「日本会議の正体」

目黒不動尊(目黒とは、眼が黒いのではなく、馬の畔道という説があり、ビックリ)

松居一男です。この度は、世間の皆様にはお騒がせ致しました。

さて、青木理著「日本会議の正体」(平凡社新書)を読了しました。

この本は、菅野完著「日本会議の研究」(扶桑社新書)と対をなすもので、性格もアプローチの仕方もちょっと違います。

菅野本が、地を這うようにして泥んこになりながら、この安倍政権に多大な影響を与えている右翼団体の実体を探ろうと格闘している様がよく現れているとしますと、大手マスコミ出身の青木本は、最初から大きなハンディをもらい、余裕で大所高所から俯瞰的に論じている感じです。

菅野氏は一人で格闘していたのに対して、青木氏は、出版界では有名で優秀な編集者の「金澤君」(小生もお会いしたことあります=笑)を引き連れたり、週刊誌「AERA」の連載を語り、主語も「私たち」だったりします。(新潮社新書の編集者安河君も頑張らなければいけませんね)

菅野本は、ほぼ「生長の家」一色なのに対して、青木本は、海外の論調にも目配りし、もっと全国規模の右翼団体の緩やかではありますが、緊密な連係と歴史を描いております。

どちらかと言えば、後世の資料的価値があるのは青木本ですが、独特の文体の菅野本は、推理小説を読むような謎解きの部分があり、面白さではこちらに軍配が上がりました。

いずれにせよ、両方読めば、貴方も日本会議通になれることは間違いないでしょう(笑)。

本居長世の碑

例によって、青木本を備忘録として換骨奪胎で引用しますとー。(著者に倣って敬称略、肩書等はいずれも当時のもの)

●日本会議は1997年5月30日、有力な右派団体「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」が合流する形で産声をあげた。

●前者の「国民会議」1981年に発足。議長は加瀬俊一(外交評論家)、運営委員長は黛敏郎(作曲家)。主な役員は、清水幾多郎(学習院大学教授)、江藤淳(評論家)、瀬島龍三(伊藤忠商事会長)、井深大(ソニー名誉会長)、塚本幸一(ワコール創業者)、百地章(日大教授)、大原康男(國學院大教授)ら。

※他に世間では有名な右翼論客がほぼ全員参加しておりますが省略。百地さんは、菅野本でもよく出てきた生長の家筋。ソニーの井深さんは意外でした。

●後者の「守る会」は1974年、主に右派系の宗教団体を中心に結成。呼び掛け人は、鎌倉円覚寺貫主などを歴任した臨済宗の朝比奈宗源。彼は、尾崎行雄や賀川豊彦らと「世界連邦運動」などを繰り広げた。代表委員などの役員は、伊達巽(明治神宮)、谷口雅春(生長の家)、富岡盛彦(富岡八幡宮)、蓮沼門三(修養団)、安岡正篤(陽明学者)ら。

※いわゆる屋台骨の生長の家など新興宗教だけでなく、既存の伝統宗教もかなり入会しておりました。この中での注目は、修養団の蓮沼さんですね。私も渓流斎ブログ2017年2月10日付「蓮沼門三~修養団~フジタ」で、この方について、詳しく触れております(笑)。

●15年4月現在、日本会議の会員は、約3万8000人。年会費1万円。維持会員3万円、篤志会員10万円、女性5000円。

※女性にやさしい。

●全国に8万数千社ある神社の90数%を束ねる「神社本庁」が結成した神道政治連盟(神政連)国会議員懇談会のメンバーは、衆参両院合わせて304人。(衆院223人、参院81人)

●JR原宿駅近くの一等地にある明治神宮は、内苑と外苑を合わせて数十万坪の敷地を所有し、神宮球場や結婚式場の明治記念館、テニスクラブ、ゴルフ練習場などで、グループ子会社の年間売上高は約110億円(「ダイヤモンド」2011年7月2日号)。

※財政が苦しい日本会議の頼みの資金源になっているようです。

●海外メディアは日本会議のことを「極端な右派」(米CNN)、「極右ロビー団体」(豪ABC)、「強力な超国家主義団体」(仏ルモンド)などと報道。

※欧米メディアの報道が正しいとは限りませんが、日本のメディアが報道するはるか以前からかなり辛辣な色眼鏡で日本会議には注目していたようです。

と、ここまで書いていたら、都議会選挙で自民党が歴史的惨敗に終わったことから、早くも「潮目が変わった」との報道のオンパレード。

世の中の速い動きにはついていけましぇん。

日本会議の関連本が続々

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毎日、毎日、糠に釘を刺すような作業を行っているので、「自分でも、あにやってんだか」といった気分になることもあります。

でも、結構、このブログを読んでくださっている方もいらっしゃるんですね。半年ぶりでも…(笑)。

色々、コメント頂き、感謝申し上げます。

困ったことに、コメントは、毎回「もう、疲れたから、やめようかなあ…」と思った矢先に来ますので、こうしてコメントを頂きますと、「ま少し続けてみるか」という気にもなります。もしかして、戦略にはまってしまっているのかもしれませんが(笑)。

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さて、せっかく19世紀のパリに住んでいたのに、また現代日本に引き戻されてしまいました。

