国の比率は、個人・投資信託55%、年金15%、外国人投資家15%、ヘッジファンド5%、その他10%。

村上さんは、IRR(内部収益率)、MBO(マネジメントバイアウト)、MSCB(修正条項付新株予約権付社債)、ROE(収益力指標)など専門用語を駆使して、色んな提言をしておりますが、上記の数字を覚えておけば、この本を読んだ甲斐があったというものです。

そもそも、村上さんが2006年に逮捕された容疑は「インサイダー取引」でした。このことについて、本書でも詳しく触れられ「納得いかない」とご本人は弁じ、読者も確かに「この程度のことでインサイダー取引になるなんてかわいそう」という思いにさせられます。

しかし、彼は、容疑を掛けられた取引で幾ら儲けたのか、はっきり書きません。彼は、2億円払って保釈されたようですが、それ以上儲けていたということでしょう。

一部の報道では、彼が儲けたのはインサイダー取引史上最高額の30億円とありました。まあ、村上ファンドは4000億円以上の資金を運用していたといいますから、30億円など端金なんでしょうけどね。

恐らく、彼は、これらの金で保釈後、様々な分野に投資して、資産をさらにさらに膨らませたようです。飲食業、介護業…。中でも一番大きいのは不動産業です。彼はこの本の中で、日本国内は勿論のこと、海外ではシンガポール、インドネシア、ベトナムなど東南アジアを中心に、住宅数千戸を販売し、現在建築中などが一万戸、土地の広さが30万平方メートル、延べ床面積100万平方メートルの物件に投資している、と書いてます。

(ただ、彼は儲けるだけではなく、社会還元のために「村上財団」を設立して、東日本大震災では炊き出しを行ったり、かなり多くのボランティア活動をしていることも書かれていたことは、付け加えておくべきかもしれませんね。)

結論、「資本がなければ生涯どころから最初から投資家になれましぇん」

「生涯投資家」を読み始めて

盆栽美術館

スマホ中毒なので、こうして1日も休ませてくれません。

まさに、スマホ依存症なのかもしれませんね。1日我慢できても、3日間、スマホをやらないことはとてもできません。 困ったもんです。

今、文藝春秋が送る話題騒然、沸騰の村上世彰著「生涯投資家」を読み始めましたが、なかなか面白いです。

あのインサイダー取引容疑で逮捕された「村上ファンド」の創業者の回顧談です。著者近影の写真を見て吃驚仰天。あの「物言う株主」として怖いもの知らずで、ブイブイ言わせていた超々やり手の投資家が、今では髪の毛は白くなりすっかり老人になっていました。

70歳代に見えましたが、ちょうど昨日8月11日が誕生日だったようで、まだ58歳の若さです。恐らく、あれから相当苦労と辛酸を舐めたことでしょう。

ま、本書を読むと、そのあらましが書かれています。悪く言えば、自己弁護の塊に見えなくもないのですが、単なる文章を読んだだけではありますが、想像していたような傲岸不遜ではなく、かなり謙虚で反省もしているようで、「コーポレートガバナンス」という自己の信念を最後まで曲げなかったということは大した人物だと思いました。

私は投資はズブの素人ですが、この本を読んで初めて投資家の世界が少し分かったような気がしました。

それは最終的には、人間同士の信頼関係なんですね。

村上氏はお世話になった人を沢山挙げています。一番影響を受けた人物が、「政商」と言われたオリックスの宮内義彦会長。(ああ、あたしも昔、ハワイで待ち伏せして捕まえて話を聞いたことがありました=笑)この他、最終的には迷惑を掛けてしまった福井俊彦・元日銀総裁、藤田田・日本マグドナルド社長、リクルート創業者の江副浩正、セゾングループの堤清二会長、元大本営陸軍参謀の瀬島龍三…といった錚々たる大御所です。

「なるほど、こういう人脈からトップシークレットの情報が取れるのか」と感心しましたが、結局、長続きした人もいれば、一度お話を聞いただけでその後はプッツリ切れてしまった人もいたと正直に書かれていました。

