人間、14歳が勝負の分かれ目?=イタリア映画讃

  本日、ランチで行った東銀座のイタリアンレストランで、稀に見る飛びっきりの美人さんとほぼほぼ同席となり、何か得した気分になり、食後のコーヒーまで改めて注文してしまいました(笑)。

 誤解しないでくださいね。ただ、たまに、チラッと見ていただけーですからね(笑)。

 その美人さんはお仲間さんと3人で食事をしていたので、よく素敵な笑顔がこぼれておりました。まだ20代半ばか後半といった感じでしょうか。いやはや、これ以上書くと炎上するので、やめておきます(笑)。

 後で、誰に似ているかなあ、と思ったら、先日(2月2日)亡くなったイタリアの女優モニカ・ヴィッティさんでした。ちょっときつめのアイラインで、少しワイルドな感じでしたが、知的そうで、なかなか、滅多にお目にかかることはできない美人さんでした。

 とにかく、モニカ・ヴィッティさんにそっくりだったので、(90歳で)亡くなった彼女が再来して降臨してきたのではないかとさえ思いました。でも、今では彼女のことを知る人はもう少ないかもしれません。私は、彼女がアラン・ドロンと共演した「太陽はひとりぼっち」(ミケランジェロ・アントニオーニ監督)で強烈な印象に残っています。1962年公開作品(カンヌ映画祭審査員特別賞受章)ですから、映画館ではなく、何年か経ってテレビか、池袋の文芸座(洋画二本立て100円)で見たと思います。ニーナの主題曲もヒットしたと思います。

 1962年はビートルズがデビューした年ですから、少なくともこの年まで世界的な流行音楽は(映画音楽も)ジャズだったのではないかと思います。私は最近、1950年代から60年代にかけて流行したジャズ・ギターにハマってしまい、昨年から今年かけてもう10枚以上ものCDを買ってしまいました。タル・ファロー、ハーブ・エリス、バーニー・ケッセル、ケニー・バレルといった面々です。彼らの超人的早弾き演奏には圧倒されます。これまで、エリック・クラプトンかジミ・ヘンドリックス、もしくは、ジミー・ペイジかジェフ・ベックかリッチー・ブラックモア辺りが人類最高のギタリストだと思っていたのですが、ちょっと、考え方が変わってきました。ジャズ・ギタリストの早弾きは、ロック以上で、とても真似できませんね。

東銀座・イタリア料理店「エッセンス」ランチB(カサレッチェ)1100円+珈琲100円=1200円

 1960年~70年代はハリウッド映画一本やりではなく、映画館(私がよく行ったのは池袋「文芸座」のほか、大塚駅前の「大塚映画」?、高田馬場「パール座」「松竹座」、飯田橋「佳作座」などの廉価な弐番館です)では、結構、欧州映画が掛かっていました。アロン・ドロンやジャンポール・ベルモンド主演のフランス映画が多かったですが、イタリア映画も負けてはいません。先のアントニオーニ監督の他、何と言っても巨匠ルキノ・ヴィスコンティ(「地獄に堕ちた勇者ども」「山猫」「ルートヴィヒ」など)、それにフェデリコ・フェリーニ(「道」「甘い生活」など)は若輩には難解でしたが、何日も頭の中でグルグルと場面が浮かぶほど印象深かったでした。ピエロ・パオロ・パゾリーニ監督の「デカメロン」や「カンターベリー物語」には衝撃を受けましたが、その前に、ヤコペッティ監督の「世界残酷物語」(1962年)は日本でもヒットしました。DVDがあればもう一度見てみたいですが、所有したくないので、レンタルであればの話ですけど(笑)。

 ああ、そう言えば、「ロミオとジュリエット」「ブラザーサン・シスタームーン」のフランコ・ゼフィレッリも大好きな監督です。それに何と言っても、ビットリオ・デ・シーカ監督の「ひまわり」(マルチェロ・マストロヤンニ、ソフィア・ローレン主演)は名作中の名作です。

 懐古趣味的な話になってしまいましたが、人間、多感な若い時(恐らく14歳)に聴いた音楽や観た映画が、一生を左右する、ということを言いたかったのです。今の若者たちに流行のラップやヒップホップは、私自身、個人的には、もう手遅れでついていけないので勘弁してほしいですし、映画も勧善懲悪がはっきりした単純なハリウッド映画よりも、難解なヨーロッパ映画の方が趣味的には合ってしまうのです。

 何か、問題ありますかねえ?