菅野完著「日本会議の研究」(扶桑社新書)を読了しまして、今、青木理著「日本会議の正体」(平凡社新書)を読んでいます。

すっかり、日本会議にやられてしまっております。確かに、日本会議関係の本は、柳の下のどぜうの如く、2匹も3匹も、いや10匹も現れだしました。「ジャーナリストの飯のタネ」と大阪にお住まいの堂島先生は喝破しておりましたが、私もうまく乗せられているのかもしれません。

日本会議の関連本で嚆矢となった菅野氏の著書「日本会議の研究」の最後の「むすびにかえて」の中で、彼は、実に冷静にこの極右団体を分析しております。

菅野氏が、日本会議の本を執筆することを決めたきっかけは、これだけ、安倍政権に深く食い込み、影響力が天文学的に絶大なのに、どこのメディアも解明しようとも、取り上げようともしない。それなら、自分でやるしかない、という憤りで始めたらしいのです。

毎日図書館に通い、古書を漁り、現場に行き、人に会い、取材ノートが7冊を超え、集めた資料は段ボール12箱程度に及んだそうです。

そして、分かったことは、当初の「巨大組織」というイメージが、取材を重ねていくにつれて、意外にもその組織の小ささと弱さが目につくようになったといいます。ずばり、潤沢な運動資金があるわけではなく、財界に強力なスポンサーがいるわけでもない。かつてなら数ある「圧力団体」の一つとして無視される程度のものだったというのです。それが、なぜ、これほどの莫大な影響力を持つことになったのか?

それは、「日本の社会が寄ってたかってさんざんバカにし、嘲笑し、足蹴にしてきたデモ・陳情・署名・抗議集会・勉強会といった『民主的な市民運動』をやり続けてきた極めて非民主的な思想を持つ人々だった」からと著者は分析します。

菅野氏は「運動は確実に効果を生み、安倍政権を支えるまでに成長し、国憲を改変するまでの勢力となった。このままいけば、『民主的な市民運動』は日本の民主主義を殺すだろう。なんたる皮肉」とまで結論づけております。

著者は1974年生まれ、と略歴に書いてありましたので、60年安保どころか70年安保も知らず、浅間山荘事件等は生まれる前の出来事です。そうした世代がこのような冷静な分析力があることには本当に感服してしまいました。

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「日本会議の研究」はもう1年前に出版されたので、気が早いネット社会の住人たちは、色々と賛否両論を繰り広げているようです。

私は最近、幾何学級数的に記憶力が劣化しているため、この本のあらすじをまとめたいと思っておりましたが、疲れてしまいました。(パソコンが古くなったせいか、もう10回以上も電源が落ちて、最初から書き直しております!)

そこで、この本の概要をうまくまとめたサイトがありましたので、勝手ながらリンクさせて頂きます。

安倍政権を支える生長の家原理主義者たち ←ここをクリック

菅野氏は同書の中で、こう書いております(敬称略のまま、一部肩書等加筆)。

運動の流れから、ヘイトスピーチの在特会の桜井誠や山本優美子らにとって、「チャンネル桜」の西村修平・水島総は親であり、外務省と菅官房長官が推奨する教育学者の高橋史朗や安倍政権の政策ブレーンナンバーワンの「日本政策研究センター」代表の伊藤哲夫たちは祖父母だといえる。

「日本会議」は大きく分けて、(1)日本会議総長で、その実働部隊である日本青年協議会会長を兼務する椛島有三(1945~)グループと(2)伊藤哲夫(1947~)グループと(3)1983年に政治運動から撤退した生長の家教団に反旗を翻して「生長の家原理主義」運動を「谷口雅春先生を学ぶ会」という形で展開した中島省治、百地章らのグループがある。(この他、「日本会議国会議員懇談会」安倍首相補佐官の衛藤晟一(1947~)や稲田朋美防衛相(1959~)らも)

これら代表的な人物の根幹となる紐帯が宗教団体「生長の家」だ。(繰り返しながら、1983年から生長の家教団は、日本会議とは真逆に距離を置く左派エコロジーに方向転換)
その原点となったのが、1966年の長崎大学での左翼過激派打倒を掲げた右派の「生長の家学生運動」で、その中心人物で、現在これら3グループをまとめて頂点に立つのが、「神の子」と言われた安東巌・生長の家千葉教区教化部長(1939~)だ。

以上引用で、他にまだまだ沢山おりますが、これぐらい書いておけば、これから自民党が憲法改正の発議をした時に、また彼らのお名前が登場することでしょうから、備忘録として役立つのではないかと思ってます。

菅野完著「日本会議の研究」を読んで

今年3月15日、自宅前でインタビューに応じる菅野完氏。あたしが撮影したので著作権は大丈夫です(笑)。

私は2015年5月頃からほぼ1年間、病気のため黄泉の国を彷徨っておりましたが、閻魔大王様から「お前は修行が足りんから、もう少し娑婆で苦しんでおれ!」と言われて、下界に戻ってきてしまいました。

ある程度意識が回復した頃、周りの世間を改めて眺めてみると、黄泉の国に行く前と比べるとすっかり変わってしまっていることに気がつきました。

リップ・ヴァン・ウィンクルか、浦島太郎さんになった気分です。

特定秘密保護法、集団的自衛権の閣内決定、安保法制、そして先の共謀罪成立です。憲法改正論議も喧しい。このまま、「戦前」に突入する雰囲気です。

超国家主義者や国粋主義者の皆様は万々歳なんでしょうけど、あたしのような日本の伝統を重んじる保守的な西洋かぶれの個人主義者にとっては窮屈な閉塞感しか感じません。

安倍一強独裁政権については、何度もこのブログで批判してきましたが、単なる蟷螂の斧で、何の突っ張りにもならないことは分かりきっておりますが、閻魔大王様からあれだけ「娑婆世界を見て反省して来い」と言われたものですから、こうして懲りもなく、ブログってるわけです(笑)。

