観光公害の行方

スペイン・コルドバ

インテリの皆さんは、賢いので物事を演繹的に敷衍したり、帰納的に思惟したり、弁証法思弁を繰り返されているようですが、私はインテリではないので、毎日、感覚的に、まさに野に放たれた犬のように生きております。

そのせいか、語弊や炎上を恐れずに率直に言わせてもらいますと、昨今の観光ブームとやらで、諸外国からの観光客による目に余るマナー逸脱は、愉快ではない感覚を肌身で感じております。

今の職場が東京、いや世界を代表する商業地・銀座なのですが、外国人観光客が地べたに座り込んで通行の邪魔になったり、平気でタバコの吸殻を道路に投げ捨てたり、度量を超えた大声で叫んでいるのを見るにつけ、気分が悪くなります。

今年8月に京都に旅行に行ったのですが、東京以上に外国人観光客が多かったので本当に吃驚してしまいました。特に、伏見稲荷大社は、世界的な「インスタ映え」のメッカになっているらしく、観光客の7割以上は、外国人でした。

ほんの一部でしょうが、心ない外国人観光客のマナーの悪さから、ついに「観光公害」なる造語も生まれました。

10月28日付京都新聞が「『観光公害』市民と摩擦 京都・やむを得ず外国人制限の店も」のタイトルで、その「惨状」をレポートしております。

この記事の中では、食器や灰皿を勝手に持ち帰ったり(窃盗では?)、ほとんど注文せずに長時間居座ったりする外国人観光客がいて、「売り上げが落ちた」と嘆く居酒屋の亭主も登場しております。

ごみや吸殻などのポイ捨てといったマナー違反のほか、「市民の足」だった市営バスが混雑して市民が乗れないケースなどもよく聞かされております。

 スペイン・コルドバ

観光客でさえこの有様ですから、今の安倍政権が躍起になって今国会成立を図っている「移民法」が制定されれば、今後どうなるんでしょうかねえ?住民とのトラブルは、日本人同士でさえ絶えないのに、ますます増えるのではないかと皮膚的感覚で危惧してしまいます。

それに格差社会が助長されるのではないかと心配もしております。

「保守の真髄」を読みながら考える

今年1月に自ら命を絶たれた保守派の評論家で社会経済学者、西部邁さん(享年78)の遺書とも言うべき最期の著書「保守の真髄 老酔狂で語る文明の紊乱」(講談社現代新書、2017年12月20日初版)を少しずつ読んでおります。

少しずつというのは、英独仏伊西語を始めラテン語、ギリシャ語まで難解な横文字のカタカナ言葉が多く、その度につかえてしまうので、スラスラと読めないからです。

自分の無学と不勉強を棚にあげてこんなことを言ってはいけませんね(苦笑)。西部さんのお書きになったものは、新聞や雑誌などなら読んだことはありますが、一冊にまとまった著書はこれが初めてのような気がします。気がする、というのは、それだけ、熱心な読者ではなかったということかもしれません。

スペイン・コルドバ

でも、この本を読んで共鳴する部分がかなりありました。西部さんに対する世間のレッテルとして、「左翼からの転向右翼」とか、「反グローバリズム」とか、「日本の対米追従批判」など多くあり、本人は「無視され続けてきた」と述懐しておりましたが、傾聴すべき論点はこの本の中にかなりありました。

ただ、「原発推進」「核武装」「国防費倍増」などといった彼の主張には同調できませんでしたが。

かつて東大教授を務めたことがあったせいか、この本では、学生にも分かりやすく説明したいといったような意気込みを感じられました。分かりやすく説明調で口述されているからです。

いつものように、感銘した部分を換骨奪胎で引用させて頂き、管見も付記しておきます。

スペイン・コルドバ

・「スマホ」という名の小さな薄い箱に精神を吸い取られてらちもないゲーム事に明け暮れする男女の群れを眺めていれば、文明は紊乱の段階を過ぎて没落に至っているのではないかとの思いが、…日々深まりゆくばかりなのである。(P20)⇒(管見)全くの同感です。