🎬「フレンチ・ディスパッチ  ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」は★★

 今、巷で話題になっているウェス・アンダーソン監督作品「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」を、コロナ禍の中、観に行ってきましたが、正直、つまらなかったなあ…。

 オミクロンの感染拡大のせいなのか、真冬だというのに、映画館内は冷房が効いていて(まさか!)、脚が寒くて寒くてしょうがなく、映画もつまらないので、映画の世界に集中できず、珍しく途中退場しようかと思ったぐらいです。

 同監督のアカデミー賞4部門受賞作「グランド・ブダペスト・ホテル」(主演レイフ・ファインズ、2014年)は大変面白かったんですけどねえ。今回は、ちょっと、観念的過ぎたといいますか、突拍子もないといいますか、破天荒な映画でした。「これこそが芸術だ」と言いたい人もいるでしょうが、もし、これが「偉大なる芸術」だとしたら、国会議員でもないのに、辞めます、と私は国会で宣言しますよ。

 それでも、「ゴーストバスターズ」などのベテランのビル・マーレイ、「スリー・ビルボード」「ノマドランド」などでアカデミー主演女優のフランシス・マクドーマンド、「戦場のピアニスト」のエイドリアン・ブロディ、「トラフィック」のベニチオ・デル・トロ、そしてボンドガールのレア・セドゥら、超が付く大物俳優が出演しています。

銀座・とんかつ「不二」ミックス定食600円(20分以上待たされましたけど)

 フランス・パリ郊外の架空の街にある米国の雑誌「フレンチ・ディスパッチ」の編集記者たちの活躍を描いた作品で、アート、ファッション、若者文化、グルメなどテーマごとに話が全く違う3本のオムニバス形式になっていたことが後になって分かりました(苦笑)。映画なのに、演劇的手法で撮影されています。登場人物全員が固まったように静止し、それが、回転舞台のようにして場面が変わっていくという手法です。実に奇を衒っています。

 アクションペインティングや、1968年の学生たちのパリ蜂起などがモデルになっているようで、車からファッション、食事に至るまで60年代カルチャーを忠実に再現している感じです。アンダーソン監督は1969年生まれなので、ビートルズの現役時代も知らないはずなのに、60年代が好きなのでしょう。時折、カラーを白黒に変換したりして映像芸術の極致を目指している感じがします。

 第1話の「確固たる名作」では、ボンドガールのレア・セドゥが惜しげもなく見事な裸体を披露しています。でも、何か彫刻のようで、猥褻観も卑猥観もないのですが、必然性がないといいますか、不自然で違和感ばかり募りました。「看守役なのだから、別に脱ぐ必要もないのに」「監督に強制されたのかな?」「随分、安売りしてしまったなあ」「昔の大女優だったら考えられないのになあ…」と同情してしまったほどです。

 ※これは、あくまでも有料で観た個人の感想です(笑)。

🎬濱口竜介監督作品「偶然と想像」は★★★★☆

 今年の第71回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞した「偶然と想像」を東京・渋谷のBunkamuraル・シネマまで遠路はるばる出掛けて観に行って来ました。

 第一話「魔法 (よりもっと不確か) 」、第二話「扉は開けたままで」、第三話「もう一度」という独立した3本の短編作品で、メガホンを取ったのが今世界で最も注目されている濱口竜介監督です。何しろ、彼は、2020年ベネチア国際映画祭で共同脚本を手掛けた「スパイの妻」が銀獅子賞(監督賞)、21年カンヌ映画祭では「ドライブ・マイ・カー」が脚本賞など4冠、そして、今回の「偶然と想像」と国際的な映画賞を総なめしています。

 「偶然と想像」がベルリンで賞を獲ったニュースは知っていましたが、日本で上映される日を知ったのは全国公開日の2日前でした。ル・シネマの会員登録をしているので、ネットで数少ない席をやっと確保しました。18日(土)にしたのですが、その日は、俳優さんたちの「舞台挨拶」付きでした。

 こう見えても、(どう見えるか分かりませんが=笑)私はもう半世紀以上も映画館で映画を観ておりますが、俳優さんが登壇する舞台挨拶を見るのは生まれて初めてでした(笑)。かつて芸能担当記者として多くの俳優さんにはインタビューさせて頂きましたが、「素人」として見るのもなかなかオツなものでした(笑)。

 映画は、一言で言えば、キテレツでした(笑)。総合タイトルの「偶然と想像」の通りに、偶然からアッと思わせるどんでん返しが起こるので、内容については茲でバラさない方が良いと思います。

