通訳案内士の国家資格は風前の灯か

浅草 中華そば 600円

 昨日は会社を休んで浅草に行って来ました。遊びじゃなくて、講習を受けるためです。

 2年ほど前に観光庁が通訳案内士法を大幅に改正しましたが、その中で、全国通訳案内士は、5年ごとに講習を受けて更新しなければ、その資格は剥奪されるという項目が追加されたのです。(いや、実際は剥奪ではなくて、資格が失う恐れがある、といった丁寧な表現ですが)

 いずれにせよ、せっかく、通訳の予備校にまで通って、お金を掛けて、難関試験を突破した国家資格なので、強奪されるなんてとんでもない!(強奪ではなく、資格を失う恐れがある、ですが)ということで、仕方なく、私も所属する通訳団体が主催する講習会に参加したのでした。

 そしたら、何てことはない。外国語の講習会ではなく、「旅行業法、添乗、旅程管理」と「災害発生時の対応と危機管理」の講義でした。ぶっちゃけて言えば、通訳ガイドさんも、交通機関や宿泊先やレストランの旅程がスムーズに滞りなく進行するために、事前に予約確認したり、減員が出たら調整したりする旅程管理主任か添乗員のような業務もやりなさい、という趣旨に私は取りました。昔は、外国人観光客のツアーでも添乗員さんが付くのは当たり前で、通訳ガイドは通訳だけやっていれば済んだのですが、経費節減で、旅程管理主任者も派遣できず、通訳ガイドさんが一人で、細かく旅程管理もしなさい、ということになったということなのかもしれません。

 災害発生も、天変地異や地震などがあれば当然、通訳ガイドも適切な対応を取るのは当たり前ですが、危機管理の面では、お客様の食物アレルギーや宗教上の理由なので、食べてはいけない食べ物を把握したり、代替の食事を用意するよう事前に手筈を整えることも仕事の一つになったようです。

 事故も、事前に注意喚起することが通訳ガイドの重大な仕事で、「段差があるので気を付けてください」と言わなかったばっかりに、外国人観光客が転んで骨折して大事(おおごと)になった例なども紹介されていました。

明智光秀ゆかりの福知山城

 そう言えば、先日「明智光秀ゆかりの地」を訪ねる団体ツアーに参加しましたが、そのツアーのガイドさんと添乗員さんは、口を酸っぱくして、遠回りをしてでも「横断歩道を渡ってください」と注意喚起していました。思い出してみると、この日の講義で習った旅行業法や旅程管理などを、本当に忠実に遵守していたことが分かりました。ガイドや添乗員には個人情報の守秘義務があり、件の団体ツアーには91歳の方も参加していましたが、添乗員さんはそういった情報でさえ、曖昧に笑って胡麻化していました。見上げた旅行業法の法令順守、法の支配です。(褒めています)

 少し驚いたのは、著作権法です。通訳ガイドは、出版された地図をコピーして行先をマークしてツアー客に配布しても著作権法に違反するというのです。どうすりゃいいのでしょうか?自分で手で地図を書け、ちゅうことなんでしょうか?

 あと、新聞や週刊誌などに載ったり、他人を写したりした写真も肖像権や著作権があり、それらを使用すると著作権法侵害になるので駄目だというのです。私自身、随分前に、外国人観光客を皇居前に案内した時、新聞社が写した天皇皇后両陛下のお写真をコピーしてお見せしたことがありましたが、これも違反だったんですね。皇室となると、誰でもお姿を身近で撮影できないので困ったものです。諦めろ、ということなんでしょうね。

 まあ、今はコロナ禍で、通訳ガイドの仕事はほとんどなくなってしまいましたし、通訳も、添乗員、旅程管理主任者のようなお仕事を兼任されるのでは、とても割に合わない仕事になってしまいました。

 それに、何と言っても、2年前の通訳案内士法改正で、国家資格がなくても、誰でも「有償」でガイドができるように「改悪」してしまったので、通訳ガイドの資格を持っていても何の意味も足しにもならなくなりました。

 要するに、資格がない「闇ガイド」をやっても全く法に触れないし、別に、通訳ガイドが、旅程管理業務も添乗員業務もやらなくても、罰せられることはないということです。講習会なんて矛盾してますよ。そのせいか、友人のM君は、いまだ通訳講習会を受けていないし、一緒に入った通訳団体も既に辞めてしまったといいいますからね。

 講習会では最後に試験があり、どうにか合格点をもらい、「修了書」を発行してもらいました。帰り道、久しぶりに浅草に出て来たので、神谷バーのデンキブランでも飲んで帰りたいなあ、と思いましたが、ぐっと我慢して真っ直ぐ帰宅しました。家で色々と勉強しなければならないことがあり、時間が惜しかったからです。

人生、幾つになっても勉強です。