・かつてマルクスは、賃金がサブシステム・ミニマム(最低生存水準)に抑えられ労働者は単なるプロレタリー(レタリー=子孫をプロ=産むだけの存在)に落とされるのだから、いずれプロレタリアの反逆が起こるものと予想した。(P26)⇒(管見)プロレタリーの意味を知る人は少ないでしょう。

・モダンを近代的と訳したのは、日本文化における取り返しようのない錯誤であった。…モダンとは「最近の時代」のことではなく、それがモデルとモードの類似後であることから察しられるように、「模型の流行する時代」つまり「模流」とでも訳されるべき言葉であった。(P36など)⇒(管見)モダニズムとは、近代主義ではなく、模流主義ということですか。あまりピンときませんが、この方が正確なのでしょう。

・デモクラシーは素直に訳せば「デーモス(民衆)のクラティア(政治)」ということなのであるから、そしてクラティアはクラトス(力)からやってきた言葉であるから、「民衆の支配」とされるべきであった。(P84)⇒(管見)デモクラシーとは、民主主義ではなく、民衆支配ということですか。危ない。チャーチルの予見が当たりそう。

・ビューロクラット(官僚)はビューロ(「帆布」のこと、つまり組織)あるところに必ずいなければならない職員のことである。…誰も指摘しないことだが、公務に従事するという意味で役人は半ば政治家なのである。(P91)⇒(管見)かつて、日本の民主党が事務次官会議を廃止したことは、やはり、荒唐無稽だったことになりますね。

・我が国ではインテリと称されている学者や評論家やジャーナリストたるスペシャリスト(専門人)は、物事の側面についてのみの考察に傾いているので、その意見は臆説(思い込み)であることが少なくない。(P94)⇒(管見)専門バカとはよく言ったもので、専門以外のことは全く何も知らないのに、得意科目の専門を「思い込み」と言われれば、インテリの存在価値がなくなりますね(笑)。

スペイン・コルドバ

・コンスティチューションは憲法である前に国体つまり国柄のことである。(P100)⇒(管見)「この国のかたち」ということですか。

・リバティといい、フリーダムといい、自由は過剰な抑圧や恐怖や貧困からのエマンシペーション(解放)ということを意味する言葉である。(P104)⇒(管見)リベラリズムも本来は、抑圧、恐怖、貧困からの解放ということになるわけですね。

・マネーという言葉の由来はイタリアのモネータ寺院がコインを鋳造したことにあるという。(P135)⇒(管見)2017年11月14日付の日経の記事によると、モネータ(moneta)とは、英語のマネー(money)の語源となったラテン語で、紀元前ローマで女神「ユーノー・モネータ」を祭る神殿に貨幣鋳造所が併設されていたのに由来するとあります。

・経済という学問はそもそもの始まりからして「経綸問答」(中江兆民)でなければなるまい。ここで「綸」は「倫」もまたしかりだが、「物事の筋道」ということにほかならず、その「事」にはつねになにほどか貨幣以外のほかのメディアも関与するにきまっている。(P138)⇒(管見)このあと、西部氏は、集団なら権力も慣習も価値も関わるのに、貨幣の振る舞いだけ取り出して人間・社会を論じる結果、「貪欲」が独り歩きする、と喝破しております。今の経済は、株や為替など金融中心ばかりなので、これにも深く同意するしかありません。

過去最大規模のルーベンス展には圧倒されっぱなしでした

昨日は、京洛先生からの飛脚便で、小生が「ムンク展」に行ったのでは?ーと推測されておりましたが、残念!  同じ東京・上野公園内でも、国立西洋美術館で開催中の「ルーベンス展」を覗いてきました。日曜日なので、覚悟してましたが、若い女性が押し寄せず、割と空いてました。

いがったですねえ。感動で打ち震えました。もう3カ月も前に前売り券1400円を購入して準備万端だったのです(笑)。

ルーベンスは、私は小さい子供の頃から知ってました。何故かと言いますと、自宅のダイニングキッチンの壁にルーベンスによる天使と果物などが描かれた絵画(題名は忘却)があり、毎日眺めながら、そのきめ細かい絵筆と写実性に圧倒されていたからでした。勿論、それは本物であるわけがなく、しかも、複製画でも何でもなく、どこかの銀行かどこかでもらってきたカレンダーでしたけど…(笑)。

