庵坂な日々

公開日時: 2006年1月23日 @ 21:46

 

三重県に住む学生時代以来の親友が、いつのまにか自分のブログを開設していました。私に黙ってこっそりと、です。如何にも彼らしい。含羞の人です。

私もこのブログで何回か、彼のことは取り上げました。例の重篤な病気で倒れて一命をとりとめ、奇跡の生還を果たした男です。

そこで、彼のために私が宣伝してあげましょう。

 

「庵坂な日々」 http://blog.livedoor.jp/katsurahata669/  です。

 

そこには、彼の名前と住所も書いてありますので、彼の正体がわかります。

 

しかし、残念なことに、L社のブログなのです。ホリエモンの逮捕で、今後L社は、上場廃止され、倒産の道を進むことでしょう。となると、ブログも閉鎖されるでしょう。ですから、見たい方は、今のうちに。

「おりこうさん おばかさんのお金の使い方」

公開日:2006年1月23日

最近、専ら経済書を読んでいます。

とはいっても、ケインズとかシュンペーターとかサミュエルソンとか言えば、格好いいのですが、何しろ「経済知識ほとんどゼロ」で初老の歳まできてしまったので、今、必死に基礎知識を仕入れているところです。

実は若い頃は経済を馬鹿にしていたのです。只管、金にならない学問に時間を費やしてきました。文学とか歴史とか美術とか音楽とか宗教とかです。ですから、そういった方面の知識は、ある程度はあると自負しております。しかし、経済となると、からきし駄目です。高校生のレベルならどうにか追いつけるかもしれませんが、本当に、ケインズもサミュエルソンもマックス・ウエバーさえ一冊も読んだことはありません。バブルの頃、株の本も何冊か買いましたが、結局一冊も読み通すことができませんでした。もちろん、バランスシートの読み方さえ、知りません。

しかし、最近「恒産なきは恒心なし」という加藤廣さん(「信長の棺」の著者)に触発されて、ボチボチ、経済入門書を読み始め、つまらない経済記事も率先して読むようになりました。

標題の本の著者は、板倉雄一郎さんという1963年生まれの方です。高校卒業後、若くしてゲーム会社を興して、大成功し、ビル・ゲイツと商談して日経の一面を飾るも、97年に負債総額37億円を抱えて破産ーと略歴に書いてある人です。

この本は、経済の本というより、経営や投資の話が中心ですが、そういった世界の知識は私の知らないことばかりだったので、勉強になりました。ためになったことを抜書きするとー。(一部表現をかえています)

●金融雑誌の記事や新聞広告に大々的に出ている金融商品は、すでに売り手である金融のプロたちがさんざんおいしいところを食べつくしたあとの「残りカス」である。

●金融機関が自分が損する商品を販売するわけがない。

●「株価チャート」の本を読んだくらいで、実際に株で儲けることができるのか?そんなことはありえない。すでに終わった話で論理を構成しているから破綻がないだけなのだ。そもそも後付けの理論なのだ。株価チャートで儲けられれば、皆、その本を鵜呑みにして株を買えば儲かるのに、そんな人はごくわずか。本当に賢い人は「株価チャート」の本を書いてベストセラーを狙い、印税を稼ぐ。

●株主が配当という現金を受け取る分、株主価値は減少する。企業の株式時価総額(=株価×発行済み株式総数)は、株主価値に担保されているからだ。株主価値は、その企業が将来生み出すであろう現金収支によって担保されている。だから、企業の成長期に配当を行う経営者は、おばかさんである。配当した瞬間に、配当した分、株主価値が減少するからだ。

●PERやPBRなどの株価指数は、投資判断において当てにならない。なぜなら、これらの指標はある企業の「単独期」の指標でしかないからだ。投資家からみた企業価値(=株主価値+債権者価値)は、当該企業が将来生み出すであろう現金収支に担保されている。つまり、時価総額や企業価値とは、当該企業の「将来性を織り込んだ数値」のことだ。今から将来にわたる企業の業績が織り込まれるのが時価総額であり、時価総額と債権者価値の合計が投資家から見た「企業価値」だ。従って、単独期の指標のどれとどれを組み合わせようが、時価総額や企業価値の「高低」を測る指標とはなりえない。

