ローマ
ロックファンを自認する作家のYさんが、「『9・11』以降、ロックは死んだ」といったような主旨のエッセイを書いていました。
古い話ですが、2001年の9月11日の同時多発テロに際し、たまたまニューヨークに滞在していた元ビートルズのポール・マッカートニーが、ショックを受け、その後、ニューヨークで支援コンサートを開催しました。Yさんは、深夜にテレビで、そのコンサートの中継を見ていたら、ポールが「米・英軍の軍事行動に関して全面的に支援する。テロを撲滅しよう!」と叫んで、聴衆から拍手喝さいを浴びていたというのです。(残念ながら、ポールがコンサートを開いたことは知っていましたが、私は、この映像は見ていませんでした)
その時、Yさんは思ったそうです。「その軍事行動で、殺されるアフガニスタンやイラクの市民はどうなるの?ああ、これで、ロックは死んだなあ」
1950年代から若者に圧倒的な支持を得たロックミュージックは、かりそめにも、現体制に対する反逆のシンボルでもありました。60年代にヒッピーやフラワームーヴメントなど、今のフリーターの魁みたいな若者もいましたが、スタンスとしては、既得権を崩して、反逆しようというのが根底にありました。
そのシンボル的存在がビートルズで、特にジョン・レノンは「平和を我らに」などを歌い、愛と平和を訴えて、反戦デモ行進に度々参加しました。その挙句の果てが、CIAに付け狙われることになり、「CIAによるジョンの暗殺説」なるデマが飛び交うほどでした。
そのビートルズの片割れのポールが、年老いてこの有様だったとは…。
日本にポールに相当する人はいませんが、例えば、元キャロルの矢沢永一が、自衛隊のイラク派遣支援コンサートを開催するようなものだ、と言えばいいのかもしれません。
同時期、来日したローリング・ストーンズの面々がインタビューに出ていて、当時のイラク戦争(今も続いていますが)について見解を求められると、ロン・ウッドは「戦争なんて、何であろうと、とんでもない!」と首を何度も振って拒絶反応を明確にしていました。
英国国家から「サー」の称号を得た貴族のポールが体制的なメッセージをして何が悪い?と言われれば、それまでですが、あまりにも体制的な色が付いた音楽は、個人的には、もう聴く気がしませんね。
アングロ・サクソンの植民地主義者と何の変わりもないじゃありませんか。
日本を愛したジョン・レノンだったら、どんな行動を取っていたでしょうね。