カツカレーの起源に異説あり 「歴史の余白」から

浅見雅男著「歴史の余白」(文春新書)を読んでいたら、先日4月29日付の《渓流斎日乗》で御紹介した和田芳恵著「ひとつの文壇史」(新潮社)の中のエピソードが登場していたので、吃驚してしまいました。

著者の浅見氏は、手広く色んな古今東西の書籍を逍遥しているんだなあ、と感心してしまった次第。このエピソードとは、和田芳恵が新潮社の大衆文芸誌「日の出」の編集部にいて、かかってきた電話に「北条です」というので、てっきり、北条秀司の奥さんかと思ったら、何と「東条」の聞き違いで、東条英機の勝子夫人。用件は、北原白秋に揮毫してほしい、というものだったが、当時、東条は陸軍大臣で、夫人も少し上から目線だった、といったこぼれ話です。

著者の浅見氏は文章がうまいし、かなり調べ尽くしている感じです。「ある」ことは、文献を引用すればいいのですが、「ない」ことを証明するには、あらゆる文献を読み尽くさなければ、「なかった」と断定できません。ただし、「ある」と本人が日記の中で断定していても、それは実は「嘘」も多い。このように、歴史的事実を事実として認定する作業は、かなり難しいと告白しております。

繰り返しになりますが、「歴史の余白」では、面白い逸話で満載です。井伏鱒二が若い頃、森鴎外の「渋江抽斎」で、匿名でいちゃもんを付けていたとは知りませんでしたね。「十六代将軍」徳川家達(いえさと)は、長らく貴族院議長を務め、70年以上も家督を嗣子家定に譲らなかったことも、不勉強で知りませんでした。西郷隆盛の実弟西郷従道の逸話も読み応え十分。

築地「スイス」の千葉さんのカツカレー 880円

きりがないので、最後に「カツカレー」の起源を。一説では、プロ野球読売巨人軍の名選手だった千葉茂が戦後、東京・銀座の「グリル スイス」で考案したものだと言われ、私も信じてきました。銀座の「スイス」では今でも「千葉さんのカツカレー」という名前で売り出してます。

今日、昼休みに行ったら、ゴールデンウイークだというのに、銀座店は閉まっていたので、この日乗を書くためだけに、わざわざ、築地の「スイス」にまで行って、「千葉さんのカツカレー」を食べてきました。(スイス築地店は、かつては、銀座店のカレーをつくる作業場だったそうです。そう、女将さんが教えてくれました)

でも、千葉茂といっても、今のナウいヤングは誰も知らないでしょうね。あのミスター長嶋が付けていた背番号「3」をその前に付けていた名二塁手です。長嶋茂雄の現役時代を知るのはもう50歳以上ですからね。千葉茂を知るわけがありません。1950年代初めに川上哲治、青田昇らとともに、巨人軍の第2期黄金時代を築いた人ですので、実は私も彼の現役時代は知りませんけど。(野球評論家時代は知ってます)

いずれにせよ、まだまだ、食糧事情が十分ではなかった時代に、スポーツ選手のためにカレーの上にとんかつを載せた栄養満点のカツカレーを、千葉茂が考案したというのが定説だったのです。

それがこの浅見氏の本によると、既に戦前に平沼亮三という人が、自宅(とはいってもテニスコートや宿泊所などもあり、敷地3000坪)で、今のカツカレーと全く同じ料理が「スポーツライス」という名前で振る舞われていたというのです。

平沼は明治12年(1879年)生まれで、生家は横浜の大地主。幼稚舎から慶応で学び、大学では野球部のサードで4番。卒業後も柔道、剣道など26種類のスポーツをこなし、神奈川県議会議員、横浜市会議員、貴族院多額納税者議員などを歴任。このほか、日本陸上競技連盟などの会長も務め、1932年のロサンゼルス五輪、36年のあのヒットラーのベルリン五輪の日本選手団長を務めた華麗なる経歴の持ち主なのです。

この平沼の孫の一人が俳優の石坂浩二だというので少し驚いてしまいました。

やはり、カツカレーは平沼が、戦前に「考案」したということなんでしょうね。

「猫都の国宝展」と目黒雅叙園の裏話

ゴールデンウイークは人出が多いので、出掛けるのはあまり好きではありませんけど、不可抗力により、東京・目黒のホテル雅叙園内の「百段階段」で開催中の「猫都の国宝展」を観に行ってきました。

