ゲノム編集食品はお好き?

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消費者庁は昨日の19日に、「ゲノム編集」技術で開発した食品について、「食品表示を義務化しない」と発表しました。

 えっ?ですよ。

 「何でもお上は、なし崩しでやりたいことをやるんだなあ」というのがこのニュースを初めて聞いた時の個人的感想です。

 でも、ゲノム編集の一部だけは、あれほど安全性に問題ありと判断された「遺伝子組み換え食品」とは、ちょこっとだけ違うようです。今回、食品表示を義務化しないと決められたゲノム編集は、狙った遺伝子を切断する手法のことで、同じゲノム編集でも、 狙った部分に遺伝子を加える手法の方は、遺伝子組み換え食品の規制対象で、こちらは表示義務は続けるようです。

 それでも、素人にはさっぱりその違いが分からず!いずれにせよ、年内にゲノム編集食品が出回るそうですが、食べる気がしませんよね。(表示されないので、消費者は分からないかあ!!)

 ゲノム編集食品の表示を義務化しない理由について、消費者庁は「安全面では従来の品種改良と同程度のリスクであり、科学的にも見分けられないことなどから判断した」そうですから、やはり、これを読んで、「なし崩し」の思いを再び強くしました。 それにしても、この理由は何度読んでも、怖ろしいですね。プロでも見分けがつかないから、ま、いっかあ、といった軽いノリです。

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 学校でも会社でも、簡単な「決まり事」は何でも「なし崩し」で運用され、いつの間にかルールになっていたりします。地方自治体でも国政でも同じことが言えますね。声をあげて反対意見を旗幟鮮明にしなければ、いつの間にか、法律になっていたり、憲法になったりしかねません。

 となると、消費増税もなし崩し、自公連立政権もなし崩し、少子高齢化もなし崩しってことなのかなあ・・・。

 

萩生田氏の文科相御就任を寿ぐ

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 昨日(9月11日)発足した第4次安倍再改造内閣の閣僚を見ると、最も適材適所で見事に嵌っていたのが、文部科学相に就任した萩生田光一氏(56)以外有りえないことでしょう。それにしても、台風15号の影響で、千葉県内では45万軒も停電で復旧の目途が立っていない中、よくぞ性急に内閣改造なんかやったものです。

 萩生田氏は、東京都下の八王子市議から都議会議員、衆院議員と一つ一つ階段を昇って地位を築き挙げた苦労人らしいですが、世間が彼を注目したのは2016年、モリカケ問題華やかりし頃、安倍首相と加計理事長と一緒に缶ビール片手にバーベキューを楽しむ勇姿写真が拡散してからでした。

 「この人、誰?」と疑問に思う世間を尻目に、180センチ、100キロのガタイを武器に官房副長官として「消費増税を延期したらどうか」「憲法改正に消極的な衆院議長は交代したらどうか」などと発言力を増し、「安倍首相の側近中の側近」「総理の懐刀」と呼ばれるようになりました。それが如実に現れたのが2016年、加計学園獣医学部新設に際しての「官邸は絶対やると言っている」「総理は『平成30年4月開学』とおしりを切っていた」といった発言疑惑で、そう発言したとされる文書が17年になって文科省で見つかったことでした。まあ、そんなことは、世間の人はもうすっかり忘れていることでしょう。報道すらしない新聞やテレビもありますからね。

 御本人は、文科相就任記者会見で「私の名前を使って(文科)省内の調整を図った人たちがいたのだろう」と疑惑を否定していますから、真相は不明だということは付け加えておきます。しかし、こういう方が本丸の文科省の大臣になってしまうなんて、ブラックジョークとしか考えられませんよね?

