ゴーン容疑者は、ジャック・ウェルチGE元会長の真似をしたのだろうか?

 今朝のカルロス・ゴーン容疑者の4度目の再逮捕には驚きましたね。(朝毎読産は都内最終版で、再逮捕の可能性を報じてましたが)

 早朝5時50分、東京都渋谷区の自宅(と、日本の新聞は書かないのに、仏紙は書いちゃってました)に東京地検関係者がまさにゴーン容疑者の寝起きを襲った感じです。NHKのテレビカメラが入ってましたから、当局は事前にマスコミにリークしたのでしょうけど、それにしては、護送車を幕で隠したりして変な「捕り物」劇でした。

 4度目の逮捕容疑は、会社法違反(特別背任)でした。日産の子会社から中東オマーンの販売代理店の預金口座に振り込まれた資金の一部を、ゴーン容疑者が実質保有する会社の口座に送金する形で、2015年~18年、日産に計500万ドル(約5億6300万円) を損害を与えたというものでした。その一部は、家族が遊興する「社長号」と名付けられた豪華クルーザー(約16億円)や息子がCEOを務める米投資会社に流れたのではないかといわれてます。

 ま、私的流用ということですかね。私的流用なら、パリやレバノンなど世界各国の自宅や、ヴェルサイユ宮殿での再婚式などの費用を会社側に負担させていた、等々たくさんの疑惑もあります。

Espagne

 ゴーン容疑者は、どうやら、いまだに日本でも信奉者の多い米GE(ゼネラル・エレクトリック社 )の会長兼CEO(1981~2001)を務めたジャック・ウェルチ(1935~)の手口を学んだ節があります。

ネット情報のウィキペディアなどでは、ジャック・ウェルチについて、「伝説の経営者」とか、「1999年、『フォーチュン』誌で『20世紀最高の経営者』に選ばれ、最高時の年収は9400万ドルにも達した」なぞと英雄視し、ベタ褒めで終わってますが、昨日ご紹介した広瀬隆著「世界金融戦争」(NHK出版)の97ページにはこんなことが書かれています。

 「経営の良質さを誇ったGEにも、収益を水増しする会計操作のあったことが2002年半ばに判明したが、それほど大きな問題として取り上げられなかった。ところが、9月になってウェルチと離婚係争中の妻ジェーンがGE社内の秘密に属する報酬契約について裁判所に詳しい明細を提出したため、ウェルチの私生活が明るみに出た。

 何とマンション代から高級車、ワイン、食事代、旅費、コンピューター、オペラのチケット、ゴルフクラブ年会費、果ては家政婦、洗濯、新聞代まで1500万ドルも会社が生涯負担する契約などが表に出て、経済誌の表紙を飾ったヒーローが、いきなりタブロイト紙の離婚ゴシップ欄で叩かれるまで評判を落とした」

Granada, Espagne

 えーー!?何か既視感(デジャヴュ)を覚えましたが、逆でした。ウェルチGE元CEO の話は、今から20年も近い昔の話でした。ゴーン容疑者の容疑が事実なら、ウェルチ元CEOの顰に倣って同じようなことをしていたことになりますね。

 それとも、莫大な権力とカネを握った者は、誰でも同じようなこと(私的流用)をするということなのでしょうか。

 でも、ゴーン容疑者が莫大な権力とカネを握った背景には、リストラという名の首切りで、職を失った日産とその関連会社の元社員の犠牲があったことを忘れています。こうして、彼の容疑が次々と明るみに出たことは、首を切られた元社員の怨念が爆発したような感じがします。

チェイニー副大統領から、話はケネディ大統領、ドレクセル商会まで飛びました

 変貌自在の「カメレオン俳優」クリスチャン・ベールが 、20キロも増量して第46代副大統領ディック・チェイニーを演じる「バイス」(アダム・マッケイ監督)が今週末の4月5日に公開されるというので楽しみにしてます。

 その予習を兼ねて、広瀬隆著「世界金融戦争」(NHK出版、2002年11月30日初版)を読み返しております。

見沼遊歩道

 チェイニー副大統領といえば、「米史上最強で最凶の副大統領」(映画のコピー)との悪名高く、能力に秀でいないブッシュ(息子)大統領に「イラクは大量破壊兵器を隠し持っている」と嘘の報告書を信じ込ませて、米国をイラク戦争に導いたと言われてます。どれもこれも、自らCEOを務め、大量の株式を保有していた石油サービス会社ハリバートン(米テキサス州ヒューストン)のためだったといわれてます。ハリバートンは、石油や天然ガスなどの採掘から、米軍の食事や洗濯サービスに至るまで幅広く事業を展開し、子会社にこれまた政府や米軍などと密接な関係を持つテクノロジー企業KBR(ケロッグ・ブラウン・ルート)まであります。