で、今、あのかなりの物議を醸し出した菅野完著「日本会議の研究」(扶桑社新書)を今ごろになって読んでおりますが、「ははあ、なるほど、そういうことだったのか」と、一人で相槌を打ちながら読んでいるわけです。

この本が話題になった頃、私は黄泉の国におりましたので、知りませんでした。

意識を回復した頃、例の森友学園問題が怒涛の如く、あらゆるマスコミで報じられ、その中で、籠池理事長(当時)が記者会見に臨んでいる場面がありました。ある記者らしき人物が食い下がるように質問して、自分の名前を明かすと、それまで眠たそうな顔をしていた籠池理事長が急に目を輝かせて、「そうか、君が菅野君か、そうか、君があの菅野君かあ」と実に感動的に、そして嬉しそうに話している場面がありました。

「日本会議の研究」の中で、恐らく新聞雑誌や一般書籍では初めて森友学園のことを取り上げられていたので、これまた恐らく籠池理事長も読んでいたのでしょう。

籠池理事長にとって天敵だった菅野氏が、その後、籠池氏からその実力を買われて、逆に、菅野氏が森友学園問題の機密文書を託されるようになるとは、全く娑婆世界は不思議に溢れています。

私も本当に偶然に、フランス大使館で用があった時に、この菅野氏がマスコミの記者やカメラマンが沢山群がってインタビューされている場面に遭遇したことを今年3月15日のブログに書いたことがあります。(当時は、菅野氏が何者なのか、全く知りませんでした)

で、肝心の「日本会議の研究」ですが、今になっては、建前主義の新聞がやっと重い腰をあげて報道したので、かなりオープンになった事実があります。でも、出版された当時は、ほとんど報道されていなかったので、実に画期的な労作と言っていいでしょう。大宅壮一ノンフィクション賞読者賞を獲得したことは妙にうなづけます。

今、稲田朋美防衛相が、都議選の応援演説で「自衛隊としても宜しくお願いしたい」などと発言(後に撤回)し、「自衛隊の私物化」「自衛隊の政治利用」として問題になっています。稲田さんは弁護士なのに、憲法や自衛隊法や公職選挙法などについての知識には欠けていたようです。

安倍首相は、稲田防衛相は罷免しない、とはっきり宣言し、菅官房長官も「地位に恋々としがみついていた」などと発言するわけがありません。

彼らは、「日本会議国会議員懇談会」のメンバーとして堅い血より濃い結束があることが本書を読んで分かりました。第3次安倍内閣の8割がこの日本会議国会議員懇談会のメンバーであることもこの本には書かれています。

稲田氏は祖母以来、宗教法人「生長の家」の信者で、戦前に発行された谷口雅春教祖が書いた経典「生命の實相」をボロボロになるまで読んでいたことが本書の中に出てきます。

日本会議の原点となった生長の家は、今では方向転換して、左翼的エコロジー運動に重点を置き、日本会議とは一切関係を絶っているともこの本には書かれています。

いやあ、確かにこの本は読み応えがあります。ノンフィクションというより、身体を張った突撃取材によるルポルタージュと言った方がいいでしょう。

大好きだった叔父の死


中朝国境:長白山・天池 Copyright par Duc MatsuokaSousumu kaqua

昨日は一日中、悲しみのどん底におりました。

一応、これでも会社に行って仕事をしているため、個人的な事情を仕事に持ち込むわけにはいきません。

周囲には誰一人、心を打ち明けることができる人はおりませんので、一人で、じっと心痛を我慢するしかありませんでした。

昨日深夜、九州唐津市の叔父が亡くなってしまったのです。長い長い、本当に長い闘病生活の末でした。いつかは、という覚悟はありましたが、やはりつらいものです。

叔父は推理小説を何冊か出しているので、「公人」かもしれません。何本かの小説はテレビドラマ化されています。

ネットで検索しますと、略歴も出てきます。http://sekifusha.com/6605
中朝国境:長白山・天池 Copyright par Duc MatsuokaSousumu kaqua

吉村幸夫(よしむら ・ゆきお)1945年佐賀県生まれ。明治大学商学部卒業。
1985年、『ロープ殺人事件』が福岡放送2時間ドラマストーリー特賞に入選、テレビドラマ化される。
1987年、『唐津火もよう殺人事件』が日本テレビ系「火曜サスペンス劇場」でテレビ放映される。

これは、福岡市にある地方出版社石風社のホームページから拝借したものです。

叔父はこの出版社から、最後の著作「北山湖殺人事件」を出版しました。

ついでながら、石風社のホームページには、この本の紹介文としてー。

庶民の街・福岡西新にある居酒屋「ひょうたん」の女将・容子。ある日夢に出てきた高校時代の剣道のライバル・桜子の、北山湖での不審な死を知った容子は、彼女の死の真相を探るべく奔走するが……。福岡、佐賀を舞台に居酒屋の美人女将が活躍する表題作ほか、結婚詐欺の嫌疑をかけられ女将・容子が身の潔白をはらすべく奮闘する「トリプルシャドー」のミステリー2作を収録。