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 萩生田氏は、 「日本会議」国会議員懇談会事務局長で、2013年に自民党の「教科書検定の在り方特別部会」の主査に就任した際、教科書会社の社長らを呼びつけて「自虐史観に立つなど、多くの教科書に問題となる記述がある」と追及したりしたようです。また、 彼の議員会館の事務所には「教育勅語」の大きな掛け軸が掛かっているということで、思想信条が分かりやすい人です。まさに安倍首相好みで、祖父の岸信介以来の念願だった「一丸となって力強く推進する」憲法改正に邁進する同志として、どうしても彼が必要なこともよく分かります。

 でも、NHKの最新の世論調査(9月9日)で、安倍新内閣が最も力を入れて取り組むべきだと思うことを六つの選択肢をあげて聞いたところ、「社会保障」が28%で最も多く、次いで「景気対策」が20%、「財政再建」が15%の順で、「憲法改正」は6番目の5%でした。 やはり、世間の皆様は、憲法改正よりも、年金などの社会保障や雇用問題など景気対策の方が関心があるということです。

 今日のブログは、あまりにも正攻法で我ながらつまらないですね(苦笑)。ただ、新聞を読み比べると、萩生田氏のことをほとんど書かない新聞もあったので、つい書いてしまいました。えっ?新聞に出ていなくてもネットに出ている?・・・ありま。それじゃあ、何のツッパリにもなりませんね(笑)。

ハイエクと親交を結んだ田中清玄

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 8月のお盆の頃は、マスコミ業界では「夏枯れ」と言って、あまり大きなニュースがないので、「暇ネタ」ばかりを探します。

 今年の場合は、あおり運転をして真面目な市民を殴ったチンピラ(失礼!彼は天王寺高~関学~キーエンスの元エリートでした)の捕り物帖ばかりやっていて、いい加減、嫌になりましたね。普段なら三面記事の片隅にベタで載るような事案でも、テレビはニュースからワイドショーまで繰り返し垂れ流していました。文化人類学者の山口真男(1931~2013)は「マスコミは、存在自体が悪だ」と喝破したそうですが、長年マスコミ業界で飯を喰ってきた私自身も耳が痛いですね。

 マスコミはもっと信頼を回復して頑張らなければいけませんよ。今はマスコミより、ネットの方が怖い時代になりましたからね。 あおり運転のチンピラに同乗していた女容疑者を、変な正義感を持った若者が、間違って関係のない善良な市民をネットに拡散したため、被害者は、業務上でも精神的にも大変な目に遭われました。

 私も変なことは書かないよう気をつけます。

 さて、先週読了した大須賀瑞夫編著「田中清玄自伝」(文藝春秋)の余波がいまだに続いています。

 「26年ぶりの再読」と書きましたが、当時(1993年)は今ほどインターネットも発達しておらず、情報も不足していて「憶測」ばかり氾濫していました。

 今では検索すれば、簡単に「田中清玄」は出てきます。でも、ウィキペディアには「CIA協力者」と書かれていて驚いてしまいました。「自伝」を読む限り、田中清玄ほど反米主義者はいないと思ったからです。(戦前は共産主義者だったものの、スターリンに対する不信は筋金入りでしたので、反ソ主義者でもありました)日本政府の対米追随政策を絶えず批判したり、「ジャップの野郎が」と威張りくさる米国人と高級バーで喧嘩しそうになったり…。何と、彼は「そのうち、『アメリカ・イズ・ナンバーワン』と言う大統領が出てくる」と予言までしてますからね。

 「自伝」によると、田中清玄は、戦後まもなく昭和天皇に謁見したり、先の天皇陛下の訪中を実現させたり、まさに黒幕として活躍しました。外務省や右翼団体からの抗議などを乗り越えて、 戦前から親交のあった鄧小平が中国の最高実力者となったため、 個人で外交を成し遂げたのは大したものです。

 また、韓国やインドネシア、フィリピンでの利権を独占しようとする岸信介=河野一郎=児玉誉士夫=矢次一夫ラインとは最後まで敵対しました。

 自伝の最後の方では、ノーベル経済学賞を受賞したフリードリヒ・ハイエク教授との交流にも触れています。ハプスブルク家の家長オットー大公から紹介されたらしいのですが、ハイエクはハプスブルク家の家臣の家系だったそうです。

 ハイエクは、戦前からマルクス経済もケインズ経済も否定して、新自由主義経済を提唱した人です。彼が設立したモンペルラン・ソサイエティー(共産主義や計画経済に反対し、自由主義経済を推進する目的に仏南部のモンペルランに設立)に田中清玄も1961年から参加しましたが、間もなくして、フリードマンらシカゴ学派が大挙加入し、田中清玄は「彼らはユダヤ優先主義ばかり唱えるのでやめてしまった」といいます。

 それでも、ハイエク教授との個人的交流を生涯続け、京都大学の今西錦司教授と対談会を開催したりします。

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 私は、哲学者でもあるハイエクについては名前だけしか知らなかったので、彼の代表作である「隷属への道」をいつか読んでみようかと思っています。マル経も、そしてケインジアンまでも否定したため、両派から集中砲火を浴びながら一切怯まず、学説を曲げなかったところが凄い。田中清玄とは意気投合するところがあったのでしょう。

「西洋の自死」=日本も手遅れなのか?