猫にまつわる置物やら絵画やらをあの東京都指定有形文化財の「百段階段」の座敷に222点も展示されていて、結構、見応えありました。

入場券は、当日1500円というので、ちょっと高い気がして、庶民らしく、事前に新橋辺りで前売り券を準備しておきました(笑)。

そんな話をしたところ、物知り博士の京洛先生は「雅叙園ですか。。。松尾国三さんですね」と、思わせぶりな発言をしてケムに巻くのでした。

明治維新後、大名屋敷、別邸を摂取されて空き地となった目黒一帯は、内務省衛生局の初代局長などを務めた医学者の長与専斎が広大の敷地を所有していたと言われます。専斎の長男称吉は医師(妻は後藤象二郎の娘)、二男程三は実業家(日本輸出絹連合会組長)、三男又郎は病理学者で東京帝大総長、四男岩永裕吉は同盟通信社(戦後、時事通信社などに)初代社長、五男長与善郎は、あの著名な白樺派の作家です。

この中の岩永家に養子に行った四男裕吉は、同盟通信社が国策で電報通信社(戦後、電通に)と合併させられて設立される前に、自ら聯合通信社を設立した際に、その設立資金を捻出するために、所有地を目黒雅叙園に売却したと言われます。その相手が細川力蔵で、雅叙園は、昭和6年に日本初の総合結婚式場として開業します。(中華料理の円形テーブルは、細川の考案と言われてます)

力蔵亡き後、細川一族による経営が行われてきましたが、 戦後の昭和23年にその経営権を握って雅叙園観光を設立したのが、京洛先生が仰っていた松尾国三でした。(その後、複雑な経緯で、今では米国のファンドが経営権を取得し、所蔵する重要文化財級の絵画、彫刻、天井画などは散逸したようですが、全略。)

松尾国三は、旅芸人一座の歌舞伎役者から、一念発起して、芸能プロモーターとなり、大阪の新歌舞伎座などの劇場経営、横浜ドリームランドなどのレジャー施設の経営者(日本ドリーム観光取締役社長)にまで出世した波乱万丈の人物です。晩年は、大元のオーナーだった大阪の千日デパートの火災で、責任を問われました。

私はこの人について、演劇人に与えられる「松尾芸能賞」の創設者としか知りませんでしたが、陰では「昭和の興行師」「芸能界の黒い太陽」と言われていたらしいですね。興行の世界ですから、裏社会との繋がりやら、そりゃ色々とあったことでしょう。

と書いたところ、これを読んだ京洛先生から「雅叙園は、住友銀行の磯田会長が、愛嬢可愛さで、”天下の詐欺師”伊藤寿永光と、あの許永中に巨額融資をした舞台になったところですよ。迂生は、松尾国三夫人の松尾ハズエさんが存命中に、雅叙園の一室で取材をしたことがありました」との補足説明がありました。

