「警察用語の基礎知識」は役に立つ

 嫌な映画を観たせいか、馬鹿らしくなり、我ながら読書量が衰えません。先ほど、古野まほろ著「警察用語の基礎知識」(幻冬舎新書、2019年3月30日初版)を読了しました。

 皆さまご案内の通り、私はメディアの仕事に従事していますが、経歴としてほとんど「サツ回り」(県警や所轄担当の事件記者)はしたことはありません。例外として北海道に赴任したときに、道警の警察署に顔を出して何十本かの事件、事故記事を書いたぐらいでした。社会部に配属されたこともないし、正直、警察の組織にも興味はなく、普段でも、警察モノのテレビドラマや映画は見ませんし、いわゆる警察小説も読みません。

それでは、何で、このような本を読んだかといいますと、今たまたま、仕事で、警察関係の人事情報処理もやっているもので、そのための参考書を読まないといけないと以前から思っていたらからでした。

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 この本も、会社近くの本屋さんで、たまたま見つけたものでした。

 著者の古野まほろ氏は、今はミステリー作家ですが、東大法学部を卒業して警察官僚のキャリアとなり、警察大学校主任教授を最後に退官しているということで、60代ぐらいの人かと思ったら、年齢は公開しておらず、定年退官でなければ、まだ40代後半の方なのかもしれません。ま、それはともかく。

 私はメディアの人間ですから、それが当たり前かと思っていたら、単なるメディア用語で、警察内では正式に(法令として)使わないという用語をこの本で取り上げていたので、少し驚いてしまいました。

 例えば、「容疑者」です。これがメディア用語だとは恥ずかしながら知りませんでした。業界(著者の言うところの警察業界)では、「被疑者」と言うんだそうですね。また、「重要参考人」も「現場検証」もメディア用語で、業界ではあまり聞かない、とのこと。

 このほか、「送検」や「書類送検」もメディア用語で、業界では絶対に使わず、「送致」(事件を法務省の検察官の手に移す手続き)しか警察官の脳内辞書には登録されていない、と書いてありました。「県警」「道警」などもメディア用語で、正式には「北海道警察」「静岡県警察」などと最後の「察」は省略しません。でも、世間では「県警」などが浸透してしまっているので、業界内でも非公式な口頭などでは使っているようです。

◇「星の数」とは階級のこと

 この本には、色んな事が書かれていますが、最初に書いた通り、私が仕事で使う人事、つまり、警察の階級を特記したいと思います。以下の9階級あります。

(1)警視総監 星四つ  警察庁長官と警視総監(紛らわしいが、こちらは東京都警察本部のトップ)の2人だけ

(2)警視監 「大規模県の警察本部長」役員クラス 40人ほど

(3)警視長(業界での通称はケイシナガ、警視庁と混同されるため)ノンキャリアの最高位。「警察本部長」「警察本部の総務部長」

(4)警視正(通称マサ)「警察本部の部長」「大規模県の警察本部の課長」

(5)警視(通称シ)「署長」「警察本部の課長」。ここまでの警視以上の階級は全体の3%

(6)警部(通称ブ)最初の管理職。「署の課長」「警察本部の課長補佐」全体の7%

(7)警部補(通称ホ)現場の実働部隊のトップ。「係長」。キャリア組のスタートはここから。

(8)巡査部長(通称ブチョウ)「主任」

(9)’ 巡査長巡査(通称サチョウ、非正式な名誉称号で階級は巡査と同じ)

(9)巡査(通称サ)企業でいえば「係員」

(1)の警視総監は別格。(2)~(4)が将官、(5)~(7)が士官、(8)~(9)が下士官に当たる。

 警察庁は国家公務員で、全国の47都道府県の警察本部は、独立した組織。警視庁(東京都警察本部)は5万人で最大。他の県警は2000人~3000人程度。

・仕事をしない、できない、それなのに態度がでかい(笑)不良警察官のことを「ゴンゾウ」という。ゴンゾウでもクビにできないから、中には、あらゆる人事措置に耐え抜いてしまうゴンゾウ警察官はサバイバーと呼ばれ、ある種の敬意の対象にすらなるそうです。

・警察用語の「ニンチャク」とは人相着衣のこと。被疑者は「マルヒ」、被害者は「マルガイ」という。警察小説やドラマなどで使われて社会常識になってしまった「ホシ」や「ガイシャ」は業界では使わない。

・警察官の一人称として「本官」はあり得ない。「本職」か、少し卑下する場合は「小職」を使う。

他にもありますが、ここまで。