この本を読んでいたおかげで、ライブドア事件のニュースがよく分かりました。なぜ、ホリエモンがあれほど「時価総額世界一」に拘っていたのか。株主総会で配当を出さないことに対して株主が怒りの声をあげた時、ホリエモンが、「自分がいかに株主のことを考えているのに、皆さんには分かってもらえない」と泣いて訴えていたのは、そういうわけだったのか…等々。

この本を読む前に、細野真宏著「世界一わかりやすい株の本 実践編」を読んでいたので、「株式分割」によって、いかに株が上昇して利ザヤが出るかというカラクリを知っていたので、やはり、ライブドアの手法は、「風説の流布」や「偽計取引」以前に、株価吊り上げが目的だったということが、手に取るように分かりました。

今晩、ついにホリエモンが逮捕されました。つくづく、ライブドアの株に手を出さなくてよかったと思っています。

「知識は身を助く」です。

読み手から書き手の時代

「出版年鑑」によると、2004年新刊書籍の出版発行点数の一位は、講談社の2191点だったそうです。

分かります。日本で一番の出版社だからです。しかし、二位は、新風舎の1847点。え?聞いたことがない出版社ですね。しかし、2005年は、約2700点を発行したので、講談社を超えてトップに躍り出るようです。

え?何故?と思ったところ、この出版社の大半は自費出版だったのです。初版の500部から800部までなら100万円から180万円。自費出版といっても、ちゃんと編集者も付き、装丁もプロ並。1冊1冊に流通用のバーコードも付くそうです。(以上10日付朝日新聞朝刊)

読者より、作家になりたい人が増えたということでしょうか。

発表の場が手軽になったということもあります。100万円なら、一生に一冊くらい本を出そうという人もいるはずです。

そういえば、ブログもそうでしたね。手軽な発表の場です。

ところで、中国で、中国人ジャーナリストの大人気のブログが、「反体制を助長する」ということで、中国政府の圧力で封鎖されるという事件があったそうです。その圧力に応じたのが、そのブログを運営していたマイクロソフト社。

私のブログは、そこまで人気も影響力もないので封鎖されることはないのですが、同じブロガーとして、実に嫌あな感じが致しました。

 

宮沢賢治『あたまの底のさびしい歌』

思わぬお年玉プレゼントが贈られてきました。

 

宮沢賢治の書簡を集めた『あたまの底のさびしい歌』(港の人)という本です。

 

畏友里舘勇治君が送ってくれたのです。港の人は、彼が鎌倉で経営する出版社です。さほど大きな出版社ではないので、年に数冊しか出版できませんが、極めて良心的な出版社で、売れる部数が少なくても良質の高い文芸書を世に出しています。

 

興味を持たれた方は、ホームページをご覧ください。 http://www.minatonohito.jp

 

宮沢賢治の詩や小説は、何冊か読んだことはありますが、手紙を読むのは、今回が初めてでした。

 

手紙といっても、小説のようなお話が随所に出てくるの、「この人は根っからの詩人なんだなあ」と思ってしまいました。もっとも、生前は、作品はほとんど売れることはなく、「残った書き置きは、世迷言だから、すべて焼却するように」と遺言したらしいのですが、友人たちが奔走して、出版にまでこぎつけます。「雨ニモ負ケズ」も手帖に走り書きされていたものでした。

 

1921年に友人の保阪嘉内へ宛てた手紙の中で、こんな文面があります。

 

「専門はくすぐったい。学者はおかしい。実業家とは何のことだ。まだまだまだ。」

 

この後、「しっかりやりましょう。」が実に21回も登場するのです。

 

思わず、1980年に公開されたジャック・ニコルソン主演の映画「シャイニング」(監督はスタンリー・キューブリック、スチーブン・キング原作)を思い出してしまいました。ニコルソン演じる作家が、雪に閉ざされたコロラドのホテルで執筆活動中に、頭がおかしくなり、「私には休息が必要だ」という同じ文章を、百枚近くタイプで打っているシーンです。

 