そして、もう25年以上も昔ですが、在日ベルギー政府観光局の招待でベルギーに取材旅行に行った際、アントワープの聖母大聖堂で見たルーベンスの「キリストの降架」(1614年)は、いまだに印象に強く残っております。「フランダースの犬」の物語でネロとパトラッシュが最期に見上げるあの作品です。大いに感動したものでしたが、「フランダースの犬」は地元ではあまり知られていないと聞いた時は、驚いたものでした。英国作家が書いたものだから、とか、フランドルのことをあまり好意的に描いていないというのが理由らしいですが、日本人の多くは、子どもの頃に読んだ「フランダースの犬」を通して、ルーベンスの名前を知ったのではないでしょうか。

◇ピーター・ポール・ルーベンスはペテロ・パウロ・ルーベンス

さて、ペーテル・パウロ・ルーベンス(1577~1640)は(Peter Paul Rubensですから、英語読みすると、ピーター・ポール・ルーベンスになりますね)、62年の生涯で何千点もの作品を生み出しましたが、もちろん、一人で描き切ったわけではなく、主にアントワープの工房で、ヨルダーンスら弟子らとともに製作しました。ルーベンスが実際に描いたのは主要人物の顔だけ、なんという作品もありました。17世紀のフランドルはスペイン統治下で(オランダは1581年に独立、ベルギーは1830年になってやっと独立)、詳しくはよく知りませんが、ドイツ生まれのルーベンス自身は語学堪能、博学で、画家だけでなく、外交官としても活躍しました。

題材は聖書や神話や伝説などが多いですが、その大きさもさることながら、あまりにも写実的で本当に圧倒されます。ローマ皇帝ネロによって自害を命じられた「セネカの死」は、血管の一本一本が透けて見えるほどでした。

今展は、スペイン・マドリードのプラド美術館やロシアのエルミタージュ美術館など世界10カ国から約40点が集められたもので、日本では「過去最大規模のルーベンス展」と銘打っております。その宣伝文句は、文字通りで、看板に偽りはありませんでした。