ーとあります。

入退院を繰り返していた叔父ですが、一応、ミステリー作家ということになります。かなり真面目な人で、食事も節制していたらしいですが、文才があったということでしょう。

ウチの御先祖様の家系には、有名ではありませんが、何人か文筆で生計を立てていた人がいたようです。

ブラジルに渡って、邦字紙の記者になった者もいますし、戦前戦中、東京・新宿にあった「ムーランルージュ」の座付劇作家になった大叔父もいます。

この大叔父は、音楽教師だった私の父方の祖父の弟で、名前は高田茂期といいますが、先の大戦で召集され、フィリピンのレイテ島で戦死しました。(昔、この大叔父の消息を求めたことがありますが、詳細は分かりませんでした)

中朝国境:長白山・天池 Copyright par Duc MatsuokaSousumu kaqua

幸夫叔父の一週間前に、佐賀の禎子叔母(父の弟一馬叔父の妻)さんが亡くなったばかりでした。

今年はどうしたことでしょう…。

幸夫叔父の死で、父方の兄妹弟四人は全員いなくなってしまいました。

合掌

「『天皇機関説』事件」を読んで

 中国・四川省黄龍溝 Copyright par Duc MatsuokaSousumu sousai

山崎雅弘著「『天皇機関説』事件」(集英社新書)を読了しました。

せっかく、19世紀フランスのパリをふらついていたのに、一気に戦前の日本に戻ってきてしまいました。

 本書では、昭和10年(1935年)2月18日、今の東京・霞が関の経産省辺りにあった帝国議会仮議事堂(翌年に今の国会議事堂が完成)での貴族院本会議で、菊池武夫議員(男爵、元陸軍中将)による憲法学者美濃部達吉への排撃演説をきっかけに半年にわたって続いた政治的弾圧事件を詳細に描いております。(天皇機関説事件とほぼ同時進行で起きた「国体明徴運動」も)

 美濃部攻撃の陰の仕掛け人として、「京大滝川事件」で名を馳せた国粋主義者蓑田胸喜(みのだ・むねき=戦後自殺)が挙げられています。蓑田は、美濃部の論敵上杉慎吉東京帝大教授らが立ち上げた右翼団体「興国同志会」に参加し、同会が発行する雑誌「原理日本」で、盛んに美濃部批判を展開しておりました。

 もう一人の陰の仕掛け人は、後に首相となる平沼騏一郎・枢密院副議長で、美濃部が天皇機関説を信奉するきっかけとなった東京帝大の師であった憲法学者の一木喜徳郎(いちき・きとくろう)枢密院議長が平沼にとっては憎きライバル関係にあったため、平沼の目的は、一木~美濃部ラインの追い落としと抹殺にあったようです。

中国・四川省黄龍溝 Copyright par Duc MatsuokaSousumu sousai

 天皇機関説とは、簡単に言いますと、「国家を法人とみなし、君主(天皇)はその法人の最高機関と位置付け」、「君主(天皇)の権力(主権)は、憲法の制約を受ける」というものです。これに対する言葉は「天皇主権説」で、天皇の主権は絶対で、憲法の制約を受けないという考え方です。提唱者は、穂積八束、上杉慎吉東京帝大教授らがその代表です。

 天皇機関説は、美濃部達吉博士の発明かと、思っていましたら、実は、事件が起きる半世紀も昔の明治19年(1886年)、ドイツなどに留学して帰国して帝大教授となった末岡精一の講義が最初だと言われています。
 
 つまり、菊池元中将が美濃部を弾劾するまで半世紀近く、その中でも特に明治時代前半は「天皇を絶対的な『神』と同一視する風潮はなかった」(69ページ)と言います。なぜならその当時、天皇という存在は、国民の大多数を占める一般大衆(公家や武士以外の身分)には縁のない存在で、国の支配層が望んだような天皇に対する敬意や親近感が浸透していなかったからだといいます。

 昭和天皇自身も、美濃部排撃が高まっている最中の昭和10年3月29日、本庄繁侍従武官長に対して、「(大日本帝国)憲法第4条の、天皇は『国家の元首』云々は、すなわち機関説である。これの改正を要求するとすれば、憲法を改正しなくてはならなくなる」などと述べられ、天皇機関説を排撃する必要性を認めていなかったといいます。

軍部からの執拗な美濃部攻撃の背景には、それを遡る5年前の昭和5年のロンドン軍縮条約締結後に巻き起こった「統帥権干犯問題」事件がありました。

この時、美濃部達吉は、徹底的に陸軍を批判して、軍人の面子を失わせるほどの反論を試みました。これが軍部の「美濃部憎し」の怨念に繋がったようです。

昭和に入ると、富国強兵の下、日清日露の戦役等を経て、教育勅語の効果もあり、天皇を現人神として絶対視する主権論が漸く一般大衆にも浸透してきた頃でもありました。

天皇機関説=美濃部排撃運動に加わった軍部、在郷軍人会、右翼、国粋主義者らは同時に「国体明徴運動」も進め、それらは皇道派による昭和10年の相沢事件や翌年の「二・二六事件」の思想的バックボーンにもなるのです。

二・二六事件で、惨殺された渡辺錠太郎教育総監(昨年亡くなった「置かれたところで咲きなさい」の著者渡辺和子氏の実父)は、天皇機関説については訓示などで一定の理解を示していたため、皇道派らに睨まれていたのですね。不勉強で、この本で教えられました。

中国・四川省黄龍溝 Copyright par Duc MatsuokaSousumu sousai

美濃部排撃運動が開始された昭和10年と言えば、治安維持法が施行(1925年)されて、ちょうど10年後のことです。

森友学園問題、加計学園問題疑惑が解明される前に、数に物を言わせた安倍独裁政権がこのほど共謀罪を成立させましたが、今から10年後の2027年はどういう時代になっているでしょうかね。

悪い西洋的な個人主義、自由主義の否定と超国家主義の復活。朝な夕なの教育勅語と軍人勅諭の朗唱。反政府主義者弾圧事件でも起きるのでしょうか?