わずか37年の生涯でしたが、宮沢賢治という人は知れば知るほど分からなくなる作家です。また、彼の童話が読みたくなってきました。

ダン・ブラウン著「ダ・ヴィンチ・コード

大変遅ればせながら、ダン・ブラウンの世界的ベストセラー小説「ダ・ヴィンチ・コード」に嵌まってしまいました。 息もつかせぬほど一気に読ませます。

 

何がすごいかと言えば、謎解きの面白さにあるのでしょうが、作者の博学な学識に基づいた歴史のミステリーが知的興奮となって渦巻きます。

 

美術史学、宗教象徴学、暗号解読学、占星学、図表解釈学、聖書学、数学(フィボナッチ数列)、聖杯伝説、秘密結社(シオン修道会、フリーメイソン、オプス・デイ)…あらゆる知識の動員が必要とされ、「もっと、もっと知りたい」という人間の感性を刺激します。

 

もっとも、個人的には最後の犯人のオチがどうも三流の推理小説のようで、興醒めしてしまいましたが、映画を意識したような、章の展開は、見事です。

 

この小説で、一番驚かされたのは、マグダラのマリアです。

 

これから「ダ・ヴィンチ・コード」を読もうとしている方は、この先は読まない方がいいのですが、マグダラのマリアは、娼婦だったという説がこれまで幅をきかせていたのですが、この小説では、イエス・キリストの妻だったという説を全面に押し出しています。そして、マリアはイエスの死後、イエスとの間にできた子供サラとともに、フランスに逃れ、その子孫がメロヴィング王朝と姻戚関係を持つ、というのです。この史実は、シオン修道会などの秘密結社に脈々と受け継がれ、この小説の核となっています。

 

このようなことを書けば当然、敬虔なキリスト教信者から、作者に抗議や嫌がらせが殺到するはずです。現に、作者はかなりの中傷や脅迫も受けたようですが、全世界で1000万部近く売り上げているらしいですから、支持者もいることは確かでしょう。

 

内容があまりにも複雑なので、この本の解説本が何冊か出版され、本屋さんでも山積みになっていました。私も、サイモン・コックス「ダ・ヴィンチ・コードの謎を解く」を買ってしまいました。上記のキーワードがうまくまとめられていてとても参考になります。

 

それにしても、ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」は不思議な絵です。中央のイエスの(画面の)左にいる弟子は、どうみても女性にしかみえず、彼女がマグダラのマリアだという説を信じたくなってしまいます。何しろ、ダ・ヴィンチ自身が、シオン修道会の総長だったというのですから。

 

「最後の晩餐」は、私もミラノ郊外のサンタ・マリア・デレ・グラーツィエ教会で実物を見たのですが、そこまで詳しく覚えていません。もっとちゃんと見ておけばよかったと思いました。

 

「ダ・ヴィンチ・コード」は監督ロン・ハワード、トム・ハンクス、オドレイ・トトゥ主演で映画化され、5月に公開されるようです。

 

絶対に見たい!

鈴木宗男 『闇権力の執行人』(講談社)

2002年に鈴木宗男代議士が、斡旋収賄容疑で逮捕された時、ほとんどブラウン管の中の異次元の人の世界で、他人事のように、眺めていたものですが、北海道に住んでみると、全く、他人事ではありえず、大都会と強者中心の市場原理が苛立つほど、身近に感じる今日このごろです。

変な書き出しですが、今日、彼の新著『闇権力の執行人』を買って、読み始めてみると、その観念を強くしたのでした。

3年前のあの「事件」で、テレビの前の観衆(そう、お客さんといってもいいのです。今では、もうすっかり、鈴木宗男事件など忘れ、今は、姉歯や、内河や小嶋の偽装建築問題に心を奪われております)が、印象に残っているのは、演出されたテレビの画像で流された鈴木宗男の悪相と、ムネオハウスと、ムルワカとか呼ばれた異様に背の高いアフリカ人、田中真紀子の常軌を逸した我侭、それぐらいです。