 キテレツというのは、濱口監督の脚本と映画の撮り方がまさにキテレツだったからです。脚本で言えば、台詞がやたらと長い!(俳優泣かせ)しかも非常に観念的で、悪く言えば頭でっかち。映画の台詞というより舞台の台詞に近い、と思わせました。見たことがない人に言ってもしょうがないのですが、平田オリザの「青年団」の演劇を見ているような感じでした。大きな事件も事故も起きない何気ない日常の中から生まれる会話の中で、皮肉と諧謔とパンチ効いた台詞がポンポン飛び出します。

 濱口監督の台詞は異様に長い上に、それに比例するようにカメラの回しも異様に長く、ほとんどカット割り撮りしていないのではないか、とさえ思わされました。こりゃあ、役者さんたちは大変ですよ(後で、監督の俳優に対する配慮が分かりました)。

 各作品とも台詞がある登場人物が2人とか3人とか異様に少なく、ということは、群像劇ではないので、会話だけで最後まで見させてしまう濱口監督の力量は相当なものでした。ハリウッド映画のような大掛かりなCGは使わないし、飛行機が墜落したり、車が破損したり、拳銃がぶっ放されたりしない、全くごくあり得そうな日常生活が描かれているだけです。そんな映画を日本人ならともかく、よく海外の人まで理解して熱狂してくれたかと思うと不思議な感じがしました。

 人間の心因性は世界各国、どこでも変わらないということなのでしょう。

2021年ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)の銀熊トロフィー。洋画専門の渋谷のル・シネマで邦画がかかるのは初めてらしいですよ

 映画が終わった後の舞台挨拶では、第一話の「魔法(よりもっと不確か)」に主演した古川琴音(奈良美智の絵に登場する少女にそっくり!)、中島歩(イケメンさん)、玄理(ひょんり)の3人の俳優が登壇しました。(濱口監督は、コロナ隔離のため、音声だけで出演しました)

 大変申し訳ないのですが、この3人を含めてこの映画に主演した俳優さんたちは、これだけ映画を観ているというのに、全員、「顔と名前が一致しない」という意味で知りませんでした。申し訳ない序にまた言わせてもらいますと、スクリーンの中ではこれまで見たこともないぐらいハンサムで恰好良かった男優さんや、本当に目が眩むほど美しい女優さんも、実物で見ると、驚愕するほどでもなかったことでした。勿論、俳優さんですから、普通の人より遥かにハンサムで美人さんなのですが、照明さんと撮影監督の巧みさが際立ったということでしょう。

 この舞台挨拶で、ある女優さんが、濱口監督の独特で驚きの撮影手法を公表してくれました。3本で約2時間の映画ですから、1本の短編は40分ということになります。しかし、撮影時間は全部で何時間か分かりませんが、それ以上ありました。映画館で公開される作品(本編)の前に起こったことまで、台詞と芝居があって撮影していたというのです。つまり、この非公開部分によって、役者さんたちは、本編に入る前の人間関係や、その後に起きるであろうことがよく分かるので、長い台詞でも演技がしやすくなる、というわけです。

 この話を聞いて、やはり、この東京芸大出身の濱口監督(43)は只者ではない、と確信致しました。世界から注目されるはずです。

🎬「燃えよ剣」は★★★

 いつの間にか、日経新聞金曜日夕刊の映画評で、★のマークが消えてしまいました。会員向けのネット記事には★があるようですが、読者というより、圧力団体、業界から相当な反感があったので取りやめたのではないかと想像してしまいます。

 私は日経の★の数で、観る映画を選んだりしていたのですが、単なる評論家の個人的感想で、その★の数ほど感動するかと言えば、必ずしもそうでもないので、新聞紙面でも洒落として続ければいいと思うんですけれど…。

 私にとって現実生活は重過ぎる面が少しあるので、映画はやっぱり気休めであり、気分転換でもあります。

銀座「羅豚」 黒豚羅豚丼とせいろそば1000円

 「燃えよ剣」は、司馬遼太郎の原作を読んでいるので内容も知っているし、原作にはない、あっと驚く物語展開があるわけないと思われたので、最初は正直、気乗りしませんでしたが、この映画にはウチの会社も出資して協力しているようでしたので、観ることにしました。

 主役の土方歳三役の岡田准一は、ハンサムな土方と相通じるところもあり、最期はどうなるのか分かっていながら、やはり、少し映画の世界に引き込まれました。

 私も、歴史上の人物としての土方歳三のファンでしたから、函館の最期の地を訪れて、お参りしたこともあります。新選組局長近藤勇(鈴木亮平も顔が似ていてハマり役でした)が斬首された板橋宿も何回か行ったことがありますが、近藤と土方の最後の別れとなった、新選組の最後の本陣となった千葉県流山市にはまだ行ったことがありません。いつか行ってみたいと思っています。