異色だったのが、小池百合子・現都知事です。著者が通産省官僚時代にエジプトで大型プロジェクトを手掛けた際、行きつけのカイロの日本食レストラン「なにわ」のオーナーから「娘がアナウンサーをやっているから会ってほしい」と言われ、日本でお目にかかった人が、今の都知事だったそうです。世の中確かに狭いですね(笑)。

著者は、台湾出身の父親に多大な影響を受けたことなど、出自についても書いていますが、どういうわけか、高校や大学名など一切触れないんですね。神戸の灘中・高校から東大法学部~通産省という超エリートコースだったため、書くのが気が引けたのでしょうか?

まあ、こんなことは彼にとっては瑣末な話なんでしょうね。

とにかく、著者は、投資が好きで好きでたまらないようで、何と小学校3年生で初めて株式投資を始めたというぐらいですから、うまいタイトルを付けたもんだと思いました。

「資本主義という謎」の衝撃

大宮盆栽村 Copyright par Keiryusai

エコノミスト水野和夫氏と社会学者の大澤真幸氏による対談「資本主義という謎」(NHK出版新書)を読み始めております。

初版が2013年ということで、もう4年も前の本ですが、久し振りにエキサイティングな本で、知的好奇心を満足させてくれます。

この本は、「どうせお前さんには社会科学の知識が足りないだろうから」という友人の本山君が貸してくれたもので、当初は全く興味がなかったのに、読み始めるとグイグイ引き込まれてしまいました。「食わず嫌い」では駄目ですね(笑)。

大宮盆栽村 Copyright par Keiryusai

この本が面白いのは、あの共産主義であるはずの中国共産党まで染まった資本主義経済とは一体何なのか、その歴史的背景を担保にして明快に分析してくれていることです。

水野氏は、フェルナン・ブローデルやカール・シュミット、大塚久雄らの著作を引き合いに出して、大変説得力のある論理を展開しています。

特に、印象的なことは、資本主義の誕生と成長にはキリスト教、その中でもプロテスタント、もっと細かく言えばルター派ではなくカルバン派の役割が大きかったという説です。

その前に何故、資本主義が欧州で起きたかという素朴な疑問です。(水野氏は、資本主義の勃興を12世紀のイタリア・フィレンツェ説に賛同しております)近世ヨーロッパが大航海時代で海外諸国を植民地化してのし上がる前は、世界一の富裕大国だったのは中国でした。何故、その中国で資本主義が起きなかったのか?また、何故、国際的に商人が大活躍していたイスラム世界ではなかったのか?という疑問です。

この中で、中国に関しては、1793年に清の皇帝が英国のジョージ3世に宛てた手紙が残っており、そこには「我々の生産品と交換に異国の生産品を輸入する必要はない」とはっきり書かれていたそうです。

つまり、中国は遠方から財やサービスを輸入するほど国内ではモノ不足がなかったから、資本主義も発達しなかったわけです。

イスラム世界に関しては、利子を禁止されていたからというよりも、「コーラン」に書かれている相続法によって、遺産は多数の家族に厳格に等分に分配されるため、イスラム経済圏を膨張させる資本の蓄積が十分ではなかったからという説が有力なんだそうです。

大宮盆栽村 Copyright par Keiryusai

水野氏は、リチャード・シィラ、シドニー・ホーマー共著「金利の歴史」(紀元前3000年のシュメール王国から金利があった!)をもとに、利子率革命の歴史を辿って、資本主義誕生・発達の背景を探ります。

●1555年=ピークの9%(アウブスブルクの和議=神聖ローマ帝国内で初めてルター派が認められる)
●1611年=2%を切る
●1622年=4%台に上昇(英、蘭が東インド会社設立。仏ブザンソンの「大市」の支配者だったジェノヴァが、アムステルダムの「取引所」に取って代わられる)
●1648年=(カトリックとプロテスタントとの30年戦争終結のウエストファリア条約)

この間、利子を禁止していたカトリック教会の監視の目をくぐって、イタリアのメディチ家が為替のテクニックを使って、実質的に時間が金利を生んでいく手法を生み出していく様も描かれます。

時間を支配するのは「神」の独占特権事項だったため、教会の権力が強かった中世までは、カトリックが経済規範を握っていました。それが近世になって宗教革命~宗教戦争~和解などのプロセスを経て、資本主義の萌芽と成長につながっていくというわけですね。

これは実に面白い!

