朝日新聞、月額500円の値上げに想ふ

 私は一応、今でもメディア業界の片隅で棲息しておりますので、朝日新聞の値上げのニュースには心を痛めました。5月1日から500円値上げして、朝夕刊セット月極め購読料が4900円になるというのです。値上げは2年ぶりですが、同時に愛知、岐阜、三重の東海3県での夕刊発行も休止するというのです。愛知は中日新聞、岐阜は岐阜新聞、三重は伊勢新聞の牙城ですから、(中日新聞は県紙というより、中部、東海、北陸のローカル紙ですが)天下の朝日も、地元紙に敗れたり、ということになります。

 値上げされて、「心を痛める」というのも変ですが、同情せざるを得ないからです。日本ABC協会によると、朝日新聞の発行部数は、1997年1月862万7500部をピークに、今年2月にはその半数以下の377万2617部にまで激減しているというのです。

 60歳以上の高齢者は忠誠心がありますからそれほど「新聞離れ」はしてませんが、特に20代、30代の若い世代の新聞購読者が激減したことが要因です。若い人が新聞を読まないと、その人が高齢になっても読まないということになります。つまり、先細りです。新聞業界も斜陽産業といいますか、衰退産業ということになります。

 となると、優秀な学生さんもそっぽを向いて入社しなくなり、人材不足で記事の質もどんどん劣化し、悪循環でさらに部数も落ちることになります。

 これでええんかいなあ、と思います。

 まず、若い人は、ニュースはネットでタダで見られるから良いと勘違いしている人が多いのですが、それは大間違いです。特に、新聞・通信社の記事の中には、記者が夜討ち朝駆けで、苦労して足で稼いで書いたものもあり、その原稿は、デスクや校閲ら何人もの校正や事実確認などを経て記事化され、間違いやフェイクを避ける努力をしています。丸一日、取材対象に食い込んでも、1行も原稿にならない日もあります。費用対効果が非常に悪い業界なのです。

 ということは、記事が有料だからこそ、信頼度が担保されている、と言っても過言ではありません。

 しかし、ネットに溢れる「ニュース」の中には、タダですから、あまりにもいい加減な噂話やフェイクニュースだったりします。しかも、テレビの番宣だったり、読者を巧妙にモノを買わせるように洗脳する記事に見せかけたステマ広告だったりもします。

 もっと言えば、新聞は「社会を映す鏡」みたいなもんですから、新聞は、その国民の民度を表すのです。新聞の記事が劣化するということは、日本人の民度が劣化すると言っても良いのです。

 まあ、こんな影響力のないブログに何を書いても「暖簾に腕押し」か「蟷螂の斧」でしょうけど、新聞社や出版社などがネット上に記事を無料でアップするのをやめるか、有料にしたりしたらどうなるか、夢想します。