衝撃的なインタビューの記事(毎日新聞3月21日付夕刊)を読みました。ここ数年で一番、印象に残った記事ではないかと思います。
84歳の評論家、外山滋比古(お茶の水女子大名誉教授)さんです。「75歳ぐらいから知的活力が湧いてきた。これは大変な発見でした」といから驚きです。
私は、読んでいなかったのですが、1983年に発表した「思考の整理学」(筑摩書房)がロングセラーを続けているという話です。86年に文庫化され、この一年だけで27万部も増刷され、44万部も売れているそうです。
執筆のきっかけは、優秀な学生ほど卒論の内容が面白くなく、不勉強の学生の方が発想が奇抜で興味深い卒論を書いてきたからだそうです。これがきっかけに、
知識と思考力は比例しない。極論すると、知識が増えると思考力が下がり、知識が少ないと思考力が活発になるのではないかーという仮説ができたというのです。
彼の発言を少し換骨奪胎して引用します。
「あまり本を読んじゃいけないと考えたんです。本を読みすぎると、どうしてもその知識を借りたくなる。知識がなく、頭が空っぽであれば、自分で考えざるをえなくなる。そのために、新しいことを本で知らないこと。どうせ読むなら賞味期限20年も過ぎた古い本か古典を読むことです」
「思考力を養うには、あまり役に立たない、むしろ有害な知識を忘れること。一番良いのは、体を動かして汗を流すこと。体操、散歩、風呂がいい。酒を飲んで忘れるのもいいが、急激すぎる。じわじわ忘れていくのがいい」
「人間を育てるということは、いい教育、いい環境を与えることではない。むしろ、劣悪な環境を乗り越える力を持たせることによって、能力は高まる。テストの点数を取るのは苦手でも、逆風に耐える力で、人間力は決まる」
ね、すごい意見でしょ?もう、仮説も、意見も超えて、定説に近いかもしれません。
私もそれこそ、本ばかり読んできた人間なので、深く考えさせられ、その逆転の発想で、目から鱗の落ちるような衝撃を受けたのです。あまり、本を読んでこなかった人には、全く、何の衝撃も受けることはないでしょうね(笑)。
75歳を過ぎて、知的な活力が湧いてきたというのは、「信長の棺」で75歳でデビューした作家の加藤廣さんの例でも明らかですが、加藤さんの読書量はそれこそ膨大です。
ただ目先のことに拘らず、「古典を読め」と私は解釈したのですが…。