岡本昌巳著「株で勝つ習慣」

王子の狐火と装束榎

岡本昌巳著「40年稼ぎ続ける 投資のプロの 株で勝つ習慣」(ダイヤモンド社)は、私の高校時代の友人が書いたという、ただそれだけの理由で、渓流斎ブログの「お薦め本」になりましたが、読んでみると、確かに、「この道40年」のプロだけあって、ツボを押さえていると思いました。

全くの素人にとっては、分かりづらいかもしれませんが、初歩的知識があればかなり参考になることが書かれています。

勿論、そんな安易に、何の努力もしないで、儲かるような話はこの世にあり得るわけがなく、まず疑ってかからなくてはなりませんから、この本は大丈夫です。

つまり、この本には安易な方法は書いておりません。はっきり言って、かなり七面倒臭い方法しか書いていません(笑)。私なんか、チャート式とかは、「終わった後の結果論」か「背後霊」のような感じがして、最初から放り投げていますが(笑)。

具体的に何処の会社のどの銘柄を買えば儲かるとも書いていませんが、それに近いことだけが書かれています。日々のニュースに接して、気になる会社の業績や株価予想を「四季報」などで、プロ顔負けに勉強して研究し、「友だち銘柄」を沢山作り、その中で「これだ」と思った銘柄を時機を見て買う、というのが岡本方式です。

そのためには情報収集が欠かせません。

岡本君とは卒業以来何十年も会っていませんでしたから、彼が「株式市場新聞」という専門紙で長年記者をやっていたことは知りませんでした。彼はこの新聞社を辞めて、今はフリーの経済ライターとして雑誌等に寄稿したり、セミナー活動を行ったりしています。

ですから、今でも「現役」として情報収集活動を行っているわけです。
本書は、その情報収集のノウハウ本として活用すれば一番良いのではないかと、私なんか思ったわけです。

彼が、新聞記者だった頃、特許庁にまで足を運んで、いちいち問い合わせて、資料を探してコピーをしていたのに、今ではインターネットが発達したおかげで、自宅に居て、簡単に特許情報が取れる、といったことも書かれています。
王子稲荷大明神

今のようなマイナス金利の時代、例えば、1000万円という高額資金を1年間、メガバンクの定期預金にしても、税引きで700円ちょっとしか利子が付きません。こんなんでは、銀座でランチもできませんよ。(笑)

ですから、小学校高学年から英語ではなく、株式投資の基礎を教えるべきだと私なんか思っています。昔は、「そんな博打を教えるなんてとんでもない」という偏見で凝り固まっていましたが、2000万分の1でしか当選する確率がない宝くじを買うより、競馬競輪競艇等をやるよりも、ある意味では株式の方が確率的には高く(その分、損する割合も高く)、また、実際に投資なんかしなくても、マクロ、ミクロ経済から会社法、決算書、会計、国際時事問題まで付随して勉強しなければならないので、将来、英語なんかよりも必ず役に立つと思うのです。

とはいっても、株式投資に関してはかつて、かなり痛い思いをしたことがある小生ですので、最終的には御自身の判断、いわば自己責任で投資すべきだというのが、こんな誰が読んでいるのか分からないブログで書ける最低線のことでしょう(笑)。(株式投資をしない、という選択でもいいのです)

今は、ネットのサイトで簡単に情報収集ができるということで、岡本君がいつも重宝しているというサイトの一部を列挙しておきます。(下線が付いた青い文字をクリックすると、そのサイトにジャンプします)

●ヤフーファイナンスの「株予報」

株探 (材料テーマ関連銘柄探してで最も重宝する)

