公開日時: 2008年2月6日
私の敬愛する音楽評論家の北中正和さんが、新著「Jポップを創ったアルバム 1966~1995」(平凡社)を出されました。
北中さんといえば、ワールド・ミュージックの紹介者として90年代の日本に一大ブームを作った人なのですが、洋楽通で、ジョン・レノンのアルバム「心の壁、愛の橋」のライナーノーツも書かれているし、ジョンの訳書も出されているので、私としては、もう憧れに近い人なのです。
ですから、この本を読んで、北中さんが、これほど「Jポップ」を聴かれていたとは驚きでした。もっとも、北中さんには「「にほんのうた・戦後歌謡曲史」という名著があり、洋楽だけではなく、かなり日本の曲も聴いていらっしゃることは知っていました。
しかし、音楽評論家とはいえ、その人の趣味がかなり入り込み「俺は、ジャズしか聴かねえ、歌謡曲なんか滅相もない」「俺はラップしか音楽じゃないと思っている」「メタルだね。それ以外はロックじゃない」と皆さん偏った人ばかり。音楽全般トータルに語れない音楽評論家が大半なのです。
その点、北中さんは、すごいですね。洋楽、歌謡曲、ワールドミュージック、Jポップと、世界のポピュラーミュージックを語れる数少ない人なのです。
この本には69枚のアルバムが紹介されていますが、この中で私が買ったアルバムは、竹内まりやの「ヴァラエティ」のわずか一枚だけでした。人から借りたりして聴いたものでも5枚ぐらいでした。知らないミュージシャンがほとんどでした。
同時代なのに、いかに偏って聴いてきたか分かりました。
私の場合、ビートルズ、ストーズ、ツェッペリン、ディープ・パープルといったブリティッシュ・ロック系か、ビル・エヴァンス、ウエス・モンゴメリーといったジャズ、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスらのクラシック、その辺りを好んで聴いてきました。
でも、こうして、幅広い音楽知識に裏付けられた北中さんの本を読んでみると、聴きたくなってしまいますね。
食べ物でも、「夏目漱石も通った洋食屋」なんていう情報があると、是が非でも行ってみたくなるように、結局、音楽だって、そういう前知識というか情報があると、より納得できるので、脳で聴いていることになるんですよね。
ただ音を聴いているだけじゃなくて、ミュージシャンの経歴と生き様を思い浮かべながら、付加価値も聴いているのです。