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 ダグラス・マレー著、町田敦夫訳「西洋の自死」(東洋経済新報社、2018年12月27日)が世界的なベストセラーになっているということで、手に取って読んでみました。

 著者は若手、とは言っても、今年40歳になる気鋭の英国人ジャーナリストです。

 内容については、この本の「脇見出し」を引用させて戴くと、「欧州各国が、どのように外国人労働者や移民を受け入れ始め、そこから抜け出せなくなったのか」「マスコミや評論家、政治家などのエリートの世界で、移民受け入れ懸念表明が、どうしてタブー視されるようになったのか」「エリートたちは、どのような論法で、一般庶民からの移民政策の疑問や懸念を脇にそらしてきたのか」といったことが書かれています。

 ちょっと、まどろこしく書かれていますが、移民問題は結局、文化や言語、宗教の問題にまで行き着き、もともといた地元の人たちは、移民の人口増により、少数派に追いやられることが書かれていて、それを言うと「人種差別者」だのと糾弾されると、著者は言いたかったと思えます。

日本語訳版だけでも500ページ以上あり、全て読み通すのには難儀します。この10年近くで欧州で起きたさまざまなテロ事件や移民問題などを具体的に事実として取り上げている書き方で、著者の感慨はあまり挟もうとしません。 でも、斟酌はできます。

 例えば、2017年11月に「ビュー・リサーチ・センター」が公表したところによると、スウェーデン(2016年のイスラム教徒人口は8%)では、今後全く移民を受け入れなかったとしても、2050年にはイスラム教徒人口が11%になり、「通常の」流入があった場合は21%、近年の大量移民が維持されれば31%になるといいます。

 この後で、著者は「1950年のスウェーデンはほとんど移民がいない、民族的に同質の社会だった。それが1世紀後の2050年には、見た目が一変しているだろう。…もしかしたら、それでも構わないかもしれない」といった、思わせぶりな書き方です。

 この本に関しては、日本ではあまり報道されませんでしたが、かなり賛否両論の渦が欧米で巻いたようです。それは、他人事ではなく、その波は、近いうちに、日本にも押し寄せてきます。

 もう、マスコミが言うような「移民排斥=極右、非寛容な人種差別主義者」「移民受け入れ=リベラリスト、寛容な人道主義者」といった単純な図式ではないのです。

 最近、このブログも随分アクセス数が増えました。どなたがお読みになっているのか想像もつきません。襲撃されたくないので、私はか弱い人間ですから、卑怯者と言われようが、自分の意見は茲には書きません(苦笑)。扇動者にはなりたくないというのが本音です。悪しからず。

移民問題は、自分たち個人の問題だと考えるべきだと思っています。

したたかな人間とそうではない人間

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 先週、最も話題になった一つとして、将来の首相候補と目される若いサラブレッド議員が、日本のホワイトハウスである首相官邸で、結婚記者会見を開いたことでした。

 「政治利用ではないか」と批判されましたが、利用ではなく、政治そのものでしょう(笑)。私のようなひねくれた意地の悪い人間から言わせると、そんなめでたい話なら、ホテルオークラか、帝国ホテルで、金屏風をバックに会見を開いたらどうですか、というお節介な感想しか思い浮かびません。四代も続く世襲議員ですし、それぐらいのお金はあるでしょう。

 もう一つ、穿った見方をすれば、あの記者会見は、ちょうど、当該議員の最大票田である主婦層が熱心に見るテレビのワイドショーが生中継できる時間帯を選んで、巧妙に仕組まれたことでした。お相手の女性は、日本人なら知らない人はいないぐらい有名なタレント・アナウンサーですから、視聴率獲得には好材料ですからね。お蔭で、世襲議員は、主婦層に対して大いに株を上げることに成功しました。

