囲い込み運動

ミラノ

有楽町の三省堂書店で本や雑誌を買う度に、レジで「ポイントカードはありますか?」と聞かれるので、とうとう会員になってしまいました。会員といっても、年会費無料で、住所氏名年齢職業などを登録するだけです。

買った金額の1%が1ポイント、つまり、例えば1000円買うと、10ポイント付くシステムで、1ポイント1円。100ポイント以上貯まると商品券に代えられるお得なカードが発行されます。

「これは便利!」と思ったのですが…。

気がつくと財布の中には、このような様々なポイントカードがあることが分かりました。航空会社のマイレージカード、量販店のカード、CDショップのカード、理髪店のカード、パン屋さんのカード…。もう財布もパンパンです。

そして、はたと気がつきました。

「これは、他の店で買わせないようにする究極的な戦略ではないか。得したように見せかけて、結局、その金額を負担しているのは消費者であって、全く得していない。これは、単なる、手を換え品を換えた『囲い込み運動』ではないか!」

私のこの「理論」を証明してくれる本に最近出会いました。内橋克人さんの「悪夢のサイクル」(文藝春秋)です。内橋さんは、私の尊敬する数少ない経済評論家の一人です。

こういうポイントカードは、規制緩和政策によって、新規参入業者と熾烈な戦いに晒された既存の大手航空会社が、顧客を取り込む目的で始めた対抗策の1つだったということです。FFP(フリークエント・フライヤーズ・プログラム)と呼ばれますが、つまり、マイレージカードのことです。(これにより、新参入業者は敗退していきました)

そういえば、私の友人の本多さんは、帯広まで来るのに、わざわざ、釧路にまで行って、レンタカーを借りて帯広まで来たくらいですからね。つまり、彼は、全日空のマイレージカードしか持っていない。帯広は日本航空しか運航しておらず、全日空が乗り入れている釧路まで行ったわけです。

本屋さんも、日本全国に無数ありますが、このカードのおかげで、なるべくS書店で買うようになるでしょう。こういうけち臭い顧客のおかげで、弱小書店がつぶれていくわけです。

私はこのことを「囲い込み運動」と発言しましたが、もちろん、世界史に出てくる用語を拝借しただけです。未来の大人たち、つまり、世界史を履修しなかった今の子供たちは、ピンとこなかったと思いますが…。