※なお、上記写真は、写真撮影が解禁されている「常設展」(いわゆる、松方コレクション。現在も海外から西洋画を買い進めていたのには驚きでした)の様子です。

ルーベンス展は、撮影禁止でしたので、パンフレットの写真を下に掲載しておきます。

実物を見たくなることでしょう(笑)。

若い女性が群がる「京のかたな」展=刀剣が大ブーム

お久しぶりです。京都の京洛先生です。

最近の《渓流斎日乗》のアクセスは如何ですか?
お堅い話ばかり続いておりましたから、読者の皆さんがついていけないのか、高踏過ぎたのか分かりませんが、減ったことでしょう。まあ、めげずに頑張ってください。
 さて、美術の季節の到来ですが、今日の日曜日は、貴人は、東京・上野公園で「ムンク」展でも鑑賞ですかね? 「共鳴する魂の叫び」などと「魂」のない紙面づくりをしている朝日新聞社がえらい力を入れていますね。前日に起きたことを載せるのが日刊新聞のはずですが、2,3日遅れても、平気で、紙面に載せることが目立つのが、最近の「朝日新聞」です。
 これでは、「新聞」でなく、「朝日旧聞」ですよ(笑)。
 「朝日は左翼だ!」なんて、皮相的に紙面批判している連中は、こういうことに気が付かないのでしょうかね。
 朝日新聞は完全に紙面づくりに手を抜いているのです。貴人が「経済面」を評価する読売新聞のような、ある種の「真面目さ」と「ひたむきさ」が感じられませんね。要するに、読者をなめているのです。
 迂生は昨日、国立京都博物館の「京のかたな」展(11月25日まで)を覗いてきました。昨日から始まった第70回「正倉院展」(奈良国立博物館、11月12日まで)も、読売新聞社が「特別協力」ですが、この「京のかたな」展も、読売新聞がNHKと共催です。
 かって、「ミロのビーナス」展や「ツタンカーメン」展を主催した朝日新聞社の文化事業のパワーは、この分野でも、完全に消え失せています。「適当にやっていても給料はもらえる」と社内がだらけ切っているのでしょうね。これでは、部数が400万部切ったと言われてますが、ますます減ることでしょう。社長以外は、危機感ゼロではないでしょうか。
◇若い女性がいっぱい
 ところで、迂生は、週末はなるだけ美術展は混雑するので避けていますが、昨日の土曜日(11月27日)は、新装した「南座」の記念行事で、歌舞伎役者総勢70人が、南座前から八坂神社までの四条通りを「お練り」をするので、観光客などはそちらに目が行き、京博には来ないと考え、同時刻に出かけましたが、まったく想定が外れました(笑)。
 京博も入場するのに10分も待たされ、しかも、館内は最前列で名刀を見る人が、長い列を作っている有様です。
 しかも、最近、若い女性の「刀剣マニア」が激増しているそうで、昨日の同展も7割は若い女性で吃驚仰天しました(笑)。
 京博の案内人によると「平日も女性で混んでいて、週末だけではありません」ということでした。どうやら、今、若い女性の間で、刀剣が大ブームになっているらしいのです。
 「京のかたな」展では、鎌倉時代の国宝の則国、久國、吉光の名刀や重文の刀がずらりと並び、いずれも、手入れが行き届いているので燦然と輝いているのは圧倒されます。
 それを若い女性がガラス越しに食い入るように眺め、「凄いわね!」「きれい!何とも言えない、妖しい!」と言葉を交わしていました(笑)。
◇長刀鉾をじっくり拝見
 迂生は、同展の目玉の一つ、「祇園祭」の山鉾巡行では、常に、先頭にいく「長刀鉾」に飾られていて、今は非公開になっている全長1.47メートルの、長刀を見ることが楽しみでしたが、こちらは、手入れはされているとはいっても、光り輝いてはおらず、見る人も少なく、じっくり拝見できました。
 この長刀はは室町時代後半の大永2年(1522年)に京都の鍛冶師、長吉が作ったと伝えられています。
 ところが、1536年の「天文(てんぶん)法華の乱」(延暦寺の天台宗僧徒と日蓮宗宗徒の争い)で、何者かに強奪され行方不明になりました。しかし、行方不明になった翌年、近江のお寺で見つかり、買い取られて、再び、祇園祭を執行する「八坂神社」に奉納された経緯があります。
 恐らく、その間にいろいろな逸話、ドラマがあったと思いますが、刀剣に限らず、貴重な美術品には権力、経済力を持った人間に絡む逸話があり、それを追うだけでも面白いと思いますね。
 以上、おしまい。

日経の記事は翻訳の範疇を越えているのか?

スペイン・コルドバ

福岡県にお住まいの道仁先生から異様に長いメールが送られてきました。

日経の翻訳記事は、原文と違い、翻訳の範疇を逸脱しているのではないか、と日本報道検証機構が提起しているというのです。

以下はその触り。

日本経済新聞が電子版ニュースサイトに「[FT]トランプ、プーチン、安倍…強権指導者の危うさ」と見出しをつけて英紙フィナンシャルタイムズ(FT)のコラムを掲載したところ、原題の「Trump, Putin, Xi and the cult of the strongman leader」と食い違いがあるとの指摘が日本報道検証機構に寄せられた。そこで、この問題を調査したところ、日経はFTの翻訳記事を掲載する際、原題どおりに翻訳せず、日本人読者向けに独自に見出しを作成しているケースが多いことがわかった。本文では強権指導者の一人として安倍晋三首相の名前が出ている。コラムの執筆者はロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席とは異なる位置付けで安倍首相を取り上げたと指摘しつつも、見出しの変更は「問題ない」と回答した。

スペイン・コルドバ

 これ以上引用しますと、元も子もなくなりますので、もしご興味がある方は、「日経電子版の見出しは『編集』されている」をご参照ください。

 2年前の随分古い記事でしたけどね(笑)。

怪しいメールにはご注意ください

スペイン・コルドバ

florasconley@gmail.comなる悪徳詐欺師からメールが来ました。

文面は以下の通りです。

【有料コンテンツ解約についてご案内】

本ページでは、ケータイの「まとめて支払い」にてお支払い中の有料コンテンツ解約(退会)についてご案内いたします。 有料コンテンツの解約(退会)は、コンテンツ毎にお客様ご自身で携帯電話より解約(退会)手続きをおこなっていただく必要があります。 下記の手順で入会中のコンテンツを確認し、各サービスのサイトにて退会手続きを行ってください。