 あら探しをしたらキリがないので控えますが、国内ではもう江戸時代の情緒が残る景色はほとんど残っていないというのに、ロケハンさんたちの努力で、見応えのあるロケシーンが出てきたと思います。京都の池田屋はオープンセットで完全に再現したらしいですし、合戦シーンは3000人のエキストラを動員したといいますから、結構、製作費が掛かったことでしょう。

 あら探しを控えると言っておきながら、近藤勇と別れた土方歳三は、なおも転戦し、宇都宮城と北海道の松前城の二つも城を攻略して落としたというのに、映画では宇都宮城の話すら出てきませんでした。城好きの私としては残念でしたね。

 土方歳三は、単なる剣豪だったわけではなく、西洋軍法を知り、逸早く取り入れて近代戦で城を落とした指揮官として見直されるべきですが、映画では、フランス人の軍事顧問ジュール・ブリュネを登場させるなどしてその活躍ぶりを少し垣間見せてくれました。

 新選組はこれまで何度も映像化され、土方歳三役も渡哲也、長塚京三、山本耕史ら多くの俳優が演じてきましたが、この岡田准一さんが一番のハマり役のような気がしました。

 

🎬「007ノー・タイム・トゥ・ダイ」は★★★

 色々と観たい映画があったのですが、もう半世紀以上観続けてきた「007シリーズ」の最新作(25作目)「ノー・タイム・トゥ・ダイ」を観に行って来ました。15年間、主役を演じてきた6代目ボンド役のダニエル・クレイグの最後の作品(5作目)ということだったので、他の作品を押しのけて最優先したわけです。

 で、感想はと言いますと、「長過ぎ」でした。最初の15分ぐらいはお葬式場のコマーシャルや次回上映作品の宣伝などを見せ付けられますが、3時間も椅子に座っていなければなりませんでした。前の座席の人は、その間、2回もトイレに駆け込んでいました(笑)。3時間では、集中力が途切れます。それに、マシンガンで無暗に敵を殺し過ぎます。そういう無意味な戦闘シーンを好むのは血気盛んなお子ちゃまぐらいで、人生の酸いも甘い知った大人世代にとっては「もう勘弁してくれよ」と叫びたくなりました。

 とはいえ、最初の「ハラハラドキドキ」シーンは、本当に息をもつかせぬ圧巻の迫力で、スタントマンを使っているのか、いないのか分かりませんが、度肝を抜かされました。

 あまり、内容を明かしてしまうと怒られるので触れられませんけど、6代目ボンドのダニエル・クレイグの卒業作品になっておりました。クレイグが6代目に就任した作品「007 カジノ・ロワイヤル」は2006年公開です。当時、38歳。彼は身長178センチで、歴代ボンド役の俳優がいずれも185~190センチだったことから、体格の見栄えが落ち、5代目ボンド役のピアース・ブロスナンのようなハンサムではなく、公開前は、さんざん非難と批判を浴びたようでした。でも、いざ蓋を開けてみたら、歴代ボンドの中で最高の収益を上げたとか。私も、最初はイメージ的にゴリラ顔(失礼!)のクレイグがボンドには相応しくないと思っていたのですが、あんな身のこなし方が素早くで格好いいボンドはピカイチで、歴代ボンド役の中では、ショーン・コネリーに次いで素晴らしかったと言いたいですね。

 ダニエル・クレイグは私生活では、あのレイチェル・ワイズと再婚していたとは知りませんでした。ボンドを引退しても、また新たな新境地を開くことでしょう。

劇場先着何名様かにプレゼントされた「007」のキーホルダーです。中国製でした(笑)。

 この007映画のもう一人の主役はボンド・ガールですが、前回の「007スペクター」(2015年)の続きになっているので、再びマドレーヌ役のレア・セドゥでした。フランスの女優なので、フランス語も出てきます。監督は、日系米国人キャリー・ジョージ・フクナガで、作品の中で、日本の興収を意識したのか、日本の領海付近や能面など、ジャポニズムが登場します(笑)。

 ボンドの敵役サフィンを演じたラミ・マレックは、後で解説を読んで知ったのですが、「ボヘミアン・ラプソディ」(2018年)でフレディ・マーキュリーを演じていた、あの彼だったんですね。気が付きませんでした。さすが、名役者さん。

  「ノー・タイム・トゥ・ダイ」 は、新型コロナの影響で何度も公開が延期され、そのお蔭で、「新兵器」のはずが流行遅れになってしまい、何度か撮り直しを行っていたことが、業界紙に出ていました。想像するに、その一つは、高級腕時計「オメガ」じゃないかと思われます。映画公開日前日には、新聞で全面広告が打たれていたからです。