あたしゃ、早めにタイムマシンに乗って、18世紀のウィーンか、19世紀のパリ、もしくは1960年代のロンドンに戻るつもりです。

会計のお勉強で世の中が違って見えてきた!

桂林から陽朔までの、漓江川下り Copyright par MatsuokaSousumu@Kaqua

もう2週間以上も前に発売された古い週刊誌を新刊として正規の価格(740円)で買ってしまいました。えっ?(笑)。

「週刊ダイヤモンド」6月10日号の特集「これからの必須スキル 会計&ファイナンス まるごと一冊 超理解」が読みたかったからです。バックナンバーとして書店で購入しました。

私もかつて、すめらまじきことは宮仕えなりをしておりましたが、仕事がスポーツ観戦だったり、映画や演劇鑑賞だったりしたものですから、ついに最後までとうとう、会社の経理会計関係を勉強せずに中退してしまいました(笑)。

要するに、決算書も貸借対照表も読み解くことができないのです。単なる数字の羅列しか見えず、見ただけで頭が痛くなりました(苦笑)。

しかし、自己責任、都民ファーストの時代になると、そんなこと言ってはられません。この週刊誌を読んだ私は、声を大にして言いたい。「人間は二種類しかいない。決算書が読める人間と読めない人間の二種類だ!」

桂林から陽朔までの、漓江川下り Copyright par MatsuokaSousumu@Kaqua

さて、例によって、特集の内容をほんの少しメモってみます。

●経理専門でないのなら、まず、小難しい簿記や仕訳の知識は必要ない。「財務3表」がざっくり読めればそれで良い。

●「財務3表」とは、(1)損益計算書(PL)(2)貸借対照表(BS)(3)キャッシュフロー計算書(CF)のこと。

●損益計算書(PL)は、(1)売上総利益(2)営業利益(3)経常利益(4)税引き前当期利益(5)当期純利益ーの五つの利益を抑えれば良い。

●貸借対照表(BS)は、(1)流動資産(2)固定資産=以上「資産」(3)流動負債(4)固定負債=以上「負債」(5)純資産ーの五つの箱で考える。

●貸借対照表のBSは、balance sheet(バランスシート)のこと。このbalanceは、均衡という意味ではなく、残高という意味で使われている。よって、バランスシートの正確な和訳は「残高一覧表」となる。(知らなかった!)

●キャッシュフロー計算書(CF)は、(1)「営業活動によるキャッシュフロー」(本業で現金がどれだけ増減したか)(2)「投資活動によるキャッシュフロー」(投資でどれだけ現金が増減したか)(3)財務活動によるキャッシュフロー」(借金や返済でどれだけ現金が増減したか)ーの三つの袋を見れば良い。

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★2016年度決算で、ソフトバンクは日本企業としてはトヨタに次ぎ2番目となる純利益1兆円を達成した。しかし、その一方で、ソフトバンクには有利子負債が実に14.9兆円もある。有利子負債率は60.3%。
有利子負債とは、いわば銀行などからの借金。ちなみに帝国ホテルの同期の有利子負債はゼロ、つまり無借金経営だ。
戦後最大の大型倒産は、2000年10月の協栄生命保険で、負債総額が4.5兆円だから、14.9兆円の借金がいかにも桁違いだということが分かりますねえ。(あたしなら、枕を高くして眠れない)

★ついでながら、ソフトバンクの孫社長は、後継者に一旦指名しながら、やっぱりやーめたインド系の副社長だったニケシュ・アローラさんに88億円もの退職金を支払ってお引き取りを願いました。

88億円でっせ!!

他人事ながら、そして、本当はどうでもいいことですが、孫さんの金銭感覚は人智を超えてます。

★外食産業には、原価である食材費が30%、人件費が30%、家賃や諸経費が30%、残りの10%が利益となるようにする「黄金比率」がある。経営者は、原価率と人件費を抑えて収益を確保しようとする。
ところが、今、サラリーマンの間で爆発的に人気になっているのが「いきなり!ステーキ」。ここの原価率は破格の55%なのだ。1000円のメニューならそのうち550円が原価となる計算。「いきなり!ステーキ」は、店を立ち食いにして回転率を高くして、人件費を抑えて販管費率を極力下げて、利益を確保している。

ふーん、なるほどね。目から鱗が落ちます。

専門家に限って、「二流の経営者は数字ばかり見てる」と貶し、「夢と希望がなければ勝ち残れない」なぞと宣いますけど、やはり、世の中、数字で動いてます。

13連敗(読売軍)とか、28連勝(藤井四段)とかね。

左翼崩壊と右翼伸長戦略は、「昭和解体」にすべて書いてあった

Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

2017年6月11日。何故、今のような一強独裁の密告社会になってしまったのかと言いますと、第一に、選挙制度の小選挙区制にあったことは以前にも「国民の声」として書きました。