 チェイニーの妻リン(エイミー・アダムズが演じる)は、この映画の公式ホームページでは「文学博士号を持つ著述家」で、酒癖の悪い夫の尻を叩いて政界に進出させたしっかり者のように書かれています。しかし、広瀬氏の「世界金融戦争」では、リン・アン・チェイニーは、普通の主婦ではなく、「世界最大の軍需産業ロッキード・マーティンの重役で、保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所の幹部を務めていた」と暴露しております。映画ではそこまで描かれているのでしょうか?


見沼遊歩道

 さて、「世界金融戦争」にはあまりにも多くの欧米を中心にした世界の人名と企業が出てきますので、一回読んだだけではとても頭に入りきれません(苦笑)。ドストエフスキーの小説を読むより大変です。

 同書では、ロスチャイルド系のゴールドマン・サックスやメリルリンチ、リーマンなどウォール街のユダヤ資本と石油企業とホワイトハウスが三位一体で利権をたらい回ししている構造を明らかにしてます。

 この本は、2001年の「9・11事件」直後に書かれたので、米国とイスラム資本との対峙も描かれて、なかなか濃密な内容です。私は、学生時代は「イスラム教の預言者マホメット(ムハンマド)は、アラブの商人だった」といった程度しか勉強しませんでしたが、同書によると、ムハンマドを生んだハーシム家は、小規模ではなく、恐らく、日本の三井、三菱、住友、安田財閥を足して数百倍にもしたような超・大財閥だったようで、著者が作成した系図からは、その子孫としてサウジアラビアやイエメン、イラン、インドネシアなどイスラム圏の国王を生んでいたことが明かされています。実に驚きです。

 でも、私自身、頭が悪いせいか、もう既に、ここに描かれている「エンロン事件」も「ワールドコム倒産」などもすっかり忘れているんですからね。情けない。ま、20年前の話ですから、日本人の多くも忘れていることでしょうが…。


見沼遊歩道

 この本が書かれた2002年当時は、現在ほどネット情報が充実していなかったので、著者はよくぞここまで「手作業」で調べたと思います。例えば、「アメリカの政党や大統領で石油利権と無関係の政権は、1870年にロックフェラーがスタンダード石油を創業してから一度も出現していない」と自信たっぷりに書き、関係者の人間関係を明らかにします。

 その内容について、色々書きたいのですが、長くなるので今日は、ジョン・F・ケネディ大統領のことだけ書いておきます。その父、ジョゼフ・ケネディは1929年のニューヨーク株式大暴落の際、事前に持ち株を売り逃げて莫大な財産をつくり、その資金でルーズヴェルトを大統領に押し上げる最大な功労者だったと言われます。

 ルーズヴェルトは、その見返りにジョゼフをウォール街の番人とも言うべき米証券取引委員会(SEC)の初代委員長に任命します。ジョゼフは息子のジョン・フィッツジェラルド(JFK)の結婚相手にジョン・ブーヴィエの娘ジャックリーンを指名します。ブーヴィエの大伯父が、米国の産業界を支配するモルガン商会のパートナー、フランシス・ドレクセルだったからだと言われています。フランシスの弟のアンソニー・ドレクセルがジョン・ピアポント・モルガンとともに、ドレクセル・モルガン商会を設立し、のちにモルガン商会、J・P・モルガン・チェースに発展します。

 また、ドレクセル商会から生まれた投資銀行がドレクセル・バーナム・ランベールです。バーナムは、証券ブローカーを経営していたアイザック・バーナムのこと。そして、残りの共同創業者の一人、ランベールは、リュシー・ロスチャイルドと結婚したベルギーの男爵レオン・ランベールの孫だったと言われてます。

 同書では、このようなユダヤ系のウォール街の金融マフィアたちが、インサイダー取引や政界工作などで巨万の富を築く話が描かれ、さらに、後に逮捕されるアイヴァン・ボウスキーやマイケル・ミルケンといった超大物投機家も登場しますが、話が複雑になるのでこの辺でやめておきます。

また、次回ということで。

ショーケンの死、NHK岩田解説委員、コンビニ営業時間、モノに執着しない生活

 今日は、種々雑多の心に浮かぶよしなしごとをー。

 ■ショーケンこと萩原健一さんが3月26日に亡くなっていたそうで、ご冥福をお祈り申し上げます。難病に掛かり、2011年から闘病されていたそうですが、まだ、68歳という若さですから御本人も無念だったことでしょう。