いずれにせよ、「鈴木宗男=悪」という単純構造が刷り込みされたことは確かです。当時、東京近辺に住んでいた私もその一人でした。

それが、事件の渦中の一人であった外務省の元主任分析官の佐藤優氏の『国家の罠ー外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)を読んで、目からウロコが落ちるように初めて真相を知らされたような気分に陥ってからは、これまでの単眼的思考を改めなければならないという自覚に迫られました。

佐藤氏の著作を読んだ後だったので、鈴木氏のこの本も、「なるほど」と思わされるものがあり、次のページをめくるのがもったいないほど、今、のめりこんでいます。ここまで、実名と写真を掲載してしまって大丈夫なのだろうかと心配してしまうほどです。

これまで、政治家が企業にたかる話は五万と聞いたことがありますが、外務省の官僚がここまで、一人の政治家(鈴木宗男氏のこと)にたかりまくっていたとは、俄かに信じられません。

この本は出版されたばかり(奥付は2006年1月1日 第1刷発行)なので、「名誉毀損」問題を含めて、今後の展開が注目されそうです。

鈴木宗男氏は「真実を書いたまで」とつっぱねるでしょうが、槍玉に上がっている外務省官僚は立つ瀬がないですね。ロシア課長の松田邦紀という男については、こいつがどんな人格の持ち主なのか、税金を払っている日本国民は全員知るべきでしょう。知らないというのは、怠慢に他なりません。彼がどんな悪行を犯して、ロシア課長のポジションにおさまっているのか、普通の企業に勤めている一般人にはとても想像つかないはずです。(これも鈴木氏の一方的な開陳なので、心してかからなければならないのですが、もし鈴木氏の陳述が事実なら、松田は刑罰に値する最悪の人間です)

12月28日には、たまたま鈴木宗男氏と会う機会があるので、この本を巡って、色々と聞いてみたいと思います。

その時また。

松井寿一著「がんを友に生きる」

いつぞや、笑いを研究している医療ジャーナリストのMさんのことを何度か取り上げましたが、ここで、Mさんとは、松井寿一さんであることを明らかにします。

なぜなら、最近、『がんを友に生きる』(元就出版、1575円)という本を出されたからです。

松井さんは、知る人ぞ知る有名人ですし、ホームページも持っていらっしゃいます。昨年、NHKのラジオ深夜便で登場されて、そのお話が大変好評で、放送がCD化されました。

11年前に胃がんを患って「5年後生存率は2-3割」と医者に宣言されてから、「いやしくも自分は医療ジャーナリストではないか」と気持ちを切り替えて、今日まで至った経緯を一部始終書きとめたことを一冊の本にまとめました。

笑うことによって、免疫機能が活性化するということで、「笑い」の研究を始めたのも、すべてご自身のためだったということを、今回初めて知りました。

松井さんは、自著を紹介するに当たって、こう書いています。

胃がんの第Ⅲ期と告げられた時は、まさに「青天の霹靂」で、にわかには信じられなかった。いや信じたくないという気持ちが強かった。「まさか」という思い、「なんで自分が」という憤り、「そうすりゃいいんだ」という戸惑い。…そうした経緯と闘病体験をありのままに綴ったのが、本書である。病気の人も健康な人も、がんに罹った人もそうでない人も、本書を読めば必ず元気が出てくること請け合いである。

ーぜひ、読んでみたくなりました。

羽生善治著「決断力」不利な状況を喜べる人間 

羽生善治の『決断力』。昨日の続きです。

第1章「勝機は誰にでもある」から…。

「私は人間には二通りあると思っている。不利な状況を喜べる人間と、喜べない人間だ」

「完璧な将棋を指さない限り、欠点がないことはない。私は神様ではなく人間なのだから、私の将棋にも、もちろん、欠点はある。もし、私が『ハブ・ヨシハル』と対戦したら、攻略する作戦はある。企業秘密なので言わないが、自分ではわかっている。自分ではわかっているのだから、その欠点を消すことができるかというと、それは難しい。例えば、今トップを争っている人たちは、欠点を裏返すと、それがその人の一番の長所であったりする。だから、それを消そうとすると、また別の欠点が出てくる」

こうして、彼の「文章」を写していて、これは、彼が書いたものではない、と私は確信しました。
読んでいるときには分からなかったのですが、これは書き言葉ではないからです。