なるほど、そういうことでしたか。。。

※もし、この記事にご興味を持たれましたら、関連記事の「目黒と岩永裕吉」(2016年5月7日)も併せてお読みください。

生まれて初めて胡蝶蘭買いました

ゴールデンウィーク真っ盛りの中、生まれて初めて胡蝶蘭を買いました。

胡蝶蘭といえば、銀座のバーやサパークラブの開店祝いに必ず飾られる必須アイテムです。

派手好きな出版社が、大作家さまの出版記念パーティーを一流ホテルで開催する際にも、いの一番で登場するあの可憐で質実な華です。

銀座の花卉店での相場は安くても2〜3万円。恥ずかしくない地位の方々でしたら、5万、10万円は、ポンと叩いて買い求める代物では御座いませんか。

まさに高嶺の花。庶民には所詮縁のないものと諦めておりましたが、自宅近くの農協ストアで、半額サービスで売っていたのです。ただし、切花ですけど。

これなら、ワイのポケットマネーでも買えるわいなあ、と上の写真の猫ちゃんの顔をして、思い切って買ったわけです。

生まれて初めて買った胡蝶蘭。あまり匂いがしないんですね。まあ、一週間ぐらいもって楽しまさせてくれればそれでいいと思ってます。

気になるお値段ですか?  それは内緒です。「秘密」の花園と言うくらいですからね(笑)。

でも、金額を聞いたら、絶対に腰を抜かすと思います(爆笑)。

投資に大失敗した話

昨日は、北朝鮮のKimリーダーと、韓国のMoon大統領との歴史的会談の瞬間を会社のテレビで見ました。

午前9時29分、あの体格の良いKimリーダーが板門店の軍事境界線を徒歩で跨いで、韓国のMoon大統領とガッチリ握手した瞬間、とても信じられない気分でした。

思えば、去年の今頃、こんなことが起きるなんて夢にも思っていませんでした。北朝鮮は、ボンボン、ミサイルを発射して威嚇し、米国との全面戦争が避けられない雰囲気で、勿論、日本にもいつミサイルが落下してくるか分からない緊迫した状況でした。

この不安定な地政学的な世相の影響で株価が乱高下して、お陰で、私も生まれて初めて懸けた投資が大失敗して、かなり高額の損失を蒙ってしまいました。

この投資は、友人から勧められたもので、米国の投資会社が運用するファンドで、投資業界に精通した日本人の投資家ということで、盲目的に信頼して、預けたところ、「授業料」にしてはあまりにも高額で卒倒しそうな大損失を蒙ってしまいました。

この投資は、最初から不愉快な躓きがありました。まず、米国のファンドなので、ドル建て送金しなければなりません。その手続きのために、三菱東京UFJ銀行銀座支店の窓口に行ったところ、散々たらい回しして、散々待たせた挙句、何と、理由もなく拒絶するんですからね。(結局、ドル建て送金は、新生銀行で済ませ、為替に関しては、TTSだのTTBだの色々と詳しくなりました=笑)

おばさん銀行員の態度があまりにも傲慢で不愉快だったので、「潰れてしまえ!三菱UFJ!」と呪詛しましたが、いまだに潰れずに営業しているようですねえ(笑)。

銀行は庶民のことを陰で「ドブ」と呼んでいるらしいので、銀行の未来はないでしょう。どこの銀行もやっとリストラが始まりました。

あれっ?何の話をしてるんでしょうかね?(笑)

東銀座「中華料理店」レバニラ定食890円

米国に住む友人の今村君に投資の相談をしたところ、「投資は自己責任です」と、一言、英語で答えが返ってきました。

冷たい奴だなあ、と一瞬思いましたが、確かにその通りで、一番的確なアドバイスだと後で気がつきました。

実は、正直に失敗談を書いたのは、世を儚んで立ち上がれない程、落ち込んでないからです。痛い目に遭ったのに、まるで他人事です。これではいけない。自分に対する戒めとして忘れないようにするため告白しました。

「山口メンバー」には違和感

人気アイドルグループTOKIOの山口達也メンバーが25日、強制わいせつの容疑で書類送検され、ファンの間では「信じられない」との声が広がってます。

このニュースについて、特に興味を持ったわけではありませんが、何となく違和感を覚えました。

新聞でも天下のNHKも、山口容疑者のことを「山口メンバー」「山口メンバー」と表記したり、叫んだりしているからです。

警察がそう発表したのか、強大な権力を持つ有名芸能事務所がマスコミにそう呼ばせたのか、真相は分かりませんが、何か水で薄めて緩和している感じです。

ズバリ、「財界」「官界」「芸能界」のゴールデントライアングルの構図が浮き彫りになります。

まず、資本主義社会ですから、企業は物やサービスを買ってもらわなければなりません。でも、庶民は賢いのでそう易々とは買ってくれません(笑)。

そのため、「財界」はタレントを起用してコマーシャルします。消費者は、親の言うことは聞かなくても、好きな芸能人が出ている製品なら飛びついて買います。

「官界」=行政は、タレントを「1日警察署長」や「1日税務署長」に起用して、交通安全や納税を大衆を啓蒙します。山口メンバーのように、「スペシャル・アンバサダー」でもいいですね(笑)。

これらと「芸能界」を取り持って狂言回しの役割をするのがマスコミ媒体です。特に、宣伝と直結する広告代理店は、芸能人のスキャンダルにはいつも厳しい目で監視して、いざという時は、その対応に追われます。