 1選挙区に1人しか当選しませんから、例えば有権者1万人の選挙区に10人が立候補し、その平均の1000票獲得しても当選しませんが、1位の候補者が1001票獲得して、2位以下が(1000票以下で)合計8999票となっても当選できるというシステムなのです。

 圧倒的多数の有権者が1位候補を支持しなくても、1位候補は当選し、逆に不支持票は死に票となります。これでは果たして、正確な民意を反映できるものなのか実に疑わしい。

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 もう一つは、2014年の内閣人事局の創設によって、官邸が官僚の人事権を全て握って、気に食わない官邸の意向に沿わない人間は好き放題に閑職に飛ばすことができるようになったことです。

 これで、独裁者は、権力の一極集中に大成功し、賢明なる官僚諸兄姉諸君は、面従腹背で、黒いものでも白と言い、独裁者の意のまま動くことになりました。

 その前に、「昭和解体 国鉄分割・民営化30年目の真実」(講談社)を書いた牧久氏は、この著書の中で、戦後日本政治体制だったいわゆる「55年体制」の崩壊の直接の原因は、30年前の国鉄分割・民営化にあったと見事に喝破しております。

 単なる一(いち)国有企業の解体が、日本の針路を決定する政治体制にまでどうして影響を与えるのか俄かに信じがたい話です。
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 話を単純化しますと、30年前の「55年体制」には、国鉄(日本国有鉄道)利権を手離そうとしない政治家と経営陣と労働組合との派閥闘争がそのまま日本の政治を反映したというわけです。

 労働組合には、大きく分けて、国労(国鉄労働組合)と動労(国鉄動力車労働組合)があり、国労の背後に総評(日本労働組合総評議会)があり、総評の支持政党に日本社会党があったわけです。国労職員がそのまま、社会党から立候補して国会議員になっていたケースがあったわけです。

 動労の中央本部執行委員長だった有名な松崎明(2010年死去)は、元日本共産党員で、革マル(革命的マルクス主義者)派に籍を置いていた事実がありました。

 つまり、国鉄解体とは、イコール国労、動労の解体であり、イコール総評の崩壊であり、労組が支持していた社会党や共産党など左派勢力の崩壊となったというわけです。

 国鉄分割を総指揮した当時の中曽根康弘首相は、かなりの政治的野心と意図で、あらゆる戦略を使って国鉄解体に全ての意力を注ぎ込み、その最大の目的は左翼勢力の解体と壊滅にあったことを自分の著書の中で触れています。牧氏の著作(496ページ 終章 国鉄落城)からの孫引きですが、大変重要な箇所なので、引用させて頂きます。

 「ダブル選挙の圧勝と国鉄の分割・民営化によって、国鉄労組が分解して、総評が分解した。自民党を中心とする保守が都市に自信を回復し、ウイングを左に伸ばして、社会党の生存基盤を奪った。五五年体制の崩壊の兆しというのは、やはり国労の崩壊じゃないですか。国労が崩壊すれば総評も崩壊するということを、明確に意識してやったのです」(「天地有情」)

 なるほど、今の日本の左翼勢力の体たらくと極右勢力の幅広い拡大と「一強多弱」政治の原点は、30年前の国鉄解体にあったことが、この本を読むと手に取るように分かりますねえ。

100歳の精神科医が見つけた心の匙加減とは?

寿能城跡

最近は、電車の中でスマホばかりやっているため、読書の時間が疎かになってしまっておりまする(笑)。

書く方と読む方をどちらを優先するかー。どうも、最近は書き残しておきたい事項の方が多く、読むことよりも優先してしまいます。

それでも、最近読了したのが、 高橋幸枝著「100歳の精神科医が見つけた こころの匙加減」(飛鳥新社)です。タイトルの通り、百歳の現役精神科医が書いた本です。

100歳超の大先輩に聖路加病院の日野原さんという大御所がおられますから、あまり目立ちませんが、百歳の現役医師なんて本当に凄いことです。

寿能城主潮田忠之の墓

簡単に著者の略歴に触れますと、1916年11月2日新潟県生まれ。県立高田高等女学校を卒業後、海軍省でタイピストとして勤務。退職して中国に渡り、北京で日本人牧師の秘書。この牧師の勧めで27歳で医師を目指し、帰国。福島県立女子医学専門学校に合格して念願の医師になった人です。1966年に神奈川県秦野市に秦野病院を開設して、院長に就任して今も現役の精神科医として頑張っています。

この本は、著作としては何冊目なのか分かりませんが、自分の経歴や普段のお仕事で患者さんらと接触した感想や、自分自身の老いの問題などを随筆としてまとめたものです。

例えば、こんな調子です。

大宮公園

●人間とは暇があるからさまざまなことを考えてしまうのです。
「悩みがある」ということは、言い換えると「悩むほどの時間に恵まれている」という状態に他なりません。

●他人を気にし過ぎると結局損をします。

●80代でも新しい趣味は始められますよ。

●幸せに生きるためには、周りと仲良くすること。

●「誰かに喜んでもらえた」と感じたとき、人は充実感を感じるようにできています。

●見返りは期待せずに、誰かの幸せをひたすら乞い願う。ちょっと大袈裟に思われるかもしれませんが、そんな姿勢で過ごせることこそ、人として本当に幸せなことです。(著者の実弟高橋由喜雄氏は農水省の官僚を途中でやめて、秦野病院の事務長になった人。目の不調で65歳で事務長を辞め、回復してから市営駐輪場の自転車整理の仕事を続けました)