モーニングスター (岡本君が外出した時などにスマホで最も良く見ているサイト。有料版もある)

コロ朝ニュース (プロの目で厳選された情報の玉手箱)

世界の株価(各国の株式、為替などのチャートが読みやすい)

東証の「適時開示情報閲覧サービス」(上場企業の決算やリリースが最も早く読める。私もかつての職場で利用さしてもろた)

特許情報のプラットフォーム「特許・実用新案、意匠、商標の簡易検索」 (かつては特許庁まで足を運ばなければ入手できなかった情報)

岡本昌巳君の新刊「40年稼ぎ続ける投資のプロの株で勝つ習慣」のお知らせ

京都・祇園祭 菊水鉾 par Kyoraku sensei

 業務連絡です。

海城高校時代の友人の岡本昌巳君が、7月21日に新刊「40年稼ぎ続ける投資のプロの株で勝つ習慣」を出版します。版元はあのダイヤモンド社ということですから、編集者もしっかりしていることでしょう。

 彼は「ノウハウ本を書くのはこれが最後になると思います。ということで、今回はマジに印税狙いで行きます(笑)。次回作は小説か童話か!? それも今までなかったようなものに挑戦したい」と意気込んでおります。

 たまたま、このブログで海城学園の125周年記念誌のことを書いたところに、偶然にも彼からメールが来ましたので、私も1冊、門外漢ながら注文致しました。この1冊で、億万長者になるつもりです(爆笑)。

 岡本君は、高校時代から200枚以上の長編小説を何本も書いていて、野坂昭如や五木寛之らを目指して、早大文学部中退という大先輩作家と同じ道を歩みました。それが、どういうわけか、小説ではなくて、食うために(?)、経済評論家の道を歩んだようでした。

 高校卒業以来、数十年間、全く会っていませんでしたが、彼が幹事役をかってくれて、久しぶりに同窓会を開いたことがあります。あれからもう5年も経ちます。月日が経つのは本当に早い。

 その時、岡本君は、千利休か宗匠さんのような怪しげな帽子(?)と和服を着込んで、いかにも胡散臭そうな怪しい人物を自ら演出して周囲を煙に巻いていました。

 まあ、昔の仲間ですから、頑張ってほしいもです。ご興味のある方は、ネットで検索してみてください。

New Orleans Par Duc de Matsuoka Quaka

 と、「検索してみてください」と書きましたが、今は本当に、ネットなしでは考えられない時代になってしまいました。

 総務省が最近、テレビとネットの1日の利用状況を調べたところ、2016年の年代別の利用で、10代~20代は、テレビの視聴よりもネットを利用する時間の方が長いことが分かったのです。30代になると、やはり、テレビの利用時間の方がネットより長くなり、爺いや婆あになればなるほど、テレビが圧倒的になります。

10代では、テレビが80分でネットが140分に対して、50代は、ネットが100分でテレビは200分と2倍、60代ともなると、ネットが50分で、テレビが250分と5倍にもなっているのです。(数字はアバウトです)

これからの世界を背負って立つのは、10代から~20代ですが、この傾向はますます強まっていくことでしょう。

彼らは英語で、digital native と呼ばれます。つまり、生まれた時から、パソコンやデジタル機器に囲まれて育ってきた世代なわけです。

中学生の将棋の藤井四段が話題になってますが、彼もネットの将棋で強くなったとか。

このまま行けば、メディアの世界も変わり、いや、変わっていかざるをえないことでしよう。

個人的には、あまり悲観してませんが、これからどんな世界になるのか、全く想像もつきません。

官僚に告ぐ、君たちは国民を搾取しているのかえ?

