先日放送されたNHKスペシャル「調査報道・新世紀 File1 中国“経済失速”の真実」はちょっと衝撃的な番組でした。(また再放送もあるようです)
結論から先に言いますと、世界経済に莫大な影響を与える中国経済が目下、「失速」しつつあり、このままでは財政破綻もしかねないという恐怖のシナリオです。最悪の場合、日本も多大な影響を受けることでしょう。
そもそも、中国の中央政府が公式発表しているGDPの伸び率がかつては5%だの10%だのと景気よく公表していましたが、実は多めに発表していて実態経済と合わないと一部専門家の間で指摘されているのです。これは、今はITのグローバル時代ですから、世界各国の「夜間照明」を検証して、実態経済と比較する手法が用いられたりしています。例えば、韓国は赤々と夜間照明が照らされているのに、北朝鮮は真っ暗です。それだけ、北朝鮮は、電力エネルギーが不足し、実態経済は低迷している証明になります。中国の夜間照明も実態とそぐわない。。。照明が証明になるとは!
番組は、調査報道ですから、取材班がネット上で公開されているオープンソースから複数の情報を組み合わせたり、ジグソーパズルを解くように繋ぎ合わせたりして真実をあぶりだしていきます。いわゆるオシントです。中国本土では目下、「賃金未払い」から全国でデモが頻発し、SNSでその模様の動画がアップされていますが、中国当局はこれらを有害として瞬く間に削除しています。取材班は、それらが削除される前に出来るだけ迅速に情報収集しなければなりません。そんな苦労の末に収集したデータによると、今年1~9月の間に、中国全国で1148件のデモがあり、そのうちの86%が賃金未払いデモであったことが分かりました。デモ隊の掲げるプラカードなどで、内容が分かるのでしょう。それにしても凄い話です。
そして、不動産大手「恒大グループ」が今年8月に約48兆円もの負債を抱えて、破産申請したように、中国全土では、マンションやら高速道路やらが建設途中でほったらかしにされて、野ざらしになっている有様も映し出されていました。
これらマンションや高速道路建設を公共事業として発注していたのが「地方融資平台」と呼ばれる地方自治体(貴州省、陝西省といった省)の別働部隊です。約1万社あるといいます。それが、取材班が調査したところ、この地方融資平台全体で1100兆円もの隠れ債務があったというのです。中国は目下、中央政府には500兆円の債務、地方政府には700兆円の債務を抱えているといいますが、この隠れ債務を含めると、財政健全ラインの60%を大幅に超えて100%を上回るといいます。
こんなんでは賃金の未払いが発生し、工事も中断するはずです。専門家は「インフラへの過剰投資のツケが回ってきた」と分析していましたが、中国の家計債務も約1400兆円もあるそうです。なお悪いことに、中国では61年ぶりに人口減少が始まり、今年はインドに人口世界一の座を奪われたといいます。中国も日本と同じように少子高齢化が進めば、必然的に経済成長に歯止めがかかり、停滞するはずです。
これでは、表では余裕の表情を浮かべている習近平国家主席を始め7人の政治局常務委員も眠れない夜を過ごしているかもしれません。台所は火の車ですから。
中国人の「爆買い」を期待して、日本人客を邪険するようになった日本の商業界もオチオチしていられませんよお。