 テンプターズのヴォーカルとして「神さまお願い」や「エメラルドの伝説」などのヒットを飛ばした頃(古い!)、私の世代のアイドル的存在でしたから、ある時代が終わった感じがします。破天荒な人に見えましたが、私生活でも、女性遍歴やら薬物使用やら、破天荒だったようです。

 先日観た映画「翔んで埼玉」のことを書きましたが、ショーケンも埼玉県出身。旧与野市の鮮魚店の子息だと聞いたことがありましたが、今のようなネット時代は色んなことが書かれていますね。大スターというのは、色んなものを背負っていて、生まれ持った重い影が「暗ければ暗いほど、輝く」というのが鉄則だというのは、芸能担当記者だった頃に業界関係者から聴いた話でした。ショーケンは17歳でデビューして大スターになりましたが、その理由が分かった気がしました。

alhumbra, Espagne

 ■一昨日、このブログで「新元号」のことを書きましたので、少し責任感を感じて(笑)、「NHK熟年の美人記者が元号スクープという舞台裏」という見出しで、新元号のことを取り上げていた「週刊新潮」を買ってしまいました。私は、「新元号をスクープするメディアはどこになるか気になる」と書きましたが、「週刊新潮」は「首相官邸周辺は、NHK解説委員の岩田明子氏にスクープさせる動きがある」といった趣旨のことを書いてました。

 えっ?あの、世間では「安倍首相のお気に入り」と評判の岩田女史ですか。どうやら、安倍首相の自宅に近い所にあるマンションを購入して、安倍首相の母親の洋子さんとも親密になっている、とも書かれていました。

 なるほど。岩田さんが、4月1日の臨時閣議後の正式発表前に、恐らく5分ぐらい前に「新元号は○○です」とテレビカメラに向かってスクープするのでしょうか?

 岩田さんは、最高学府を出られたという噂は聞いてましたが、気になって調べたら、高校は名門県立千葉だったそうですね。いやあ、この高校、どうでもいいですけど、個人的に、心の傷が疼くほど、思い入れがある高校です。そうでしたかあ…。

Alhumbra, Espagne

■最近、と言っても、半年ぐらい前ですが、私が利用する最寄り駅の駅前の一等地にあったパチンコ屋さんが、コンビニになっていました。駅至近距離には既に4軒もコンビニがあるのですが、やはり、コンビニは、パチンコ店を席捲するほど勢いがまだまだあるんですね。

 最近、コンビニの「深夜営業」を巡って喧しいですが、私自身は、ほとんどコンビニを利用しないので、真夜中、未明までオープンすることはないと思ってます。少数意見かもしれませんが。

Espagne

■3年ほど前、病気になり車の運転ができなくなり、そのまま自家用車を売却してしまいました。

 生活的に不便にはなりましたが、でも、そのお蔭で、自動車保険や駐車場代などが一切掛からなくなり、家計的には大いに助かるようになりました。いざという時は、タクシーに乗ればいいと思いましたが、結構、健康のために歩くようにしたら、徐々に健康を取り戻すことができました。

 さて、何でこんなことを書いたかと言いますと、会社の同僚が、自宅に保管している蔵書が増えすぎたため、自宅近くにロッカールームを借りたという話を聞いたからです。畳二畳ほどの広さで、月額8000円。「わー高(たか)!、田舎の駐車場代並みだなあ」と思ってしまったのです。

 蔵書については、またまた個人的ながら、病気で読めなくなってしまった際、かなりの数、1000冊ぐらいの本を処分してしまったので、今や私の書斎にはほとんど残っておりません。

 やっぱ、モノに固執しなければ、お金も掛からないってところですかねえ?

「心の底から愛する日産」だったのでは?

 昨日、10億円の保釈金を振り込んで東京拘置所から保釈された日産・ルノーの前会長カルロス・ゴーン被告、64歳。

 その変装ぶりには唖然としてしまいましたね。その写真を茲に掲載できないのが残念ですが、メディアでは話題騒然となりました。(勝手に新聞社や通信社の写真を掲載しているパンピーサイトもありましたが、著作権料を支払っているのかしら?)しっかり調べた人、というより、勝手に使われた会社の社員が帽子の「N」の記章を見て、埼玉県川口市に本社がある鉄道車両の整備や組み立てなどを行っている「日本電装」(昭和25年創業)という会社だということがすぐ分かりました。

 ただし、同社は、日産とは取引も資本関係もなく、「何で、ウチが使われたのか分からない」と困惑しているそうです。

 もしかして、拘置所には、色んな変装道具が完備しているのかしら?