New Orelans Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

大阪にお住まいの堂島先生からの情報によりますと、産学共同で「東大病院」が、優秀な医者による会員制の「医療クラブ」ができたそうです。入会金が200万円で年会費は50万円。最高級の医療器材による「人間ドック」と、最高の医療スタッフによる医療が受けられるそうです。

 しかし、世の中はそういった恵まれた人間はほんのわずかですよ。人口の10%もいないでしょう。

 元国税調査官と称する大村大次郎さんという恐らくペンネームと思われる方が書かれた「これは官僚によるタックス・テロだ! 『見えない』税金の恐怖」(ビジネス社)は、読めば読むほど、恐怖に駆られてしまいます。
 ●奨学金という搾取機構 

 ●なぜ、日本の公共料金は世界一高いのか?

 ●サービス残業という酷税

 ●天下り官僚の手数料ビジネス
 
 ●貧困という重税

 ●なぜ日本は「見えない税金」が多いのか?

 ま、目次を見ただけで、ぞっとします。

 以下、例によって、換骨奪胎で引用しますと―。
 
New Orelans Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

 ◎日本の大学の授業料は、実質、世界一高い。国立大学の授業料も昭和50年は年間3万6000円だった。それが平成元年は33万9600円となり、平成17年から53万5800円にまで急騰。

 ◎日本の財政悪化は、少子高齢化が原因ではない。1990年代から2000年代にかけて、貿易赤字に苦しんでいた米国の言いなりで日本は600兆円以上もの超巨額な公共事業を行ったからだ。

 ◎福島原発事故が起きる前、東京電力社長の役員報酬は7200万円だった。また、2011年3月期決算によると、電力会社10社の広告費合計が866億円だった。東電の場合は、テレビ、ラジオ、新聞の広告費が年間116億円。これでは、東電の批判などできないだろう。

 ◎東電の原発事故処理は約21・5兆円といわれ、これは電気料金の中に上乗せされて、結局、このつけを国民が支払っている。

 ◎つまり、電力会社とは、国から守られた美味しい商売で、莫大な報酬を手にし、経団連の重要ポストなどを掌握して財界のボスとして君臨し、マスコミに金をばら撒いて批判を封じ、事故が起きて損失が出たら国民の税金で補てんを仰ぐ、そういう存在だ。(96ページ)

New Orelans Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

 ◎確定拠出年金は、国に支払う手数料が異常に高い。まず、口座開設手数料として、「国民年金基金連合会」という国の機関に2777円支払う。その上に、「口座管理費用」という名目で毎月103円の手数料を取る。しかし、こんな手数料を何で取るのか全く意味が分からない。これは、ピンハネ以外の何モノでもない。

 ◎なぜなら、「国民年金基金連合会」が厚生労働省などの天下り先になっているからだ。つまり、霞ヶ関の官僚たちの天下り先にお金を回すために、手数料を異常に高く設定しているのだ。

 ◎雇用保険や労災は、独立行政法人「労働政策研究・研修機構」と独立行政法人「労働者健康安全機構」が業務を請け負っている。こういった労働保険業務は、別に厚労省が直接やればいいだけの話なのに、官僚がこれらの機構を自分たちの天下り先としてつくっている。結局、国民はピンハネされているのだ。

 ◎役人はなぜ無駄遣いをしたがるのか?それは、官庁にとって、予算を残すことは「絶対悪」であり、絶対に使いきらなければならないからだ。ありもしない出張をでっちあげたり、不要なものを購入したりするのも、こういう理由で生まれてくるのだ。

 ◎会計検査院は強い権限を持っているのに役立っていない。筆者も、国税調査官として会計検査院と一緒に検査に立ち合ったことがあるが、彼らは信じられないくらい悠長で呑気でいい加減だ。だから、省庁の多くは会計検査院のことなど怖がっていない。実際、彼らよりマスコミや市民オンブズマンの方がよほど多くの税金の無駄遣いを見つけてくる。

 ―どうですか?皆さん。あきれ果てましたか?

 まあ、電力会社の幹部や霞ヶ関の官僚のすべてがこんな輩とは限りませんが、「いやそんなことはない」「フェイクニュースだ」と異議を唱えてくれる骨がある官僚、元官僚はいませんかねえ?特に、元厚労省キャリアの東大出身の超エリート豊田真由子議員とか。