氷川神社

普通のOL(?)だった高橋さんが、医者を目指すことになったのは、中国で出会った日本人の牧師の勧めによるものだった、ということを経歴で触れました。

本文でも、その日本人の牧師は清水安三先生という名前だけ書いていますが、この人がどういう人なのか一行も書いていません。知らない人は知らないでしょう。高橋さんの人生で最も影響を与えた人のはずなのに、一言だけでも付け加えたらよかったのに、と少し残念に思いました。

私は、山崎朋子著「朝陽門外の虹」(岩波書店、2003年初版)を読んでいたので、清水安三のことを知っていました。この方は、北京のスラム街で、娼婦にならざるを得なかった貧しい少女らのために手に職が付くように女学校をつくった人でした。日本の敗戦で無一文になって帰国しながら、再起を図って、桜美林学園を創設した人です。

あれっ? よく読むと、最後の著者の略歴の中に、「1953年に東京都町田市の桜美林学園内に診療所を開設」とだけ書いてありましたね。これは恐らく、いや、必ず、清水安三先生からの依頼だったはずです。

謀略と裏切りの物語。「昭和解体 国鉄分割・民営化30年目の真実」

中国 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

 崇敬するジャーナリスト、牧久氏から新著を贈って頂きました。「国鉄分割・民営化30年目の真実」という副題の付いた「昭和解体」(講談社)です。

 日経の副社長まで務められた牧氏は、東京五輪の開催された昭和39年(1964年)に経済専門紙ながら社会部記者としてジャーナリスト生活をスタートし、国鉄本社の記者クラブに常駐するなど国鉄の動向をつぶさに観察してきた人です。

 記者生活から離れても、好奇心を失わず、その国鉄解体の過程を歴史というより、「同時代の目撃者」として書き残したいという熱望を長年心に秘め続け、ついに大願成就したわけです。

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 牧氏の凄いところは、世に送り出した著作のほとんどが、ご自身の体験に基づいたノンフィクションだということです。ベトナム特派員時代の体験に基づいた著作が「サイゴンの火焔樹」「安南王国の夢」「特務機関許斐氏利」などです。

 国鉄体験は、以前に国鉄総裁を務めた十河信二の評伝を「不屈の春雷」のタイトルでまとめております。

 2年前は、満蒙開拓団の指導者として戦後指弾された加藤完治と張作霖爆殺事件の実行犯東宮鐵男を中心に、彼らを歴史的に再評価をした評伝をまとめた「満蒙開拓、夢はるかなり」を発表しています。

 昨年後期高齢者の仲間入りを果たされながら、大変な労作とも言うべき意欲作を次々と発表される牧氏のバイタリティーには頭が下がります。

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 さて、この「昭和解体」ですが、まだ読了しておらず、ほんの少し序章等を読んだだけですが、そこには本書の全体像が克明に描かれています。

 牧氏は、16ページから17ページにかけてはっきりと書いております。

 …国鉄の分割・民営化は、25兆円を超える累積債務(これに鉄建公団の債務、年金負担の積立金不足などを加えると37兆円)を処理し、人員を整理して経営改善を図ることがオモテ向きの目的であったが、そのウラでは、戦後GHQの民主化政策のもとで生まれた労働組合、なかでも最大の「国鉄労働組合」(国労)と、同労組が中核をなす全国組織「日本労働組合総評議会」(総評)、そしてその総評を支持母体とする左派政党・社会党の解体を企図した、戦後最大級の政治経済事件でもあった。…

 なるほど、今の左翼勢力の低迷というより崩壊に近い状態と極右勢力の台頭は、わずか一(いち)国有企業(とは言ってもあまりにも巨大過ぎますが)の消滅によるもので、結局、国鉄解体が戦後日本の政治体制、ひいては既成勢力の政治思想と大衆の思想信条にも多大な影響を与えていたというのです!

 ここまで意図・企画して図面を書いたのは、当時の元首相中曽根康弘氏で、牧氏はしっかりと98歳(当時)の中曽根氏にインタビューされているので、これから読むのが楽しみです。

 もちろん、「三人組」と呼ばれ、のちにJRの各社長に就任する国鉄の若きキャリアの井出正敬(いで・まさたか)、松田昌士(まつだ・まさたけ)、葛西敬之(かさい・よしゆき)の各氏らも登場します。

 「そこには策謀と裏切り、変節、保身、憎悪、怨念など、さまざまな人間の情念が渦巻いていた」と牧氏は明記しているので、どんな展開になるのか、既に事実を知っていても愉しみです。

 【追記】

 現在、映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」が公開中のケン・ローチ監督。ネット情報によりますと、ローチ監督は2003年に「高松宮殿下記念世界文化賞」を受賞します。彼はこの賞のスポンサーが「反動的」メディアであるフジサンケイグループであり、中曽根康弘氏がバックにいることも知っていたが、敢えてこれを受けた。彼は、その賞金の一部を、日本のどこか適当な労働運動に寄付したいと考え、人の勧めで国鉄分割民営化に反対したためにJRから閉め出された闘争団に寄付した、と書かれておりますね。

なぜ「君の名は。」 は大賞を逃したのか?