このマークです。日本電装のホームページから

 帽子にマスク。安全・反射用の蛍光ベルトの付いた作業服姿で、御本人は「どうだ。うまく、化けただろう」と得意げに出て来ました。昨年から本国フランスで話題になっている「黄色ベスト運動」にあやかったのでしょうか?(「○○ハウジング」と書かれた作業服は、やはり埼玉県内の建設会社)

 でも、お笑いのコントじゃあるまいし、何であんな格好したんでしょうか?007のように、作業服の下は、パリッとしたタキシードでも着ていたのでしょうか?「潔白を証明するのにあんな格好で出てきてはイメージがマイナスになるのでは」と心配というより、がっかりする日産社員もいたようですね。

 正門前に横付けされた黒塗りの車をチラッと見たゴーン被告は、その後、前に止まっていた塗装工事用の軽自動車に乗り込みます。それが、彼が「心の底から愛している」と宣言した日産製ではなくて、ライバルのスズキの車なんですからねえ。

 煩悩のように108日間に及んだゴーン被告の拘置については、外国メディアが「日本は法治国家か?」「前近代の野蛮国か?」などと批判し、外圧に耐え切れなくなった日本の「良識ある知識人」の皆さんが「法改正しなければ」と盛んに秋波を送っていますが、如何なものかですよ。日本は法治国家です。

 それより、何で「良識ある知識人」さんたちは、中国広州市で1年以上拘束されている伊藤忠の商社マンの安否を気遣わないのでしょうか?

【追記】

 カルロス・ゴーン被告の「変装劇」は、著名な弁護士高野隆氏(62)の自作演出だったことを、本人がブログで告白し、「それは失敗だった」と認めるとともに、ゴーン被告と関係者にご迷惑をお掛けしたことを謝罪しておりました。

ホッブスの「リヴァイアサン」に学べ

 今朝も、新橋での人身事故で、通勤電車が遅れました。正直、もう勘弁してほしいですね。2月27日付の小生のブログ「人身事故は5000万円?」をお読みにならなかったのでしょうか。

 さて、久留米にお住まいの有馬先生からメールが届きました。

Espagnole

 《渓流斎日乗》を拝読させていただいておりますが、最近は、個人的な身辺雑記の話題が多いですね。もっと、天下国家や国際問題を語ってください(笑)。とはいえ、私はそれが正しいとは微塵にも思っておりません。身辺雑記の小宇宙(ミクロコスモス)の方が、世界観を反映していることがあるからです。

 正しさや正義を振りかざす人間ほど、扱いにくいものはないのです。

 ですから、これから述べる私見は、自分自身も正論だなどとは更々思っておりません。単なる持論であり、単なる個人的意見です。ということをまず断っておきます。

 何よりも、私自身が疑ってかかっている人間とは、自己主張が強く、自分の意見に凝り固まって、獄中に繋がれようと決して持論を曲げない人間なのです。戦前なら、獄中から出れば、英雄として迎えられ、組織の長ともなれたでしょうが、そもそも転向が悪の権化の如く、寄って集って指弾されるべきものなのかについては甚だ疑問です。

 人間は弱いものですから、拷問されたり、生命の危険に晒されれば、思想信条も二の次になります。人は裏切り、背信行為もします。人間は、か弱いものです。女に石を投げることができる、罪を犯したことがない人間は、そういないのです。

Alhambra

 ところで、「右翼」や「左翼」といった政治的に使われる言葉も境目が曖昧になりました。例えば、右翼=保守的=超国家主義。左翼=進歩的=自由主義といった単純な図式は当てはまらなくなりました。

 レーダー照射問題や徴用工問題で日本との関係が悪化しているお隣の韓国では、左翼と呼ばれる人権派弁護士出身の大統領を擁いておりますが、極めてドメスティックで、それどころか、司法も行政も国際条約を疎かにするような排外主義というか国家主義的になっています。(善し悪しは別として)

  また、文革時代にあれほど「走資派」を批判し、つるし上げていた中国は、今や資本主義の権化のような経済大国です。それでいて貧富の格差が拡大して、共産主義、社会主義が理想とする平等主義から程遠くなり、矛盾しています。

 それだけ、21世紀になって、イデオロギーや概念が大変革したわけです。かつての左翼が右翼的になり、かつての右翼が左翼的になったというか、そもそも最初から左翼も右翼も幻想で、なかったのかもしれません