下記にてご登録がされているものとなります。
⇒http://554oc5bha4u7l16fb5b.tch.c2zn81dq6i13.com

なりますましや乗っ取りなどの危険性がありますので、ご登録の覚えが無い場合一度アカウントを削除されることをお勧めいたします。

下記よりアカウントの削除についてのご説明が御座いますのでご確認下さい。
▼対応はこちらから
⇒http://554oc5bha4u7l16fb5b.tch.c2zn81dq6i13.com

※このメールは送信専用メールアドレスから配信されております。 このまま
ご返信いただいてもお答えできませんのでご了承ください。

スペイン・コルドバ

何で、悪徳詐欺師と決めつけるかと言いますと、小生は、有料コンテンツなるものは一切契約していないからです。契約していないのに、退会も何もないでしょう。

それなのに「なりますましや乗っ取りなどの危険性がありますので、ご登録の覚えが無い場合一度アカウントを削除されることをお勧めいたします。」とのご託宣。随分と手の込んだ悪徳商法じゃありませんか。

どうせ、AIかコンピュータで人工的に操作していることでしょうが、こういう卑劣漢は野放しにしてはいけないので、ブログで取り上げることにしました。1度や2度なら我慢できますが、もう何十回も送り付けてくるんですからね。

皆様もゆめゆめ、騙されぬよう。そして、くれぐれも怪しいメールのhttpのサイトをクリックしないよう、御注進申し上げる次第で御座います。

情報戦で日本は完敗なのでは?

スペイン南部ミハス

トランプ米大統領の私用のiPhoneが  、中国から盗聴されて、友人との会話が漏れたのではないか、という疑惑の報道を受けて、中国外務省の報道官が「それなら、アップルをやめて、華為技術(ファーウエイ)に替えたらどうか」と皮肉ったらしいですね。

「うまい切り返しだなあ」と感心してしまいました(笑)。

それだけ、我々中国には技術もあり、世界の市場占有率では負けていないという自信の表れだということでしょう。

事実、調査会社のIDCが発表した2018年第2四半期のスマートフォンの世界シェアでは、サムスンが7150万台の出荷で相変わらずの首位ですが、アップル(4130万台)は、2位から3位に転落。変わって2位に浮上したのが、ファーウエイ(5420万台)だったのです。

20世紀で確かに冷戦は終わりましたが、21世紀になっても、覇権争いや経済戦争、貿易戦争は終わっていないようです。いや、米国の衰退と中国の台頭により、ますます熾烈になってきております。今さらですが。

スペイン南部ミハス 「食べるな」ではなく小レストラン

もちろん、ドンパチの戦争や核ミサイル攻撃などしようものなら、完璧なる人類の破滅と滅亡が目に見えていますから、それに代わる争いとして、今は、貿易戦争や情報戦争が繰り広げられているのではないでしょうか。

後者に関しては、日本は完全に敗者です。かつてパソコンの世界シェアではトップを争っていたNECや富士通なんかはもう日本でパソコンを作っていないというのですからね。ほとんど全部、中国製です。日本の得意だった白物家電やテレビも、もう韓国サムスン、LGや台湾の鴻海精密工業など海外企業に取って変わられてしまいました。

情報戦に関しては、ハードからソフト戦に移り、GAAF(グーグル、アップル、アマゾン、フェイスブック)と呼ばれる米国企業のプラットフォームが世界の圧倒的シェアを占め、日本はあんぐりと口を開けて、その勢いにひれ伏して、完璧に軍門に下ってしまいました。

