日本のマスコミは、米国に関してはトランプ大統領ばかり追ってますが、その縁の下を支えているペンス副大統領の「威力」は、意外と知られていません。ホワイトハウスの閣僚が次々とクビを切られている中、恐らくトランプ大統領が最も信頼する腹心であり、ペンス副大統領の影響力は想像以上のものがあることでしょう。
というのは、最近の米中貿易摩擦から貿易戦争に発展し、そして、中国の「国策企業」華為技術の副社長が逮捕(保釈)される中、ペンス副大統領が10月4日に米ワシントンのハドソン研究所で行った演説が、その逮捕の端緒というか、背景にあり今後の米国の対中戦略の核心をかなりついていたからです。
遅まきながら、先々週に演説全文を取り寄せて読んでみましたが、恐らくスピーチライターが書いたのでしょうが、分かりやすいですね。はっきり言って、米中協調ではなく、これは「対中国封じ込め政策」でした。
演説は、米中間の貿易問題を始め、太平洋・東シナ海における軍事戦略、それに、中国における人権問題にまで及びます。なるほど、今の米国は中国に対して、こんな風に考え、とらえ、みなしているのかということがよく分かります。
特に人権問題に関しては、宗教とからめて、中国共産党政権は、キリスト教徒の地下組織を弾圧し、仏教徒のチベットとイスラム教徒のウイグル族を迫害していると非難するのです。
この演説で新聞でも話題になった「債務の罠」にも触れています。中国が数年前から推進しているシルクロード経済圏構想「一帯一路」のおかげで、スリランカ政府が、借金が返せなくなる債務の罠に陥って、南部ハンバントタ港を99年間の長期貸与せざるを得なくなった事案に触れて、ペンス副大統領は「中国は軍港として利用するためだった」と、これまた批判しています。
こういう「思想背景」があるわけですから、米中貿易摩擦は、一触即発の戦争状態といっても過言ではないでしょう。ちなみに、ペンス氏が演説したハドソン研究所は、保守系シンクタンクで、あの著名な未来学者のハーマン・カーン(1922~83)が設立。対中国強硬路線派で、またまた、「あの」と書きますが、元NHKの日高義樹氏が首席研究員だということです。
もう一方の華為技術の副社長逮捕事件の背景については、色々と報道されていますが、次世代移動通信「5G」の覇権争いがあることは間違いありませんね。
中国は2015年以降の3年間で35万カ所の通信基地を新設しましたが、米国はわずか3万カ所と大きく出遅れて、焦りがあったのでしょう。華為技術の創業者が人民解放軍出身で、国家プロジェクトであることから、米国が「安全保障上の脅威」と主張するのも頷けます。
ただ、スノーデン氏が告発したように、Gmailを始め、個人情報を米国当局がいつでも好きな時に、防諜、盗聴、盗み読みすることがてぎるシステムになっており、また、いつもの「米国の論理」の側面があることは確かなので、少し差し引いて考えなければなりません。