 映画は製作費が高いので、ビールとかウイスキーとか、ある特定の商品を映画の中でわざわざ登場させて製作費を賄う手法です。

 

🎥「キネマの神様」は★★★★★

 菅義偉首相は今月末でお辞めになるようですね。昨日、急に爆弾発言されて周囲を驚かせました。小生も、このブログの8月10日付で退陣勧告したせいなのかしら?ーんなわけないですね(笑)。…でも、「新型コロナ感染防止に専念するため」という理由で自民党総裁選に出馬しない、という弁明もおかしなものです。コロナ対策は、首相という職掌があればこそ出来る専権事項なんですから。やはり、総裁選の前に衆議院を解散することなく人事改革(二階幹事長更迭)するなどの奇策が奏功せず、結局、自分の放った手裏剣がブーメランのように自分に返ってきて自滅したということなのでしょう。

 さて、当初は観るつもりがなかった山田洋次監督作品「キネマの神様」を観て来ました。8月6日に封切で、もう公開1カ月近く経ち、自宅近くの映画館の上映時間が遅すぎたりしたので、川口市にまで行って観てきました。この映画館は久しぶりで、案内では「JR川口駅から歩8分」と書かれていましたが、大型モールの3階にあり、道にも迷ったので、15分以上掛かりました。

 何で観る気になったのかといいますと、ウマズイめんくい村の赤羽村長が、この映画を随分褒めていたからでした。「切ないがいい余韻が残る」と…。そういうもんですかねえ?

 最初、私が観る気がしなかったのは、山田洋次監督の助監督時代の話で、映画黄金時代の懐古趣味みたいなものだと誤解していたからでした。それに、新型コロナで亡くなった志村けんの代役が沢田研二というのはどう考えても変。かつて同じ芸能プロダクションだったナベプロが裏で動いていたのかなあと詮索したくなったからでした。(素人さんには関係ない話=笑)

 で、結論を先に言いますと、やられました。矛盾だらけで、作り物だということは十分承知しておきながら、涙腺が弱いもので、涙が出てきてしょうがありませんでした。

アリオ川口3階 「七輪焼肉 安安」牛カルビ・ロースセット900円 安い!

 最初は何ともなかったのに、舞台になった撮影所近くの食堂「ふな喜」で働く若き日のヒロイン淑子(永野芽郁)の母親(和服姿で縁なし眼鏡)が出てきた時、「あれっ?」と胸を締め付けられてしまったのです。演じていた女優は広岡由里子ですが、どう見ても松竹映画の小津安二郎監督がよく使っていた杉村春子(1906~97年)にそっくり。もしくは、松竹・蒲田撮影所の大看板女優だった栗島すみ子(1902~87年)に雰囲気が似ていたからでした。

 杉村春子は「文学座」の大御所看板女優ながら、映画にも多く出演し、小津監督の代表作「東京物語」「晩春」「麦秋」などに出ており、私の好きな成瀬巳喜男監督の「流れる」にも出ています。栗島すみ子は、往年の大女優で1937年には既に引退しましたが、成瀬監督の説得で、杉村春子も出演した「流れる」(1956年)に出演し、19年ぶりにスクリーンに復活した女優でした。私はこの「流れる」が脳裏にあったので、ヒロイン淑子の母親が登場した時に、杉村春子か栗島すみ子ではないかと思ったわけです。

 これは、恐らく山田監督の演出ではないかと思われます。「キネマの神様」に登場する銀幕女優桂園子(北川景子)は、どう見ても原節子を思わせます。また、具体的には登場しませんが、「小田監督」というのは「小津監督」がモデルなのでしょう。この映画は、松竹キネマ合名社の設立と蒲田撮影所が開所した1920年から100年ということで、「松竹映画100周年記念作品」を銘打っておりますから、明らかに、過去の監督や俳優たちへのオマージュとして捧げられた映画だったことが分かります。

 それを思うと、荒唐無稽なストーリーはともかく(原作者の原田マハさん、すみません)、過去と現代を行き来するこの映画を観ながら、これまでの映画人たちの「活動写真」に命を懸けた情熱が伝わり、涙が止まらなくなってしまったのです。

 志村けんの代役を務めた沢田研二(73)は、見事に「ダメ親父」を演じきったと思います。昔のアイドルですから、本来なら躊躇するはずですが、志村けんの「東村山音頭」まで唄うぐらい徹底していました。

