映画「華氏119」は★★

一昨日11月3日(祝日)に鎌倉に行ったら、川崎駅の工事で東海道線の東京~横浜間が不通でしたが、今度は4日(日)に自宅近くの映画館に自転車で行ったら、私に何ら断りもなく(笑)、国際的なロードレース開催とやらで、道が塞がれ、迂回せざるを得なくなり、普段なら20分ぐらいのところが40分も掛かり、危うく上演時間に遅れるところでした。

マイケル・ムーア監督作品「華氏119」をどうしても見たかったのです。事前にただで見た新聞社の論説委員や編集委員さんらが書く文章を読んでも評判が良く、何しろ、11月6日の米中間選挙の投票前に影響を与えようという野心がいっぱいの映画らしかったのです。でも、観終わって、いや、途中から、何か、気持ちが荒むような、いやあな印象を受けてしまいました。

気になった一つは、ムーア監督が描く、そして最後まで強調するヒラリー候補の民主党=リベラル、自由主義、善で、トランプ大統領の共和党=保守、銃規制反対、大企業優先による多額の寄付、悪、という単純な図式です。

そんなに、共和党のトランプ氏がとんでもない独裁者の悪党で(ヒトラーになぞらえて、そういう描き方をしてましたが)、ムーア監督が応援する民主党が善でバラ色の社会を築いてくれる政党だというのでしょうか。

確かに、トランプ氏にはスキャンダルが多く、自分の実の娘同伴でテレビに出演して性的な話題をしたりして、不快を超えた嘔吐感しか残らないような唾棄すべき人物かもしれませんが、民主党のヒラリー候補だって、講演会で65万ドルもの超大金を提示されたりする特権階級で、貧困層の痛みも悩みも分からないのです。

民主党大統領候補として「社会主義者」のサンダース氏が、投票数ではヒラリー候補を上回ったというのに、最終的にはどういうわけか、民主党はヒラリー氏を候補に選ぶような不可解な政党でした。

第一、民主党というのは、リベラルでも善でも、平和主義者でも何でもなく、日本人としては、市民を無差別大虐殺したカーティス・ルメイ将軍による東京など日本の各都市大空襲にゴーサインをしたのは民主党のルーズベルト大統領であり、何と言っても、広島と長崎への原爆投下を最終承認したのも民主党のトルーマン大統領だったことをよく覚えているのです。

このドキュメンタリー映画で、かなりの時間を割いて「報道」しているのは、ムーア監督の出身地元であるミシガン州フリントで起きた水質汚染問題でした。

ここで、2010年にミシガン州知事に当選した、トランプ氏とは古くからの友人であるスナイダー氏を槍玉に挙げています。ムーア監督の描き方によると、スナイダー知事は、自己の金儲けのために、民営の水道水を開設したところ、その水に鉛が含まれており、多くの子どもや住民に被害が及んだというのです。被害者の多くは、黒人が多くすむ貧困層の住宅街です。日本の水俣病かイタイイタイ病みたいなものです。それなのに、スナイダー知事は大企業のGMに対しては、汚染されていない綺麗な水を配給したりするのです。

大問題となり、当時の民主党のオバマ大統領が「慰問」にフリントまでやって来ますが、水道水の安全宣言をするために、コップの水を飲むふりをして、ただ口を付けただけのパフォーマンスをしただけだったので、逆に地元民の反感と失望をかってしまいます。

途中で観ていて嫌になってしまったのは、このようなレベルの米国の政治システムが、世界中に、特に日本にも多大な影響を与えながら、投票権のない部外者は、黙って見ているしかないという歯がゆさだったかもしれません。