おそらく、ゴーストライターが、「聞き書き」したのものでしょう。

矢沢永吉のベストセラーになった『成りあがり』のゴーストライターは、確か、糸井重里氏ではなかったかしら。

話がとんでもない所に飛んでしまったので、今日はこの辺で。

羽生善治の決断力 

久しぶりに、赤線を引きながら本を読んでいます。

羽生善治著『決断力』(角川)

言わずと知れた将棋界の天才「7冠王」です。

私自身、将棋は小学校の時に遊びでやっただけで、全くの素人です。負けるのが悔しくて、遊びで指すのさえもやめてしまいました(笑)。

勝負の世界の非情さについていけなかったというのが正直なところです。

ところが、人間生きていれば、勝負なんかしなくても、様々な困難が押し寄せてきて、岐路に立たされます。正直言って、生きているだけで本当にシンドイ毎日を送らざるを得ない時期もやってきます。

今がその時期のせいか、彼の書く文章が妙に心に残って感動するのです。私より一回り以上若い年少の方なのに、私より多くの人生経験を積んで達観されているようにさえ見えるのです。

例えば「はじめに」で羽生氏は「名人」という称号がいかにすごいか書いています。

日本の将棋界に初めて名人が誕生したのは、1612年(慶長12年)。以来400年近くで、この名人の地位を得た者は、僅かに25人しかいない。

羽生氏はその「名人」の座にわずか23歳で就く。

「将棋は自分との孤独な戦いである。追い込まれた状況からいかに抜け出すか。
追い込まれるということはどういうことか、でも、人間は本当に追い詰められた経験をしなければダメだということもわかった。逆にいうと、追い詰められた場所にこそ、大きな飛躍があるのだ」

私は、この本を将棋の本としてではなく、「人生訓」として読み始めました。(つづく)

「信長の棺」の加藤廣さんの出版記念会

今日は、あの小泉首相も絶賛した「信長の棺」を書いた加藤廣さんの出版記念パーティーに行ってきました。(東京・内幸町のプレスセンター)

60人くらい集まりましたかね。驚いたことに、小泉さんからも祝電が届きました。「内閣総理大臣」ではなく「自由民主党総裁 小泉純一郎」としてです。噂では、小泉さんは、「内閣総理大臣」の名刺も持たないそうです。悪用されたくないからだそうで、面会して名刺をもらった人には、帰り際に、相手の名刺をお返しするそうです。自分の名刺を出さないからです。

小泉さんとは、6年前に一度会ったことがあります。もちろん、無任相の時です。その時は名刺をもらいましたが、「衆議院議員」という肩書きでした。

おっと、加藤さんの出版記念パーティーの話でした。

司会者は、目下、IT企業に買収されかかっている放送局の部長さん。彼は、何の前触れもなく、私に挨拶の指名をしてくるのです。何も考えていなかったので、北海道でも、話題になって結構売れていること。飛行機で東京に来た際、隣の席の人が,『信長の棺』を呼んでいたこと、などを話しました。急には無理ですよね。

加藤さんは75歳です。遅咲きも遅咲きですが、小学校から作家を目指していたそうです。旧制六中、現在の都立新宿高校から東京大学法学部を卒業し、「生活のために」銀行員から経済コンサルタントに転じて成功した人ですが、やはり、小説家の夢を捨てませんでした。

『信長の棺』は、20年前に構想し、最初の書き出しと、最後の締めを思いつくのに、10年も試行錯誤し、それが決まったら、中身はすらすらと3年くらいで書いたそうです。あ、まだ読んでいない方は、面白さは分からないですね。

現在、ハードカバーの単行本は1万部売れれば「成功」なんだそうですが、『信長の棺』は目下、16万5千部も売れているそうです。「今年の話題作」になることは間違いないでしょう。

加藤さんは、来年3月にも第2弾の小説を発表するそうです。今度は、豊臣秀吉の話だそうです。まだ他に、明智光秀に関する本も出すようで「これから、直木賞を目指したい」と話していました。

何しろ、75歳にしての作家デビューです。私も加藤さんから勇気と希望をもらって、帰路に着きました。