小樽
後藤先生のお導きで久しぶりに歌舞伎座へ歌舞伎を見に行ってきました。帯広時代は一回も行っていないので、4,5年ぶりかもしれません。久しぶりに堪能しましたが、役者の皆さんは随分、お年を召されたなあ、というのが第一印象でした。
九月の歌舞伎座は、秀山こと初代中村吉右衛門生誕120年祭です。昼の部を見たのですが、松緑の梅王丸、染五郎の松王丸で「車引」、吉右衛門南与兵衛、後の南方十次兵衛、富十郎の濡髪長五郎の「引窓」、雀右衛門の小野小町、梅玉の在原業平、染五郎の文屋康秀で「六歌仙容彩(すがたのいろどり)」、幸四郎の松王丸、吉右衛門の武部源蔵、魁春の戸浪、芝翫の千代で「寺子屋」といった演目。
前から5列目の特等席だったので、役者の息遣いが手に取るように伝わり、しばし、江戸の芝居小屋の雰囲気の中にタイムスリップした感じでした。
不仲が伝えられていた幸四郎、吉右衛門兄弟が「寺子屋」で共演したことには随分と感動させられました。二人とも還暦を過ぎたので、芸にいぶし銀のような艶が出てきました。私自身、播磨屋吉右衛門が現代歌舞伎界のナンバーワンだと思っているのですが、松王丸を十八番にしている幸四郎もなかなかよかった。幸四郎は現代劇もやっているせいか、台詞回しが現代風に陥りがちだったのですが、松王丸ははまり役で、自分の息子を身替わりに提供した親の悲痛を見事なまでに表現しきっていました。
吉右衛門は台詞がなくても立ち姿が格好いい。「引窓」では、殺人犯の義兄弟を捕縛しようかどうか悩む町人あがりの武士を品良く演じているし、「寺子屋」の源蔵は、初代の当たり役だったらしく、苦悩する源蔵が2代目として演技の継承者として悩む吉右衛門本人と重なって、うならされてしました。
かつて、歌舞伎は年に30本くらい見ていた時期もありました。ちょうど「三之助」が売り出していた頃です。あれから10年近く経ち、役者さんたちも随分年取ったなあ、というのが最初に書いたのと同じ印象でした。