 赤羽村長さんじゃありませんが、切ないですが、心地良い余韻が残る映画でした。

🎬「孤狼の血 level 2」は★★★

 コロナ感染拡大が止まらず、過去最多(昨日20日は、全国で2万2586人)を更新しているというのに、久しぶりに映画を観に行って来ました。特に観たい映画があったわけではありませんでしたが、夏休みなので、現実離れした明るく元気になれるような映画が見たいと思いつつ、結局観たのはヤクザ映画でした(苦笑)。

「孤狼の血 level 2」(1974年生まれの白石和彌監督作品)です。3年前の役所広司主演の「孤狼の血」を観てしまったので、その続きのつもりで観てしまいました。宣伝費も製作費と同じぐらいかけているようです。新聞で全面広告を打っておりました。(これは、ある映画関係者から聞いた話です)

 前作から3年後の平成〇年。広島の裏社会が舞台で、伝説の刑事・大上(役所広司)亡き後、その遺志を継いで、若き刑事・日岡(松坂桃李、1988年生まれ)が今度は主人公となります。前作では、日岡は、大上の後をついて失敗ばかりしていた新米刑事でしたが、今では、大上に代わって、警察権力を使って、暴力組織 を取り仕切り、ベンツを乗り回すほどです。しかし、そこに、出所してきた組長上林(鈴木亮平)によって、再び抗争の火蓋が切られ…。

 1983年生まれの鈴木亮平さんは、東京外国語大学英語専攻卒で英語がペラペラのインテリさんで、大河ドラマ「西郷どん」では主役の西郷隆盛を務めましたが、今回は、絵に描いたようなおっとろしい悪魔のような悪役です。全身の俱利伽羅紋々は、背筋が凍るほど…と書きたいところですが、彼の耳は宇宙人のように見えました(失礼!)。ですから、ヤクザ映画の様式美のような型にはまった悪役だというのに、現実味を感じることができませんでした。

 「日本人の俳優は、ヤクザ役をやると、誰でもピカイチになれる」とよく外国人識者に揶揄されますが、その罠にはまった感じでした。鈴木亮平さん、眉毛を剃って凄味が倍増しましたが、そこまでやらなくても…といった感じで、醒めてしまいました。

近くの映画館の会員になりました(会費年間500円で1回100円割引になるのでお得でした)。映画館と同じテナントに入居しているインドネシア料理店「スラバヤ」のランチ「ナシゴレン・セット」1220円

 女優戸田恵梨香さんと結婚された松坂桃李さんは今や絶好調なんでしょうね。彼が扮する日岡刑事も、あそこまでナイフで刺されたり、銃で撃たれたりすれば、普通なら死んでいるはずなのに、すぐ回復してピンピン飛び跳ねている。まあ、それが、フィクションの世界ですから、黙ってエンターテインメントとして楽しめばいいんですけどね。

 原作が1968年生まれの柚月裕子さんということで、女性だということで前回は吃驚しましたが、やはり、残念ながら、元読売新聞記者の飯干晃一(1924~96年)原作「仁義なき戦い」の方が、組織を現場で取材していたせいか、その緻密さとハラハラドキドキ感の面では及ばない感じました。これは、あくまでも個人の感想ですが。

メダルかじった、はなおかじった

 何と言っても、オリンピックは番外編の方が面白いのです(笑)。

 名古屋市の河村たかし市長が8月4日に表敬訪問した五輪選手の金メダルをかじったことで、国内外で批判が高まり、市長は謝罪しましたが、海外では「市長が新型コロナウイルス対策を訴えるボードの前で、マスクを外してメダルをかんだ」(ロイター通信)と、皮肉を込めて報じられ、世界に大恥を晒しました。

 金メダルをかじられたのは、ソフトボール日本代表で、名古屋市出身の後藤希友選手で、同選手が所属するトヨタ自動車までもが抗議声明を発表する事態に発展しました。

 しかし、東京五輪組織委は「メダル製造で瑕疵(かし)があった場合のみ無償で交換対応するが、それ以外は対象外です」とし、たとえ、河村市長の歯形が付いたとしても、交換しないからねえーといった意味を込めて?、わざわざ声明を発表するほどです。ウイルス感染も心配なのになあ…。

 河村市長は「宝物を汚す行為で配慮が足りなかった。後藤選手には申し訳なかった」と陳謝しましたが、こんな市長を選んだのも名古屋市民ですからね。恐らく、この陳謝で、一件落着で終わることでしょうけど、河村さんが公費ではなく、自腹で弁償してあげれば一番スッキリすると思います。組織委は、有償なら交換してくれるんでしょ?

