日産ゴーン会長逮捕で得する人、損する人

昨晩の日産自動車のカルロス・ゴーンCarlos Ghosn会長(64)の逮捕事件には驚きましたね。驚天動地といってもいいかもしれません。

これで、ますます、グローバル主義が衰退、いや後退して、保護主義が強まっていくのではないかと思います。何で今頃になって発覚したのか? 一体、誰の差し金か?ー自分なりに整理してみました。

◇50億円の過少申告

ゴーン会長の容疑は、2011年3月期から15年3月期の5年分の役員報酬について、実際には総額約99億9800万円だったのに、有価証券報告書に約50億円も少なく見せ掛けて虚偽申告したというものです。それを指示したグレゴリー・ケリー代表取締役(62)も共犯として逮捕されました。

だから、何だと聞かれれば、虚偽記載すると10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科せられ、代表者が違反した場合、法人に対して7億円以下の罰金が科せられるという両罰規定があるそうです。(20日付朝刊では東京新聞だけが書いてくれました)

ただ、追徴課税など税金はどうなるのかと思いましたが、新聞はどこも書いてくれませんでした。

この容疑は、単なる「氷山の一角」に過ぎず、ゴーン会長は、レバノン(ベイルート)やブラジル・リオやパリなどの自宅もオランダの子会社を通じて購入して、約20億円の費用を社側に負担させ、会社や株主のためでなく、要するに私腹を肥やすことしかしなかったというわけです。

◇強欲なコストカッター

1999年、「コストカッター」として仏ルノーから乗り込んで、日産のトップに就任して19年。その間、年俸と役員報酬を含めて巨額の収入を得ていたのに、虚偽工作までするとは、強欲以外の何でもありませんね。

仏ルノーは日産の株式を43%、日産もルノーの株式15%を保有し合い、ルノーにはフランス政府が15%も出資していますから、国際問題に発展するのではないかという識者もいますが、その根拠には内紛説があります。

昨年のルノー・日産は、三菱自動車を傘下にいれた三社連合で世界第2位の売り上げ(1060万台)を記録しました。でも、内訳は、日産581万台、ルノー376万台、三菱103万台で、日産がトップだったのです。

◇日産とルノーとの確執か

それでも、ルノーはいわば日産の「親会社」ですから、当然ながら、日産には自分たちの息のかかった欧米人の取締役を送り込んで意のままに経営権を行使しようとします。

その一方で、以下はあくまでも容疑ですが、ゴーン会長は、7月に日産が不正検査問題を起こした時でも、謝罪弁解会見には日本人首脳に押し付けて、自分は他人事のように休暇を取って親族(レバノンの名門上流階級ゴウスン一族か)と西日本の島に静養に行ったりしました。

前の都知事の舛添さんみたいに、私的な家族旅行費までも、会社に負担させたりしました。その額、数千万円。

何と言っても、日本人では考えられない巨額の役員報酬…等々、社内では色々とフラストレーションが溜まっていて、どうにかしてゴーン会長の失脚を狙って、あら捜ししていたフシがあるようです。

◇内部告発と司法取引

これらは、客観的証拠に過ぎませんが、何しろ、もう何カ月も前から社内で内部調査し、内部告発者は、東京地検とは司法取引までしたといいますからね。

西川・日産社長の記者会見で、「これはクーデターではないのか?」と質問した記者もいたらしいですが、急所を突いてますね。たとえ、社長が全面否定しても。

ゴーン氏逮捕の報道を受け、仏ルノー株が一時15%、日産株も一時7%も下落したのも投資家心理が働いたのでしょう。

今後どうなるのか気になりますが、ルノーとフランス政府は、黙っていないでしょう。

もしくは、ゴーンとケリー両氏の2人だけの個人的責任としてけりをつけるのでしょうか?

でも、自動車はあくまでも商品なんですから、傷ついたブランドの信用を取り戻すのに時間がかかるのではないでしょうか。

こんなんで景気が低迷してほしくないですけどね…。