テレビにとって、芸能人は、番組作りに欠かせません(ただし、番組は商品を売るための拡販材料)。新聞・雑誌も売るためには、タレントを起用して華やかにしなけりゃなりません。

持ちつ持たれつの関係です。

まあ、社会の構図がこうなっているのですから、第三者がとやかく言っても始まらず、いつも隔靴掻痒で終わるわけなのです。

【追記】

意外にも、東京発行の全国・ブロック紙「都内最終版」を見ると、読売新聞だけが、「山口容疑者」の表記だったのです!あと朝日、毎日、日経、東京、産経は全て「山口メンバー」でした。

テレビはいわずもがなでしょう。

ただ、まだ書類送検の状態で処分が出ていないため、各社の判断になっているようです。

仮想通貨とは何者だあ!?

銀座「アジュール」パスタランチ1000円

最近、ビットコインや「コインチェック事件」など仮想通貨の話題に事欠きません。

遅ればせながら、小生もほんの少しだけ興味を持ち始めました。21世紀を生きる現代人のマナーとしてです。

もちろん、仮想通貨は投資というより、投機の側面が大きいのでまだ実際に買うつもりはありませんが、その仕組みぐらいは知っておかなければならないと思ったのです。でも、トークンだの、ブロックチェーンだのと言われても、実際やってみないとさっぱり分かりませんね。

仮想通貨でなくても、日本の巷でも、最近はどんどんキャッシュレス化が進んでいます。

そういう私も、専ら、鉄道系の電子マネーカードを愛用しています。硬貨は嵩張り、重いからです。主に、書店や薬局で使っていますが、使える店が最近増えてきました。ポイントが溜まるのも「ポイント乞食」としては有難い(笑)。

最近になって知ったのですが、北欧スウェーデンでは、「Swish」とかいうスマホの現金決済アプリが普及し、何と、2017年末の時点で国民の半数以上が利用しているんだとか。国内の店舗では「現金お断り」の看板も掲げている店もあるそうなので、マジ、スウェーデン中央銀行による紙幣クローナ発行も減ったんじゃないかと勝手に思ってしまいます。

中国では既に、巨大電子商取引アリババの電子ウォレット「Alipay」や無料通信アプリ「微信」を運営するテンセントのモバイル決済ツール「WeChat Pay」などがほとんど日常的に紙幣以上に使われているようです。(偽札が横行しているのも一つの理由)

こうなると国家が保証する通貨や紙幣は一体どうなってしまうのか。そんなら仮想通貨でもええじゃないか、と発展するのではないかと私なんか、考えたわけです。

今日は、眞子さまがご婚約されて延期になっている小室家の真相が読みたくて(笑)「週刊文春」合併号を買ったのですが、旧村上ファンドで名を馳せた投資家村上世彰さんとジャーナリストの巨人池上彰さん(二人とも彰が付くとは!)との対談が一番面白かったです。

さすが、お二人ともよく勉強してます(失礼!)あの村上さんはシンガポール在住と聞いてますが、日本の情報もかなり仕入れているようです。

村上さんによると、仮想通貨を新たに発行(マイニング)するための電気代が、年間数千億円にもなるというのです。ブロックチェーンをつくるのにかなりのエネルギーを消費するそうです。そのため、電気代の安い所や、コンピュータの冷却のため、アイスランドのような寒い国に仮想通貨会社は設立しているらしいんですね。へーと思ってしまいました。

現在、日本で最も多くの株を保有しているのは、日銀と年金基金で、年金基金の最新運用益は6兆円。日銀は、19兆円のETFを買い入れしていて、保有株の時価総額は24兆円余りで、含み益が5兆円(2018年3月末)あるそうです。日銀が保有している赤字国債は4000億円程度。だから、短期的には日本の経済について、村上さんはポジティブに考えているそうです。

ただし、長期的には、少子高齢化による労働人口の減少で、ネガティブと考えているとか。まだ、書きたいのですが、引用はここまでにしておきます。

鹿島神宮は中臣氏の氏神さまだった…

昨晩は、珍しく痛飲してしまい二日酔いです。。。

この《渓流斎日乗》のサイトの技術と運営面でお世話になっているIT実業家の松長会長と一献傾けたところ、あまりにも美味しい料理とお酒に恵まれて、ついメートルがあがってしまいました(笑)。

松長会長は、私よりちょうど一回り若い海城高校の後輩ですが、彼より1年後輩の坂元さんという方がやっている湯島の純酒肴「吟」に連れて行ってもらったところ、驚くほど美味!

