山本悦夫氏が小説「ホーニドハウス」を出版へ

モッコウバラ 木香薔薇 Copyright par Keiryusai

 皆さま御存知の山本悦夫氏が自ら立ち上げた出版社「(株)インターナショナルセイア」から、5月中旬に「ホーニドハウス」という小説を出される予定で、日販、東販、栗田書店などの取次を介して全国書店に配布し、5万部の販売計画を立てている、というニュースが飛び込んできました。

 第一感想は「凄いなあ」の一言です。山本氏には既に「インドに行こう」(インターナショナルセイア)や「蛇とニーチェ」(創英社)などの著書があり、個人情報ながら(ネット上でも公開されておりますので)敢て触れますが、1934年生まれで今年87歳です。その無尽蔵のヴァイタリティには感服するしかありません。

 山本氏とは「おつな寿司セミナー」を通じて30年程前に面識を得て、東京都内の一等地の御自宅に何度かお邪魔したことがありますが、民芸輸入商社の社長さんということぐらいしか知りませんでした。20年程前に、1995年から8年7カ月、内閣官房副長官を務めた(歴代最長)古川貞二郎氏とは九州大学時代の無二の親友だということを初めて知り、長崎の御出身だと思っていたら、10年程前に、生まれも育ちも台湾の台北(戦前の日本領時代)だったということを初めて知りました。

 今回初めて知ったのは、山本氏が九州大学を卒業して上京して就職したのが、学陽書房という行政、法律、実用書関係が中心の出版社だったということでした。今でこそ有名ですが、当時、同社は、東京・雑司ヶ谷の菊池寛邸にあった小さな出版社で、山本氏は、その出版社の顧問をしていた藤沢閑二さんから我が子のように親身になって可愛がられたそうです。その藤沢氏は、菊池寛の遠縁に当たり、ご夫人の瑠美子さんは菊池寛の長女だったという関係で、戦前は、文芸春秋の専務として創業者の義父菊池寛を助けた人でした。

 山本氏が出版社に就職したのも、少年時代からの夢だった小説家になることがあったからだったようです。

 山本氏がこれまで上梓された本は主に研究書、ノンフィクションでしたので、今回の小説は、70数年目にして少年時代の夢を実現したことになります。

 小説「ホーニドハウス」の「前書き」に「この物語は、一九六五年のアメリカのディープサウス(深南部)が舞台である。この年、アメリカによるベトナムの北爆が始まり、夏には米国北部の大都市を中心とする『長く暑い夏』と呼ばれる黒人の暴動が荒れ狂った。 主人公、太郎は、ジョージアの境界に近い北部フロリダの小さな町の大学に通っていた。」とあります。山本氏自身も米フロリダ大学経済学部大学院に留学した経験があるので、主人公の太郎は山本氏自身がモデルになっているのかもしれません。

 「文学しているなあ」というのが第二の感想です。何と言っても途中で諦めないところが凄いです。長年、文芸同人誌「四人」(105号刊行予定)を発行し続けて来たことだけでも、その凄さを証明できます。

 先日亡くなった気象予報士の富沢勝氏も、この同人誌「四人」の同人だったことから、山本氏が最初に富沢氏の訃報を知り、関係者に連絡して頂いたという話も聞きました。

 結局、文学も人生も、人との繋がりが肝要だということになります。

【追記】記事表紙の写真の花の名前は、いつもながら碩学Y氏による御教授の賜物です。有難う御座いました。