映画「ミッドウェイ」は★★☆

 「インデペンデンス・デイ」などのスペクタクル映画で知られるローランド・エメリッヒ監督の「ミッドウェイ 日本の運命を変えた3日間」を観て来ました。

 エメリッヒ監督は1955年生まれのドイツ人ということですが、何でこの時期に、太平洋戦争の「勝負の分かれ目」となった「ミッドウェイ海戦」を作品化しようとしたのか、よく分かりませんでしたが、パンフレットによると、20年間もリサーチの時間をかけて、この戦争を映像化したかったようでした。「多くの命が失われる戦争には勝者はなく敗者しかいない。だからこそ二度と起きてはならない戦いを描いたこの映画を日米の海兵たちに捧げる内容にしたかった」

 とはいえ、米ハリウッド映画という勝者側から描いた作品にしか観えないのは、私が敗者側の日本人だからかもしれません。ウェス・トゥークの脚本、つまり、ストーリーが、お涙頂戴の「家族愛に基づくアメリカ人の愛国心」対傲慢な「領土拡張の野心に燃える日本の軍人」という構図になっているからです。

製作プロダクションとフィルム・プロダクションに米国だけでなく、中国、香港、カナダが入っているのも何となく違和感がありました。これらの国側から、脚本について何らかの「意見」を具申したと思われるからです。

 しかしながら、エメリッヒ監督が歴史を捻じ曲げたわけではなく、監督得意のスペクタクルは、まさに戦争に打ってつけ(?)で、戦闘シーンは非常にリアリティがあり、まさに戦場にいるような感覚にさせられました。

 真珠湾を奇襲攻撃した卑怯で悪いジャップをやっつけるのですから、若い米国人が観れば感動ものでしょう。よくぞ「再現」したものです。

 山本五十六・連合艦隊司令長官(戦艦大和)に豊川悦司、南雲忠一・第一航空艦隊司令官(空母赤城)に國村隼、山口多聞・第二航空戦隊司令官(空母飛龍)に浅野忠信を配し、それぞれ立派な演技でしたが、海兵隊員役の若い日系人か日本人のエキストラ俳優に全く緊張感が見られなかったのは残念でした。

 映画の最後の方では、この戦場で功績を挙げた戦士たちが、何とか十字章をもらったとか、山本五十六大将の乗った飛行機が撃墜されたとかいった、よくある「説明調」の場面が続きました。もちろん、命を懸けて大前線で戦った兵士の功績の賜物でしょうが、やはり、ミッドウェイ海戦の影の主役は、太平洋艦隊情報主任参謀のレイトン大佐(パトリック・ウイルソン)だったことがこの映画でよく分かりました。レイトンは駐在武官として日本に滞在し、日本語もできる日本通であり、この映画では、日中戦争が始まった1937年に、レイトンと山本五十六が会って話をする場面から始まることも印象的でした。

 山本五十六はハーバード大学留学、米駐在武官経験もある米国通で、アメリカの国力については知り過ぎていたはずだったのに…。

 結局、勝負の分かれ目は、日本の暗号を解析して読み取った米軍の情報収集能力にあったとも言えます。恐らく、大日本帝国軍は、ここまで敵に暗号情報が漏れていたことを知らなかったと思われます。いや、恐らくではありませんね。全く知らなかったのですね。そうでなければ、山本五十六大将の搭乗機が撃墜されるわけがありませんから。

 日本は国力や物資だけでなく、情報戦争で負けていたことが否が応でも見せつけられました。