この話は一番最後に回すとして、まず、昨晩、松長会長の神保町の会社を訪れたお話から。

◇おねだりしません!

皆様、既にお気づきのことと存じますが、今年1月からこの《渓流斎日乗》のサイトに鬱陶しい(笑)広告が掲載されるようになりました。正直申しますと、魂胆が御座いまして、この広告を皆さんがクリックして頂くと収益になるわけです。高望みはしてません。せめて、サイトのサーバーやドメイン維持料金の肩代わりをしてくれれば、という切ない希望的観測で始めたのでした。

その結果を教えてもらうため、足を運んだのですが、何と、1カ月の収益が、約170円だったということが分かりました。えーーーー!!!これでは何の足しにもなりませんねえ(笑)。アクセス数が少ないからしょうがないのですが、広告までクリックしてくださる方は、アクセス数の1%、つまり、100人に1人だということも分かりました。

何も、皆様に広告をクリックしてほしい、とおねだりしているわけではありませんよ(笑)。何しろ、頻繁にクリックされると、「不自然なクリック」としてマイナスになってしまうのです。また、私自身がクリックすると、どんなに機種を変えてもGPSかなんかで分かってしまい、「違反」になり、これもマイナスになります。

この話はこれぐらいにします。

純酒肴「吟」にて

◇古代史の謎を解明

松長会長はITに詳しいだけでなく、古代史と神社仏閣の縁起に異様に詳しいのでした。

たまたま、「埼玉風土記」の話になると、もう散逸して今は残っていないというのです。知りませんでしたね。現存している写本はたったの五つで、「出雲国風土記」がほぼ完本、「播磨国風土記」、「肥前国風土記」、「常陸国風土記」、「豊後国風土記」が一部欠損して残っているだけだというのです。

そして、常陸国の風土記が残ったのには理由があり、中臣氏の領地だったからだというのです。中臣氏とは、中大兄皇子とともに乙巳の変の革命を行い、大化の改新を遂げた、あの中臣氏です。中臣鎌足は、藤原鎌足と改名し、藤原氏は、摂関政治の黄金時代を築いて、現在でも血脈が続いているので、常陸国の風土記も現代まで残ったといわけです。

その証拠は、中臣氏の氏神が常陸国の鹿島神宮であり、この祭神を大和に移送して祀ったのが春日大社だというのです。神の使いといわれる鹿も一緒です。確かに、春日大社の「御由緒」の中には、記紀に出てくる出雲の国譲りの物語で成就された武甕槌命(タケミカヅチノミコト)を鹿島神宮からお迎えしたと書いてありますね。中臣氏の氏神とも書いてありますから、結局、鹿島神宮は、中臣氏の氏神を祀った神社だったわけです。

そして、鹿島神宮の「神宮」は、そう滅多に名乗ることができないというのです。明治以前は、天皇家直系の伊勢神宮と、この鹿島神宮と、同じく国譲りの神話に出てくる経津主大神(ふつぬしのおおかみ)を祀った香取神宮(下総)しかありませんでした。明治以降になって、熱田神宮(三種の神器の一つ、草薙神剣が収められている)や明治神宮などがあるぐらいで、社格が段違いに凄いのです。

◇武蔵国の首都は鴻巣市だった!