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 女性タレントもかなりしたたかでした。議員より3歳年長の彼女は、すでにお腹の中に二世、いや「五世議員」を妊娠されているらしく、将来の日本のファーストレディとしてお墨付きを得たようなものです。かなり、かなり計算し尽された感があります。

 昼間の日本のホワイトハウスでの記者会見では、彼女は純真無垢の象徴である真っ白のドレスに身を包み、私は見ていませんが、夜は、議員の地元横須賀でのお披露目では、真紅のドレスに身を包んでいらっしゃたそうで、まさに「紅白」のお祝い。したたかに、実にしたたかに計算し尽くされています。

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 その一方で、昨晩電話があった高校時代からの古い友人であるK君の場合、計算し尽くされたしたたかさとは真逆の生き方です。

 K君は大学卒業後、某有名企業に就職しましたが、病を得て退職し、還暦を過ぎた今日まで無職です。彼の家庭環境はちょっと複雑でして(詳細は省略)、そこで、母親が一念発起して、大変な努力を重ねた末、49歳の時に超難関の国家試験の一つである税理士と不動産鑑定士の試験に合格。多くの顧客を獲得して、都心に事務所ビルを建て、八ヶ岳に別荘を持つほど成功しました。そのため、病気がちの彼も、無理して働かなくてもすむ境遇に甘えてしまった感があります。

 「そのうちどうにかなるだろう」という全く計算しない成り行き任せの生活です。

 しかし、母親も高齢になり、昨年は長年の重労働が重なって倒れ、介護状態になってしまいました。表向きは数億円の資産があると安心していたら、良く調べると不良物件もあり、逆に何億円かの借金があったことが判明し、彼も追い詰められてしまいました。

 しかも、彼は先月から週3回は通院しなければ生命に関わる重篤な病気になってしまい、医療費等も嵩みます。

 彼は無職ですから、退職金も資産もなく、最後には社会福祉に頼るしかありません。重篤な病気で障碍者手帳を発行してもらえることになりましたが、障碍者年金を申請しようかと思ったら、彼は、会社を辞めて以来、国民年金も払っておらず、ある基準の年度以上、国民年金を納めていなければ、障碍者年金の交付も難しいらしいのです。

 年金を繰り上げ返済する方法もありますが、「月に1万6000円も払う余裕がない」と彼は言うのです。まるで童話の「アリとキリギリス」の世界です。

 どうしたらいいのか? 昨晩は、私もよく知っているある筋の方に相談してみたところ、的確なアドバイスを頂きました。

 内容については、ここでは書きませんが、世襲議員と有名タレントのような計算づくの「したたかな人間」がいるのとは対照的に、将来設計をしない、したたかな人間とは真逆な人間も世の中に存在することを知ってほしくて、親友に許可なく、こんなことを書いてしまった次第です。

読売出身がスイス大使?まあ、舐められたものです

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 名古屋の篠田先生です。気温34度、名古屋も暑いですよ。

 さて、安倍さんが、駐スイス大使として、読売新聞グループ本社会長で日本新聞協会前会長の白石興二郎氏(72)を充てる人事を検討している話は御存知ですかねえ?

 えっ?何?知らない?やっぱりですか。駄目ですねえ(笑)。すっとぼけたメディアは、「実現すれば、マスコミ界からの異例の大使就任となる」なんて大騒ぎしてますが、大使ごときなのにレベルが低いですね。

 読売新聞が大使レベルなら、朝日新聞は大臣クラスですよ。朝日の主筆を務めた緒方竹虎や副社長を務めた下村宏は、戦時中に国務大臣(内閣情報局総裁)入りしてますよ。 同じ「御用マスコミ」でもここで明らかに格の差が出てます(笑)。

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 まあ、大使レベルなんぞは安売りし過ぎで、マスコミ業界も舐められたものですよ。それを、今の若い記者もデスクも部長連中も何も分かっていない!勉強していないから、下村も緒方も誰なのか、何も知らんでしょう(笑)。

 これだけマスコミが舐められたら、「読売が大使でいいなら、産経なら一等書記官、いや二等書記官、大使館の便所掃除でいいかあ」となるわけです (笑)。

以上 おしまい

政府と吉本興業との関係は如何に

与太郎 ご隠居さま、御無沙汰しちまってます。

ご隠居 お、与太か、ま、こっちに入(へえ)んな。何かあったんかい?