それなのに、中国は、「保護主義」か戦略か分かりませんが、恐らく国家ぐるみで、グーグルを跳ね除けて、百度(バイドゥ)を検索エンジンとして確立させています。

中国だけかと思っていたら、お隣の韓国でも、NAVER(ネイバー)という検索サイトが、グーグルを抑えて8割近い圧倒的なシェアを占めています。日本とは大違いです。

このNAVERは、まとめのトピックサイトを日本語でもやっているので、少し知っておりましたが、つい昨日まで、韓国の会社だとは知りませんでした。しかも、このネイバーは、日本でも大人気の、あのLINEの親会社だったんですね。

もちろん、プラットフォーム商法ですから、売り上げの一部が収益になります。

お隣の中国と韓国は、ソフトもハードも、情報戦でそれなりに頑張っているのに、日本は何をやっていたんでしょうかね?今では全部、米国と中国と韓国と台湾企業に頼ってます。

あれ?これでは、中国報道官のように、皮肉にもなりませんね。

スマホ中毒には白黒設定を

スペイン南部ミハス

NHKラジオの杉田敏先生の「実践ビジネス英語」はもう何年も何十年もお世話になっておりますが、先週と今週は「スマホ依存症」を特集しています。

今日25日の放送では、「調査によると、大人は1日に平均80回余り、自分の携帯をチェックしています」とあり、これには吃驚してしまいました。

米国の企業が舞台での会話なので、「大人」とは米国人のことなのかもしれませんが、1日80回とは、多いですね。単純計算してみますと、1日、睡眠時間8時間を除いた活動時間を16時間としますと、1時間に5回はチェックしていることになります。となると、12分に1回チェックしているということになります(笑)。

電車内では、ほとんどの人がスマホを見てますからね。新聞を読んでいる人は、絶滅危惧種です。

私も1時間に1~2回ぐらいチェックしてますから、間違いなく「スマホ依存症」、もしくは「スマホ中毒」、または「スマ中」(何か島忠家具センターの略か、どこかの中学校の略称みたいで、この言葉は流行らないでしょうが=笑)です。

スペイン南部ミハス

最後の方で、スマホ依存症からの解決策として、スマホの画面を「グレースケール」に設定することを勧めておりました。初めて聞くことなので、何のことかと思ったら、グレースケールを設定すると、画面が白黒になるというのです。執筆者の杉田先生も試してみたら「驚くほど効果的だった」と「あとがき」に書いておりました。

ただ、「色彩の消えたスクリーンのスマホは、単なる実用的なツールに過ぎなくなり、非常に退屈で、使う意欲がかなり減退します。あまりにも退屈なので、私はやはり元に戻してしまいました」と告白しておりました。

私自身、ほんの1週間程度でしたが、9月にスペイン旅行した際は、スマホはカメラとしか使わず、画面チェックしなかったので、スマホ中毒は治りましたが、帰国したら元の木阿弥です。

この際、私もグレースケールにしてみようかと思いましたら、スマホが古い機種なので、その機能が付いていませんでした。

オー!ノー!

1929年の大暴落と大恐慌からの教訓…

スペイン南部ミハス

長屋の八つあん ご隠居さま、お暇なところ、お邪魔します。

ご隠居さま おお、ハチ公か。お暇とはいい挨拶だな。ま、上がれ。今日は何の用だ。

ハチ公 ま、聞いてください。最近、アメリカの大恐慌とやらに興味を持ってるんですがねえ。でも、阿部老中が勧める讀賣新聞を読んでもさっぱり分からねえ。ご隠居さま、簡単に教えてくれやしまいかと思いましてね。

ご隠居 おお、お前も最近、経済に興味を持っているらしいことは噂では聞いておった。1929年のニューヨーク株式の暴落に始まる大恐慌のことかい?それにしても、大した魂消たね。お前さんがそこまで嵌っていたとは。

ハチ はあ、そうなんすよ。あんまし、意地悪言わねえで、サクッと教えてください。

隠居 サクッとか?儂はスマホじゃないがね。これでも、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで、ミック・ジャガーと肩を並べてMBAを取得しようとしたぐらいだから、儂の得意分野じゃ。あの尾畠春夫さんを見習って、スーパーボランティアで教えてあげよう。

