スマホ中毒者の独り言=アンデシュ・ハンセン著「スマホ脳」を読んで

 我ながら、自分自身がスマホ中毒だということは自覚しております。中毒というより、スマホ依存症かもしれません。

 まあ、どちらでも同じことですか…(笑)。

 さすがに、他人様に迷惑となる「歩きスマホ」は絶対しませんが、スクランブル交差点での長い信号待ちでは、イライラしてスマホを取り出して、メールをチェックしたり、酷い時にはこの渓流斎ブログを書いていたりしておりました。

 しかし、もうそれは過去のことにしよう、と思っています。

 今、大ベストセラーになっているアンデシュ・ハンセン著、久山葉子訳「スマホ脳」(新潮新書)を読むと、「そんなことしてられない」と冷や水を浴びせられます。(我々は1日に2600回以上スマホを触り、平均して10分に1度スマホを手に取っているとか!)本来なら、ベストセラー本は、このブログではなるべく取り上げない方針でしたが、(だって、私が紹介しなくても、売れてるんだもん)この本は、意外に面白いというか、もっと言えば、世界的ベストセラーになるだけあって、とても素晴らしい本だということを発見し、書かずにはいられなくなったのです。

 この本は、技術書でも手引書でもなく、1974年、スウェーデン生まれの精神科医から見たヒトの志向、性癖、思考の分析本でした。脳科学、人類学、進化論の書と言ってもいいかもしれません。でも、専門書のような堅苦しさはなく、訳文が良いのか大変読みやすいのです。

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 デジタル・デバイスに関して、人類で最も精通していると思われるアップル共同創業者のスティーブ・ジョブズは、自分の10代の子どもに対しては、iPadの使用時間を制限し、マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツは、子供が14歳になるまでスマホを持たせなかったといいます。これらの機器が若年層に与える弊害を知り尽くしていたからなのでしょう。

 面白いのは、ジャスティン・ローゼンスタインという30歳代の米国人です。彼は自分のフェイスブックの利用時間を制限することを決め、スナップチャットはきっぱりやめたといいます。依存症の面ではヘロインに匹敵するという理由からです。このローゼンスタインさん、単なる米国の青年とはわけが違う。何と、フェイスブックの「いいね」機能を開発した人だというのです。彼は、後にインタビューで「思ってもみないような悪影響があることは、後になって分かった」と語っているぐらいですから、デジタル機器の恐ろしさを人一倍、身に染みて痛感したことでしょう。

 ヒトは、どうしてスマホ中毒になるのかー?

 端的に言うと、脳内にドーパミンと呼ばれる報酬物質の量が増えて、やめられなくなってしまうからです。人類誕生以来、ヒトは過酷な環境の下で生き延びるために進化してきましたが、このドーパミンによる作用によることが大きいのです。生き延びるために食欲を満たすことによって、エンドルフィンと呼ばれる快楽物資が発散され、自分の子孫を残す生殖行為でもエンドルフィンが促されるといった具合です。

 生き延びるために、ライオンや虎などの捕食者に出会わないようにしたり、蛇や毒グモから避けたりしなければならず、そういった探索能力や、何処に行けば果実が成っているのか、何処に行けばマンモスがいるのかといった情報収集能力を発揮するには、このヒトに行動の動機付けを与えるドーパミンの助けが必要とされるといいます。

 ということは、スマホで情報を探索し、ニュースに接しているときに発出するドーパミンと、他人からの「いいね」といった承諾を得ることで出るエンドルフィンで、際限のない満足と欲求不満の連鎖で、中毒、もしくは依存症に陥ってしまうということなのかもしれません。

 そして、何と言っても、もしかしたら、スマホは、人類誕生以来の最も恐ろしい脳破壊兵器なのかもしれません。。。

 そんなカラクリが分かったとしても、ヒトはスマホを手放すことができるのでしょうか?ー多分、この「スマホ脳」は大ベストセラーなのに、読んでいないのか、通勤電車内では9割近くの人がスマホの画面に吸い込まれています。

 今から、貴方はフェイスブックやツイッターやLINEを辞められますか? もう禁断の果実を食べてしまったからには、無理かもしれませんね。

 私自身も利用時間を減らすことはできても、きっぱりとやめることはできないと思っています。(とは言いながら、広告宣伝媒体のフェイスブックなんかやめちゃうかも=笑)メールチェックもパソコンで1週間に1回ぐらいだった時代が懐かしい。スマホもパソコンもなかった時代に戻れるものなら戻りたいものです。

“スマホ中毒者の独り言=アンデシュ・ハンセン著「スマホ脳」を読んで” への2件の返信

  1. 仰るとおり スマホ無しの日常には戻れないと私も思います
    仕事に於いても多岐に渡り利用され 持たない人間は白眼視されると
    いっても過言ではないくらいです
    瑣末な例ですが 料理に関しての現実の作業など 直接体感 体験しなければいくらレシピがあろうが理解不能なのに スマホさえあれば
    問題ないと反論されたのが14,5年前くらい もう始まっていたんだと
    思い出します 見て盗め そんな暴論では無く 必要なことなのに
    あと一つ 最近 言葉がおかしく感じます 変な敬語 謙譲語の乱用
    政治家をはじめ よく耳にします 自分も気をつけてはおりますが
    読書よりスマホ その弊害では無いかと疑ってしまいます
    など 枚挙にいとまが無いくらい普及浸透してしまった日常に於いては単なる戯言でしかありませんが 違和感ばかり感じています
    過剰に 映え重視した料理は苦手です(笑)

    1. 村井様 いつもコメント有難う御座いました。アンデシュ・ハンセン「スマホ脳」は、先程、1日で読了しました。スマホ依存によって、睡眠障害や、記憶力、集中力の低下、つまり馬鹿になってしまう有様がよく分かりました(笑)。
       脳は楽をしようとするので、Googleで検索すれば分かると思っただけで、決して覚えようとしないといいます。美術館で写真を撮った作品だけが、後から思い出せなかったという実験も実に興味深かった。
       スウェーデンでは、現在、抗うつ剤を服用する人は、1990年代と比べ、10倍近く増え、100万人いるそうです。これが、スマホによる影響なのか、まだ科学的に断言できないそうですが、ま、卑見ながら、関係ないとは言えないでしょう。

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