与太郎 いえ、ね、最近の巷で騒ぎになってるお笑い芸人と芸能事務所とのいざこざ、何で、世間はそんなに騒ぐのか、ちっとも分かんねえもんで…。

ご隠居 吉本興業の話かえ? そりやあ、あったぼうよ。他人事じゃねえからよ。俺たちの懐も痛む話だってえことよ。

与太郎 えっ? それは一体、どういうこって?

ご隠居 まったく、お前さんも、相変わらずおめでたいねえ。安倍政権が2013年につくった官民ファンド「クールジャパン機構」を聞いたことないかい?政府、つまり元を正せば我々の税金がこの機構に約586億円出資されいるんじゃが、2014年と18年には吉本興業が関わる事業に計22億円を投入されちょるんだよ。今年は、吉本興業がNTTと組んだ教育と称する事業に対して、段階的に最大100億円を出資することまで決まっちょる。教育ったって、 何やら、吉本は、沖縄にアミューズメント施設を作って、お笑い芸人を出演させるらしいよ。

与太郎 へー、そうだったんすか。

ご隠居 安倍首相が吉本新喜劇の連中を官邸に呼んで、選挙前の人気取りに利用したりしたのを、お前さんは知らなかったのかい?

与太郎 あら、そう言えば、時の最高権力者の吉本への接近ぶりは異常でしたよね。

ご隠居 そう、つまり、吉本興業は、単なる一(いち)民間のお笑い芸能事務所というわけじゃないんだよ。それは支那事変(日中戦争)勃発後の昭和13年(1938年)に、国家事業として中国大陸に派遣した戦地慰問演芸団 「わらわし隊」のように、政府との結びつきは吉本の伝統でもあるわなあ。

与太郎 さすが、ご隠居、よく御存知で。

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ご隠居 知らないのはお前さんぐらいだよ。それより、今の政権ほど、文化事業に介入している与党政権はないんじゃないか。道徳教育と国家主義を標榜する右翼雑誌にも政府資金が流れているという噂じゃないか。

与太郎 ほんとですか?

ご隠居 単なる噂だけど、政治家指導による国民の税金の使い道は、納税者である国民自身がしっかり見届ける義務があるんじゃないかい?

与太郎 そう言えば、こないだ7月の参院選投票率はたったの48・80%で、24年ぶりに50%割ったらしいじゃないですか。日本人の政治意識の貧困さが表れているんじゃないすか?

ご隠居 おや、お前さんにしてはよく知ってるね。見上げたもんだよ。

与太郎 えへへへ、瓦版にそう書いておりやんした。受けおりっすよ(笑)。

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百花繚乱の参院選

 よどみに 浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。 

 ということで、今日は7月21日投開票の参院選についてー。

 参院選が終われば、どうってことないお話で、読み返されることはなく、久しくとどまることがないお話です。

 参院選立候補者の顔ぶれを見たところ、色んな方がいらっしゃいます。医者、弁護士、公認会計士、前地方知事、前地方議会議員、大学教授、デザイナー…ま、いいでしょう。

 元ホステス? どんな方でしょう?この方、結構有名な方で、銀座8丁目の高級クラブ「J」のナンバーワンだったとか。「筆談ホステス」という御著書も出版され、区議会の議員もやっていた人でした。

銀座5丁目

 私の職場から歩いて行ける高級クラブ「J」は、明朗会計で、セット料金お一人様3万5000円。サントリー山崎のボトル4万円。「料理」として大々的に公式HPに掲載されているのが、あたりめ4000円、チョコレート盛り4000円など。ホステス様とは、その前に系列店で食事しなければならないので、一晩で37万円ぐらい掛かるようです。安い!今度行ってみますか。(と書いておきます。)

 元国民的アイドルグループのメンバーだった方も立憲民主党から立候補していますね。4人のお子さまを持つお母さんの目線で立候補したそうですが、 彼女にどんな政治理念と政治哲学があるのか興味があります。 元アイドルを押す立憲民主党も有権者に対して何を考えているのか興味あります。