Alhambra

 左翼思想も右翼思想もなかった時代。17世紀の英国の哲学者ホッブスは、その著「リヴァイアサン」の中で、「万人の万人に対する闘争」を説きました。これは、「弱肉強食」の自然状態 から脱するため、社会契約により、絶対的権力をもつ国家(リヴァイアサン)を設定すべきだと説いております。この契約によって、人間は、平和と相互援助を約束し合います。

 ということは、ホッブスは弱肉強食の世界を肯定しているわけではなく、むしろ、強者を諌めているのです。「万人の万人に対する闘争」である自然状態では、強者が常に勝つとは限らず、強者の支配が覆され、強者は天寿を全うすることができなくなる場合もあります。本来、人間は平等で、人間同士の欲求は競合しますから 「万人の万人に対する闘争」 が起こります。平等だから決着はつかず、「闘争」は永遠に続きます。だからこそ、強者は社会契約を受け入れて、弱者を蔑むこともやめるべきだというのです。

 よく考えてみれば、強者だって、病気や怪我をすればたちまち弱者です。強い若者も、老人ともなれば弱者になります。富裕層も没落すれば、あっという間にに弱者です。つまり、強者と弱者は紙一重なのです。

 今の時代、ホッブスの哲学がもう一度、見直されるべきではないでしょうか。

 有馬先生、どうも有難う御座いました。

 (ホッブスの項は、早稲田大学の豊永郁子教授の論考を一部引用させて頂きました)

「一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学」は勉強になりました

私はアナログ世代なので、新聞の書評欄で話題になっている本を探します。そんな中、CIS(しす・個人投資家)著「一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学」(KADOKAWA・2018年12月21日初版発行・1620円)を見つけて買い求めましたが、あまりにもの面白さに1日で読了してしまいました。

何しろ、帯のタイトルが「平成が生んだ最強の相場師 230億円稼いだ勝つ思考。」ですからねえ。に、に、に、230億円も稼いだんですかぁ・・・!?発売1カ月で12万部だとか。

勿論、何か秘策があるのか知りたくて、この本を買ったことを認めますが(笑)、失礼ながら相場師と言われる人間の生態と生活信条と哲学、その生い立ちと、「何が彼をそうさせたのか」といった「人間観察」をしたかったことが一番大きな理由です。

 著者も書いておりましたが、投資は本を読んでも成功するとは限らないし、はっきり言って役立たないという持論は確かにその通りですね。私もこの本を読んで、即座に自分にはできないし、無理だし、そこまで興味がないことを判断できました。

著者は「経済理論は役立たない」し、新聞や雑誌に載った情報も、既に、掲載された時点で、「利益獲得」は終了しているので、何ら足しにならないというのです。彼が利用するのは、専らツイッターの「口コミ」という、まだ海のものとも山のものとも分からない最新情報なんだそうです。デイトレーダーは、一瞬の判断が勝負の分かれ目になりますからね。1979年生まれの著者は、20歳の大学生の時に、300万円を元手に株のデイトレードを始め、初めは連戦負け越しが続き、1000万円が100万円余になる惨敗でしたが、ある事がきっかけで連戦連勝に近い勝ち方ができるようになったといいます。また、「2ちゃんねる」がなければ、続けることができなかったといいます。

彼の投資法は極めてシンプルです。「上がっている株を買う。下がっている株は買わない。買った株が下がったら売る」。それだけです。え?そんなんでうまくいくの?と思う人がほとんどでしょうが、現に著者は、約18年間で230億円もの資産を株取引等で膨らませたのですから、間違いないでしょう。

だけど、いくらシンプルで間違いないとはいえ、誰にでもできるわけではありません。株投資が「ゼロサムゲーム」だということは本人も身に染みて分かっており、数台のモニターから目が離せないプレッシャーと、いつ財産を失うか分からない恐怖と毎日闘っています。

私には無理だと感じた一番の要因は、自分は彼のようなギャンブラーではないからです。彼は、小学校の頃は駄菓子の当たりクジを見極める天才。中学生の頃から、パチンコで出る台を見極めて、打ち手を集めて大儲けする元締め屋。麻雀もプロ並みの稼ぎで、競馬もポーカーも何でもござれ、です。株式投資も「確率のゲーム」だと割り切って楽しんでます。だから、お金目当ては二の次のところがあります。私は、アナログ世代なので、デジタル・ネイティブ世代の彼のようにゲームはやらないし、パチンコと煙草は30歳で卒業し、麻雀もルールさえ知りませんからね。