さて、次は古代の武蔵国の話です。風土記が散逸してしまったので、詳細は分かりませんが、武蔵国の中心は、何と今の埼玉県鴻巣市笠原だったというのです。この地名に残る笠原とは、西暦534年頃に起きた「武蔵国造(むさしのくにのみやつこ)の乱」で、大和朝廷(今は「ヤマト王権」というらしい)の力を借りて、武蔵国を統一し、この辺りを拠点にした笠原直使主(かさはらのあたいおみ)から付けられたと言われてます。

おまけの話として、古代の地名の上野(こうずけ)国(群馬県)と下野(しもつけ)国(栃木県)はもともと、一つの国で「野」(け)と言われていたそうです。ヤマト王権は全国統一に当たって地元豪族を国造に任命したりしますが、その代わりに屯倉(みやけ)といって直轄地を寄進させます。年貢米の収穫が目的です。

こうして、お米の生産が上がっていくと、人口も増えていきます。そうなると、上野国、下野国のように、国を分割するわけです。「総(ふさ)」の国だったのが、「上総(かずさ)」(千葉県中部)と「下総(しもふさ)」(千葉、茨城、埼玉、東京)に。「備」の国は「備前」(岡山、兵庫、香川)「備中」(岡山県西部)「備後」(広島)に分かれるわけです。

湯島の純酒肴「吟」にて

◇京都の銘酒「まつもと」にはKOされました

そうそう、最後に純酒肴「吟」の話をしなければなりませんね。JR御徒町駅と地下鉄湯島駅の中間辺りのちょっと奥まったビルの2階にあります。15人も入れば満員になるお店です。居酒屋というより、酒肴という代名詞が雰囲気に合ってます。亭主の坂元さんは、30歳過ぎてから日本料理店で修行して、この店を出したという苦労人でした。

刺身を料理ではないと思っている人がいるかもしれませんが、立派な日本料理です。しめ鯖もカツオも旨いこと、旨いこと。

置いているお酒の銘柄は、まったく初めて聞くものばかりで、最初に味わった京都の銘酒「まつもと」は、これまで呑んだ日本酒のベスト5に入るくらい、クセがなく上品なスッキリとした味わいで、驚いてしまいました。

安倍内閣支持率が30%にまで続落で、ほぼ崩壊へ

安倍内閣の支持率低下が止まりません。

23日付朝刊。安倍政権の支持母体とも、「御用新聞」とも、言われたあの読売新聞でさえ、支持率が39%、不支持率が何と最高の53%なんですからね。

毎日新聞になると、内閣支持率は、危険水域と言われる30%(不支持率49%)にまで続落してしまいました。もう無理ですね。

国民はうんざりしているからでしょう。

今日23日付の東京新聞朝刊は、1面トップで、「異常事態の安倍政権」と題して、今年1月から4月にかけてのわずか3カ月で、疑惑と不祥事が「13」もあった、とわざわざ年表(笑)にして列挙してます。

もう忘れかけていますが、1月の「スーパーコンピューター開発をめぐる国の助成金詐取事件関連」に始まって、4月のつい最近は、「福田淳一財務次官のセクハラ疑惑」「幹部自衛官が野党議員に罵声」と続きます。

セクハラ疑惑については、福田さんは依然として認めておらず、「週刊新潮」を発行する新潮社が「この期に及んで否認するとは驚きを禁じえません」とコメントを発表するぐらいです。音声データの証拠があるというのに、まだ否認する福田さんの「一部分を取っただけで、全体ではないから、ありえない」という弁明こそ、やはり、一般国民としても「驚きを禁じえません」と同じ言葉出てきてしまいます。

ただ、ここに来て、セクハラ被害を訴えたテレビ朝日の女性記者が早くも、ネット上で、顔からプロフィールまで晒される「二次被害」が出ているようで、そんなことをする輩に対しては、暗澹たる思いがします。

銀座「味」 さば味噌に定食 880円

それにしても、安倍さんが直接かかわった案件ばかりではないのですが、この3カ月の疑惑と不祥事が「13」というのは異様に多く、クリスチャンでなくても、まさに不吉な数字ですねえ。

安倍さんを首相に「抜擢した」小泉純一郎元首相も先日、「彼は、もう(自民党総裁選の)3選は無理だな」と、引導を渡すような、猫の首に鈴をつけるような発言をしてしまったので、これで、ほぼ完璧に、第5次安倍内閣の芽はなくなったということでしょう。

これから消費税はどうなる? 軍事大国化した中国の覇権問題はどうなる? 何と言っても、混迷の中、経済政策はどうなる?

こんな「国難の時代」と言っていた張本人の安倍さんは辞めてしまうのか?

