フリードマンの(功)罪

レオナル・ド・ダヴインチ像(ミラノ)

ノーベル経済学者のフリードマン氏が16日に亡くなりました。94歳。新聞各紙は、彼の業績を讃える文言ばかり並べています。

何しろ、彼は、今の「世の中」を作った神のような人だからです。

 

http://news.goo.ne.jp/topstories/world/20061117/910a81d95d53a4805185d679c394066b.html

 

シカゴ学派の重鎮、フリードマン氏は、ひと言で言うと、市場原理主義者です。「競争市場は常に公平だ」という確信の下、政府などの介入や規制を極力排除して、自由市場経済を提唱した人です。

 

「自由」や「規制撤廃」などというのは、一見、素晴らしい思想に見えます。しかし、内実は「努力しないものはドロップアウトしろ」「儲けられる時に儲けるのがジェントルマンだ」といった弱肉強食の極端なエリート主義だったのです。

 

彼の主張には「食品や医療品に対する安全規制は技術進歩を遅らせることによって社会に弊害をもたらす」

 

「最低賃金法が雇用を阻害する」といったものがあります。彼の思想の正体がこれでわかるでしょう。

 

実際、彼は1965年にポンドの空売りをしようと目論みましたが、シカゴ大学のメインバンクである「コンチネンタル・イリノイ銀行」から「銀行は投機という反社会的な行動、あるいはそういうプロジェクトに貸付をしない」といった理由で断られています。

 

先物による商品や通貨の取引を全面的に自由化して、逸早く情報を得た者だけがその利益に預かるというのが彼の思想だったのです。

 

その後、彼の弟子である「シカゴ学派」の若き経済学者を政策委員に採用したチリやアルゼンチンの国家経済がどんなに混沌とした「対外債務危機」の悪循環を踏んできたか、歴史をみれば明らかです。

 

フリードマン氏が後世に与えた影響は神のように絶大です。世界経済で最も影響力を持つFRB前議長のグリーンスパン氏も現議長のバーナンキ氏も彼の申し子です。

 

ですからフリードマン氏を勇気を持って批判した内橋克人氏の「悪夢のサイクル」(文藝春秋)を読んだ時は、本当に驚き、かつ感心したのでした。