これだけの資産を作れば、もう一生何もしなくても食べていけますし、贅沢三昧で、色々と散財するのが人間ですが、彼は、キャバクラに行くでもなし、クルーザーや自家用飛行機を持つわけでもなし。自宅は、月額180万円の超高級マンションとはいえ、賃貸。着る服もユニクロ。松屋の株主優待券で、牛すき定食を食べるといった具合です。根っからのゲーム好きなんでしょう。

でも、これだけの資産があると金銭感覚が常人とは違うんでしょうね。ライブドアショックで5億円の損失した時なども、冷静に敗因を分析するぐらいです。(他にも大損失あり)

やはり、どこか小国の国家予算ぐらいに当たる230億円もありますから、「日経平均を動かせる男」という看板は嘘偽りはないと思います。そして、この本にはお金目当てで彼に群がる多くの人間も登場したりして、確かに人生哲学も学べます。

270億円という数字があまりにも巨額で庶民としては、全く雲をつかむような話でしたが、つい先日、千葉市の投資コンサルティング会社 「テキシアジャパンホールディングス」 がねずみ講のような手口で、460億円を超える巨額の詐欺事件を起こしたことが発覚しました。中心人物の「KING」と呼ばれた銅子正人容疑者(41)と、この本の著者と同じ次元で語るのは大変失礼ですが、彼には1000億円も巨額の隠し財産があるらしく、270億円で驚いていたら世間知らずになってしまうことが分かりました(苦笑)。

 この本の著者はちゃんと税金も払っているようですし、「タックスヘイブン」のシンガポールに移住するつもりもないとも語っていますから、誠実な善良市民だと思われます。誤解を避けるため、念のため。

 

カード不正使用には気を付けませう

 会社の同僚の三浦君のクレジットカードが不正使用されていたことが分かりました。

 不幸中の幸いで、被害を免れました。その理由は、銀行口座に大金を預金していなかったため、カード会社が引き落とせなかったからでした。

 具体的な内容はこうです。三浦君のカードで、ソニーショップで16万円の決済をされたのですが、三浦君の口座には5万円しか入っておらず、カード会社から彼のところに電話が掛かってきたというのです。彼は、ソニーショップに行ったことはないし、そんな多額のモノも買った覚えはありません。それに、カードは手元にあるのです!

 考えられるとしたら、犯人はオンラインでソニーの何かの製品を買って、三浦君になりすまして、彼のカードで決済したということになります。つまりは、彼のカード番号とパスワードまで盗み出したということになります。

 三浦君の話では、ネットでカード決済したとしたら、映画のチケットを買ったぐらいで、その他はやったことがないといいます。映画のチケットをオンラインで買ったぐらいで、犯人は簡単にパスワードまで盗むことができるんでしょうかねえ?恐ろしい話です。

 幸い、冒頭に書いた通り、銀行口座にお金が不足していたため、引き落とされることなく、彼には被害はなく、不正使用されたカードを破棄して、再発行してもらうことになったそうです。三浦君は頭が良いので、カード引き落としの銀行口座には多額のお金は入れないようにしているといいます。賢いですね。

 ところで、今、ふと思ったのですが、カードの決済は1カ月ぐらい掛かりますから、三浦君のカードを不正使用してソニー製品を買った犯人は、既に、その製品は犯人の手元に送られたはずです。それなら、犯人の住所氏名が分かるんじゃないでしょうか?被害届を出すとしたら、代金が振り込まれなかったソニーなのか、カード会社はどう対処するのか、よく分かりませんが、詳しい方は御伝授ください。

 私が使っているクレジットカードは、オンラインショッピングにしろ、映画チケットを買うにしろ、その度に、何日か経って、いちいちメールで報せてくれます。明示されるのは金額とお店の名前だけなので、「あれっ?これ、何に使ったっけ?」と忘れていることがちょくちょく(苦笑)あるのですが、「購入歴」を辿れば、すぐ分かります。つまり、いつもカードの「使用履歴」については、目を光らせております。

 しかし、最近のニュースに接していると、カード不正使用で逮捕される犯人は、外国人が目立つ気がしてます。いや、偏見を助長してしまうので、これ以上書きませんが、とにかく誰にせよ、悪知恵を働かせず、真面目に働きなさい、と言いたい。恐ろしい世の中になったものです。

 

