「ドレスデン、運命の日」★★★★

(続き)
「東京タワー」に続いて、日比谷シャンテ・シネで「ドレスデン、運命の日」(ローランド・リヒター監督作品)を見ました。戦争映画ですから、やはり目を背けたくなる場面もありましたが、評価としては「まあまあ」でした。
イギリス人の爆撃パイロットとドイツ人の看護婦が恋に陥るという話ですが、まず、そこからして「ありえない」と心の中で叫んでしまう自分がいました。何しろ、ドイツ人の看護婦アンナには、医者の婚約者アレクサンダーがいます。それなのに、病院のベッドで、敵国の人間(ロバート)と不貞を働いてしまうのですから、それだけでも「ありえない」と思ってしまうのです。

看護婦の父親は病院長で、ナチスの幹部と結託してモルヒネをしこたま隠し持って、スイスのバーゼルに家族で逃避しようとします。
そして、そのまさに逃避する当日の2月13日に、彼の歴史的に有名な悲劇「ドレスデン空襲」が始まるのです。この空爆で、街の85%が破壊され、3万人とも15万人ともいわれる市民が亡くなりました。
この作品は、アメリカ映画ではなく、ドイツ映画なので、台詞もドイツ語で、ドイツ側からの視点で描かれています。戦争映画の多くはアメリカ製で、いつも正義の味方のアメリカが悪いドイツ人をやっつけるシーンばかり見せ付けられて辟易していたので、新鮮な気持ちになりました。
とはいえ、この映画では、殊更に、「悪いアメリカ人やイギリス人」を描いているわけではありません。何しろ、主人公は、ドイツ人の看護婦ですが、相手は「不正を糾弾する」イギリス人なのですから。

とにもかくにも、この映画で初めて見ましたが、アンナ役のフェリシスタ・ヴォールが美しかったこと!

「東京タワー」★★★★

ローマ

話題の映画「東京タワー、僕とオカンと時々オトン」を見てきました。

当初は見るつもりは全くありませんでした。何しろ、リリー・フランキーの原作は200万部の大ベストセラーらしいですし、既にテレビドラマ化され、舞台にもかかっている(いずれも見てましぇん)というのですから、大体の粗筋も、新聞の広告等で知っていました。まあ、半分はやっかみ、半分は敬遠で、「このブームが過ぎれば忘れ去られるでしょう」と静観の構えだったのです。

ところが、何の風の吹き回しか、今日は映画の日で、普段より安く見られます。想定していた映画が、時間帯が合わなくて、「ま、いいか」といった軽い気持ちで見ることにしたのです。正直、流行に乗り遅れてしまうという危機感もありましたが…。

しかし、本編が始まった途端、私自身はもうスクリーンの中にいました。また、懐かしい昭和三十年代を舞台にした物語が始まったからです。私もスクリーンの中の子供と同時進行で成長して、オダギリジョーになっていました。見ていない人には分からないかもしれませんが、オダギリジョーは、主人公のマー君役です。

半ばから、涙、涙で、スクリーンが霞んでしようがなかったのです。「たかが三文芝居、騙されないぞ」と思っても駄目でした。俳優陣の自然の演技には脱帽しました。オカンの若い時代が、現在のオカン役の樹木希林にそっくりな女優で、「随分、スタッフは、そっくりさんを見つけてくるものだなあ」と関心していたのですが、若きオカン役は、樹木の実の娘の内田也哉子だったのですね。内田の父親はロックンローラー内田裕也ですから、「自由人」のオトンにそっくりです。本当にはまり役でした。

映画館は、いわゆるシネコンで、「スパイダーマン」だの「バベル」などは満員のようでしたが、「東京タワー」は結構空いていました。両隣に誰もいなかったので、思い切り泣くことができました。

何と言っても、九州弁がよかとですたい。