ご安心ください。首相の代わりはいくらでもいます。誰がなっても同じです。トップは変わっても、政治行政を仕切っているのは、我々官僚ですから。。。

あれ? その声は、福田淳一さんじゃありませんか???

新聞社崩壊は歴史の流れなのか!?

これでも、私は、いわゆるマスコミ業界に40年近く棲息して、禄まで食んで来ましたので、業界の動向は気になります。特に新聞業界は。

そしたら、自分が悲観的に想像した以上に、今はとんでもない事態に陥っていたんですね。畑尾一知著「新聞社崩壊」(新潮新書、2018年2月28日初版)を読んで深い、深い溜息をつきました。

著者は長年、朝日新聞社の販売部門を勤め上げた人で、2015年に60歳の定年で退職されたようです。「花形」と言われる記者職ではないため、傲岸不遜と産経出身の高山正之さんが週刊新潮で批判するような朝日タイプではなく、細かい数字を列挙して冷静に分析し、経済学者のような説得力があります。

冒頭で、いきなり、新聞読者はこの10年間で25%減少した事実を明らかにします。

2005年=5000万人だった読者が

2015年=3700万人と1300万人減少。つまり、25%も減少。

さらに、10年後は最低でも30%減少すると予想されることから、

2025年=2600万人。実に、20年間でほぼ半減、いやそれ以上大幅減少する可能性があると指摘するのです。

このほか、2015年は、若い人はともかく、最も新聞を読むべきはずの50代が40%未満に落ち、半分以上が新聞を読まないという衝撃的な事実が明らかになりました。道理で電車の中で、スマホゲームに熱中する50代を見かけるはずです。

新聞協会のデータによると、2005年(96社)の売上高2兆4000億円から、2015年(91社)は、1兆8000億円と25%減少。

2000年に読売1020万部、朝日830万部だったのが、2017年は、読売880万部、朝日620万部と激減です。

まさに「新聞社崩壊」という衝撃的事実です。

畑尾氏はズバリ、全国紙の中で朝日、読売、日経の「勝ち組」は生き残れるかもしれないが、毎日、産経の「負け組」は危ないと予測しています。つまり、倒産するということでしょうが、新聞メディアがなくなったら、社会的にどんな弊害が起きるか後で列挙することにして、著者は新聞衰退の根本的原因を三つ列挙してます。それは、

(1)値段の高さ

(2)記事の劣化

(3)新聞社への反感

です。

この中で、最も注目したいのが、(2)の記事の劣化。かつて、新聞社の入社試験は狭き門で、優秀な人材しか集まりませんでしたが、今では、業界の将来を悲観してか、優秀な人材は他の業種に移行し、新聞記者になるのは、出来損ないのコネ入社か、昔と比べて二流、三流の人材しか集まらなくなったようです。そうなれば、当然、記事も劣化するはずですなあ。。。

(3)の反感は、勿論、誤報問題が影響しているでしょうが、特に朝日新聞の記者は傲慢で、マンションの理事会に出ないで自己主張するとか、周辺住民の受けが悪く、その反発から購読をやめてしまう人がいるということで、私もそういう話は耳にしたことがあります。当然、その記者にはCS(顧客満足度)感覚などなく、危機意識は全くゼロです。

新聞衰退の危機に対して、畑尾氏は、色々と対策や打開策を提案していますが、果たして功を奏するか疑問ですね。

事情を知らない若い人は、別にネットニュースを見れば十分という人が多いですが、信頼できるネットニュースは、元をただせば、新聞社や通信社のニュース。「源流」のここが崩壊すると、時の権力者に都合のいいニュースか、ニュースに見せかけた企業のコマーシャルか、素人が噂を発信した裏付けのないフェイクニュースばかりになってしまうでしょう。

新聞社の本来が持つ権力を監視する機関が減れば、不都合な真実は隠され、まわりまわって、庶民に不利益が蒙ることになるわけです。

まあ、そういう世界を危機意識のない無学の市民が望めば、確実にそうなるはずです。

最近のクオリティーペイパーと自負する新聞も、広告の品質がかなり落ちてきました。昔なら絶対にオミットしていたサラ金まがいの広告や、福田財務事務次官(58)が泣いて大喜びしそうな恥ずかしい精力剤の広告が堂々と載るような末期症状です。