遅ればせながらの「プライベートバンカー」

 斯界ではかなりの評判と話題に上った清武英利著「プライベートバンカー カネ守りと新富裕層」(講談社・2016年7月12日初版)を遅ればせながら、今さらになってやっと読了しました。初版が出た3年前は私的な事情がありまして、読書できる状態じゃなかったので、読む機会を逃しておりました、と言い訳しておきます(笑)。

 いやあ、実に面白かった。某経済評論家が「僕が今まで読んだ経済小説の中でベスト3に入る」というので、何となく読み始めたのですが、途中でやめられなくなり、一気に読んでしまいました。

Copyright par Matsuoqua-sousai

 最近はほとんどフィクションは読むことはないので、よほどのことがない限り、小説は読まないのですが、途中で分かったことは、この本の主人公であるプライベートバンカー杉山智一氏は実名で、今では東京の外資系金融機関で勤務し、富裕層向けの「マネー執事」に従事しているようです。昨年3月には「ペライベートバンカー 驚異の資産運用砲」(講談社現代新書)を出版しています。(いつか読んでみようかと思ってます)

 そして、バンコク在住の元病院長の日本人資産家の100万米ドルを横領して殺人未遂事件まで起こした元シンガポール銀行(BOS)ジャパンデスク(日本人富裕層向け運用担当)の梅田専太郎受刑者も実名だったとは・・・。さすがにBOS時代の杉山氏の上司で、きついノルマを課して、杉山氏の顧客や手柄を分捕って、悪の権化のような描き方をされている桜井剛という人は実名ではなく、仮名のようですが、あの村上ファンドの村上世彰氏まで実名で出てきます。

 それに、私はこの本を読んで初めて知った方々ですが、シンガポールで成功し、ほとんどの人にはよく知られている若き実業家佐藤俊介氏や投資・経営アドバイザーの木島洋嗣氏らも実名で登場し、このほか、「税金逃れ」のために約30億円の資産を持ってシンガポールにやって来た元パチンコ業者や元不動産業者らも多く登場します。

 この本に登場する日本人は、何十億も何百億円も稼いでしまって、所得税や相続税対策のために、シンガポールに渡って、ペーパー会社を作ったり、不動産投資をしたりして、またまた年間、何千万円もの利益を得ながら、退屈を持て余して、生き甲斐もなく不幸そうに見えます。でも、ご安心ください。プライベートバンカーは皆様のことは相手にしてませんから(笑)。彼らにとって、5億円、10億円でさえ大した資産に見えないでしょう。50億円か100億円以上なら「マネー執事・指南役」として忠実に仕えてくれることでしょう。

 ということで、私にも、皆さんにも全く関係がない話でしたね(笑)。

 著者の清武氏は、ナベツネさんとの確執からと言われて読売巨人軍代表の座を解任されて一躍時の人になったのが、2011年11月のことでした。もう7年半も前なんですね。敏腕社会部記者だったという噂は聞いたことがありましたが、その後多くの名ノンフィクション作品を発表し、その底知れぬ猛烈な取材力には恐れ入りましたね。恐らく、大変大変失礼ながら、国際金融に関しては素人だったはずで、相当な数の専門書を読破したことでしょう。清武氏は、「おつな会」の仲間である鈴木嘉一氏とは読売新聞の同期入社で、仲が良いと聞いたことがあるので、いつか機会があれば、またお話を聞いてみたいと思ってます。

高校同窓会、参加率は25%か?

あんりま、金価格が随分上がってきましたねえ。

今年1月7日、「T貴金属」の1グラム当たりの価格が前日比51円も値下がって、4882円になって、「あ、こりゃ駄目だ。買わなくてよかった」と安堵の胸をおろして、最近、全くチェックしていませんでした。

 そしたら、2月4日付の価格が前日比10円高の5037円にもなっていたのです。ということは、5037円-4882円=155円!あの時の底値で買っていたら、1カ月弱でかなり儲かっていたんですね。

まあ、えげつない車会社の守銭奴のような話でした。失礼しました。私は、回し者ではないので、お勧めしませんからね(笑)。今から買っても遅い?これからまた暴落する可能性も、なきにしもあらずです。

バルセロナ・カタルーニャ広場

さて、個人的な話ながら、来月3月に開催する高校の同窓会の幹事をやらされております。3年時のクラス会の同窓会です。生徒数は48人。全員参加は、まずあり得ないとしても、その半数(50%)の24人は参加してほしいと思い、頑張ってきましたが、今のところ、その半分(25%)の12人参加してくれれば、御の字という感じです。

 これは、個人的なとってもつまらない話とはいえ、いわば「社会の縮図」ですから、もう少し続けます(笑)。卒業生48人のうち、メールアドレスが分かっている、これまで何回か参加したことがある人は20人(42%)。メルアドは分からないが住所(実家かもしれないにしても)が分かっている人が12人(25%)。残りの16人は、メルアドも住所も分からない「行方不明者」です。全体の33%です。つまり、これまで10回近く同窓会を開催してきましたが、一度も参加したことがない人は、全体の58%と半数以上だということが分かります。そんなもんですかねえ?