 立憲民主党からは、「恋のから騒ぎ」出身の元グラビアアイドルで、都議会議員の時代に名を馳せた方も立候補されています。また筑波大学付属駒場高~東大法学部~朝日新聞政治部記者の経歴を全面的に押し出している方も立候補してますね。

 東京ではあの野末陳平さんが無所属から立候補していたことには驚きました。御年87歳。歳月日々に疎し。若い人は知らないでしょうね。

 政府自民党は、森永製菓と講談社「ViVi」が全面的に圧倒的な支援をしているので、詳細は略します。

 立候補者が公示された新聞を見たとき、「N国党」とか「安死」とか見慣れない諸派政党がありました。これで、政治に関心ないことがバレてしまいましたね(苦笑)。

 「安死」とは、「安楽死制度を考える会」のこと。北海道から福岡まで全国で10人が立候補しているようです。

 「N国党」とは、「NHKから国民を守る党」のことで、NHKの受信料制度を改廃することを公約に掲げています。今回37人も立候補することから、天下のNHKも、この党について真面目に放送しなければならず、アナウンサーが真面目に党名を言うたびに失笑したくなります。確かに、最近のNHKは、吉本系のお笑いタレントやジャニーズ系のイケメンを番組に多く登場させて、民放と変わらなくなりましたから、受信料に見合う存在意義はないでしょう。

 ネット社会となり、「N国党」を検索すると、早くも離党や除名の話題が囁かれています。

 かつて、政党広報は、厳しくメディアで規制されていましたが、ネット社会になると、規制しようもなく、それに乗じて、自民党も-活字媒体の雑誌にも進出するようになったのかしら?まあ、識者によると、党幹部が期待するほど宣伝効果は薄いらしく、何と言っても、投票率そのものが低いわけですから、どれほどの影響力を持つのか不可知です

 あの人工知能(AI)専門家の新井紀子氏がテレビ番組で「若い人たちの読解力の低下は目に余るほどで、そんな人たちが、選挙公報を読み説く力があるのでしょうか」と心配してましたが、見ていた私は「そこからですか?」と思わず突っ込みたくなりました。

アンダークラスが国を滅ぼす?

 世間の皆様は、職場や喫茶店や居酒屋などでどんなお話をされているのか、見当もつきませんが、私の周囲は、私に似て(笑)真面目な人が多いせいなのか、政治や経済、社会問題についてばかり話題にします。例えばー。

 「参院選の焦点は、憲法改正ではなく、非正規雇用や年金問題でしょう」

 「今注目されているMMT(現代貨幣理論)は、昭和の高橋是清財政と共通点があるのではないか?」

 「毎日、日替わりメニューのように、高齢ドライバーによる死亡事故と幼児虐待のニュースが続いているなあ」

 といった感じです。馬鹿馬鹿しい、浮いた話はありません(笑)。

 A型日本人のインテリの典型なのか、非情にペシミスティック(悲観的)で、聞いている私も暗い気持ちになってしまいます。

 例えば、今、「アンダークラス」という階層が、社会問題になっていて、将来も経済財政問題に発展するだろうという悲観的予測です。

 アンダークラスというのは、現在30代後半から40代にかけての団塊ジュニアと呼ばれる世代に多く、彼らは「超就職氷河期」でなかなか正社員になれなかった世代です。いわゆる非正規雇用ですから、年金積み立てを払うのも苦しい。つまり、年金を支える世代なのに、納められないとなると、年金制度そのものが破綻する恐れがあるというのです。しかも、非正規雇用者が高齢になると、収入がなくなり、年金も貰えないので生活保護の対象となり、国家財政の負担も莫大になるというのです。

 今は、大企業が、非正規雇用者を安い賃金で使って、内部留保を溜め込んでも、将来は社会全体が機能しなくなるという悲観的予想です。

 彼は、社会全体の問題なら、政治問題にしなければならず、例えば、非正規雇用者が余裕を持って年金積み立てが支払えるように正社員にするべきではないかというのです。

 もう一人は、災害問題です。今はまだ動けるのでいいが、これから30年以内に関東大震災クラスの大地震が必ずやってくる。そんな時、80代を過ぎていて、身体が動けなかったりしたらどうしたらいいものか、東京から引っ越すべきか、心配で夜も眠れないというのです。