築地料亭「わのふ」ランチ「親子丼」1000円

 「メダルかじった」市長、と聞いて、「はなおかじった」先生を思い出しました。花岡実太と書きます。1966年に放送されたドラマ「忍者ハットリくん」に出演していた強烈な個性の先生で、よく、同僚の先生や生徒から「鼻をかじった」先生と呼ばれるので、いつも「鼻をかじった、ではにゃく、わたすは、花岡実太だ」と、東北のズーズー弁で反論するのがお決まりのパターンでした。

  「忍者ハットリくん」 は藤子不二雄原作の漫画を実写版ドラマとしてNET(今のテレビ朝日)系で放送されたものでしたが、私は子どもだったので、よく見たものですが、内容については、この「はなおかじった」先生のことしか覚えていません(笑)。

 今は便利な時代で、すぐ検索することができ、この花岡実太先生役を演じていたのは、谷村昌彦(1927~2000年)という俳優で、山形市出身だったんですね。喜劇役者としてスタートしましたが、時代劇からヤクザ映画まで幅広く出演していました。夏目雅子主演の「鬼龍院花子の生涯」や黒澤明監督の遺作「まあだだよ」にも出ていたこともすっかり忘れていました。

 谷村昌彦さんは、恐らく、もう若い人は誰も知らず、すっかり忘れ去られた俳優さんなんでしょうけど、昔の俳優さん、特に脇役の方は、今より遥かに個性的で強烈な印象を残したものでした。悪役の上田吉二郎なんか、いつも子分たちに「ムハハハハ、馬鹿野郎、早くやっちまえ」とハッパをかけて主役を食っていましたし、「悪魔くん」のメフィスト役などに出ていた吉田義夫なんか、本当にアクが強そうだった。.品川隆二は、近衛十四郎(松方弘樹、目黒祐樹の父)の「素浪人 月影兵庫」の焼津の半次役で滑稽な印象がありますが、その前に出ていた「忍びの者」では、石川五右衛門役をやったりして本当に怖かった。。。

 その点、今の主役級の俳優さんは、誰とは言えませんけど、偉大な俳優の二世、三世ばかりで、残念ながら、コマーシャルばかり出ているせいか、宣伝マンに見えて、魅力に欠けますね。雷に当たったような痺れるほどカリスマ性があった俳優は松田優作辺りが最後かなあ、と思っています。

 

🎬仏映画「デリート・ヒストリー」は★★★★★=フランスらしい辛辣な風刺

 本日7月14日はパリ祭。フランス革命から232年という中途半端な年ではありますが、フランスでは盛り上がっていることでしょう。

 昨晩は、久しぶりに面白いフランス映画を観ることができました。「デリート・ヒストリー」というタイトルだけでは、全く内容が想像つかず、全く期待していなかったのですが、実に面白かった。現代のスマホ社会を痛烈に、辛辣に風刺した、ハリウッドではとても作れない力作、佳作、会心作でした。

 それもそのはず。昨年のベルリン国際映画祭での銀熊賞(審査員特別賞)受賞作でした。昨年の東京国際映画祭の上映作品でもあり、ネット公開されましたが、コロナ禍でいまだ劇場公開はされていないそうです。私自身は、日仏会館を通じて、ネット配信で観ました。ネタばらしは反則ですが、ネット等で公開されている粗筋ぐらいなら良いでしょう。 

 ベルギー国境近いフランス北東の低所得者向け地域に暮らす男女3人が主人公。ネット社会に踊らされ、いずれもお金の問題で悪戦苦闘。我慢の限界に達した彼らは、無謀な報復作戦を決行するが…。便利なはずのネット情報機器が格差社会に及ぼす弊害を描く社会派コメディー。

仏映画「デリート・ヒストリー」左からコリンヌ・マジエロ、ドゥニ・ポダリデス、ブランシュ・ギャルダン

 まあ、そんな内容です。ブノワ・ドゥレピーヌBenoit Delepineとギュスタヴ・ケルヴェンGustave Kervernによる監督、脚本。私は初めて聞くお名前ですが、お二人のシナリオが実に自然体で、現実にあり得ないことなのに、観客にあり得るように信じさせる力があって素晴らしい。