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 昨年8月26日に公開され、2017年3月6日の最新時点で、歴代興行収入第4位の245億円となり、社会現象ともなっているアニメ映画「君の名は。」(新海誠監督)を遅ればせながら、見てきました。渓流斎、それにしても遅い(笑)。

 ※ちなみに、ご参考として歴代興収は以下の通り。「君の名は。」はもうすぐ「アナと雪の女王」を抜いて、歴代3位になるかもしれません。

第1位=「千と千尋の神隠し」308億円(2001年7月20日公開)
第2位=「タイタニック」262億円(1997年12月20日公開)
第3位=「アナと雪の女王」255億円(2014年3月14日公開)
第4位=「君の名は。」245億円(2016年8月26日公開)
第5位=「ハリー・ポッターと賢者の石203億円(2001年12月1日公開)

 ということで、まだ、やってたんですよね(笑)。公開から7カ月も経っても…。
 最近の映画は驚くほど世界各国で量産されていますから、普通、半年もすれば、忘れ去られて、ヒット作だけはしっかりと元を取ろうとDVD化されます。

 「君の名は。」に限っては、まだ、DVD化されず、半年を過ぎても全国でロードショー公開、つまりロングランされているようです。今年1月の時点ですが、累計動員は1815万人だそうです。

 お隣の韓国では、今年1月4日から公開され、8日までの5日間で観客数100万人を突破して、22日には観客動員数は300万人を超えて日本映画で過去最高となったそうです。

 そして、世界最大の映画市場である中国でも昨年12月に公開され、16日間の興収約90億円、タイでは公開14日間の興収約1億4000万円を記録し、両国で公開された日本映画の歴代興収の新記録を樹立したそうです。

 国際市場での興収を見てみると、米国のBOX OFFICE MOJOという興収調査会社による調べですが、今年1月8日時点での日本を含む全世界の「君の名は。」の興行収入は、2億8101万2839ドル(337億円)を超え、「千と千尋の神隠し」の2億7492万5095ドルを超えて、トップに躍り出たそうです。  

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 ※以下は映画の内容に触れますので、これから観る方は、この先はお読みにならないようにしてください!

 これだけの話題作なのに、米アカデミー賞ではノミネートすらされず、日本で最も権威があると言われるキネマ旬報社のベストテンでは圏外ですからねえ。(ちなみに、ベスト1位は、私も大賛成のアニメ「この世界の片隅に」でした)

 どうしてなのかなあ、と思いながら、観てみました。

 まず、映画を観る前は、漏れ伝わってきたところで、東京都心に住む高校生の男の子立花瀧君と、飛騨高山地方の田舎の村に住む女の子宮水三葉ちゃんの2人の身体が入れ替わるという単純な映画かと思っていましたら、かなり複雑で錯綜したプロットだったんですね。

 これは、アニメとはいえ、子どもさんには分かりづらいかもしれないと思いましたね。正直、観ていて長すぎるなあとも思いましたが…。

 そして、あまりにも複雑な要素を取り入れすぎてしまったので、最後は論理的に破綻しておりました。

 つまり、彗星の墜落で死んだはずの三葉ちゃん、そして、瀧君が図書館で調べた通り、新聞などには死亡者名簿の中に掲載されていたはずの三葉ちゃんが、最後は東京に出てきて生きていたということなんでしょうか?

 アニメなんですから、そんな堅いこと言っちゃいけませんね。嫌われますね(笑)。

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 まあ、堅いこと抜きにすれば、大人の鑑賞にも耐えるつくりになっておりました。
 
 スマホなど現代風俗をふんだんに取り入れながら、神事などの伝統も重要なファクターとして取り入れ、2016年を代表する映画になっていました。

 そして、現実と夢と過去と未来が交錯して奔放自在に物語が展開し、アニメでしか表現できない作品だったと思いました。

 アニメ製作に関しては素人なのでよく分かりませんが、相当作業が大変なようですね。エンディングロールで、数百人にも及ぶスタッフの名前を見て驚いてしまいました。しかも、日本人だけなく、韓国系の人や中国、台湾系の人と思われる人も名前を連ねていたので、この作品自体がグローバルだったのだなあと改めて気づかされました。

 蛇足ながら、そんな莫大な製作費を回収する目的と思われる企業のコマーシャルが何気なく「設置」されているのも気になりました。サントリーの缶コーヒー「ボス」の自動販売機と主人公らが呑む場面は、もろ宣伝ですねえ(笑)。

 このほか、東京の山手線か中央線の電車内や駅の広告もわざとらしく展示され、オカルト雑誌の代名詞だった学研「ムー」まで登場するじゃありませんか。

 かつて、この「ムー」は、オウム真理教の麻原死刑囚の「空中浮遊」の写真を掲載して、信者拡大につながったと言われるいわくつきの雑誌ではなかったのかなあ、と思いましたら、しっかり、最後のエンディングロールの「協力社」の中に、学研「ムー」も明記されておりました。

 はっはあ、「君の名は。」が大きな賞を逃したのは、こうしたサブリミナル(潜在意識に訴える)宣伝広告が、頭の良い一部の映画評論家らに嫌われたのかなあ、と勘繰りたくなってしまいましたよ。

 賞は、豊洲問題と全く同じように、水面下で交渉されますから、真相は分かりませんけどね。