国民の無知につけこんで「日本が売られる」

これを読むと、驚かされるやら、脅されるやら、自分の無知に腹が立つやら・・・。とにかく、最初から最後まで、後ろから頭にハンマーで叩かれたような衝撃を受けます。

今、話題沸騰の堤未果著「日本が売られる」(幻冬舎新書、2018年10月5日初版)のことです。賢明なる皆さんは、もう既にお読みになったことでしょう。

ざっと並べてみても、日本人の資産である「水が売られる」「タネが売られる」「森が売られる」。そして、日本人の未来が売られるということで、「労働者が売られる」「ブラック企業対策が売られる」「学校が売られる」「医療が売られる」「老後が売られる」「個人情報が売られる」・・・まさに、無知な国民が知らないうちに、何でもかんでも、売られっぱなし。その事実さえ気がついていないのです。

一体、どうなってるんでしょうか?

スペイン・ラマンチャ地方

著者の堤未果さんは、今最も注目されている国際ジャーナリストでしょう。実父は、放送ジャーナリストのばばこういち(1933~2010)。夫は、薬害エイズ事件の原告だった川田龍平参院議員。

「水が売られる」の章の中で、堤さんが実名を挙げて糾弾しているのが、麻生太郎副総理と竹中平蔵民間議員(注:議員といっても選挙で選ばれるのではなく総理が指名。現在各分野の規制緩和法案骨子は彼らによって作られている)の2人です。

通常、私有物ではなく、日本人の公共資産を外資に売る人のことを「売国奴」、もしくは「国賊」と呼びますが、上品な堤さんはそんな下品な言葉は使っていません。とはいえ、それ以上に断罪の口調が苛烈極まっております。

麻生、竹中両氏は、政界のトップ、もしくは政界に大変影響力のあるポジションに居座り続けながら、隠密裏にやっているせいか、無関心な国民をよそに、粛々と、率先して、そして、規制緩和の美名の下に、国民の資産である水の運営権を巧みにフランスの世界最大の水企業ヴェオリア社(の日本法人)に少しずつ売り渡していたというのです。(ルノーの日産支配といい、フランス人はいまだに植民地主義から抜け切れていませんね)

堤さんは「竹中平蔵氏や麻生太郎副総理の主導で法改正がどんどん進められ、その間マスコミは行儀よく沈黙していた」と、たっぷり皮肉を込めて書きます。

麻生副総理は2013年4月、米ワシントンにある戦略国際問題研究所で「日本の水道を全て民営化します」と宣言します。この時、「映像には『民営化します』という力強い発言が出た瞬間、隣に座っていたマイケル・グルーン氏が、興奮したのか思わず手元の水を飲む姿が映っている」ことを堤さんは見逃したりはしません。

また、竹中氏については、「小泉政権で日本の水道を最初に民営化した立役者」と、これまた、異様なほど皮肉をてんこ盛りに込めて紹介しております。

スペイン・ラマンチャ地方

日本の水道は黒字なのに、なぜ、民営化をしようとするのか?

それは、水ビジネスが世銀元副総裁が言う通り、「石油より巨大な金脈で、21世紀の超優良投資商品だからだ」といいます。

無知な日本の庶民は「民営化=効率化」で規制緩和は素晴らしい、と思い込んでいます。だから、あとは、竹中氏や麻生氏のような方々が「競争がサービスの質を上げ、水道料金を下げ、それが市民に還元される」といったような耳障りが良い甘言を振り回せば、馬鹿な庶民は惑わされるわけです。

本書では、水道を民営化したおかげで、莫大な借金を抱えることになった世界各国の自治体の例がふんだんに出てきます。

◇医療が売られる

この章では、国民健康保険(国保)を食い潰す外国人の例を取り上げております。

2012年、民主党政権はそれまで1年だった国保の加入条件を大幅に緩め、たった3カ月間滞在すれば外国人でも国保に加入できるよう、法律を変えてしまったといいます。

「その結果、留学生や会社経営者として入国すれば国籍に関係なくすぐに保険証がもらえるからと来日したその日に高額治療を受けに病院に行くケースが増え、深刻な問題を引き起こしている」と堤さんは書きます。また、「出生証明書さえあればもらえる42万円の出産一時金も中国人を中心に申請が急増しているが、提出書類が本物かどうかも役所の窓口で確認しようがないのだ」と嘆きます。

原資は、貧乏な日本人がコツコツと払い続いたものでしょう?国籍はともかく、不正を働く人間に対するぶつけようがない怒りが湧いてきます。

スペイン・ラマンチャ地方

◇個人情報が売られる

この章で一つだけ、取り上げたいのは、国が2017年11月2日から、マイナンバーと無料通信アプリ「LINE」と連動させることにしたことです。

個人情報がダダ漏れです。しかも、マイナンバーとなると、ハッカーが辿っていけば、銀行の口座まで行き着くことができかねません。

これは、マイナンバーができて2年以上経つのに、いまだに全国民の1割しか利用していないことから、政府が編み出した苦肉の策なんだそうです。(私は会社にもマイナンバーは登録してるので、真面目な羊のような国民の1割の一人だったの?)

LINEは今、日本ではスマホユーザーの7割、10代女子では9割という驚異的な利用率を誇るとか。

先日もこのブログで指摘しましたが、LINEを開発した技術者は韓国人で、親会社は韓国最大の検索会社のネイバー社でしたね。

詰めが甘い私の指摘はここで終わってましたが、堤さんによると、このネイバー社の株式の6割以上は、ブラックロック、オッペンハイマー・ホールディングス、バンガード・グループといった欧米の巨大投資会社が所有しているというのです!

「つまり、LINEでやりとりする内容や個人情報の扱いを決めるのは、日本の政府が直接手を出せない、韓国や外資の民間企業となる」と、堤さんは声高々に(私はそう聞こえましたが)披瀝するのです。

何とも、おっとろしい世界なんでしょ!!

何と言っても、自分たちがあまりにも無知でいることが。