 主役は、離婚したばかりで、自らのハチャメチャな行動で騒動を巻き起こすマリー役のブランシュ・ギャルダンBlanche Gardinと、娘が学校でネットいじめを受けて悩みながら、コールセンターの女性に一方的に好意を抱くベルトラン役のドゥニ・ポダリデスDenis Podalydes、そして、乗客の評判を気にするネット配信タクシーの運転手、クリスティーヌ役のコリンヌ・マジエロCorinne Masieroの3人。大変失礼ながら、いずれも初老に近い中年後期の俳優で、魅力がある美男美女とは言えません。かつてのフランス映画と言えば、アラン・ドロン、カトリーヌ・ドヌーヴに代表されるように美男美女があれこれした、というイメージが強かったので、演技派俳優たちの熱演には感動しました。彼らはフランス本国では超有名人なんでしょうけど、私は知らなかったなあ。なかなか味がある名優でした。

 とにかく、いかにもフランスの伝統らしい風刺が盛り沢山です。現代の時事ニュースをふんだんに取り入れた内容で、AI(人工知能)やネット投稿拡散の脅迫、「黄色いベスト運動」(ジレ・ジョーンヌ Gilets jaunes)や社会福祉詐欺なども出てきます。これらはフランス国内だけが抱える問題ではないので、日本人が観ても納得します。特に、主人公たちが「くそったれ、GAFA!」と叫ぶ辺りは、結局、ドン・キホーテのような無謀な結果に終わりそうですが、「なあんだ、何処の国でも、ネットやスマホによる弊害に苦しんでいるんだなあ。ハリウッド映画が言えないことをよくぞ言ってくれた」と拍手喝采したくなります。

 でも、社会風刺コメディーなので、あれこれ考えず、観て笑い飛ばせばいいと思います。

 フランスでは、作られる映画の7~8割は、パリが舞台になっているそうで、このように地方を舞台にした映画は珍しいといいます。でも、21世紀になり、案外、何処の国でも世界の名作、傑作映画は地方都市が舞台になるかもしれません。

映画字幕で楽しく英語のお勉強

富士山 Copyright par Duc de Matsuoqua

  昨日のこのブログで「予想が裏切られた時、深い情報処理が起こる=『英語独習法』」のタイトルで、映画の字幕を活用した英語独習を紹介(というか引用)させて頂きました。

 自分では易しく、つまり分かりやすく書いたつもりだったのですが、皆さま御存知の釈正道老師から早速反応がありまして、「私には難解です。貴兄の原稿は、素人にはチンプンカンプンでした。」とのコメントを頂きました。

 あれえ~?私には大した学も教養もないので、小生のようなレベルの文章は朝飯前のはずです。しかも、釈正道老師は現役時代、誰でも知っている大手マスコミのエリート幹部としてブイブイ言わせた御仁です。難解、なんて言ったら御卒業された福沢先生が泣きますよ。

 その一方で、フェイスブックで繋がっているK氏から「我が意を得たり!」と同感して頂きました。私の嫌いなフェイスブックのサイトでこのブログをお読みの方は10人ぐらいでしょうから、敢て「本文」に再録させて頂きます(笑)。ちなみに、K氏は謙遜されておられますが、東京外国語大学英米語学科を卒業された「英語の達人」です。

(すみません、勝手ながら、引用文は少し加筆、改変してます)

築地「ふじむら」 カキフライとなかおちのハーフ定食1100円

 …「英語独習法」の著者今井むつみ氏の提唱される「映画熟見」は、まさに僕が貧弱な英語力を落とさないよう細々と続けているメソッドとよく似ており、一番効果的と感じるものの一つです❗️何たって、楽しみながら謎解き気分で熱中できるところがいいですね。コロナ禍で、NHK BS や Amazon Prime の名画を楽しむ機会も格段に増えましたが、まさに目からウロコの連続です。

 予期せぬ副産物もあります。例えば、「カサブランカ」のボギーの名セリフとされる「君の瞳に乾杯」Here’s looking at you, kid.は、続けて観た「旅情」では、キャサリン・ヘプバーンが宿屋の女主人、つまり同性から言われており、男女のロマンとは関係ないことが分かりました。(ちなみに、「君に乾杯」は、Here’s to you, とも言うらしい。おお、サイモン&ガーファンクルの「ミセス・ロビンソン」の出だしに出てきますね!=この項、渓流斎)

 また、「マイ・フェア・レディ」でオードリー・ヘプバーンが使うコックニー(英労働者階級が使うとされる英語)には、女性が普通使わない表現や、文法上おかしい表現が混じっていることを発見したりして、とてもここには書き切れません。(中略)貴兄のおかげで、英語へのアプローチで同じような楽しみ方をなさっている方がいるのがよく分かりました。…

 いやはや、勝手に引用されて、K氏も怒っておられるかもしれません。こうして、私もブログで何人もの大切な友人を失って来ました…。「日乗」と銘打っている関係上、ほぼ毎日更新しているため、どうかお許しを。