今、新幹線の車内です。しかも、身分不相応にもグリーン車です(笑)。これから、出雲大社と姫路城に行って来まーす。
さて、昨日の土曜日は、今年100周年を迎えた甲南大学の公開講座を聴講して来ました。同大学フロンティアサイエンス学部の三好大輔教授による「あなたの知らないDNAのヒミツ」という演題でした。
小生、文系ですからこんな難しい話を聴講するなんて、まだ知的好奇心は衰えていない証拠ですね。
今さらご説明するまでもないのですが、DNAとは、ヒトの生命の情報を担う核酸のことで、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)のたった4種類が30億個並んでいます。(AはTと、GはCと結び付くが、この組み合わせ以外の連結はない!)これをゲノムといい、ヒト・ゲノムは1990年から2003年まで13年かけて、全配列の解析に成功しました。
ちなみに、ヒトは60兆個の細胞で出来ており、120兆メートルのDNAがあるということですが、そう言われても見当もつきませんね。
DNAの中で、遺伝子というタンパク質の情報を持つ部分は、全体のわずか1%で、ヒトには2万2000個あります。チンパンジーの遺伝子も全く同じ2万2000個だというのですから、「霊長類の頂点」などと威張ってられません。それどころか、イネには3万2000個の遺伝子があるといいますから、何をか況わん。
同じヒト同士でも、遺伝子の配列の違いはたったの0.1%。そうは言っても、DNAは、ATGCが30億個並んでいますから、30億の0.1%なら300万カ所違うわけです。
さて、唐突ながら、生命にセントラルドグマ(中心教義)なるものがあり、遺伝子情報には、DNA→RNA→タンパク質へという流れがあります(1958年、フランシス・クリックが提唱)
この流れは、まずDNAが複製され、それが転写されて、mRNA(伝令RNA)を通して翻訳され、タンパク質が合成されます。細胞が死滅して、再生されるわけです。
さて、このDNAが複製される際、テロメアと呼ばれる末端が、本来なら死滅して先端部が切れていくのが、そのまま残り(不死化)、これががんになるというのです。原因は、老化によるもので、ヒトの細胞は、50歳を過ぎるとそんな不死化の可能性が高くなります。
例外的に良い意味で不死化しないのは、生殖細胞です。途中で、末端部が切れてしまっては、生まれてくる赤ちゃんに影響が出てきてしまいますからね。
ヒトは老化すると、細胞分裂(複製)の度に少しずつ(10億個に1個の確率)変異が蓄積され、これが疾患(がん)につながります。
講師の三好教授は、このDNAの複製からタンパク質が合成される際の途中で、mRNA(伝令RNA)が仲介することと、従来ゴミだとみなされていたイントロンが触媒として重要な働きをしていたことに注目して、このRNAを標的にした薬剤開発を研究中なんだそうです。
成功すれば、ノーベル賞ものかもしれません。その時が楽しみです。「私は三好教授の講演を聴いたことがあります」と自慢します。