 いやあ、確かにその通りですが、それを聞いて私なんか「杞憂」という言葉が浮かんできました。メディアでは「人生100年時代」と、何とかの一つ覚えのように囃し立てておりますが、誰もが80代まで長生きできるとは限りませんからね。

 その方は、最近、人口知能(AI)にも凝っていて、将来、AIによって、今の50%仕事が25年以内になくなるという予想を信じ込んでおり、仕事を追われて、職業がない、社会に役立たない連中は「不要階級」と呼ばれるんだよ、と目をキラキラさせて開陳するのです。

 ハラリの「ホモ・デウス」からの引用らしいですが、人間を役立たずの不要階級に分類するなんて、あんまりですよね?

 インテリさんと話をしていても気分が暗くなってしまうし、面白くないなあ(苦笑)。

 だから、賢い世間の皆様は、政治や社会に関心がなく、参院選にも行かず、行っても、「他の党より良さそうだから」という気分で選んだり、芸能人のスキャンダルに喜んだり、電車の中でスマホゲームに熱中したり、原宿の人気店のタピオカを並んで買ったりしているんですね。

 そりゃあ、暗い気持ちになれるはずがない。。。

 

タモリに学ぶ人生の過ごし方

 人間の悩みの90%は、人間関係だと言われています。親と子、先生と生徒、上司と部下、男女のもつれ、夫婦関係、友人関係、親戚関係、嫁姑…、昨今、通り魔事件も多いですから赤の他人との関係も悩みの種ですね。

 私も人間ですから、嫌になる日が多々あります。思うに、毎日、政治や経済や社会など人間の問題のことばかりについて考えているからなのでしょう。他人は、正義心と自己主張の固まりですから梃子でも動きません。どうにもならないことで悩んでいるわけです。

 そんな時は、宇宙のことを考えます。今から、138億年前に突然「ビッグバン」が起きて、何もなかった所に、急に時間と空間と重力とエネルギーが生まれて宇宙が出現した、なぞという話を聞かされても、俄かに信じがたいのですが、眩暈で気絶したくなるほどです。

 地球が誕生したのは46億年前で、宇宙の歴史を1年のカレンダーにすると、8月30日に当たるそうです。(ビッグバンを1月1日とする)

生命(タンパク質や核酸の生成)の誕生が40億年前(9月15日)。

 少し飛ばして、恐竜の誕生が3億年前(12月23日)

 その恐竜の絶滅が6500万年前。(12月29日)

 やっと、我々の御先祖さまとつながる新人類ホモ・サピエンスが誕生するのが20万年前。(12月31日午後11時37分)

 農耕牧畜の始まりが1万年前(12月31日午後11時58分)

 となると、宇宙から見れば、人間の歴史などたかだか一瞬に過ぎないんですね。それに比べて恐竜さんは、実際、地球上で2億年近くも繁栄していたのですから、大したものです。

 「誰それがどうした」「誰それがあれした」などと、人間に拘っているから、毎日、鬱屈してしまうんですね。

築地「C」 おまかせ丼 1000円

 私はあまりテレビは見ませんが、NHKの「ブラタモリ」はよく見ます。この番組では、その土地の地殻変動や噴火した溶岩や堆積岩など地学、地質学の話がよく出てきます。それが10万年前の話だったり、100万年前の話だったりすることはザラで、中には人類が誕生するはるか大昔の何億年も前の話だったりするのです。

 人間が出て来ず、主人公でもなかったりするのです。番組進行のタモリさんは、学者並みに、異様に地質や地学に詳しいのですが、珍しい岩石に出合ったりすると、人に会った以上に感動したり興奮したりするのです。

 御本人に会ったことがないので断定できませんが、この方は、どうも人間関係はサバサバしていて、恐らく人間関係で悩んだことがない性格に見受けられます。まず、深い意味で、人類自体に興味を持っていない。結晶片岩や蛇紋岩の方がはるかに興味があると思われます。

 となると、人類の歴史の1万年のスパンというより、何千万年、何億年のスパンで物事を洞察しているんじゃないのかと思ったわけです。

 勿論、タモリさんにも悩み事はあるでしょうが、あまり人間だけに捉われていない。彼の目先に拘らない、長い年月のスパンでの物の見方も、見習いたいものだと思いました。