ハチ お、大統領! そう、こなくちゃね。

スペイン南部ミハス

隠居 世界的な大恐慌の始まりは「暗黒の木曜日」、1929年10月24日のニューヨーク証券取引所での大暴落のことだと言われておったが、そうではないというフリードマンらの学説もある。ま、ややこしくなるので、このまま進める。とにかく、翌週の「暗黒の月曜日」「暗黒の火曜日」などを経て、1920年代の株投資ブームで上昇傾向にあったダウ工業平均株価は29年9月3日に最高値381.17ドルを記録し、それが暴落に続く暴落で、1932年7月8日には41.22ドルと実に89%も大幅に下落したわけじゃ。(損失価値総額約840億ドル。米国の第一次大戦時の戦費の約3倍に相当)10年前のリーマン・ショックのときは61%の下落じゃったから、どれだけ凄いか分かるじゃろ。1929年のピークの水準を回復したのは、戦後の1951年。それまで22年も掛かったことになるのぉ。回復のきっかけは、1941年の日本の真珠湾攻撃っちゅうから皮肉なもんじゃよ。はい、これで終わり。

ハチ えっ?もう、終わりっすか?

隠居 もうええやろう。とにかく、経済学ちゅうもんは、口が裂けても「いい加減」とまでは言えないが、数学のようにはっきりと解答があったり、スポーツのように勝ち負けがはっきりするもんじゃないんだよ。いまだに、大恐慌の原因について、論争があるし、実は決着が付いていない。ああ言えばこう言う。ああ言えば上祐(古い!)未来永劫分からんじゃろ。経済学とはそんなもんじゃよ。

ハチ 何だ、随分、テキトーな学問なんですね。

 ま、儂の口からは言えんけどな。両論併記と言ってもらいたい。それより、意外なエピソードの方が面白いんじゃ。例えば、株が大暴落したときの米大統領は共和党のフーバーだ。この人は、無為無策で、不況対策を取らなかったと誤解されて人気がない。片や、民主党のルーズベルト大統領、有名なニューディール政策を行い、とにかく、25%、つまり4人に1人が失業というどん底から救ったという救世主のような扱い方をされてる。しかし、実際はその逆で、例えば、ニューディール政策の中でも最も有名なテネシー川流域開発公社(TVA)によるダム建設、電力開発も、大した雇用創出にはならず、経済効果もなく、失敗だったという説を唱える学者もおる。

ハチ へー、そうなんすか。教科書に書いてあったこととは違いますな。

隠居 ハロルド・フーバーは8歳で両親を亡くした孤児で、叔父に引き取られて、熱心なクエーカー教徒になるんじゃ。スタンフォード大学を卒業して、鉱山技師となり、世界中の鉱山を渡り歩いて、開発して巨万の富を築くのじゃ。フーバーの偉いところがこの先だ。第1次世界大戦で欧州から帰国できなくなった10万人以上の米国人に金銭的に支援したり、食料や寝る場所を確保したりしたんじゃ。また、周囲の反対を押し切ってロシア革命後の飢餓で苦しむソ連の人々を援助したりもした。そんな「偉大な人道主義者」という名声から、時のハーディング、及びクーリッジ大統領から商務長官に選ばれるわけだな。そして、株の大暴落の直後、何もしていなかったわけではなく、失業対策として復興金融公社をつくったり、「フーバーモラトリアム」を制定するなど景気対策はやってたわけじゃ。フーバーは劇場に行かず、スポーツ観戦にも行かず、散歩にもドライブにも出ず、人の噂もせず、日曜も休日もなく只管働いた。クリスマスでさえ、メリークリスマスと一言言っただけで、すぐ仕事に取り掛かった。儂のような超真面目人間。ただ、輸入関税を平均33%から過去最高水準の40%に引き上げた悪名高いスムート・ホーリー法を成立させたことは汚点だった言われておる。

ハチ あら、今のトランプさんみたいな保護主義っすね(笑)。

隠居 歴史は繰り返す、とはよく言ったもんじゃ。アメリカは「移民国家」だというのに、移民制限だって、今のトランプさんに始まったわけじゃない。1921年のジョンソン法とそれを改訂した 24年の移民法では、完璧に、排斥の狙いは日本を含めた東洋人だった。黄禍論が盛んに論議されとったからな。