新聞社崩壊は、著者の予想より早く来てしまうのかもしれません。

官僚の劣化から山種美術館・富士見中・高校まで

国宝犬山城

今ほど、「記憶にない」を連発する霞ヶ関官僚の「劣化」が叫ばれる時代は珍しいかもしれません。

始まりは昨年からの「森友・加計学園事件」でした。自分の出世と、論功行賞が欲しいものですから、「忖度」したり、「首相のご意向」と印籠をかざしたり、はたまた、若い女性記者に言語道断のセクハラ行為をしたり、まさにやりたい放題です。

何でこんな露骨な不祥事を超優秀な官僚諸君が、白昼堂々と行うことになったのかー。その原因は、2014年5月に設置された内閣人事局だ、と再三再四、この《渓流斎日乗》で書いてきました。国家公務員のトップの人事を全て内閣が権限を持って仕切ることができてしまったおかげで、野心のある公務員は、国民を見ずに、内閣トップの総理大臣の顔色見ながら仕事をするようになったからです。

この内閣人事局は、内閣官房の部局の一つですから、内閣官房についてよく分かっていないといけないのですが、私自身はよく知りませんでした。物の本には、内閣官房は、関東大震災後の大正13年(1924年)に設立された、とあります。

内閣官房のトップである官房長官は「総理の女房役」と言われ、毎日何かあれば、見たくもないのに、政権を代表してスポークスマンとして記者会見して見解を公にするので、誰でも顔と名前ぐらいご存知でしょうが、事務方のトップである内閣官房副長官は、戦前の内務省の事務次官経験者が任命されてきたことは意外と知らないでしょう。

莫大な権限を有していた内務省は、戦後、GHQによって解体されて、警察庁、自治省、郵政省、運輸省、厚生省、労働省などに分割されましたから、戦後はその流れをくむ事務次官経験者が内閣官房副長官を任証官として務めてきました。

欅(埼玉県所沢市)

で、もう一つ、内閣総理大臣秘書官なるポストがあります。米国の大統領補佐官みたいなもんでしょうか。今、その首席秘書官のポストについているのが、元経産省官僚の今井尚哉(たかや)氏で、その勢いは飛ぶ鳥を落とすほどで、「影の総理」と呼ばれているそうです。

この今井氏は、あの佐川元国税庁長官、破廉恥福田元財務事務次官と同年の1982年入省組といいますから、今、この年代が天下を取って、世の中を仕切っていることが分かります。

この方が、凄いのは、伯父に、元通産省事務次官の故今井善衛(ぜんえい)、叔父に新日鉄(新日鉄住金)会長、経団連会長を歴任した今井敬(たかし)氏(善衛氏の実弟)とバックに2人も有力者がいたことです。

ちなみに、今井善衛(1913~96)は、府立一中~一高~東京帝大法学部と誠に綺麗なエリートコースから1937年に商工省に入省し、安倍首相の祖父岸信介が商工次官、商工大臣を務めた時に、直属の部下として仕えたことから、安倍首相は、善衛の甥に当たる尚哉氏に親近感を覚えて総理秘書官に抜擢したと言われてます。

また、尚哉氏が入省した時の通産大臣が安倍首相の父晋太郎だったことで、なお一層の絆が深まったようです。

この「影の総理」今井尚哉氏が、経産省の後輩で、「首相のご意向」問題で、証人喚問せよと糾弾されている柳瀬元秘書官(現経産省審議官)に対して強圧的な態度を取っていると週刊誌に書かれています。

なお、先程の元通産事務次官今井善衛は、城山三郎の「官僚たちの夏」のモデルにもなっていたんですね。善衛の妻は山種証券の創業者会長山崎種二の長女繁子です。退官後は、天下りして日石化学の社長になりました。

上州の片田舎の高等小学校を卒業して裸一貫で丁稚奉公から成り上がった山崎種二は、二・二六事件の前に株を大量に売却して、巨万の富を築き、「売りの山種」という評判を世に知らしめました。

巨万の富は、速水御舟の「炎舞」(重要文化財)など、日本の近代絵画のコレクションを網羅した山種美術館の設立と、東京都練馬区の富士見中・高校の買収(山崎学園)などに使い社会還元しました。