なぜ黒川東京高検検事長は検察トップの次期検事総長に就任するのか?

WST National Gallery Copyright par Duc de Matsuoqua

 昨晩遅く、名古屋の篠田先生から電話があり、「今日の閣議で、黒川弘務高検検事長(62)の定年退官が半年間延長されることが決定された。今年8月には検事総長になるようだ。酷い人事だね。夕刊はどこもベタ記事しか書いていない。おかしいなあ、一面の左片扱いするべきです。司法記者は何をやっているんだ。もっと書かなくちゃ駄目じゃないか」と一気にまくしたてていました。

 ご安心ください。昨日の首都圏発行の各紙夕刊も、今朝の朝刊も、志のある新聞ならちゃんと書いています。あの読売新聞でさえ、「東京高検検事長、異例の定年延長…IRやゴーン被告事件を指揮」と題して掲載されています。でも、この読売の記事だけでは、黒川さんの人となりがさっぱり分かりませんね。

 会員雑誌「FACTA」は昨年2019年3月号で、安倍政権下で法務省トップの事務次官などを歴任し、「官邸の代理人」「腹黒川」と呼ばれてきた黒川弘務氏が、菅官房長官らに取り入って19年1月18日付で、検察ナンバー2の東京高検検事長になったという「事実」を報告した後、この先、検察官のトップである検事総長に上り詰めるかどうかについては、「検察関係者の間では『黒川総長はない』とする声がもっぱらだ」と、結論付けていました。

 それが1年経って、一発大逆転。黒川氏の定年を延長するという禁じ手とも言うべき「異例の措置」を取ってまで、検事総長にする理由が官邸サイドにあったということになります。

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 朝日新聞も2月1日付朝刊で「高検検事長が異例の定年延長 次期検事総長に就任か 」と書いております。

 検察ナンバー2である東京高検検事長の黒川弘務氏は1957年2月8日生まれで、来週63歳となり、本来なら定年退官になるべきところ、半年間定年を延長して8月7日まで続投。その後は、8月に2年の任期が切れる稲田伸夫氏(63)の後任として検察トップの検事総長(65歳定年)に就任するというものです。

 この記事によると、黒川氏は、捜査畑というより、法務官僚としてのキャリアが長く、安倍政権による共謀罪など重要法案や政策の実現に向けて尽力されたようです。略歴は、東京都出身で、1981年に東京大学法学部卒業となってますから、2浪されたか、留年されたかでしょう。どうでもいいですけど、世代が近いので、どこの高校だったのか知りたいですね(笑)。

 ま、安倍晋三首相の大のお気に入りだということが分かります。

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 しかし、どうも、黒川氏が気に入られたということは、官邸の意向というか、ズバリ、安倍首相にとって、使い勝手が良いから採用されたという側面が強いように見受けられます。そこが問題です。

 行政のトップが、司法トップを意のままに動かせるのなら、独裁と同じでしょう。IR汚職事件など政権にとって「不都合な真実」に対して、「官邸代理人」の司法トップが手を加えたりするようでしたら、北朝鮮なんか批判できないのではありませんか?

 テレビを始め、世間の人たちは、こんな話よりも、昨日行われた沢尻エリカ被告の初公判の方が関心があり、大事なことでしょう。でも、果たしてどちらが重要か?

 沢尻被告の話はいずれ忘れられるでしょうが、黒川氏が検事総長に就任すれば、ボディブローのように末代まで効いてきますよ。