ハチ なあるほど。

スペイン南部ミハス

隠居 だから、歴史を学べば、未来も手に取るように分かり、心配することはないっちゅうことかな。一つ付け加えれば、アメリカの大恐慌のお蔭で、ケインズに代表されるようにマクロ経済研究が始まった。だから新しい学問なわけ。ルーズベルト大統領は、ケインズの「雇用、利子および貨幣の一般理論」(1936年)は理解できなかったらしいけんど、スタインベックの「怒りの葡萄」(1939年)ぐらいは読んだんじゃないかな。お前さんだって、LM曲線だのIS曲線だのを説明しても分からんだろ。せめて、シュンペンターの「景気循環の理論」ぐらいは理解できるかもしれんけど。まず、この時代を知りたければ、フレデリック・ルイス・アレンの「オンリーイエスタデイ」が一番。20年代の繁栄時代はフィッツジェラルドの「華麗なるギャツビー」、それに「武器よさらば」などヘミングウエイなんかも面白いんじゃないかな。

ハチ さすが、博学のご隠居さまだ。

隠居 いや、実は儂は、まだ全部は読んでないんだ…(笑)。

▼参考文献=林敏彦「大恐慌のアメリカ」(岩波新書)など。

なんで株は10月に暴落するのか?

スペイン南部ミハス

秋も深まり、気温が下がってくると、株も下がってきますね。他人事ならいいんですが、そうもいかないところが人生の機微というものです。

株式が大暴落した「暗黒の木曜日」(1929年10月24日)も「ブラックマンデー」(1987年10月19日)も、不思議にも10月が多いのは、何か歴史的法則でもあるんでしょうか。

スペイン南部ミハス

本日10月23日の日経平均は、「一時2万2000円割れ」という憂いの多いシナリオで、終値は、前日比604円安の2万2010円となりました。10月上旬から下落傾向が続いております。

株式評論家やジャーナリストの分析は、いつでも、いつの世でも、「後講釈」ばかりが多いのが定番です。

曰く、

本日の日経平均の大幅下落は、22日のニューヨーク・ダウ工業平均株価が、前週末終値比126.93ドル安の2万5317.41ドルに終わったことを受けたもの。

そして、肝心のNY株が何故下げたのかといいますと、「サウジ記者死亡事件を受けた中東情勢の悪化懸念のほか、イタリアの財政悪化に対する不安の高まりで、エネルギーや金融関連株が売られたから」と、株式アナリストは、丁寧に説明してくれますが、何か、鶏が先か、卵が先かみたいな話ですね。

意地悪な言い方をすれば、理由や説明なら、素人の私でさえ誤魔化せるものです。終わった話の背景は、「こういうことがあったんだよ」と毎日のニュースを追っていれば、それぐらい誰にでもできるというものです。

例えば、先日取り上げました、サウジアラビアに約10兆円も投資しているソフトバンクは、9月28日に年初来高値の1万1500円をつけたというのに、サウジ記者殺害疑惑事件が報じられた10月上旬から急に株価が下がり始め、23日は約20%も下落しました。日経平均全体の下落率が約10%なので、かなり抜きん出ておりますー。てな調子です。

中国の株(上海株式指数)も年初来下落傾向が続き、トランプ米大統領による中国からの輸入関税引き上げがボディーブローのように効いてます。

投資家心理を反映した「恐怖指数」とかいうものがあるそうですから、このまま不安が広がれば、世界同時株安に繋がる可能性もあります。

逆に、今の株価は、実体経済を反映しておらず、かなり割安だという心理が高まれば、株が買われ、株価は急上昇することでしょう。仕手筋が株を下げて、下がり切ったところを買い占めるという観測もあり、案外、手垢のついた手法で、単純な話なのかもしれません。

スペイン南部ミハス

最初に書いたように、10月と株価暴落との関係や歴史的法則を知りたくて、今、古典的名著と言われる林敏彦著「大恐慌のアメリカ」(岩波新書、1988年9月20日初版)を読んでいます。

後半は、素人には難しい経済理論ですが、前半のエピソードはかなり面白かったのでまたの機会に取り上げたいと存じます。