住所が分かっている12人には、葉書を出しましたが、返事があったのは1人。住所が変わったのか、葉書が戻って来た人が1人。残りの10人は、「無視」です。幹事なんてボランティアでやっているのに腹が立ちますねえ(笑)。

バルセロナ・カタルーニャ広場

 しかし、同窓会に参加する人は、心身ともに健康な人か、卒業後、まあまあうまく社会の荒波を乗り越えて生き抜いた人に限ることでしょう。我々の高校は男子校でしたので、野郎ばかりの昔の級友にわざわざ会いたい気持ちになれるかどうかは、その人個人の人生観によることでしょう。

まあ、腹を立てたり、達観したり、同情したり、色んなこと考えてしまいましたよ。

丹羽宇一郎著「死ぬほど読書」を読む

 丹羽宇一郎著「死ぬほど読書」(幻冬舎新書・2017・7・30初版)を読みました。著者は、大手商社伊藤忠の社長、会長を務め、民間ながら中国大使まで務めた有名財界人ですが、意地の悪い私は、実際にお会いしたことがないので、何故彼がこれほど人望が厚い方なのか分かりませんでした。

 でも、この本を読んで少しだけ分かったような気がしました。「文は人となり」かもしれません。まずは、財界人とはいえ、文章がうまい。読ませる力を持っています。文章家と言ってもいいでしょう。それは、実家が本屋さんだったため、子どもの頃から、身近に本があったため、学校の図書館の本をあらかた読んでしまうほどの読書家だったことで裏付けられているかもしれません。

バルセロナ

 仕事で必要な経済書だけでなく、直接仕事に役立たない日本や世界の文学全集まで読破しているのですから、教養だけでなく、人間観察の面で役立ったのではないかと思われます。

 彼が何故これほどまで人望があるのかという一つに、いつまでも庶民目線で、社長になっても黒塗りハイヤーを断って、電車通勤を続けていたことなどが周囲で共感されたのではないでしょうか。

 著者は別に読書を強制しているわけではありません。最初に「何で本なんか読まなくて問題視されなければいけないのか」という大学生による新聞の投書に対して、「別に読まなくても構いません。でも、こんな人生の楽しみをみすみす逃すのはもったいない」と謙虚に意見を述べています。

 この本で、失礼ながら一番面白かった箇所は、丹羽氏の米国駐在時代の失敗談でした。大豆を担当していた若き丹羽氏は、穀物相場の読みを外して、500万ドル(当時のレートで約15億円)の大損失を出してしまったという話です。大失敗の原因は、ニューヨークタイムズの一面に載っていた「今年は深刻な干ばつになる」という予測記事を鵜呑みにしてしまったからでした。干ばつなら大豆の収穫が減り、相場は高騰する。それなら、今のうちにどんどん買えということで、買い付けていたら、日照り続きだったのが、慈雨に恵まれ、今度は一転して農務省が「今年は大豊作になるでしょう」と発表。おかげで、大豆相場は暴落して、大損害を蒙ってしまったというのです。

 この大失敗で、丹羽氏は教訓を得ます。どんなに権威のある新聞でもその情報が正しいとは限らない。何よりも新聞を通した二次情報ではなく、できる限り一次情報を得るべきだということでした。そこで、民間の天気予報会社と契約したり、自分でレンタカーを借りて穀物地帯を視察したりしたそうです。おかげで、翌年、またNYタイムズが「小麦地帯が干ばつなる」という予測記事が出たときに、「今度は騙されないぞ」と意気込んで、カンザス州に向かい、干ばつになる気配がないことをつかんで、買わずに損失を免れたというのです。著者は「情報のクオリティを見抜け」と言います。

バルセロナ

 私はこのブログで何度も告白している通り、これまで社会科学の勉強を疎かにして、古典的名著と言われる有名な経済書などはほとんど読んでいませんでした。この本を読んで、今さらながら、アダム・スミス「国富論」、マックス・ウェーバー「 プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」 、マルクス「資本論」、高橋亀吉「昭和金融恐慌史」などは必読書だという認識を新たにしました。

 いい刺激になり、この本を読んでよかったと思いました。